○長沢広明君 公明党の長沢広明です。私は、公明党を
代表して、ただいま議題となりました
財政演説に対して
総理に
質問いたします。
その前に、今月一日、
ロシア大統領が
我が国の了解なしに
国後島を
訪問しました。言うまでもなく
北方領土は
我が国固有の
領土であり、今回の
訪問で旧島民の方々を始め多くの関係者が深く傷つけられました。
日本政府として厳重に抗議すべきであります。
この問題が、尖閣諸島をめぐる問題にも表れたように、
民主党政権の
外交に対する無
責任さに起因していることは間違いありません。APECでの
対応などを含めて、今後この問題に
内閣としてどう対処する
考えか、
総理の
見解を求めます。
さて、
総理、あなたは所信
表明演説で、今
国会の最大の
課題は
補正予算であると言明されました。しかし、
補正予算が
提出されるまで開会から既に一か月が経過してしまいました。待ったなしの厳しい
経済情勢を本当に
認識されているのでしょうか。米国やEU諸国など各国の
政治指導者は、一日も早い
経済不況からの脱却に向けて、血眼になって
対策を議論し、実現へ向けて奔走しているのとは裏腹に、
危機感が欠如し、余りにものんきと言わざるを得ない
菅内閣の姿勢には驚きを禁じ得ません。
参院選後の
政治空白の間にも、
円高、株安が
進行、
地方経済は縮小。収入が減り職を求める若者、
国民や、明日の仕事がなく資金繰りに苦しむ中小企業の悲鳴のような声があなたの耳には届かないのでしょうか。
日々刻々と危機にさらされている
国民の苦しみの声を、
総理は真剣に受け止めなければなりません。本当に
責任あるリーダーほど、小さな声に耳を澄まし、容易には気付かないような暮らしの細部にまで真剣に心を砕くべきなのであります。
ようやく今になって
補正予算を
提出するのであれば、そもそも何のために
臨時国会を十月一日に開いたのか。一体この間、
菅内閣は
国民の生活を守るために何を行ったというのでしょうか。置き去りにされたのは
国民生活であります。
せめて、
政治と金をめぐる問題など、
国会審議の障害となり得る
課題を丁寧に取り除いておこうという
考えなのかと
思いきや、
政府・
民主党は何一つ
課題を乗り越える決断もせず、ただただ先送りを決め込んでいるだけであります。
総理の
政治姿勢そのものが問われています。
総理の有言実行、クリーンな党を目指すという
言葉は、やはり空言だったのかと思わざるを得ません。だとしたら、
総理はこの
言葉を撤回すべきであります。お答えください。
重ねて言えば、
総理は所信で、誠実に議論を尽くす
熟議の
国会にしていくとも言われました。そう言いながら、一方で、
衆議院での
補正予算案の
審議入りに際しては強権的な
国会運営が行われようとしたことには、猛省を促しておきたいと
思います。
一方で、
民主党内ですら議論されていなかったTPP、環太平洋
経済連携協定への参加について、あなたは所信でいきなり
表明し、先ほどの
民主党議員の
質問にも見えるように、
民主党内が紛糾しているではありませんか。重要な基本方針を打ち出すときは、まず自らの党内で
熟議しておくことが先決なのではありませんか。
参院選での消費税増税論議の失敗をあなたはもうお忘れですか。
いずれにせよ、今、
言葉だけで中身のない、
総理の安易、安直な
政治姿勢が
日本国全体を混乱と失望に陥れている。このことをまず厳しく指摘しておきたいと
思います。
さて、今般
提出された
平成二十二
年度補正予算案には三つの疑問があります。
第一は、
補正予算の中身が本当にデフレ脱却、
景気を
回復軌道に乗せるためのものになっているのかという疑問であります。
この度
提出された
予算案は、各省庁の
政策の寄せ集めに見えます。更に言えば、各党のアイデアの一部を
項目だけでも盛り込めば賛成するだろうという、たかをくくったような内容とも言えます。
そもそも、
民主党政権からは、当面のデフレ脱却に向けた道筋がいまだ示されていません。明確な中長期の
財政健全化、
成長戦略の実行プロセスの具体的な形も見えないままであり、今回の
補正予算の位置付けもあいまいであると指摘せざるを得ないのであります。
総理の
認識を伺います。
第二は、
予算規模のごまかしがなされているという疑問です。
国費ベースで五・一兆円の
対策と豪語されていますが、実際には程遠いものです。具体的には、
地方交付税の一・三兆円、今
年度活用分はあくまでも三千億円であり、残り一兆円は来
年度予算に回されています。結局は来
年度の
地方財政計画の中に組み込まれるだけで、
補正で緊急に
実施される
経済対策とは言えません。さらには、来
年度予算の
公共事業の契約の前倒し二千四百億円、すなわちゼロ
国債であります。結局は来
年度当初
予算の枠内で行う
