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廣渡参考人 廣渡でございます。
私は、
総合科学技術会議の有識者
議員になってまだ何週間というところでございまして、
日本学術
会議の会長、エクスオフィシオ
総合科学技術会議の
議員ということで総理から指名を受けております。したがって、私は、第四期の
基本計画の内容等について、これをディフェンドするという
立場からではなくして、
日本学術
会議の会長として、第四期の
計画をやや外から眺めた、そういう論点についてお話し申し上げたいと思います。
学術
会議については、皆さん御承知のとおりだと思いますけれ
ども、一九四八年の
日本学術
会議法によって設置されまして、一九四九年の一月から活動を開始し、本年、六十二年目ということでございます。
法によって
課題や権限が明定されております。我々の
課題は、
科学者コミュニティー、
日本の
科学者を内外に代表して、その知を結集して、市民、産業、
行政に学術の
立場から助言、提言をするというのが法によって与えられた
課題でございます。したがって、法は、学術
会議に
政府への勧告権という強い権限を与えているのは皆さん御承知のとおりでございます。
直近の改正は二〇〇四年でございまして、二〇〇五年度から新しい体制に入っておりますが、従来の国立
大学七学部の編成に
対応して七つの部によって構成しておりましたものを、三つの部に編成し直しました。人文・
社会科学、生命
科学、理学・工学、この三つに大くくりしまして、二百十名の会員と約二千名の
連携会員が学術
会議のマネジメントと審議活動に参加をしております。
同時に、学協会もまた、学術
会議がその対象とする
科学者コミュニティーの重要な担い手でございますので、学術
会議の協力団体として、現在約千八百の学協会を協力団体として指定して、ネットワークをつくって活動しているところでございます。
ただ、
一つ問題なのは、学術
会議の会員や
連携会員は顕著な学術上の功績というものを選考の基準、唯一の基準にしておりますので、どうしても若い方を会員や
連携会員に迎え入れることができません。三十代の会員がおりません。
連携会員も、三十代、一、二というところでございますので、これでは
科学者コミュニティーの中で次世代を担う若手
科学者の意思やニーズを十分に反映することはできない、キャッチすることはできないので、現在、クオータ制、つまり一定の数を三十代の若手
科学者から登用して学術
会議の中にインテグレートして、そのニーズや意思というものを全体の学術
政策の中に
位置づけるという
方向で、若手アカデミーと称する構想を
推進しているところでございます。
総合科学技術会議と学術
会議の
関係については、
総合科学技術会議が設置されましたときから我々としては議論をしておりますけれ
ども、
日本の学術
政策、
科学技術政策を
推進する車の両輪というように我々は
位置づけて活動しているところでございます。
東日本大震災に
対応する提言、助言活動については、これはレジュメの二のところで細かく書いておりますので、ここは省略させていただきますけれ
ども、学術
会議のホームページですべて緊急提言等をアップしておりますが、先日の読売新聞の記者のインタビューで、十分にやったというふうにお
考えですかと聞かれました。
我々としては、かつてなくインテンシブな活動をやってまいりました。私自身もそのように自覚しておりますけれ
ども、本当に
国民から求められている学術の
役割というものにこたえているかどうかというように問い詰めると、まだまだ足りなかったところがあるのではないか。まだこの問題は終わっておりませんので、現在進行形でございますので、一層努力をして
国民の期待にこたえていきたいと思っております。
第四期の
計画について、我々の
立場から拝見しますと、特に第五章の「
社会とともに創り進める
政策の
展開」に示されている
国民と
科学技術のコミュニケーション、これはほとんど、我が
日本学術
会議の
課題とそっくりそのまま一致するものであるというふうに
考えております。
つけておりますポンチ絵をちょっとごらんいただきたいと思います。私は文系の人間なので、すべての事柄が図によって示すことができるというふうには全く
考えておりませんけれ
ども、しかし、図は一定のイメージを鮮明に訴えることができます。
実は、このポンチ絵は、七月の七日に
日本学術
会議の機能
強化という文書を採択して、総会で承認をいたしました。二〇〇四年の
改革以降の六年間を総括して、これから
国民の期待に一層こたえるための
日本学術
会議のあり方について、機能の点検をし、改善すべき論点を整理したものでありますけれ
ども、その際に、その文書の一番最後につけました図でございます。
科学者コミュニティー約八十四万人の
日本の
科学者を代表する
日本学術
会議、これは自分たちのことでありますので、
日本学術
会議が真ん中に据えられているわけですけれ
ども、
役割は、一言で言えば、知の循環の駆動軸としての
日本学術
会議、このように
位置づけております。
日本学術
会議は、知を生産するところではございません。知を生産する現場があり、
科学者はそこで日夜さまざまな知の生産を営んでいるわけですけれ
ども、それを受けとめて
社会、
行政に循環をする、その駆動軸であるという
位置づけでございます。
当然、国際的な発信もこの中に入りますし、
科学政策、学術
政策にかかわるさまざまな国内の諸機関との
連携も踏まえて、
日本社会全体の知の循環の駆動軸として
日本学術
会議を
位置づける。それにふさわしい活動を
展開しようというように
考えているところでございます。
したがって、この第四期の
計画の第五章の
国民と
科学技術のコミュニケーションという
課題にこたえる
役割を我々は背負っているというように
考えているところでございます。
