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山内参考人 一橋大学商学部の
山内と申します。どうぞよろしくお願いいたします。
このような
機会に再生
エネルギーの
買い取り法に関する
意見を陳述する
機会を与えていただきましたことにつきまして、感謝を申し上げる次第であります。
私は、学校の方では、公益
事業とかネットワークとか、そういったところを経済学的に分析する
立場にございまして、今回の
買い取り法に関しましても、いろいろなところで助言あるいはお手伝いをさせていただいた経緯がございます。そういったことを生かしながら、きょうこの場で
意見を陳述させていただきたいというふうに思います。
今回の
買い取り法でありますけれ
ども、法の基本的目的は、
皆様御承知のとおりでございまして、安定的な
エネルギーの
確保、地球温暖化問題を中心といたします環境問題、それから経済の成長、繁栄といったこと、いわゆるトリプルE、三つのE、こういったものを目的とする
エネルギー基本計画の趣旨に沿ったものだというふうに
考えております。
今回の
原発事故あるいは
震災等の関係がございまして、この
エネルギー基本計画を今後どうしていくのかということは、現在も
議論が進んでいるところでございますけれ
ども、私の個人的な
意見を申し上げれば、この三つの基本的な目的というのは
エネルギーの基本的に重要な目的であって、この
考え方を踏襲することに異議はないのではないかというふうに思っております。
それからもう
一つ、今回の
法律案につきましては特徴的なことがございます。それは、
サーチャージ制度による
政策目的の達成、あるいは公共料金を使った
政策目的の達成ということであります。当然、行政が何か目的を達成するということであれば財政的
措置をとる、こういうことが基本でございますけれ
ども、現状のような財政の逼迫あるいは
負担感の問題ということを
考えますと、この
サーチャージ等による
政策目的を達成するということ自体に
一つの価値を見出せるのではないかというふうに
考えております。
私自身、基本的に、公共料金とか公的な
企業の分析をしておりまして、こういったことについての研究が私の中心でございますけれ
ども、ほかにもこういったやり方が
日本でもあらわれてきているということだと思います。
御承知のように、
電気通信
事業におきましては、ユニバーサルサービスファンドというものを通じまして、あまねくサービス、電話サービス、音声サービスのユニバーサルサービスを
維持するということがなされております。これは、毎月我々が支払う
電気通信関係の料金の中に、今七円になってございますけれ
ども、七円という
サーチャージを取って、それによってこのサービスを
維持する、こういうことをしております。
それから、少し前になりますけれ
ども、鉄道整備において特定都市鉄道整備積立金
制度というのがございました。これは、今回のような
サーチャージのような形をとりませんでしたけれ
ども、基本的には同じような性格でございまして、運賃に十円を上乗せして、混雑の激しい鉄道の整備、特に複々線でございますけれ
ども、そういったものに充てるということでございます。
こういった形で、
サーチャージ的なものを取って
政策目的を達成する、こういうようなやり方というものも徐々に出てきておりますので、今回の
買い取り法による
再生可能エネルギーの普及、
拡大、促進というものも、この流れに沿ったものであるというふうに
考えております。
ただ、この点については少し留意点がございまして、この手のやり方というのは基本的に財政を通すものではございませんので、余り多用されることにおいてはちょっと問題があるのではないかというふうに思っております。この辺は
政策目的自体をきちっと
議論した上で、全体の政策の中でそれが整合的であるのかどうか、
効果的であるのかどうか、こういったことを検証した上で
導入すべきであるというふうに思ってございます。
さてそこで、今回の
買い取り法の
政策目的ということになるわけでありますけれ
ども、基本的に、
国民生活に根差した
温暖化対策を推進するということだと思います。また、
国民の温暖化に対する意識を高めるといった意味も持っているというふうに思います。それが、先ほど申し上げた地球温暖化問題を中心とする環境問題への
対策ということだろうと思います。
そしてもう
一つ、
エネルギー分野での新しい技術開発あるいは
産業育成というものをしていく、それによって安定した
雇用、
雇用を増大させていく、こういうような目的があろうかというふうに思っております。その意味では、
国民全体的な運動といいますか意識の中でこの政策を遂げることが重要ではないかという点を強調しておきたいというふうに思います。
それから、
負担の問題ということでございますけれ
ども、いろいろな
試算がございます。私も、当初、全量
買い取りのプロジェクトチームに入れていただきまして、その中で各方面からの
意見を聞きつつ
議論をさせていただきました。これは、今
意見陳述にございましたけれ
ども、
前提によって大きく変わるというのは当然でございまして、今のところでいうと、二〇二〇年
程度で大体五千億円弱というところの全体像、それから、これは
電力料金にしますと〇・五円というようなところかというふうに思っております。