公共事業にすぎません。新たに追加的な需要を生み出すものではない。
つまり、真正の
補正予算の
規模は五・一兆円ではなく、四兆円にもはるか満たないことが明白になります。
総理、いかが釈明されますか。
第三は、
政策の一貫性についての疑問です。
具体的に指摘しますと、私たちが政権与党だった
平成二十一
年度第一次
補正予算に
地域医療再生基金を盛り込みました。しかし、
民主党政権は、この
予算を事もあろうに
事業仕分で七百五十億円分も
執行停止してしまいました。その結果、産科・小児科医の確保や地域医療の再生を計画していた自治体が大打撃を受け、多くの自治体で計画の変更を余儀なくされるなど大混乱を招きました。
ところが、今般の
補正予算では、いったん自ら減らした基金を今度は大幅に拡充しているではありませんか。昨年は
執行停止、今回は拡充。
地方の苦労は一体何だったのか。まさに
民主党政権の場当たり的な
対応が引き起こした混乱そのものであります。これは明らかな
政策選択の失敗を示しています。
言い訳や弁解はもう必要ありません。
政府として、計画変更を余儀なくされた自治体に対し謝罪をすべきであります。地域の医療サービスに支障を来し、地域医療の充実を阻害した
責任を取るべきであります。
総理、
見解を求めます。
次に、
補正予算の中身について具体的な問題に言及します。
まずは、
総理が一番重要視されているはずの
雇用対策です。
現今の厳しい
経済状況の中で、
国民生活に直接
影響を与えているのが
雇用問題であることは言うまでもありません。今回の
補正予算案にある新卒者支援や
雇用調整助成金などセーフティーネットの強化は、今、目の前の不安に対しての対症療法が中心です。もう一方の
雇用を生み出す支援策がなくては、根本的な
対策とはなり得ません。
公明党の
緊急経済対策では、
雇用創出を柱とした
雇用対策に三千百億円、需要創出のための地域活性化臨時
交付金の創設に一兆二千億円を提案しました。
一方、
政府は、重点分野
雇用創造
事業で一千億円、
地域活性化交付金の創設で三千五百億円。余りにも
規模が小さ過ぎます。本気で
雇用をつくり出そうとする
決意、熱意が全く感じられません。
また、本年六月に
政府が発表した新
成長戦略で十年間に三百万人との
目標を掲げたジョブ・カードを
事業仕分で廃止としました。政権で推進すべく掲げた
政策を同じ政権が廃止するという前代未聞のちぐはぐぶりにはまさに驚きです。あきれます。困難を抱える若者の
雇用に本気で取り組むのであれば、今回の
補正予算案にもジョブ・カードの推進による
雇用対策を打つことがあってもいいところを、事もあろうに
事業廃止とは、余りにも
政策の一貫性がない。
本
予算案の
雇用対策は、
戦略もなければ
方向性もない場当たりの
対策と指摘せざるを得ません。本格的な
雇用創出へ向けて
予算と中身はこれで十分であると本当にお
考えなのか、
総理、御
答弁いただきたい。
次に、中小企業支援です。
円高、株安に伴う
景気の不透明感は、年末、
年度末の資金繰りにも不安を与えています。本来、緊急保証制度の延長や保証枠の拡充、中小企業金融円滑化法の延長など、金融支援を大胆かつ切れ目なく
実施すべきです。また、法人税率の引下げなど、
我が国企業の競争力を高めるための施策とともに、成長分野に取り組もうとする中小企業を支援するため、官民ファンド、産業革新機構もフル活用してリスクマネーの提供を積極的に行うべきです。
しかし、今回の
予算案には、中小企業支援への
戦略、
方向性が見えません。これでは民間からの投資を呼び込むことも困難です。どこに
政策を集中させ、需要をつくろうとしているのか、
政策の予見性が欠如しています。この
予算案で、
総理は、本当に
景気を
回復軌道に乗せ、中小企業を元気にできると思われているのでしょうか。中小企業支援こそが
日本経済を支える重要な柱であります。全力を傾注すべきです。
総理の
見解を求めます。
急激な価格下落に見舞われている二十二年産米の
対応について伺います。
今
年度産の米価格が、統計開始以来、最安値を記録しました。
米価下落の要因には持ち越し在庫による需給の不均衡もありますが、JAからの概算金や市場価格の傾向を見れば、
民主党の
戸別所得補償制度による補てん分がそのまま価格の下げ圧力になっていることは間違いありません。
米価の下落幅が二十二
年度予算で想定されている所得補償の補てん分を上回る地域もあり、収入減少は免れない
状況です。しかし、
政府は今回の
補正予算案にも米価
対策を盛り込んでいない。これでは農家の不安は払拭できません。米三十万トン程度の緊急買入れなど出口
対策を早急に講ずるべきと
考えます。
総理の
見解を求めます。
今年は、夏の記録的な猛暑、酷暑により、農家の方々は難しい営農を迫られました。気候変動による
