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永井参考人 野村証券とその親
会社であります
野村ホールディングスの
常務をしております
永井と申します。
本日は、
産活法の
法案審議に当たりまして、
所感を述べさせていただく
機会をお与えいただきまして、まことにありがとうございます。
所感の前に、三月十一日の
震災についてまず一言述べさせていただきたく存じます。
直接、間接的に
被害を受けられた多くの
方々、
企業に対してお見舞いを申し上げる次第でございます。
弊社も東北各県に
支店がございます。幸い社員には
けが等はございませんでしたけれども、家族が被災された方は何人かおられました。
証券取引所は開いておりまして、
お客様へのサービスを私どもも提供し続けることができました。ただし、
いわき支店につきましては、
支店が入っておりますモールが閉鎖されたということで、
支店を閉めて、
郡山に統合をいたしました。盛岡あるいは仙台、福島、
郡山の
お客様で、現在も連絡がとれていない
お客様は多数いらっしゃいます。
郵便物等が
避難所にも回送されているようでございますけれども、口座をお持ちの我々の
お客様をいかにフォローしていくかということが我々の
課題だというふうに思っておりまして、今後も続けてまいりたいと思っております。
計画停電につきましては、一部
支店が
停電にも遭いましたけれども、
お客様に対しては、電話で
コールセンターを通じてお受けすることができましたし、
市場の
仲介機能を果たすことができたと考えております。
ぜひとも、政治のリーダーシップのもとで、新たな希望の持てる政策の実現をお願いしたいと存じます。
さて、
MアンドA、先ほど
西村さんないしは
大橋先生からもお話がございましたけれども、株式、債券
市場を御利用いただいている投資家の皆様と
企業の皆様すべてが私どもの
お客様になっております。
日本関連の
合併あるいは買収でございますが、統計的に見ますと、二〇〇七年が最近ではピークでございまして、二千七百七十五件ございました。二〇〇八年以降は、金融危機等もございまして少し減少しておりますが、昨年、千七百七件という形で推移しております。
クロスボーダーの
再編につきましては、外国
企業が
日本の
会社を買うあるいは買収するというふうな話でございますが、これは二〇一〇年で百四十三件という形で、昨年比五件ぐらいの増加にとどまっておりますけれども、外国
企業のうち、アジアの
企業が六十九件という形で五割を占め、さらに中国が三十七件を占めております。
アメリカの
企業が三十五件でございますので、既に、
アメリカの
企業が
日本の
企業を買うというようなものよりも、中国からの投資の方がまさっているという
状況でございます。これは韓国についても同じような傾向だと思われます。
一方、
日本企業による対外的な買収、
MアンドAは、昨年、三百七十一件でございまして、アジア
企業に対するものが百三十九件でございました。これは増加傾向にございます。
日本からアジアの
企業への連携というのがますます活発になってきているということでございます。
本年に入りましても、例えば、具体名で申し上げた方がわかりやすいと思いますので、キリンホールディングスさんが中国の華潤グループと清涼飲料の
事業を行う、あるいは、NECが中国のレノボと、コンピューターですね、パソコン
事業を合弁で展開されるといったような、
日本と中国を代表するような
企業の連携の動きも出てきております。ですから、
円高は悪いことばかりでございませんで、
日本企業による
海外強化のための攻めの
経営というものを真剣に考えていらっしゃる
会社もあるということでございます。
弊社の場合の例を申し上げますと、二〇〇八年のいわゆる
リーマン・
ショックのときに、倒れた
リーマン・ブラザーズの
会社の社員を、特にアジア、それから欧州、中東の部分について受け入れまして、
海外で働くチームをここで一気に拡大させた経験もございます。現在二万七千人ぐらいおりますけれども、インドには、システム開発あるいは事務作業をするのに三千人ぐらい私どもで雇っているのが現状でございます。
会社を買ったということではなくて、人だけを受け入れたという手法でございます。
MアンドAの世界では、このような工夫次第で、
会社を買い取って
合併する、子
会社化する、あるいは一部だけ出資するというような形を含めまして、さまざまな形態が考えられます。
グローバルに展開し、グローバルで
競争できるような
会社に私どもも尽力したいと考えておりまして、
我が国産業の国際
競争力の強化のために何が必要かということについては、身をもって体験しているつもりでございます。
昨年の
日本関連の
MアンドAにつきましては、私どもも、件数でいいますと百十四件にかかわらせていただきました。金額では五百五十億ドル相当、四兆五千億円ぐらいにはなろうかと思いますが、
日本で行われておりますものの四割近くは関与させていただいたということでございます。
ただ、世界の
市場で見ますと、弊社は十三位という位置づけでございまして、世界の中の五%程度に関与させていただいているだけで、実をいいますと、
アメリカの大手が三社で六割近くを占めているというのが実態でございます。一位の
会社は我々の十倍ぐらいの
規模の金額を扱っておりますので、その違いがまだまだというところだと考えております。
改正
産活法でございますけれども、新成長戦略で指摘されました
産業再編を促進するために、幾つかの重要な
措置が盛り込まれております。
第一には、公正取引
委員会との協議の制度でございます。第二が、
会社法の特例を設けるというものでございます。第三が、長期金融の
支援の充実という点でございます。融資の
