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遠藤(乙)
委員 基本的には私も同感する分析でございますが、九〇年代、二〇〇〇年代の特徴は科学技術大国、これであることは間違いない。ところが、科学技術立国になっていないというのですね。要するに、基礎科学研究あるいは研究開発のすばらしい成果が雇用や成長に結びついていない。要するに、ビジネス化する分野で非常にこれが弱体であるということが非常に特徴的な
日本の問題。技術で勝ってビジネスで負ける、これがまさに
日本の特質ではないかというふうに思われるわけであります。
その背景には、私は、いろいろ
考えてはきているんですが、いろいろな要素があって、
一つは、
日本が高度成長の時代とそれ以降の時代、大きく
世界の構造が変わり、特に
日本自体が変わっております。
かつて
日本が高度成長したときは、まさに
世界のトップを切って、いわゆるキャッチアップ型の成長をした。
日本は低賃金、ところが、非常に
国民の勤勉性とか知的水準が高い、外国から技術を安く導入できる、そういった
発展途上国の特異性を最大限に活用して、急速にキャッチアップしていった。まさにカイゼンといった言葉が国際語になっておりますが、そういったプロセスイノベーションを徹底的に進めることによって、キャッチアップ型の戦略にはまったことによって、非常に
日本はすばらしい成長をした。
ところが、八〇年代、特にプラザ合意等で円高にもされまして、そういったことでどんどん競争力を失い、賃金も
世界で最も高い部類に入った。そうなってしまうと、むしろほかの新興国、
中国とか韓国、ASEAN等、そういった国々と大きな、例えば二十倍、三十倍の賃金格差がある場合には、決してこのプロセスイノベーションだけでは対抗できないことになってくるわけであります。
むしろ、新しい
日本というのは、
先進国型のイノベーションといいますか、プロダクトイノベーション、新しい
製品とか新しいサービスをつくり出して、いわば差別化してそれを活用していく、そういった戦略に転換する必要があったわけでありますが、残念ながら、そういった意味では、
先ほど海江田
大臣も成功が失敗の母と言っておられましたが、余りにもかつての高度成長時代のキャッチアップ型の戦略が成功し過ぎたことによって、それに固執して、真の
先進国型イノベーションに転換できなかった。特にプロセスイノベーションからプロダクトイノベーションに転換すべき、その戦略がおくれているということが
一つの理由にあるかと思っています。
もう
一つは、標準化ということを指摘されましたが、まさに
日本の場合には、今ガラパゴス化ということが言われておりますけれ
ども、
日本だけが余りにも特異な進化をして、国際的なマーケットに対する備えをしていない。例えば携帯電話にしても、大変すぐれた技術、すぐれたソフトを使っておりまして、
日本人から見れば大変すばらしいと思いますけれ
ども、これが国際的に通用していない。まさにスタンダードが全くつくれなかったわけであります。
そういった意味で、せっかくすぐれたものをつくりながら、余りにも過剰品質、過剰の付加価値にこだわり過ぎまして、国際的に標準化したものにつくってこなかった。そういった意味で、やはり
視野が内向きになり過ぎていたということではないかと思っておりまして、そういった意味でガラパゴス化といったことも言われている。もし本当に
日本が
世界に真に向き合って、グローバルな視点でグローバルな市場に対してマーケティングを進めて新
製品開発、新サービス開発をしておれば、
世界と同じぐらいのレベルで成長ができたのではないかと思っております。
そういった意味では、このガラパゴス化ということも大きな問題である。ぜひともその標準化の問題を含め、真にこれからグローバル化を目指した戦略に転換していく必要があるだろうというふうに思っております。
また、もう
一つ特に最近指摘されているのは、いろいろ物づくり、それが従来のインテグラル型という方向からモジュラー型に変わってきている。要するに、自動車のように、いろいろなものをすり合わせながらすばらしい自動車をつくるといった、これは
日本が非常にたけておるわけで、こういった、インテグラル型と言われておりますが、最近は特にIT革命によりまして、パソコンなんか、モジュール型といって、部品に分けて、それぞれの得意なところがそれをつくって、それを組み合わせることによって
製品化される。
例えば、インテルは
アメリカがつくり、マザーボードは台湾がつくり、あるいはソフトは
インドがつくる。それを合わせて
アメリカの
製品として売られているんですが、
アメリカがその利益を確保していく、そういったビジネスモデルになってきておりまして、
日本の企業のビジネスモデルが、グローバルな、モジュラー化したそういった分業体系に十分
対応していないといったことがあるかと思っております。
こういった、単なる技術だけではなくて、まさに、ビジネスモデルをグローバル化あるいはモジュラー化にぜひとも適応するような形で戦略を組み上げるということが大事だということが言われるのではないかと思っております。
私は、余り適切な例かとは思いませんけれ
ども、この
日本経済の今の状況、技術、科学では非常にすぐれているのになぜ負けていくんだということ。これは、例えばかつての戦争に例えますと、
日本はずっと大艦巨砲主義、艦隊決戦を非常に重視して、日露戦争で余りにも見事に勝ったものですから、「坂の上の雲」のあれを今やっておりますが、余りにも見事に勝ち過ぎたために、艦隊決戦、大艦巨砲主義、ずっとそれが支配的であった。
ところが、ずっと時代が変わるに従って、空母機動部隊、空母に飛行機を載っけて制空権をとって攻める、これはもともとは
日本が開発して、真珠湾とかマレー沖海戦はそうだったのでありますが、
日本では結局これが主流にならずに、最後まで大艦巨砲主義で来てしまった。ところが、
世界はもうそのときには空母機動部隊の戦闘モデルに移行していたわけでありまして、最高の技術の粋を集めて戦艦大和、戦艦武蔵をつくったけれ
ども、ほとんど役割を果たすことなく沈んでいったという、まさにこれが今の
日本の状況ではないかと思っておりまして、単に技術が強いからというだけでは勝てない。
やはり、もっと戦略的なビジネスモデルとか、グローバル化に
対応したそういったことまでを含めてさまざまな
対応、あるいは人材育成も含めていかないと、本当の意味で
日本がこれから成長戦略を進めていく上にも、特に、雇用と成長を拡大することこそが
日本再建の一番のキーポイントになるわけですから、一番重要なポイントであると思います。
そういった意味では、イノベーションの
あり方、
日本でもイノベーションがなかったわけではないけれ
ども、余りにもガラパゴス化してしまった、また、過去の成功にとらわれたイノベーションであって、もっと本質的な、新しい時代に即応のイノベーション戦略に転換することこそが、この成長戦略を本当に実あらしめる一番のキーポイントだろうというふうに
考えております。
そんな
意見を持っておりますが、ぜひちょっと
コメントをいただければと思っております。