○
青柳参考人 元
日本原子力研究所で
研究員をしておりました
青柳でございます。
きょう
お話しすることについて、まず第一点につきましては、
福島原発の
事故の
経験を踏まえまして、今後どういうふうに
原子力を
発展させていったらいいのかという
問題点から、この
協定についての見方を
お話ししたいと思います。
実際に、
福島の第一
原発で起こった
事故がまだ、現
時点では
収束はおろか、第一
ステップでも必ずしも十分な達成がされていないような
状態であります。ほぼ第二
ステップ、来年一月まであるような
状態でありますので、今回の
事故が起こった
内容について、どれほど具体的に
事故の
内容が
検討され、その
経験が今後の
原子力の安全に関して生かしていけるかという点においては、まだ十分生かされない
状態であると思います。実際に
事故調査・
検証委員会の
事故原因の究明も今始まったばかりでありまして、その
委員会の
検討も、ようやく当事者を呼んで聞くというような
状態になっております。
それから第二番目に、大きい問題としましては、これから
原子炉を
輸出していくということになりますと、現在起こった
福島原発に対してどのように今後その
原子炉が生かされていくのかという
問題点から見ますと、再
稼働の
基準になります二
段階の
ストレステスト、これはほかのところもやっておりますが、これもまだ、実施するということで、始まったばかりで、
検討がなされるという
段階であります。これが基本的には
原子炉の再
稼働になるわけですけれども、そういう
意味からいきますと、現在の
原発の現状から見まして、
原子炉を
輸出するというような
段階から考えますと、十分安全が
確認されたというような状況にはなっておらないと思います。それを踏まえてどう生かすかという経過を経た後にやはり問題になるという点を考慮していただきたいと思います。
それから第三番目には、
原発の過酷
事故対策ですね。今回の
事故は大変大きな社会的影響、そして
世界的にも大きな衝撃を与えたわけですけれども、そういう中で見ますと、例えば今回、
日本はIAEAに対して報告書を出しておりますが、そこでは五つのグループの大きな
教訓を述べております。こういうようなものを、具体的に今後の
原子炉開発の中でどうやって今の現存炉に対して生かしていくかということも課題でありますし、さらに、大きな問題としましては、既にチェルノブイリの
事故後行いましたIAEAのさまざまの過酷
事故に対する処置の
経験やそこのまとめに対しても、
日本の場合はまだ十分生かせていないだろうと思います。
例えば、そのようなことが端的にあらわれますものは、
日本の行政機関である
経済産業省内に保安院があるということのような、いわゆる自律的な規制が十分されていないというような例が示すように、これは
条約の中では、相手国の中にはそういう制度はちゃんとなっているというようなことからいいますと、むしろ
ヨルダンの
協定そのものでは都合がいいのかもしれませんが、
我が国から見れば、そういう問題が十分
原子力の中に生かされていないという重大な欠陥があるわけであります。
それからもう
一つは、建設中ですとか新たに設置される
原子炉が今後
輸出される、いわゆる第三世代と言われるようなものに近い
原子炉でありますが、そういうようなものが
輸出されるということになりますと、やはり
日本で現在建設中とか新たに建設されている
原発の安全審査の問題がございまして、これは
原子力安全
委員会も言っておりますように、現在の基本設計から始めまして、立地指針及び基本設計指針その他
耐震設計指針、さまざまのものを全面的に今
見直している
段階でございます。
これを経まして、現在の
原発がどれほどの安全が
確保できるのかというのを再審査しなければならない
状態。これは、建設中のものに関してももちろんですが、今後出されるものについては改めてそこでやらなきゃならない、こういう
段階になりますから、この
観点からいきましても、現状において、
輸出される
原子炉が、安全が
国内において担保されているというような
状態にはとても至らないというふうに思います。
それからもう一点、基本的な、これは私個人の考え方かもしれませんが、やはり今の
原発は軽水炉が特に中心ですが、いわゆる過酷
