○山本(幸)
委員 野田財務大臣は、短期、中期、長期の定義をしただけですよね。海江田
大臣からは、ある程度、その要因についての話がありました。
白川日銀総裁、すべてを
説明できる理論はない。まあ、それはそうでしょう。だけれども、かなりの程度
説明できる理論というのは、ある程度確立しているわけですよ。教科書にも書いていますよ。同じ
先生に習ったあれとは思えない答弁だ。
答えだけ申し上げますと、短期は、要するにフローじゃないんです、ストック。フローが変わる時間がないんだから。そうすると、ストックの
動きについて人々がどう予想するかによって決まるんですよ。株価と一緒だ。だから、何らかの事件が起こって、それに対して
為替市場の人々が反応する、その予想、
為替市場の人々が期待を持ってどのような行動をとるかということで決まるんですよ。
日本の対外純
資産というのはプラスで二百五十一兆円ぐらいあるんですから、常にそれだけの投機が起こっている。それをバランスさせなきゃいけない。
日本の
市場参加者は対外
資産を、外貨建ての
資産をどう買おうとするかという行動をしている。それから、
海外のいろいろな
機関投資家、
中央銀行を含めて、
日本からの負債をどうしようかとしている。
ある事件が起こったときに、
日本の
市場関係者は対外純
資産についてシュリンクする。
リスクをとりたくない、これはちょっと危ないと思うような事象が起きたとき。あるいは、
海外の人が
日本の負債をとりたくない。これが起こったときに
円高になるんですよ。
だから、短期というのは株価と同じように
資産、アセットとしての
動きを
考えなきゃいかぬし、それに
影響を与えるのは、ある事象に基づいて人々がどういう期待感の変化をもたらすかによって決まるんですよ。これはなかなかコントロールできない。したがって、それに対しては
対応はなかなか難しい。
介入が
考えられるけれども、それについては後ほど申し上げますが、さっき
今井さんが非常にいい
指摘をされました。そういう
介入の効果がどうなるかということと
影響する。
それから、中期が一番大事なので一番
最後に言いますが、長期というのは、かなり長い期間の趨勢的な
経済の変数の
動きなんですね。
これは、
物価、デフレであるかインフレであるかが続いているかどうか、あるいは、一番
関係するのは交易条件なんですが、交易条件がどういうふうに変化していくか。それはすなわち、
企業の生産性がどういうふうに上がってくるか、
日本の
経済の実質面での成長率がどうなるかによって決まってくる。
結論から言えば、交易条件が悪くなればその国の
通貨は安くなりますよ。逆に、よくなると強くなる。したがって、
輸出産業の生産性が高いというのは交易条件が悪くなる
一つの要因だから、これは円安の効果になるんですよ。それから、中国みたいに成長率が非常に高い国が周辺にあると、交易条件が悪化して
日本の円は弱くなる。
さっき
経常収支の話がありましたが、
経常収支の話は、まさに資本取引があって非常に難しい話があって、これはトランスファー理論というのが行われていて、そう簡単じゃないんですね。結論から言えば、自国と他国の輸入弾力性が、足した総和がマイナスだったら、むしろ皆さん方の常識と違うことが起こる。つまり
経常収支の
黒字国は円安になる。長期的にはそういうことが起こってくるということが言われています。これは長い話だから、そう簡単にいかない。
問題は中期。中期はまさに
経済政策によって決まるんです。
中期理論の基本は、私は何度も
野田財務大臣に申し上げましたけれども、今日の中期理論でどの教科書も採用している理論というのは、マンデル・フレミング理論ですよ。
マンデルという人とフレミングというノーベル
経済学賞をとった学者が言っている理論でありまして、簡単に言えば、変動
相場制のもとでは、
財政政策を使うと、金利に上昇プレッシャーがかかって、金が入ってきて、
円高になって、効果がない。逆に、
金融緩和政策をとると、金利が下がって、それから円安になって、二重に効果があるという理論であります。つまり
金融政策が、
為替レートを強くするか弱くするかに、根本的に大きな
影響を与えるわけですよ。
そこで、お配りした
資料をちょっと見ていただきたいんです。
さっきの
今井さんの話とほぼ適合するんですが、
今井さんは二〇〇八年からの短期のところをとって議論していましたが、要するに、過去十年を振り返って、
日本銀行が何をしてきたかを見れば一目瞭然なんですよ。
日本銀行は何もしていないんだ。
二〇〇〇年の
マネタリーベースを一〇〇とした場合に、今日、この三月の震災があったからちょっと
マネタリーベースをふやしたけれども、あれがなかったらほとんどふやさないでいっているよ。それでも一〇〇が一五〇になっただけだ。それに比べて、中国は二〇〇〇年から今日に至るまでに
マネタリーベースを約六百二十倍ぐらいに、一〇〇を六二〇にした。
アメリカは四五〇ぐらいだ。そして、イギリスと韓国が大体二八〇ぐらい。ユーロ圏が二五〇ぐらい。
これを見れば一目瞭然なんですよ。
為替レートというのは各国の
通貨の相対評価なんだから、円が高くなるに決まっているじゃないですか。
それを
日本銀行は、
白川総裁は、我々は潤沢に
資金を
供給しています、その証拠は名目
GDPに対する比率が一番高いですと、ばかなことを言っているけれども、名目
GDPというのは、
日本は過去二十年間、全然変わっていないんだから。ほかの国は、
アメリカは二・五倍、中国は七倍になりましたよ。順調に名目成長率が伸びていれば、そんなことにならないんだ。だから、そんな
説明は私にはきかないんだ。ごまかすな。
何にもやっていないんですよ、
日本銀行は、お金をふやしているって。だから、
円高になるんですよ。これを転換しない限り、
円高はどんどん続きますよ。
だって、これから復興のための
財政支出がどんどん出ていくわけだ。もう出だした。
財政支出を拡大すれば
為替レートは
円高になるというマンデル・フレミング理論どおりに動いているんですよ。そうでしょう。それをひっくり返すためには、よっぽど思い切った
金融緩和、
マネタリーベースを伸ばさない限り、できませんよ。これをやる
覚悟があるかどうかが今問われているんですよ。
さっき言ったように、こういう
状況になったときに
円高傾向を円安
傾向に変えるというのは大変なことなんだ。
介入も、ちょこっと
介入したってききませんよ。三月のときがそうだったように、すぐ終わる。それから、
日銀があした、あさって、ちょこっと、また言い逃れみたいに少し
緩和するかもしれないけれども、そんなことじゃきかないんだ。一九九五年、さっき
今井さんが言いましたね、あれぐらいの
覚悟を持ってやらなきゃだめですよ。
この点について、
財務大臣、経産
大臣、どう思いますか。