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小島参考人 日本船長協会会長小島茂です。よろしく
お願いいたします。
本日は、こういう場に呼んでいただきまして、発言できることを非常に感謝しております。こういうところに来たのは初めてで、
船長になって初めて船に乗っていったときと同じように非常に緊張しておりますので、よろしく
お願いいたします。
きょうは、私、船で、
現場で働いている
船長、
乗り組みの代弁ということで発言したいと思います。
まず、
アデン湾に
派遣していただいています
護衛艦に
乗船している
自衛官の方、それから
海上保安庁の
保安官の方、それと
ジブチの基地で働かれている隊員の方及び
関係者に深く感謝を申し上げます。
さて、
船長は船では
最高責任者です。
安全運航、それから
貨物の
安全管理の
責任及び
乗り組み全員の安全を守る大きな
責任を持っております。
乗り組みは船では
家族と一緒で、またその
乗組員たちも一人一人、国に
家族がいます。
今、
芦田会長も述べられたように、
海賊の
活動域が最近非常に広くなってきております。それと、悪質、辛らつ、
武器も高度化していると聞いております。
現在、
アラビア海は、西風の強い、それから
うねりが高くなって、
モンスーンシーズンです。これが十月ごろまで続きます。だいたい六月ごろから十月ごろまでなんです。
うねりも五メートルから六メートルぐらい立つんです。
普通ですと、漁船とか
小型船は
沿岸から遠くまではちょっと行けない
状況なんですが、
海賊の
件数がふえております。減っておりません。これは、
先ほども話されたように、
母船が、大きな船が捕まって、
母船からということで、
海賊の
行為が減らないと私は思っております。その中には、
先ほどのように、やむを得ず、不本意ながら、
人質になって、おどされて
運航作業をさせられているというのも現実です。
この
モンスーンシーズンが十月に終わった後、また
海賊行為がふえるのではないかと非常に危惧しております。
それで、
海賊行為の
増加、それから
広域範囲に広がっているということで、より効率的に監視、追撃ができるように、そして多くの船を守っていただくために、ぜひとも
自衛艦追加派遣、または
補給艦の
追加派遣を
お願いしたいと思います。
日本人
船員含めて
乗組員みんな頼もしく思うし、国に残してきている
家族の心配も和らぐのではないかと思います。ぜひとも
お願いしたいと思います。
実際に
襲撃を受けている船からの
VHF、これは
船舶電話なんですけれ
ども、
護衛艦に助けを求めている悲痛な声が頻繁になっているということを聞いております。
私も、船をおりてからもう十一年になるんですけれ
ども、現役のときに、
スリランカ・コロンボ港の沖で
沖待ちをしているときに、同じように、私はそのとき、いかりを入れずにエンジンをとめて潮に流していたんですけれ
ども、この地域はかなり
襲撃が多いという警告は受けていました。ちょうど
インド系の
タミール人のゲリラが多かったときなんですけれ
ども、
本船はライトをたくさんつけて、それから
見張りを増して、定期的な巡見をしておりました。
そして、ミッドナイトごろに、近くにいた船から、
VHFで
ポートオーソリティーに、今、
武装した賊が乗り込んできた、助けてほしいという
連絡をしているのが聞こえてきました。
ポートオーソリティーは、そのままいろ、今から
スリランカの海軍が向かうから、ただし抵抗はするなよということを言って、その後応答がなくなりました。その後どうなったか、ちょっと確認はしていませんでした。
それからまた、先日、ある
情報ソースから、
ソマリアの
海賊に
人質になっている
デンマークの船の
船長、
機関長、
一等航海士それから
甲板長が
機関銃を突きつけられて、囲まれて、悲痛な、悲壮な
訴えかけをしている
映像がありました。
その船は、ことしの一月から捕らわれている、非常に暑くて食事もとれない、
衛生環境が非常に悪い、それから、精神的に参っています、
家族とも一度も
連絡をとれていない、
お願いですから
身の代金を払ってください、自由にしてください、助けてください、
お願いですという
映像でした。非常に卑劣な
行為でした。
武器もかなり強力化してきておりまして、聞くところによりますと、
イスラム原理主義者への
上納金と引きかえに
武器を手に入れているということも聞いております。
本船の方も、
先ほど芦田会長が言われたようにいろいろなことをやっております。
見張りは十分にやっておりますし、サーチライト、
夜間暗視装置。それから、
レーザーワイヤ、
先ほども言いましたが、普通の
有刺鉄線よりもっと、さわるとすぐ手が切れちゃう、ひ
げそりの刃のようなものを船の周りにずっと回しております。それから、高水圧の
放水機、消防の
放水のああいうものですね、高圧でやります。それから、弾が当たったときガラスが飛散しないような飛散
防止のテープもガラスに張っております。防弾チョッキ、それから