具体的には、お手元の見直し案の四十二ページのところには、
日本学術
会議を想定した具体的な指摘が行われているところでございます。
ちょっと申し上げますと、「国は、学協会が、
研究者による
研究成果の発表や
評価、
研究者間あるいは国内外の
関係団体との
連携の場として重要な
役割を担っていることを踏まえ、そうした機能を
強化するとともに、」つまり、学協会の機能を
強化するとともに、「その知見や
成果を広く
社会に普及していくことを期待する。また、国は、
研究者コミュニティーの多様な
意見を集約する機能を持つ
組織が、
社会と
研究者との橋渡しや、情報発信等において積極的な
役割を果たすことを期待する。」ということでございますので、私たちは、その期待を担って、これからも活動の質の向上と幅の広がりを追求していこうと
考えております。
学術からの提言というのは大変難しい性格を持っておりまして、我々は、学術から発信する声は、ワンボイス、ユニークボイスであることが必要だというふうに
考えております。
学術からさまざまな相矛盾する声が出ますと、それは
国民にとって、もちろん
国民の
考える素材にはなるかもしれませんけれ
ども、
国民の議論をいたずらに混迷に導くことになりかねないので、我々はユニークボイスを形成することに努力を傾けたい。ただし、これは、
一つの選択肢だけを学術の
立場から
国民に提言するわけではなくして、幾つもの選択肢がある。こういう提言も
一つのユニークボイスのあり方ではないかと
考えておるところでございます。
最後に、第四期の
計画については、二〇〇九年の十一月に「第四期
科学技術基本計画への
日本学術
会議の提言」というものを
総合科学技術会議に御
提案いたしました。今回の案には、我々の
考え方も多く取り入れていただいております。
全体的に見ますと、
政策的に、ある
分野を
強化し、ある
課題を追求していこうという、これはある意味ではサイエンス・フォー・ソサエティー、
社会のニーズ、
社会の期待にこたえて、ある
分野の
強化やある
課題の
推進をする。それと同時に、これは
基礎研究と言いかえてもいいかもしれませんけれ
ども、サイエンス・フォー・サイエンス。この
二つの側面は、
科学の
基本的な、本質的な契機でございますので、この
二つの側面をバランスよく結合させて追求していくことがとても重要なことだというふうに
考えております。
この
総合科学技術会議に提言いたしました
日本学術
会議からの第四期
基本計画への
提案は、実は二〇一〇年の四月の総会で「
日本の展望—学術からの提言二〇一〇」というものを採択いたしましたが、内容的には、それに基づいております。
この「
日本の展望—学術からの提言二〇一〇」は、本体の報告は五十ページの報告ですけれ
ども、この報告をつくるに際して、四十四のレポート、各
分野からのレポート、それからグローバルな
課題に
対応したさまざまなテーマに関するレポートを踏まえまして、五十ページの「
日本の展望—学術からの提言二〇一〇」というものを作成いたしました。毎日新聞の記者がレポートの総ページを数えましたら、千二百九十五ページになったそうでございます。私は全部読みましたけれ
ども、千二百九十五ページ、全部読んだ会員がどれだけいるかというのは、ちょっと心配なところでございます。
こういう
ボトムアップで、現場の
科学者のさまざまなニーズや
意見、それから将来の見通しというものを結集して、その上で中期的な学術からの展望を示したものがこの文書でございます。これは、六年ごとに改定しながら、
日本の
科学者コミュニティーに対する
一つのガイドラインとして提起をしていくというシステムをつくってございます。したがって、
科学技術基本計画は五年サイクルで回っておりますけれ
ども、これとうまく
対応させながら、
ボトムアップの
科学者の
意見を国の全国
計画の中に組み入れていくということが必要ではないかと
考えております。
最後に、もう一言だけ申し上げさせていただきますと、この「
日本の展望—学術からの提言二〇一〇」をもとにしまして、二〇一〇年の八月二十五日に、
政府に対して勧告を行っております。「総合的な
科学・技術
政策の確立による
科学・技術
研究の持続的振興に向けて」という勧告を行いました。
一年以内に
政府から何らかの回答をいただけることになっておりますけれ
ども、勧告の骨子は、レジュメに書きましたように、
二つございます。
一つは、
科学技術基本計画の根拠の
基本法であります
科学技術基本法は、その
施策対象から、人文
科学のみに係るものを除いております。したがって、
基本的には、
科学技術基本計画は、自然
科学を対象にした国の振興
計画でございます。
日本学術
会議は、これに対して、人文・
社会科学をも学術
政策の対象として国できちんと
位置づけて、総合的な学術振興
計画を
立案すべきである、したがって、その点において、
科学技術基本法の改正を希望するというのが第一点でございます。
それから、これは
総合科学技術会議の
組織改編にかかわりますけれ
ども、これに関連して、今後の、我々がイメージするところの学術の総合的な振興
計画の
立案に際しては、
日本学術
会議の
意見を徴するという
制度をぜひ設けてほしい。
このことによって、
ボトムアップと
トップダウンの、先ほど
白石委員がおっしゃいましたように、戦略性とリスクヘッジというふうに言いかえてもよいかもしれませんけれ
ども、物事には絶えず
二つの、これは相互に矛盾するけれ
ども、しかし必ず相互にバランスよく
二つの要素を組み入れなければ物事に適切に対処できない、たくさんのそういう場面や物事、問題がございますけれ
ども、特にそういう点に留意をして
政府に勧告をさせていただいたところで、回答を待っているというところでございます。
以上でございます。ありがとうございました。(
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