運営者 Bitlet 姉妹サービス
使い方 FAQ このサイトについて | login

2010-10-08 第176回国会 参議院 本会議 第3号 公式Web版

  1. 会議録情報

    平成二十二年十月八日(金曜日)    午前十時一分開議     ━━━━━━━━━━━━━議事日程 第三号   平成二十二年十月八日    午前十時開議  第一 国務大臣演説に関する件(第三日)     ━━━━━━━━━━━━━ ○本日の会議に付した案件  一、日程第一  一、裁判官弾劾裁判所裁判員、同予備員裁判   官訴追委員及び同予備員辞任の件  一、裁判官弾劾裁判所裁判員等各種委員選挙      ─────・─────
  2. 西岡武夫

    ○議長(西岡武夫君) これより会議を開きます。  日程第一 国務大臣演説に関する件(第三日)  昨日に引き続き、これより順次質疑を許します。山口那津男君。    〔山口那津男君登壇、拍手〕
  3. 山口那津男

    山口那津男君 私は、公明党代表して、ただいま議題となりました菅総理所信表明演説に対し質問します。  菅総理、あなたが総理に就任してはや四か月がたちました。この間、参議院選挙が行われたとはいえ、菅内閣が事実上開店休業状態に陥っていたと断ぜざるを得ません。にもかかわらず、今回の所信表明では、総理は声高に有言実行内閣と言われた。今やそれを信じる人がいるとでもお考えですか。また、その根拠はどこにあるのかと強く問いたい。民主党政権が今置かれている状況をあなたは全くお分かりになっていません。  例えば、民主党が昨年の衆院選で掲げたマニフェストの問題です。民主党政権の座に着いてからたった一年で、掲げたマニフェストの旗はぼろぼろの状態であります。言ったこととやっていることがまるで違うということに多くの国民が気付き、失望が広がっている。  就任直後の余りにも唐突な消費税増税発言もそうです。選挙前で耳目を引く効果をねらったものの、その詳細、工程を問われるや、一転して回答不能になる混乱ぶりをさらけ出しました。本来、社会保障の全体像を示した上で将来負担について国民にお願いするべき重大な問題のはずです。それを軽々に扱う態度国民を愚弄していると言って過言ではありません。  そして、何より政治と金の問題であります。これは民主党自らがまいた種であります。自らがそれを解決し刈り取る努力なしに、国民政治不信を払拭できようはずがありません。しかし、いまだに国民に対する説明責任を果たそうとも、再発防止のための措置をとろうともしない。まさに言語道断であります。  こうした余りにいいかげんな民主党姿勢を厳しく問うために、私は、さきの参院選民主党政権に対してレッドカードを突き付けました。結果として、参院選民主党は大敗を喫したのではなかったでしょうか。  加えて、四か月もの政治空白であります。急激な円高に対する対策の遅さ、鈍さ。GDPが減速し踊り場入りする懸念が強まっていたにもかかわらず、中小零細企業などからの悲鳴にも似た声にも反応せず、指をくわえ見守るだけ。重大な外交問題が勃発しても、党を二分する醜い代表選を繰り広げることに終始してきた、その責任は極めて重大であると言わざるを得ません。  あなたが今回の所信表明でまず国民に対して表明すべきだったのは、政治主導という名の強権政治の手法や経済無策への反省、そして何よりも、いまだに解決していない政治と金問題に対する謝罪の弁であるはずであります。今からでも遅くはありません。国民にまず率直におわびすることから再スタートを切るべきだと思います。総理答弁を求めます。  さて、小沢代表政治と金の問題をめぐり、九月十四日に東京第五検察審査会起訴すべきとの二回目の議決を行いました。  司法のプロである検察の不起訴という判断を覆し、十一人の市民で構成された審査会が、あえて法廷での決着を望み、再び強制起訴とした議決総理はいかに受け止めているのか。国会議論決定いただくこと、推定無罪国会では一定の慎重さをなどという総理並びに民主党幹部発言は、政治と金の問題に対する民主党の感度の鈍さを象徴しています。  何よりもまず小沢代表本人が自発的に国会の場で説明責任を果たすことは当然のこととして、それがなされないならば、クリーンな政治主張した民主党代表として、証人喚問も含めて説明責任を果たすよう指示すべきです。あわせて、鳩山総理に対しても、一度は国会で約束した関係資料の公表に向け、リーダーシップを発揮してはどうですか。  昨日、衆議院における我が党の井上幹事長質問に対し、総理は、鳩山総理については、総理辞任という大変重い形で政治責任を取られたと答弁し、小沢代表については、国会で御議論、御決定をいただくべきもの、御本人が自ら判断対応されることが望ましいと答えました。連日繰り返される無責任答弁、本当に情けない限りです。一体どこがクリーンな政治なのか。  かつて総理は、野党時代国会の場で、判で押したような答弁を繰り返し、実態解明指導力を発揮することもなく、ひたすら不都合な事実を隠ぺいし、言い逃れをしようとすると追及したではありませんか。  