異常気象は今後も予想されることから、経営安定
対策の強化は急務と言えます。
具体的には、共済制度への加入促進に加え、畑作物共済の
対象作物の拡大、補償単価の見直しなどです。稲作と麦を
対象としている農作物共済制度についても、支払基準の見直しや、ニーズが高まっている品質方式への加入促進など、地域の実情に合った総合的な経営安定
対策の強化を図るべきです。
総理の
見解を求めます。
あわせて、農家の
戸別所得補償制度について伺います。
民主党は、その
目的を農業の多面的機能の維持としていますが、その手法である生産コストの補てんは、現在
WTO農業交渉において
削減対象となっているゆがんだ補助金として識別される
可能性が極めて高い
政策です。
このまま所得補償の
予算だけを増大させれば、
貿易交渉においては国際的に孤立し、国内では、米のモデル
事業で明らかになったように、急激な価格の下落と
財政負担の増大を助長するだけです。農家の生産意欲は低下し、結果として多面的機能は維持されず、まじめな農家の
努力は報われません。
目的と手法に矛盾を来している所得補償制度は見直し、国際ルールにも通用する直接支払制度へ転換すべきと
思いますが、
総理の
見解を求めます。
今回の
補正予算に、公明党が
主張してきた子宮頸がん予防ワクチン、Hibワクチン、小児用肺炎球菌ワクチンの接種を促進するため、特例
交付金として一千八十五億円が盛り込まれましたが、その内容はまだ不十分です。
各都道府県に基金を設置して国が二分の一を負担し、残り二分の一を市町村が負担する、この市町村の負担分も国が交付税で措置するとしていますが、現実的には、
財政の厳しい自治体が多いため、予防接種の
実施自体が危ぶまれてしまいます。所得制限も
地方の
判断に任せるという。果たして、命にかかわるワクチン接種が自治体任せでよいのでしょうか。命に境界線があっては断じてなりません。医療の地域格差が生まれないよう、国が本腰を入れてこの
事業を後押しすべきです。今回のような二年間だけという特例措置ではなく、将来的にはワクチン接種は恒久的な制度にすべきであります。
総理は、十月十五日の参院
予算委員会で我が党の松あきら副
代表の
質問に対し、ワクチンによる予防接種を重視したいという
考え方は同じだ、できるだけ手厚い形の
対応が必要だと思っていると
答弁されました。
総理、有言実行と言うのなら、今こそ強い
リーダーシップを発揮して、この
予算で女性と
子供の命を守るという覚悟を示すべきではありませんか。
答弁を求めます。
最後に、
政治と金に対する
総理の
政治姿勢について確認します。
公明党は、
小沢氏の
証人喚問も含めて、
国会での
説明責任を果たすよう求めてきました。
総理は今
国会の
答弁で、場合によれば御
本人の意向に沿わないでもやらざるを得ないというときには党として
判断をしていきたいと明らかにされました。
国会も半ばに差しかかりました。この
答弁を誠実に有言実行されるときは今しかないと私は確信します。
もう一度確認します。
総理自ら言われたとおり、
民主党代表として
小沢氏の
証人喚問を行うことを決断し、
説明責任を果たすよう強く指示すべきであります。自浄能力を発揮すると明快に
決意を示していただきたい。
民主党の企業・団体献金の解禁についても指摘をしておきます。
総理自身、所信
表明演説で、金の掛からないクリーンな
政治の実現、
国民の強い要望です、私
自身の
政治活動の原点ですと高らかに宣言されています。にもかかわらず、これまで
民主党が政官業の癒着の温床だと指摘してきた企業・団体献金を再開するとはどういうことですか。個人献金にシフトしていく具体策も示さずに企業・団体献金の受領を
復活させるというのは、だれが見ても
政治資金の改革に後ろ向きだと言うほかないではありませんか。
総理の
認識を改めて伺いたい。
総理、残念ながら、この
予算案からは、急激な
円高やデフレを克服するための強靱な意志と
国民生活を立て直そうとの気迫が私には伝わってきませんでした。
そして、
総理、
国民の
信頼なしにはどのような
政策も改革も本当の成果を上げることはできません。民主主義の土壌とも言える
国民の
政治に対する
信頼を取り戻すことが何より重要であり、そのためには、
政治家自らが自らを厳しい立場に置き、清潔な
政治を実現していくべきであります。それが
直近の
民意であるさきの
参院選などで示された
国民の率直な声であったのではないでしょうか。
公明党は、
国民の声を真摯に受け止め、
国会における真剣な議論を通して
国民生活を守り、国益を守るために、清潔な
政治を実現するために全力で闘うことをお誓い申し上げ、私の
質問を終わります。(
拍手)
〔
内閣総理大臣菅直人君
登壇、
拍手〕