○井ノ口
参考人 新潟大学災害・
復興科学研究所の井ノ口と申します。
このような場は実はふなれでして、それでも呼んでいただいて非常に光栄に思っております。
まず最初に、東
日本太平洋沖
地震で
被災された
皆様にお見舞いを、また、亡くなられた多くの
皆様に対して御冥福をお祈りいたします。
私の方は、特に私自身の研究の関係を御紹介するとともに、今回の
災害に対していろいろと懸念されると私自身が思うところを述べたいなというふうに思っております。
私自身の研究の一番基礎となっている
部分でありますが、基本的なITシステムをどのようにうまく活用すればいいかというところです。特に、
防災の中で、ITシステムというのは情報の収集だとか集約になっていて、それが
被災者の
皆様に対してなかなか伝わっていないというふうなところに懸念をしているところでございます。
本日お配りしている資料がございますが、字も多いですし図表も多いので、また後で見ていただければというふうに思います。要点だけかいつまんで御説明したいと思います。
先ほど申し上げましたように、まず、
新潟県の事例が最初の二ページから三ページほどに書いてございます。
当時、
被災者生活再建支援法を使うに当たって、それ以外の
支援制度も含めてですけれども、基本的には、
被災者の
皆様が手元に罹災証明書というものを置いて、それの判定基準に基づいて
支援を受けるというのが大前提というふうになっております。しかしながら、罹災証明書というのは、建物
被害を決めなければいけないというお話、そして、だれが
被災者なのかということを決めなければいけないという問題がございます。しかしながら、建物
被害を調査するだけでも大変ですし、本当に建物がどこにどれだけあったのかということは、実は、実態と、いわゆるデータベースとか呼ばれていますが、台帳内に記録されているものに、かなりずれがあるというのが現実として起こっている課題です。
それが、同様に人に対しても起きるわけです。
住民基本台帳にすべてが載っているかというとそうではなくて、まだ登録が済まれていない方だとか、あるいは
高齢者の方で、息子さん娘さんのところにおられて
住民票を移していない方、そういう方もおられます。そうすると、罹災証明のときに、そういう方をいかに把握するかというのが非常に重要な課題になってきたのが当時の問題でした。
それを解決する一つの方法としまして、我々は地理情報システムと言うんですが、GISという言葉が使われていますけれども、空間上に、その住まわれた人、あるいは私はここにいましたよというお話を聞きながら、もちろんそれを審査はするのですが、それで認めた
場所と、ではその
場所にどんな建物があって、その建物がどういう
被害があったのかというのを組み合わせていくところでまず罹災証明書を発行したというようなところでした。
罹災証明書を発行すると、その後さまざまな
支援が展開されます。これまでの情報システムのよくないところになってくるんですけれども、データが残ったからよかったねというふうなところが多くあります。しかしながら
被災者の
皆様は、世の中にいろいろな
支援が出てくるわけですけれども、その
支援をすべて知っているわけではございません。
一方で、
行政の方としては、こういうふうな
支援がどういう人に適用になり得るのかというのがすぐわかります。罹災証明書の結果、あるいはその他さまざまな
被災者の
皆様の情報というものをうまく組み合わせていくことで、新しい
支援策だとかいうものが提示されたときに、では、どの方が
支援を受け得るのかということがわかります。それと同時に、
支援を受けられる方、特に若い方とかはすぐアクセスをして
支援を受けられるんですが、どうしても
高齢者世帯とかあるいは要介護者世帯というふうなところになりますと、なかなか
支援が行き届かないということがありますが、そういうものを逆に把握することができるというふうなところでした。
これは柏崎市の例ではございますけれども、そういうふうなシステムあるいは台帳、
被災者台帳と我々呼んでおりましたが、そういうものをつくり上げていくことで、
支援が行き届いていない方がどこにいるのか、どれだけおられるのか、それは一体どういう方なのかということが見えてくるというふうなところです。
参考程度に後ろに少し表を載せましたけれども、例えば、六ページ目の右上に図七というところがございますけれども、「
再建の進捗
状況の集計把握」というふうに書いております。
被災者生活再建支援のさまざまな
制度を受けると、