総理、これはあなた自身言葉です。翻って、どうですか。まさに今のあなた自身姿そのものではないですか。事ここに至っても、役職を辞任したことは政治家として最大級のけじめとうそぶいているが、何の課題解決にもなっていないではありませんか。  政治と金の問題は、民主党執行部が自らまいた種です。自らが刈り取るべきです。それでこそ自浄作用です。国会で御議論いただきたい、本人判断対応するのが望ましいといった他人任せの答弁ではなく、民主党代表としてどうするのか、民主党としての自浄作用をどう果たすのか。あなたは民主党のトップではないですか。先日の所信表明演説でも民主党代表としての主張を表明されているのですから、今こそ民主党代表としての責任ある回答を求めたい。  さらに、公明党はその課題解決のために、秘書がやったとの政治家の言い逃れを許さない、政治家監督責任強化する政治資金規正法改正案提案してまいりました。私は、六月十五日の代表質問、八月五日の予算委員会と重ねて総理に対し実現を訴えてきましたが、一向に前向きに取り組もうとされません。自民党は政治家監督責任強化主張されており、民主党に賛成していただければ改正実現できるのです。この臨時国会で直ちに改正実現させるお考えはありませんか。  菅内閣経済政策、特に円高対策に関して質問します。  総理は、迷走する民主党政権による経済無策が、国民生活第一どころか、国民生活を破壊していることをどこまで深刻に受け止めているのでしょうか。  振り返れば、今年八月、急激に円高が進行しつつある中で、緊急に対策を打たないといけない、輸出関連を始めとした製造業は壊滅的な打撃を受ける、産業が空洞化し、雇用はもちろん日本経済土台が揺らいでしまうとの危機感日本全体に蔓延していました。ところが、政府与党は何していたのか。代表選挙をめぐる内輪のお祭りにうつつを抜かし、本来果たすべき日本国総理大臣としての政を完全に放棄してきたのではありませんか。  私は、今日の急激な円高を招いた最大の要因は、菅総理自身の何もしない不作為であると指摘しておきたい。総理円高対策が遅かったと反省されませんか。答弁を求めます。  日本銀行は、五日に追加的な金融緩和政策の実施を決定しました。デフレ脱却まで実質ゼロ金利政策を継続することや、不動産投資信託などよりリスクの高い金融資産を買い入れるなど、かなり思い切った政策であります。私は、今般の決定を評価しますが、必要とあれば、買入れ資産対象拡大などを含め、更なる金融緩和策をちゅうちょするべきではないと考えます。総理認識を伺います。  私は、政府日本銀行デフレ脱却目標に向かって協調、連携しながら効果的に施策を講じていくことが重要であると考えます。そうした観点からすれば、ある意味では日銀は先手を打ったとも言えましょう。いよいよ政府の側にボールが投げられました。まさに、政府が一丸となって、中長期の明確な戦略の上に足下のデフレ脱却に向けて、財政税制成長戦略規制緩和など、あらゆる施策を総動員してこの難局を乗り切るための具体的施策へと踏み出して覚悟を示すときなのではないでしょうか。  そうした観点から、喫緊課題である補正予算について伺います。  私は、去る十月三日、青森県の陸奥湾でホタテガイの養殖を営む漁業者を訪問しました。高水温によるかつてない被害が懸念される中、現場の漁業者からは、災害による収入減の補てんや風評被害対策を求める深刻な声が上がっています。また、口蹄疫被害からの復興にあえぐ畜産農家、さらに円高により悲鳴を上げる中小企業総理、あなたには本気で国民生活を守ろうとする覚悟は見受けられない。  総理は、補正予算の成立が今国会の最重要課題であると申されました。経済の厳しい現状考えればそのとおりであります。であるからこそ、私たちは、早く国会を開き、そして、できるなら国会召集の冒頭に速やかに補正予算案を提出するよう強く求めてきたのであります。しかし、いまだに補正予算案が示されていない。第一義的に国民生活を守る日本国総理大臣としての責務を果たしていないのではありませんか。  挙げ句には、菅総理は、とにかく与野党の協議に期待する、そのことだけを強調される。しかし、重要なことは、財政健全化策とともに規制改革構造改革格差解消機会均等のための税制各種制度、さらには産業政策に偏らない競争政策など、どうすればデフレ脱却し、景気を立て直し、国民生活を守ることができるのかについて具体的な処方せんを示すことなのであります。  すなわち、成長戦略財政健全化などを含めた中長期のスパンで内閣としての確固たる経済財政政策を堂々と国民に示すことが一国のリーダーの仕事なのではありませんか。総理、是非、デフレ脱却に向けた具体的な道筋を示してください。総理答弁を求めます。  いずれにしても、本日、経済対策を発表されたようですが、補正予算政府自らの責任で速やかに国会に提出すべきです。