分野につきましては、私ども証券
会社でございまして、関連の貸金業を営む
会社もありますけれども、今回、貸し金については、この制度に直接携わる立場ではございませんので、コメントは差し控えさせていただきたいと思います。
具体的に申し上げますと、この制度は、実現されることが非常に有益だと考えております。
まず、
産業を所管する省庁と公正取引
委員会の協議というものが導入されますと、世界での
競争の実態を踏まえた形で、国際
競争力の強化のための
再編というものの議論がなされやすいのではないか。
産業界の期待もここについては非常に大きいものがございます。
それと、
会社法の特例の問題でございますが、これについては、制度自体はやや複雑でございますが、要は現金を用意するかわりに自分の
会社の株式を対価として
相手に渡していく、それで株式を取得する、こういう制度を導入してはどうか、こういう話でございます。これは導入はもう既になされておりますが、現実には余り実行されていないのは、手続面でいろいろな問題があるため、これを簡素化していただけるということでございます。また、
海外子
会社化、完全な子
会社を持つ、一〇〇%子
会社化を実現するために、対象となる
会社の株主総会の手続等も、非常に複雑なものが現在実行されておりますので、これを省略できるような形というのも
再編の迅速化という点からは非常に評価されるものだと思っております。
自分の
会社の株式をもって
相手方の株を手に入れるというのは国際的には非常に一般的でございまして、九九年のボーダフォンがマンネスマンというところを買収した、あるいは二〇〇六年にミッタルというところがアルセロールという、鉄鋼関係では非常に大きな買収が行われたりもしておりますし、昨年も、クラフトが、
アメリカの
会社ですけれども、イギリスのキャドバリーという食品業者を買収するというのも、すべて自分の
会社の株を、取得する
相手方に渡すことによって行われているということでございます。
我が国の
産業は非常に厳しいグローバルな
競争にさらされておりますが、それから取り残されることがないように、これが今回の改正の意図だと私は理解しております。
従来、エレクトロニクスを中心に、
我が国の
経済を牽引してきた
企業もありますけれども、韓国、台湾から、あるいはアジアの諸国から非常に激しい追い上げに遭っておりますし、自動車
産業も、国際
競争力のある
日本の
会社も、アジア諸国の追い上げ、あるいは電気自動車による劇的な
変化にさらされているのが現状でございます。
日本市場自体が、一億人の人口の中である程度の大きさを持っておりますので、
国内だけで十分だという人もいらっしゃいますけれども、
国内のみで戦う
企業の成長には限界があろうかと思います。
国際
競争力の強化のためには、想像を絶するスピードで世界の
市場は動いております、中国、東南アジアだけではなく、中東、あるいは南米、アフリカも所得水準が今非常に上昇しておりますし、急激に需要あるいはマーケットが拡大していることを知ることだと思います。
アメリカあるいは欧州の
市場だけを念頭に置いた
競争政策というものでは成り立たないという
事態になっているので、
企業が
再編を通しながら、
企業への投資なども使って、
競争相手をいかに攻略するかということを考えなければならないというふうに思います。
巨額の資金が
研究開発投資ですとか
生産拠点づくりにも必要でございます。世界がこうした
規模の追求をいかにやっているか、
日本の製薬
会社が
アメリカの
会社に対して敵対的なTOBといいますか公開買い付けを行っている例もありますけれども、まだまだこれは例外的なものでありますし、それをうまく
日本の制度を使ってできるように後押ししていく必要も出てくるというふうに思っております。
日本の
企業は、よい
技術を持っています。労働者の質も高い、品質も高い。これを生かすためには、ある程度の
規模の確保というものが必要でございます。
会社法のやや硬直的な株主権保護の徹底というものが、場合によっては妨げになるとするならば非常に残念なことでございまして、世界の他の国の法制がよりフレキシブルな制度を提供している中では、
競争のイコールフッティングというものが確保できるものを用意していただければと思う次第でございます。
ただ、少数株主といいますか、パーセントの少ない株式を持っていらっしゃる株主を保護することの重要性ですとか法的な安定性を犠牲にするというつもりは私は全くございません。多数決による一定の解決は、事後的に救済が図られていくという部分はある程度やむを得ないと思います。
現在、裁判所のいろいろな解決例、裁判所が株価を決めるということが果たしていいかという議論もございますけれども、
会社が提示した
価格よりも高い
価格を裁判所が決定している例も多々見られておりますし、株価の決定機関としての一定の役割を裁判所が果たし、積み重ねが出ますと、一定のガイドラインを示すということにもなっておると思います。事前の
規制がすべて正しいわけではなく、終わってから、あるいは事後の解決策というものも、ある程度合理性のあるものだと思っております。
最後に、
我が国産業の国際
競争力の強化あるいは
我が国経済の復興というものは、
産活法の改正だけで実現できるわけではございませんが、
企業が、
震災を契機に、特に
海外シフトをしなければならない
事態も多いかと存じます、
事態は非常に深刻で、重要な
課題を抱えていると思いますので、
日本企業が利用しやすい制度を、できましたら工夫してお認めいただけるということが期待されておりますので、何とぞ御理解いただければと存じます。
ありがとうございました。(
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