防弾ヘルメットも用意しております。
それと、
先ほど言ったシタデルという、エンジンルームそれから操舵機室、この辺に囲いをしっかりつくって内側からロックできるようにする。賊に侵入されたときに
全員がそこに立てこもる。大体三日間ぐらいをめどにそこで立てこもって、通信装置もしっかり設置して、
護衛艦の
到着を待って、それから交戦の間はそこに隠れているということで、かなりの効果があらわれている船も何隻かあります。
操船の方については、スピードのある船は逃げられるんですけれ
ども、余りないような船についても、とにかく増速、できる限りスピードアップしたり、それからジグザグ走行して振り切るということもトライしているそうです。
それから、現在、あのエリアは漁船もかなり出るんですけれ
ども、ただ、漁船が、その中に突如として
海賊に早変わりする船が紛れていたりするそうです。
この
アラビア海は、私も
ペルシャ湾に何度も行ったんですけれ
ども、
ペルシャ湾の暑い中で積み荷をして、
ホルムズ海峡をやっとこ出てきて、
アラビア海を
航行するんですが、このあたりから
スリランカの沖ぐらいまでは一息入れるエリアなんです。その後また、マラッカ、シンガポールと難所が待っているんですけれ
ども、この本当に一番ほっとする
海域。
それから、ヨーロッパからのコンテナ船も、
スエズ運河を抜けて、
紅海を抜けまして
アデン湾、それからソコトラ島という島があるんですけれ
ども、そこを過ぎると本当はほっとするエリアなんですが、現実はそこが一番注意しなくちゃいけないエリアになってしまいまして、船も非常に大変な
状況になっております。とにかく小さな船を見ると、漁船なのに
海賊船、すぐそういうことでストレスがたまっていくということです。
それから、週刊タイム八月第一週号に、タイムの記者が
ソマリアの
海賊のリーダー、親分と会って話を聞き出したという記事がありました。
ソマリアの
海賊、とにかく今、何人捕まえても、次から次に
ソマリアの若いジェネレーションの人たちは
海賊になりたいということで控えているということです。
このリーダーは、我々はどんなことをされても
海賊行為はやめないぞということを言っているということです。
もう皆さん御存じかと思うんですが、
ソマリアの沖でほかの国の漁船が魚を乱獲したり、産業廃棄物、ごみをどんどん捨てまくった、これは非道な、大きな罪だということを言っておったということです。それから、
母船として捕まえた場合は、
乗り組みに、命をとられるか命令に従うかどっちだ、抵抗する場合はすぐ殺すぞとおどしているそうです。
ソマリアという国をこれから本当の国らしくしていくにはどうしたらいいかということは悩ましいことです。それから、
先ほどもあれなんですけれ
ども、
日本の経済は船なしでは成り立ちません。その船を安全に
運航するのは我々船乗りです。
ロケットランチャーをいとも簡単に発射したり、凶暴化している
海賊は、
現場の
船長、
乗り組みにとっては非常に脅威です。彼らの命を守るためにも、ほとんどの
船長の
意見、
要望は、自衛をできる装備を持ったガードの
乗船です。
乗り組みの毎日のストレスは非常に大変です。ぜひ、
日本籍船への
武装ガードを乗せられるように
お願いしたいと思います。
この場合、いろいろ法律の
整備、改定が必要になるかと思いますが、早急な対応を
お願いしたいと思います。
外国人船員の中には、
ソマリア沖へ行く船には乗りたくないと、他の国の
会社に転じていく船乗りもかなり多いです。
ソマリアの
海賊行為の根本的原因は、貧困と打ち続く部族間の内戦、統一政府の確立が進まないことにあると思います。自助努力もありますが、
国連を通して一日も早く国際的な
取り組みの
強化を進めていただきたく思います。
あと、
日本船長協会は、平成十二年から、
船長母校に帰るということで、子供たちに海と船を語るという活動を進めてきました。ことしで十一年目になります。
全国の小学校、中学校を訪問しまして、生徒に海と船のことを話してまいりました。海と船に興味を持ってもらう活動です。既に全国で九十五校を回り、約一万九千人の生徒に聞いてもらいました。
その講義の後、質疑応答をするんですが、必ず、今でも
海賊はいるんですかという質問があります。それの答えは、残念ながらいますという答えになります。しかし、君たちが船に乗るころには
海賊はいなくなっているよ、だから安心して勉強してくださいという答えにしています。これは本当に
実現させないといけないと思います。これは我々の役目だと思います。
最後に、もう一度
要望を申し上げたいのは、まず、
海賊襲撃エリアの拡大に対応して、
護衛艦の
追加派遣、または
補給艦の
派遣を
お願いしたいと思います。それと、
日本籍船への
武装ガードの
乗船の
実現化。それから三番目に、国際的に、
海賊問題の根本
解決へ向けて、IMO、国際連合を通して活動を積極的に進めていっていただきたく思います。
以上です。ありがとうございました。(
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