その上で公明党は、何が必要な対策であるのか、まさに国民の目線に立って国会の場で徹底した議論を挑んでいく考えであることを申し上げます。  民主党が掲げるマニフェストについて質問します。  先般の民主党代表選挙最大の焦点は、昨年の民主党マニフェストをどう考えるかという点にあったものと認識しております。端的に言えば、修正やむなしか、修正はあり得ないかの争いでありました。結果、代表選挙菅総理が勝利されたものの、国会議員の票はまさに五分五分、党を二分するものであったわけであります。  しかしながら、代表選挙後の菅総理からは、マニフェストをどう扱おうとされているのか何の方針も示されていません。総理、これは国民に対する説明責任の放棄であると思われませんか。答弁を求めます。  私は、民主党マニフェストは、整合性や財源の観点からも完全に破綻しているものと断ぜざるを得ません。まずは、マニフェストは間違いであったことを国民に率直に認め、そして昨年のマニフェスト工程表もすべて作り直すことが参議院選挙民主党代表選挙の結果を踏まえた政権党のあるべき姿勢なのではありませんか。そうでなければ、今後の政策展望は開けないと言わざるを得ません。総理答弁を求めます。  雇用問題について伺います。  過日、あるハローワークを訪ねた際、就職活動中の方から、半年あれば仕事が見付かると思った、生活保護最後まで受けたくなかったとか、来春卒業の学生からは、今は大学三年の後期には就職活動が始まり、それでも内定が出ない、これはどう考えても異常だと、悲痛な声が寄せられました。総理は、この声にどう対応されようとしているのか。これまでのあなたの対応を見ると、危機感があるとは到底思えません。  所信表明演説の中で、政府が先頭に立って雇用を増やすと訴えられたものの、一体どのように増やすのか具体策がまるで示されていない。これで政権与党としての責任を果たしていると言えるのですか。  そもそも、経済成長が期待できなければ企業は容易には雇用増には動きません。まさに、政策予見性であります。経済成長への具体的なビジョンが求められているのです。その上で、雇用創出には企業の活力を高める施策が欠かせません。また、国際競争力強化財務体質改善につながる減税や金融面での支援円高状況下国内投資を増やす知恵も重要です。  こうした対策をどのように進めていくのか。私たちは、公明党として九月二日には緊急経済対策をまとめ、その実行政府に求めています。  まずは、短期的対策として、地域経済活性化を目指し、地域の実情に応じた事業支援スピード感を持って積極的に取り組むための財政措置として、地域活性化臨時交付金創設、老朽化した下水道整備や学校の耐震化など安心の生活を守るために必要なインフラ整備や、地域知恵や資源などを積極的に活用した中小零細企業活性化策を積極的に行っていくべきです。こうした取組とともに、法人税率の引下げや切れ目のない中小企業金融支援にも取り組まねばなりません。  次に、セーフティーネット強化です。公明党は、雇用保険に代わる第二のセーフティーネットとして、再就職に必要な職業訓練中に月額最大十二万円の生活費を支給する訓練生活支援給付金制度創設しました。現下の厳しい雇用情勢の中で大変効果的な支援策であります。この制度恒久化に取り組むべきです。  さらに、技術開発など将来の成長実現する中長期的な政策実行であります。  過日、福岡県宗像市にあるベーダ国際ロボット開発センターを訪れた際も、日本は高い技術力があるにもかかわらず、実用的なロボット開発への投資が少ないと嘆いておられました。ここでは、医療介護生活支援を行うロボット開発が行われていますが、我が国投資環境が余りにも脆弱であることを改めて実感した次第です。成長産業への投資を促すためには、規制緩和税制補助金などによる支援に大胆に取り組み、例えば高齢者潜在需要を引き出すシルバーイノベーションの推進など、新しい経済成長をもたらす仕組みを構築する必要があります。  総理雇用問題の解決には緊急的な対策予見性ある政策の着実な実行が不可欠であります。これらの提案について見解を求めます。  総理の基本的な外交姿勢について尋ねます。  総理所信表明演説で述べたとおり、我が国を取り巻く周辺地域には予断を許さぬ不確実性不安定性が存在し、まさに政権外交運営の成否が我が国中長期的な国益に、そして国民の安全に直結します。  普天間問題では、民主党政権迷走に次ぐ迷走により日米関係弱体化を招き、今般の中国漁船衝突事件をめぐっては、政権代表選にかまけて政治空白が生じ、対応の遅れから日中関係の悪化を惹起しました。すべては党内政局を優先する理念なき民主党政権外交能力のつたなさが引き起こした国難であり、猛省を求めます。  直面する外交上の諸課題について、総理の基本的な外交姿勢質問します。  まずは、喫緊課題である尖閣諸島周辺領海内の中国漁船衝突事件をめぐる日中関係についてであります。  中国温家宝首相国連総会主権や領土などで一切妥協しないと強く演説している一方、菅首相は二度の演説でこの問題に触れず、いつまでも国際世論に積極的に訴える姿勢を見せませんでした。