行政に来ていただいて、相談に乗って、いろいろと御説明を申し上げるというふうなところなんですけれども、一度来ていただいて説明をしても、多くの方は実は申請まで至らない。それには内容がわからないということもありますし、そのうち忘れられるというふうなこともあるかと思います。ただ、実はこういうふうな
方々が、言葉を悪くすれば忘れられる、よく言えば取り残されていかれる
方々がおられるというのが実態として見えてきます。
柏崎市の例ではございますけれども、こういう
方々に対して、郵送で広報するのか、あるいは広報誌に入れて何かお伝えするのか、また個々に訪問をして回るのかというふうな、施策を実際に運用するための方策をこの中から導き出すというふうなところで使われました。こういうものがないと、なかなか、
支援を一方的に提示しているだけでは
被災者には届きませんで、数が多いうちは広報を使えますが、数を少なくしていけば、その後、どうにかしてそういう
皆様に情報を届ける、それを支える基盤としてもITがあるのではないかというところが今求められているところだと思います。
こういうことの経験を踏まえて、今回の
東北地方太平洋沖地震においても、やはり各
自治体に対してこういうふうな仕組みが要るだろうというふうに私自身は思いますし、その一方で、私は
新潟大学ですし、
新潟県知事もおられますけれども、
新潟県は多くの
被災者、
避難者を受け入れている。そういう
方々に対して、
避難する前の、
被災したときの
自治体から情報が発信されているものが、必ずしも遠くにいる
方々に対して本当に届くのか。
私自身いろいろとお話を伺いながら、一つ懸念することとしては、遠くに行かれて、公的にサービスとして提供されるような居住空間に住まわれている方、公営住宅だとか、そういうふうな
方々については
行政としても把握はできるかもしれませんけれども、その後、民賃に移られた方だとか、私は出身が関西の方ですけれども、あの発災の直後、大阪あたりのホテルは全部予約をされているというふうなお話を伺ったことがあります。
避難をするために来られているんだと思いますが、そういう方はどこにおられるのかということが本当に把握できるのかというのが非常に問題かなというふうなところです。
裏を返しますと、どの方が
被災者であり、その方が今どこにいるのか、そういう
方々が何かしら、外部からであっても情報にアクセスをしながら、今その
被災した
自治体の中から提示されている
支援策にたどり着けるような仕組みというものを早期につくらなければ、どうしても、遠くに行かれれば行かれるほど
支援から遠ざかっていくというふうな実態に行き着くのではないかというところを非常に懸念しているところでございます。
あともう一つは、そういうふうな情報システムの大きな強みというのは、シミュレーションというのを我々は考えておりまして、常に推定ということをやっております。
今現在、内閣府の方の
支援ということで、地図作成という形で
支援をして、今、合同庁舎五号館の方におりますけれども、
被害の
状況というのは大き過ぎてなかなか見えない
部分がございますし、新しい
支援策を打ったとしても、どういう
方々が適用されて、どういうふうにそれが進むのかということはなかなか見えないです。ただ、過去の
災害の経験上、例えば相談窓口を開くと、最初すぐピークが来るんですけれども、その後、柏崎でも、三年たっても相談がやまないというふうな実態がございます。
そういうふうに、
業務量だとか、あるいはそういうものがどういうふうに進むのかを、限られた情報を組み合わせていき、過去の知見を生かしてシミュレーションをし、それを運用するために、計画策定にうまく使っていかなければいけないというところが非常に重要な課題ではないかというふうに私自身認識しております。
最後になりますけれども、ITシステムは、どうしても情報がたくさん来て、それを処理することが求められるようなところがございます。初期の段階はそれが非常に重要ではございますけれども、これから、
長期化する
災害対応ということを考えますとどうしても、残された
被災者をどう把握し、そういう方に手厚いと言ったら、均一でない、公平でないというふうな御
意見があるかもしれませんが、弱者に対してどのように手を差し伸べていくかというところ、数の限られた
行政職員の
方々、少ない数で
対応しなければいけませんので、質をどういうふうに高く、どこに重点的に目を向けるべきかというところをきちっと把握していかなければいけないというふうに私自身考えております。
雑多なお話ではございましたけれども、以上で私の方からの御紹介とさせていただきたいと思います。
御清聴ありがとうございました。(
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