この辺の大きさがどのようなことかということにつきましては、今申し上げましたように、これは
前提の問題でございますので何とも言えないところでございますけれ
ども、何よりも重要なのは、こういった新しい
制度によって新しいシステムを
拡大させていくということでありまして、まずは、その普及のために何ができるか、経済
効果あるいはイノベーションに対して何ができるのかということを
考えて
買い取りの料金というのを決めるべきだというふうに思っております。
現状では、例えば
太陽光については、四十円前後ですか、十五年間買い取るということ。ただ、今お話がありましたように、それにつきましては、
費用の低下を
前提とした上で
買い取り価格を下げていく、こういうようなことが言われていると思います。それから、
太陽光以外につきましては、
買い取り価格については二十円から十五円かその間ぐらいのところ、しかも、二十年、十五年、こんなようなところで
考えられていると思います。
これにつきまして、私もいろいろと
試算に加わらせていただきましたけれ
ども、これも本当に
前提によるわけでありますけれ
ども、かなりの
程度詳細な情報を得た上で計算をさせていただいたものだというふうに思っております。その意味では、恐らくこの
程度の
負担といいますか、
買い取り価格が全体としては適正なものではないかというふうに
考えております。今申し上げましたように、何よりもこれは普及促進というところを最大の出発点とすべきでありますので、余り硬直的に
考えずに
買い取り価格というものを
考えていくべきではないかというふうに思っております。
ただ、この
買い取り価格ですけれ
ども、これも
議論になっているところでありますけれ
ども、どのようなプロセスで将来的にこれを見ていくのかということはあると思います。
今までのところは、我々、いろいろなところで
試算させていただいて御提言をさせていただいたということであります。これはパブリックコメントもやりまして、どのようなところがいいのかということも
議論させていただいたところでございますけれ
ども、要するにその
買い取りの
考え方を明らかにするというのがまず第一のポイント。
それからもう
一つは、何よりも情報収集と情報公開を徹底すべきだというふうに
考えております。例えば、今申し上げた
太陽光についての
買い取り価格、これが本当にこの
価格でいいのかどうかということについてより広い
意見を求めること、そして、なぜこういうふうに決めるのかという情報を開示すること、これが最大のポイントかというふうに思っております。
私も、こういうことをしておりますので、今こういう新しい、例えばメガソーラーをやったらどうかということについて、検討されている方から御
意見を個人的に伺ったことがございますけれ
ども、例えばメガソーラーの場合でも、本当に
試算してみると、四十円で十五年というのを仮に想定した場合に、ぎりぎりのところで何とか採算がとれるかとれないかというところだというふうなお話を伺いました。
我々自身もそういう形で想定して計算したわけでありますけれ
ども、そういった情報あるいは
意見というものを吸い上げた上で
買い取り価格というものを決めていく、そしてまた、今申し上げましたように、それを情報公開していく、広い、オープンの場で決めていく、こういうことが重要ではないかというふうに思っております。
また、既に、家庭用のソーラー発電につきましては、
太陽光発電につきましては、御承知のように
余剰買い取りをやっておりまして、これも金額につきまして今回
見直しがあったということで、私もそれをお手伝いさせていただきましたけれ
ども、そういった先行事例の情報についても、重要な役割を持つのではないかというふうに
考えております。
そして、また
負担の問題に返りますが、何といっても、これは
電力料金に
サーチャージを上乗せするということでございます。ある意味では租税的な意味を持つわけでありますけれ
ども、この
負担についてどのように
考えるかということが最大のポイントというふうに思います。特に、今御紹介がありましたように、
エネルギー多消費型の
産業への
影響がいかなるものか、それから、例えば生活弱者と言われる方についての
影響がいかなるものか、こういったところについては十分に配慮しなければならないというふうに
考えております。
前者の
産業界への
影響ということにつきましては、今御紹介がございましたように、国内
産業の
空洞化、工場の海外移転、こういったものを促進するのではないか、こういう懸念は確かにあるというふうに思っております。業界によっては、今回の
サーチャージによってかなり多くの
負担を強いられるケースも出てくるのではないかというふうに思っております。
このようなことにつきまして、いろいろなやり方があろうかと思います、それについて全く何の策もないというのは、私自身、あり得ない話だというふうに思っております。これについてどういう政策をとっていくのか。御提案のように、
一つは減免とかというようなやり方もございますでしょうし、また、別のやり方といたしましては、省エネあるいは新規の技術開発、こういったものを支援していくというようなやり方もあろうかというふうに思っております。
私自身は、この
議論をしていく中で、新しい
制度を入れるときに、特別のケースといいますか、そういうものをつくることは余り望ましくないというふうに