また、衝突時のビデオを見ていないことについて、国土交通大臣また官房長官などから報告を受けていると答弁されましたが、ビデオ我が国領海内で起きた事件であるとの主張を裏付ける根拠となるものであります。それをいまだ見ようとしない、そういう姿勢だから、総理外交には説得力を感じさせないのだと指摘しておきたい。なぜ政府代表して重要な主張をするのにその根拠を自ら確かめないのですか。お答えください。  ASEMにおいては温家宝首相との懇談が廊下で実現しましたが、その際直接、フジタの邦人社員一名の解放を要求しようともしない態度に驚きを禁じ得ません。総理は一国の外交最高責任者であるとの自覚をお持ちか、答弁を求めます。  ようやく日中の関係改善の兆しが見えてきましたが、今後このようなことを繰り返してはなりません。  尖閣諸島の問題については引き続き日本の立場を国際社会に発信し続けることが重要ですが、また、日中関係が最も重要な二国間関係の一つであるとの認識に立ち、問題の解決には戦略的互恵関係を具体的に進展させることが重要です。そのために、両国は互いに大局観に立ち、冷静に対話を通した外交努力を重ね、良好な両国信頼関係を築きながら、今後このような事態が生じることのないよう適切な対応策について協議すべきです。答弁を求めます。  次に、北方領土について尋ねます。  九月二十七日に行われた中ロ首脳会談で第二次世界大戦終結六十五周年に関する共同声明に調印したのに続き、ロシアメドベージェフ大統領北方領土を訪問すると明言したと報じられております。  尖閣諸島領有権主張する中国と歩調を合わせたかのように北方領土問題で強硬姿勢を見せるロシアに対し、総理はどのように対応し、北方領土の帰属問題の解決を図るつもりか、具体的かつ明快な答弁を求めます。  北朝鮮問題について伺います。  北朝鮮では、金正日総書記の後継者に三男、正恩氏が事実上決まり、今後の動向が注目されますが、北朝鮮を取り巻く日、米、韓、中、ロ五か国の関係は一層複雑化しており、北朝鮮外交も難しいかじ取りが求められます。一向に進展の見られない拉致、核、ミサイルなど北朝鮮問題をどう打開していくのか、総理見解を求めます。  このように我が国を取り巻く東アジアが一層複雑化する中、日米関係の深化は最も重要な外交課題でもあります。にもかかわらず、菅総理所信表明演説我が国外交安全保障の基軸と表明された日米同盟には、民主党政権普天間問題の迷走が深い影を落としています。  普天間問題の混迷は、沖縄県民の心を踏みにじる、沖縄頭越し民主党政権対応が招いたものです。いまだ一度しか沖縄に足を運んでいない総理は、何よりも沖縄の声に耳を傾け、真摯にこの問題に向き合うべきです。そのために、普天間基地の移設問題にとどまらず、沖縄に集中する負担の軽減や沖縄の未来を開くための振興策など、沖縄の声を聞いて幅広い課題を取り上げる総理中心協議機関を設置し、総理、あなたが責任を持って取り組むべきです。見解を求めます。  普天間解決には、沖縄県も、移設先の自治体も、そしてアメリカを含めて、すべての関係者が合意できる答えを導き出さなければなりません。その全責任は、総理、あなた自身にあります。職を賭してこの問題の解決を図る覚悟はあるのですか。伺います。  原爆投下から六十五年を迎えた本年、広島で行われた原爆死没者慰霊式平和祈念式国連潘基文事務総長、ルース・アメリカ駐日大使が、国連事務総長アメリカ駐日大使として初めて出席するなど、核のない世界への流れに期待感を抱きました。  私は、八月六日、訪れた広島の地で、恒久平和への決意を込めて「核廃絶へ向けて—公明党の五つの提案」を発表しました。  その中で、原爆投下から七十年に当たる二〇一五年に核廃絶サミット広島と長崎で行うことや、核兵器禁止条約実現のためにNGOとの協働体制構築のための国際会議の開催などを提案していますが、終戦六十五周年、日米安保改定五十周年の節目に当たる今こそ、日米が連携し、核のない世界実現へ行動を開始するときです。十一月のAPEC出席のため訪日するオバマ・アメリカ大統領に対し、核廃絶へ向けた両国の具体的な連携と取組総理から提案すべきです。答弁を求めます。  今国会では、公明党が対案を提出している地球温暖化対策基本法についても引き続き議論が行われます。  民主党政権は、温暖化を止めるために科学が要請する水準に国際社会を導くため、公平な国際枠組みなどを前提として、二〇二〇年までに温室効果ガスを二五%削減する日本中期目標を掲げました。  しかし、民主党政権国際合意に向けて何らイニシアティブを発揮できず、現実にはアメリカ中国が参加していない京都議定書単純延長論が勢いを増しかねない状況となっています。米中等も参加する新たな国際枠組み構築するためには、基本法制定など日本温暖化対策土台を固めた上で、もっと積極的に外交攻勢を掛けていく必要があります。  ところが、肝心の政府基本法案では、理想的とも言える国際合意実現するまでは日本中期目標が設定されない規定になっており、その間は遠い四十年先の長期目標を目指して施策を行うことになっています。