事故、今回起こりましたように、強大な社会的影響を及ぼすような
事故が防げるかどうか、これが
一つの大きな
原子力の基本であります。この点に関しては、残念ながら現状において過酷
事故を完全に防げるような状況になっていない、まだ
技術的には完全に確立したとは言えない
原子炉が現在
世界的に共通のものです。
その中で
日本のものは進んでいるというふうにおっしゃいますけれども、それは必ずしもそうではない。第三世代のものに関しては、やはりこれからすべて検証されなければならない問題になっております。
チェルノブイリ
事故のときに、そういう
経験を踏まえまして、固有安全炉なんという特別な
原子炉、いわゆる過酷
事故などが起きないようにつくろうとしましたが、残念ながら、そういうようなものはまだ現実になり得るような
段階にはなっていないというふうに思います。
そういうようなことを考えますと、今直ちに
原子炉を
輸出するということは、安全上、国際的な信用を十分保てない
状態で
輸出するという現実的な問題になりますので、この
協定を結ぶこと自身が大変時期尚早であるというふうに私は思います。やはりこれは
日本国内の審議を経た後に行っていくべきであろうと思います。
それから、
協定の
内容そのものについて若干
お話ししたいと思いますが、やはり
三つ問題があると思います。
一つは、
輸出の
基準としまして、いわゆる核不
拡散条約体制を十分踏まえて、核不
拡散条約を基本的に守った
政策をやるということに関しましては、私は、例えば今回のさまざまの国に対する
協定の中で、
日本の基本的な考え方がきちんとしていないであろうというふうに思います。その最大のものは、核不
拡散条約に未加入である
インドとの
協定の問題です。それから、それに対する追加的
保障措置の問題であります。
こういうふうな問題を踏まえまして、それを具体的にどういう
基準で
各国に適用していくのかということについて、非常に相手国の便宜のままで
日本はやっているということで、これはやはり国際的な信用を失うことであると思います。
それから、極端に言いますと、
原子力供給国グループ、NSGの
協定での制限というふうなことが
インドに対して行われるようなことを言っておられますが、これだけでは基本的な制限ないしは相手国に対する十分な規制には全くならないというふうに思います。基本的には、
核兵器国そのものの中に制限を加えていくという考え方の中では、余りにもこれは弱いものであるというふうに私は考えております。
それから、あと二点ですが、今回の
福島の
原発の状況から見ますと、これは社会的に大変大きな影響、
経済的な大きなダメージを与えますので、国際的な点で見ますと、安全規制の問題に対する一致をやらなければならない。
国際
条約の履行の問題に関しましては、御存じのように、
日本の
政府が、必ずしもIAEAの過酷
事故対策に対する履行は完全に守れるような状況になっていない。ですから、残念ながら、
日本の場合も勧告を受ける程度の
状態でありますから、この四つの
協定を、どこまで履行して、きちんと相手国が自国において安全を保てるかということを見きわめるための検証が十分必要であると思います。そういう点に関しては、やはり、ただ四つの
条約がそろっているからいいというような考え方では私はいけないと思います。
それから、
原子力損害賠償の問題についても、ここには外務省から出された
資料が十分ありますが、三国に、
三つの問題、システムがありますけれども、必ずしもそれは、補償の額が非常に小さいわけですし、国際的に共通しない
部分もあります。ですから、今後、小国が
原子力を実際やるとか、または過密な、陸続きの国家がやるという場合に、その補償の問題に関しては、やはり国際的に統一された補償
体制をとれるような状況へ持っていかないといけない。特に、中東ですとかそういうような国々に対してもそうですし、例えば
中国とか
ベトナムに対してもそうですけれども、そういうふうな問題に関して、きちんとやはり確立しなきゃならない。
そういう点からいいますと、
日本はほとんどこの
状態を、もちろん
経済力があるからという
観点があるのかもしれないですが、されていないということで、逆に、海外へ
輸出するのであれば、きちんとした補償をつけるべきであるというふうに思います。
以上で終わります。