考えておりました。その意味では、今回の
措置につきまして、特に
エネルギー多消費型の
産業につきましても、これは減免というようなことよりも、どちらかというと側面的な支援、例えば省エネ支援あるいは技術支援といったものを行うことが望ましいのではないかというふうに思っております。
一方で、低所得者の
方々、弱者の
方々についての支援については、これは具体的に
考えていく必要があるというふうに思っております。特に、税金のときに時々言いますけれ
ども、新税は悪税というような中国の格言がございますけれ
ども、ある意味では、そういったところをなるべくなくしていくというようなことが必要ではないかというふうに思っております。
それから、今、
負担の問題について例外がなるべくない方がいいのではないかというふうに申し上げましたけれ
ども、
買い取りの
価格についても、基本的にはそうだというふうに思っております。
太陽光発電につきましては、これは
コストの関係あるいは将来的な問題から別に
考えるべきだと思いますけれ
ども、その他の
再生可能エネルギーにつきましては、
エネルギー別に原価を計算してというようなことになりますと、いろいろなところにまで細かい
議論が出てきてしまうと思います。それよりも、我々が
議論いたしましたのは、一律の
買い取り価格で、逆に
エネルギー種間で競争していただく、効率的なものから入れていただく、こういうようなことを
考えた次第であります。
さて、そういった
再生可能エネルギーの
導入問題でございますけれ
ども、問題がないわけではございませんで、課題というものは幾つかあると思っております。
第一の課題というのは、恐らく相対的な高
費用をどう
負担していくかということ。
今申し上げたとおりでありますが、これについては、何よりもマーケットメカニズムといいますか競争の
導入をいたしまして
価格を下げていく、
費用を下げていくということだと思います。その背景にあるのは、イノベーション、新しい技術の招来ということになろうかというふうに思っております。
それから、もう
一つの大きなポイントは、御承知のように需給のミスマッチをどういうふうに解消していくかという問題でございます。
電気の場合には、生産時点と消費時点が同時でなければならないという即時性的な性格がございます。それから、この
再生可能エネルギーは分散型の
電源でございますので、そういった地域による差の問題、それから気象
条件、こんなようなことがございます。
これらをどのように解決していくかということでありますけれ
ども、基本的には、今盛んに世の中でも言われておりますけれ
ども、私自身、これに対するものはやはり
技術革新しかない。スマートグリッドとかスマート
エネルギー、スマートコミュニティーと言われるような新しい
電気エネルギーの供給システムが提案されております。これをいかにスムーズに
導入していくか、これが
再生可能エネルギーを
導入するに当たっての最大のポイントではないかというふうに思っております。
例えばスマートメーターであるとか電子家電であるとかデマンド側のコントロールであるとか、そういったものが新しいシステムで可能になるということでありますから、それによって需給のミスマッチを克服していくということだろうと思います。
ただ、このスマートグリッド、スマート
エネルギー、私自身もいろいろ勉強させていただいておりますけれ
ども、最大のポイントは、これを
導入するインセンティブといいますか、どういうふうな形でどのようなインセンティブがあるから
導入できるか、ここのところがはっきりしないというのが現状ではないかというふうに思っております。そのためには、全体としてインセンティブづくりをしていく必要を感じておるという次第でございます。
最後に、今回のこの
買い取り法でございますけれ
ども、
国民全体で支えるような仕組みをつくっていく、こういうことであろうというふうに思っております。
環境の価値もだんだんと増大しておりまして、その環境の価値をいかに
国民的資産として実現していくか、こういうようなことでありますが、これについては、
国民負担あるいは公共
負担で行われるべきだというふうに思っております。
そういった
負担を基本としつつ、
電力利用者にそれを求める根拠といたしましては、基本的には三つぐらいあるかと思っております。
一つは、一般財政がこれだけ逼迫してございまして、この中で、先ほど申しましたように新しい
政策目的を達成する必要性でございます。それが
一つ目。
それから、長期的に安定した政策としてこれを実施すべきだという
観点があろうかというふうに思っております。一般財政のケースでは、往々にして財政の
状況に応じてそれが変動するということでございますので、こういったインフラを変えていくという、政策の安定性が必要なため、その意味では
電力利用者への
負担というのもあり得るのかなというふうに思っております。
それから、これは冒頭に申し上げたところでございますけれ
ども、
電力料金の場合には
負担者が比較的広く存在してございまして、ある種租税的な意味を持つということだというふうに思います。
できる限り不公平感をなくすということ、
国民の
理解を得るための広報が重要であるということ、それから
最後に、政策が見える化するということが必要であることを申し上げて、私の
意見陳述とさせていただきます。
どうもありがとうございました。(拍手)