このような規定だけでは、四十年間の温室効果ガス削減道筋工程は様々に想定できるため、国内排出量取引などの制度設計に大きな影響を及ぼすほか、政策予見可能性が失われ、産業界グリーン革命への対応も遅れてしまいかねません。  総理、あなたはどのように国際合意実現していくおつもりか、また、国際合意実現するまでの間にも、実効性のある意欲的な指標を掲げて温暖化対策強化し、日本の積極的な取組世界に発信していく考えがないか、見解を求めます。  以上、地球温暖化対策を含め、直面する外交上の代表的な諸課題についてるる質問してまいりましたが、民主党政権外交手腕の未熟さが、漂流する日本外交現状を生み出していると言っても過言ではありません。  総理は、所信表明演説において、国民一人一人が自分の問題としてとらえ、国民全体で考える主体的で能動的な外交を展開していくと述べられましたが、国民外交判断をゆだねるおつもりですか。菅政権外交には国家としての明確な意思と確固たる姿勢が見えてこないというのが、今国民が抱く率直な思いではないでしょうか。そのことを厳しく指摘しておきたいと思います。  総理は、所信表明演説の中で地域主権改革について、経済成長財政健全化社会保障改革前提として推進し、我々の世代で確たる道筋を付けるとおっしゃったが、具体的にいつまでにどのような形にするのか全く分かりません。速やかに全体像、工程表を示すべきです。具体的にお答えください。  民主党政権になってからこれまでの間、民主党の言う地域主権改革取組は全く進んでいません。掛け声だけの地域主権では何も進みません。  総理、そもそもあなたの考え地域主権とは一体何なのか。所信表明演説を聞いても、政府が六月にまとめた地域主権戦略大綱を見ても、いずれも具体性に乏しく、聞こえのいい言葉だけを並べただけと言わざるを得ません。例えば、一括交付金化した場合、地方にはどれだけのお金が行くのか、現在補助金で賄っている社会保障関係費はどのように確保するのかなど不明確なことばかりです。国の権限の移譲と併せて早急に具体策を示すべきです。  総理国民は新しい福祉を求めています。今までの年金医療介護などの充実に加え、安定した雇用を確保すること。また、うつ病などの心の病、急増する児童虐待など、これまでの社会制度では想定し得なかったリスクが発生しています。  具体的に公明党は、新しい福祉として、低所得者への加算年金制度創設高額療養費の見直しなど社会保障制度充実とともに、新卒就職者対策として新卒枠を卒後三年間に緩和することや正規雇用化奨励金拡充などの安定した雇用確保、そして、早期発見から社会復帰まで一貫したうつ対策充実児童虐待防止緊急強化基金創設など、具体的に今あるリスクへの新しい福祉提案しています。  今こそ新しい福祉構築に全力を挙げるべきです。総理見解を求めます。  総理、あなたは今回の所信表明演説の中で有言実行内閣と声高に宣言されました。しかし、有言に当たる具体的なビジョンはどこにあるのですか。この四か月の間、代表選以外に主体的に何も実行されてこなかった政権運営。まさに、有言も実行もないではありませんか。このような政権運営では国益を守れるわけがありません。  最後に、私ども公明党三千人を超える議員は、生活の最前線を歩き、現場を見、声を聞く地道な作業を積み重ねる中で、国民生活を守り抜くため全力で取り組んでいくことを国民の皆様にお約束し、質問を終わります。(拍手)    〔内閣総理大臣菅直人君登壇、拍手〕
  4. 菅直人

    内閣総理大臣(菅直人君) 山口那津男公明党代表の御質問にお答えをいたしたいと思います。  まず、有言実行内閣根拠国民への謝罪の必要性ということを言われました。  山口代表は、私のこの四か月が開店休業であったと、こういうふうに言われたところであります。しかし、私としては、例えば就任をした直後にカナダにおけるG8、G20、また、その場におけるオバマ大統領との会談、九月の国連総会、十月のASEM、こうした国際的な会議に加えて、例えば来年度の予算の概算要求、さらには急激な円高デフレ対策として予備費を活用した経済政策、為替介入の実施、そして本日、経済対策の第二ステップとして閣議決定をしたこの経済対策、こういうことはこの四か月間でしっかりやってきたところであります。  一方で、これまで長きにわたり先送りされてきた課題は山積されており、今後更に努力すべき課題も多いと認識しております。このため、野党の皆さんの御意見も誠実に伺いながら、所信表明演説で述べたように五つの重要な政策課題、これまで長年先送りされてきた五つの重要政策課題に今こそ着手し、これを今から実行していこうというのが有言実行の私の覚悟であります。  次に、小沢氏、鳩山氏の説明責任等についての御質問をいただきました。  小沢本人説明責任を果たしていくと、このように表明されております。説明の場、方法を含めて、国会の場も含めて御本人自らが判断して対応されることが望ましいと、このように考えております。また、鳩山総理に関しては、検察処分、検察審査会審査、裁判共にすべて終了し、かつ鳩山総理自身総理辞任という大変重い形で政治責任を取られたと、このように認識をいたしております。  監督責任強化の規正法改正に関する質問にお答えを申し上げます。  民主党もその代表である私も、政治資金規正法改正に積極的な意思を持っているところであります。前向きに取り組む姿勢であるからこそ何度も制度改正に向けた与野党協議の場の設置を呼びかけているところであり、是非野党の皆さんに応じていただきたいと思います。  なお、公明党の御提案については、企業・団体献金禁止も含まれていると承知しております。同じ政治資金規正法改正案でありますので、他の野党の御協力もいただき、是非成案を得るように期待をいたしているところであります。  経済無策国民生活破壊、円高対策などが遅かったのではないかという批判をいただきました。  政府経済対策については、まず今年四月、二十二年度の予算を執行し始め、六月には新成長戦略を策定し、その後、円高等による景気下振れリスクが強まっていることに対応して九月から三段構えの経済対策を策定し、既にそのうち予備費分についてステップワンとして実行に移していることは御承知のとおりであります。また、新卒雇用支援国内投資促進プログラムの策定など、現場の実情を踏まえた対応を指示してきたところであります。  さらに、依然として厳しい経済雇用情勢を踏まえ、本日、円高デフレ対応のための緊急総合経済対策を閣議決定をいたしました。この経済対策の実施のためにも、今国会最大課題である平成二十二年度補正予算の成立に向けて全力を挙げてまいりたいと思います。  また、円高については、為替相場の過度の変動は経済、金融の安定への悪影響から看過することができない問題であり、過度の変動を抑制する観点から、先般、為替介入を実施したところであります。  このように、政府としては切れ目なく、適宜適切な対策対応を講じているところであり、無作為と言われることはあり得ないと、このように思っているところです。  金融政策について御質問をいただきました。  日銀に対しては、この間、政府との密接な連携を図りつつ、更なる必要な金融政策対応を何度も期待を政府として表明をしてきたところであります。今回、日銀が決定された包括的金融緩和政策は、これまでの政府の景気回復に向けた取組と連携の取れた対応であり、山口代表からもお話がありましたが、私としても、日銀として一歩踏み込んだ措置をとられたと評価をいたしております。  補正予算についての質問をいただきました。  先ほども申し上げましたように、補正予算については、予備費を活用したステップワンに続くステップツーと位置付けておりまして、雇用・人材育成、新成長戦略の推進など、五本の柱とすることを指示したところであります。これに基づき、本日、公明党を含む各党からの提言を相当程度取り入れた経済対策決定したところであります。今後、この対策実現するため、補正予算の策定作業を速やかに進めてまいりたいと思います。与野党間で意見交換を進め、合意を目指したいと思っており、与野党間での建設的な協議を期待をいたしております。  中長期経済財政政策デフレ脱却に関する質問についてお答えします。  具体的な処方せんを示していないとの指摘は、私は、これまでの答弁からもお分かりのように、当たらないと考えております。  デフレ脱却に向けては、本年六月に新成長戦略を取りまとめ、需要と雇用を創出する政策により日本経済を本格的な回復軌道に乗せ、できるだけ早期にデフレを終結させる取組を行ってきております。九月十日には円高デフレ状況に緊急的に対応するための三段構えの経済対策を閣議決定し、その三段構えのステップワンとして予備費の活用を行っているところです。そして本日、今国会での補正予算の編成を含むステップツーの経済対策として、円高デフレ対応のための緊急総合経済対策を閣議決定し、切れ目のない対策を講じることといたしております。  こうした取組によって、デフレ脱却と景気の自律的回復に向けた道筋を確かなものとしていく所存であります。  マニフェストの扱いについて御質問をいただきました。  昨年の衆議院選挙マニフェストについては、子ども手当や高校授業料の実質無料化、事業仕分による無駄遣いの削減あるいは農業の戸別補償など、着実に実行してきているところであります。  衆議院マニフェストは、任期中の実現国民の皆様にお約束をしたものであります。衆議院の任期はまだ三年残されており、引き続き衆議院選マニフェスト最大実現するよう取り組んでいくという方針を繰り返し表明をいたしているところであります。  参議院のマニフェストは、国民の皆様の声にも耳を傾け、〇九年マニフェスト以降、総選挙後の環境や状況の変化にも応じて追加的な提案をいたしたものであります。  なお、財源等でどうしても実現できないものについては、その理由を国民の皆さんに説明をして御理解をいただきたいと、このように考えております。  雇用問題の解決に向けた緊急的対策実行について御質問をいただきました。  雇用対策については具体策が示されていないとの指摘は、私は全く当たっていないと思っております。  新卒雇用について、八月、京都のジョブパークにも私も視察に訪れ、現場の意見を聞いて緊急対策を実施し、特命チームをつくったところであります。その中で、三年以内の既卒者は新卒者扱いとするワンストップ体制を全国に普及することといたしました。そして、経済対策において、御指摘のあった、特に支援が必要な新卒雇用に関する緊急対策セーフティーネット強化、さらには将来の成長に結び付く技術開発支援などの対応を図ることとしており、こうした取組を着実に推進してまいる考えであります。  ビデオの公開について御質問をいただきました。  ビデオの公開については、現在の捜査の状況及び国会等からの要望を踏まえて、捜査当局において適切な判断がなされると考えております。海上保安庁からビデオ等により説明を受けた官房長官及び国土交通大臣からは随時報告を受けており、必要なことについては十分把握をいたしております。  外交最高責任者としての自覚と対中外交についての御質問にお答えを申し上げます。  当然のことながら、このフジタの邦人社員一名の釈放については、中国側に一刻も早い解放を従来から求めているところであります。  所信表明でも述べましたように、私の内閣では、重要政策課題の一つとして主体的な外交の展開を掲げております。このような考え方の下、日本国の外交最高責任者として主体的な外交を進めていく考えであります。  日中関係については、これは山口代表も言われておりましたけれども、アジア太平洋地域の平和と安定、そして経済分野での協力関係の進展を含め、大局的観点から戦略的互恵関係を深める日中双方の努力が不可欠である、これは山口代表もおっしゃったとおりだと思っております。今般の衝突事件については、今後、中国側に対し、類似の事件再発防止に向けた協議を行うことを求めていきたいと思います。  北方領土についての質問をいただきました。  御指摘の中ロ両首脳の共同声明については承知をしておりますが、その意図は十分に明らかではなく、ロシア中国と歩調を合わせて北方領土問題に関する姿勢を強めているとは必ずしも今の段階では言えない、考えてはおりません。また、メドベージェフ大統領北方領土訪問については、現時点で具体的な計画は明らかにされていないと認識をいたしております。  いずれにせよ、北方領土問題については、北方四島の帰属の問題を最終的に解決して平和条約を締結するとの方針にのっとり、首脳レベルで粘り強く交渉し、前進を図っていく考えであります。  北朝鮮についての御質問にお答えします。  日朝平壌宣言にのっとり、拉致、核、ミサイルといった諸課題を包括的に解決し、不幸な過去を清算して国交正常化を図る考えに変わりはありません。  我が国としては、諸課題の一日も早い解決に向け、具体的な行動を北朝鮮から引き出すべく、引き続き関係国と連携して最大限の努力をしてまいります。また、拉致問題については、国の責任においてすべての拉致被害者の一刻も早い帰国に向けて全力を尽くしてまいります。北朝鮮政治情勢については、引き続き注視をしていく考えであります。  沖縄との協議機関及び普天間飛行場移設問題に関する質問をいただきました。  私の内閣が発足して以来、二度にわたる日米の首脳会談を経て、オバマ大統領との間の信頼関係は深まってきていると認識をいたしております。日米安保体制に深い影が落とされているという指摘は、今日の状況については当たらないと考えております。  本年九月、五年半ぶりに沖縄政策協議会が開催され、私も出席をいたしました。今後、沖縄政策協議会においては、国家戦略を見据えた沖縄振興策、米軍基地負担軽減及び地位協定をめぐる諸課題への対応につき、政府沖縄県とが手を携えて真摯な検討がなされることになっております。この会議にはもちろん仲井眞知事も御出席をいただきました。  普天間飛行場の移設問題については、本年五月の日米合意を踏まえて取り組むと同時に、沖縄に集中した基地負担の軽減にも全力を挙げて取り組んでいるところであります。  いずれにせよ、私自身が先頭に立って沖縄の諸課題に取り組み、沖縄の方々の御理解を求め、誠心誠意話し合ってまいりたい、このように考えております。  核廃絶へ向けた日米の具体的連携と取組について御質問をいただきました。  我が国は、唯一の戦争被爆国として核の惨禍を二度と繰り返さないとの強い決意の下、核兵器のない世界に向け、一九九四年以降、国連総会において核軍縮決議案を提出し採択してきたほか、先般の国連総会において核軍縮、核不拡散に関する新たなグループを立ち上げるなど、これまでもリーダーシップを発揮してきたところであります。九月の国連総会の際、日米首脳会談では、核軍縮、核不拡散を含め、国際社会が直面する課題日米が協力して対処することで一致をいたしました。十一月のAPECの際に予定されている日米首脳会談の機会を含め、核兵器のない世界を目指し、オバマ大統領との間で更に連携を深めてまいりたいと考えております。  地球温暖化対策国際合意実現と意欲的な指標設定による対策強化に関する質問をいただきました。  国際合意実現するまでの間も率先して国内対策強化することが必要である、私どももそのように認識をいたしております。このため、地球温暖化対策基本法では、中期目標前提条件が満たされるまでの間においても長期目標の達成に資するよう、基本的施策を積極的に講ずることといたしております。国際交渉については、我が国としては、国際合意実現前提とする中期目標を掲げることで国際合意に向けて主要国の背中を押して積極的な取組を促していきたいと考えております。  今後とも、コペンハーゲン合意を踏まえ、すべての主要国による公平かつ実効性のある国際的枠組みを構築する新しい一つの包括的な法的文書を早急に採択すべく、国際交渉を主導していく考えであります。  外交に対する意思と姿勢についての御質問をいただきました。  所信表明で述べたように、私の内閣では明確な意思と確固たる姿勢を持って主体的な外交の展開を重要な政策課題として挙げております。何か、山口代表からは国民外交判断をゆだねるおつもりかという御質問をいただきました。しかし私は、どうでしょうか、最終的に外交の方向性を決めることは主権者である国民だということは、私は間違いないことだと思います。そういった意味で、外交は一部の専門家だけによるものではなく、国民一人一人が自分の問題としてとらえ、国民全体で考えることにより、より強い外交を推進できると確信をいたしております。このような国民一人一人の自覚を背景に、この政府責任において主体的外交を展開する、こういう決意を申し上げたところであります。  地域主権改革についての御質問をいただきました。  六月に閣議決定をした地域主権戦略大綱において、今後おおむね二、三年を見据えた改革の諸課題に対する取組方針を明らかにし、昨日の地域主権戦略会議でも地域主権戦略工程表を示したところであり、また、同じ昨日行われた国と地方の協議の場においても地方からの意見を伺ったところであります。  具体的には、補助金等の一括交付金化については、投資に係るものに関しては平成二十三年度以降、経常に係るものに関しては平成二十四年度以降、それぞれ段階的に実施すべく、制度設計について地域主権戦略会議を中心に関係府省とともに検討をし、予算編成過程を通じて決定してまいる所存です。さらに、国の出先機関改革については、事務権限仕分を行い、年内めどにアクションプランを策定し、事務権限の地方移譲等を進めていく考えであります。引き続き、地域主権戦略会議を中心に、政治主導地域主権改革実現に取り組んでまいる所存であります。  公明党から提案の新しい福祉について御質問をいただきました。  少子高齢化が推進する中で従来の枠組みを超えた対策が必要という公明党の皆さんが提案されている新しい福祉考え方は、私たちも共有をいたしているつもりであります。これまで、三年以内の既卒者を採用する企業への奨励金の創設、うつ病や児童虐待対策等、公明党の言われている新しい福祉に盛り込まれている施策を私どもも進めていこうといたしております。今後、社会保障の全体像を議論するに当たって与野党を超えた議論が必要であり、積極的な御提案を更に期待をいたしております。  最後に、有言実行ビジョンなどについて御質問をいただきました。  所信表明においては、問題を先送りせず、経済成長財政健全化社会保障改革の一体的実現、これに加えて、地域主権改革の推進、主体的な外交の展開の五つの重要政策課題解決を図ることを私の内閣の使命として位置付け、そのための具体的な方針を明らかにしたところであります。政権発足以降、円高デフレ対策の実施、外交課題への取組など、政府としてやるべきことをしっかりやってきたと考えております。今後とも、国民の皆さんの期待にこたえるため、国政の運営に誠心誠意、全力を挙げて邁進してまいりたい、このことを申し上げ、答弁を終わらせていただきます。  どうも御清聴ありがとうございました。(拍手)     ─────────────
  5. 西岡武夫

    ○議長(西岡武夫君) 水野賢一君。    〔水野賢一君登壇、拍手〕
  6. 水野賢一

    ○水野賢一君 みんなの党の水野賢一です。  まず、尖閣諸島の問題を取り上げます。  言うまでもなく、尖閣諸島日本固有の領土です。私たちみんなの党は、国民や国土はとことん守るとアジェンダにも明記していますし、領土、領海内で行われた犯罪行為、公務執行妨害という犯罪行為については国内法を厳正粛々と適用するのが当然だと考えています。その上で、まず中国とどう向き合うかという点についてお伺いをします。  今回、中国漁船が海上保安庁の巡視船に衝突してきた、これは逃走を図ろうとする中での出来事で、ここだけを見れば計画的なものではなかったのかもしれません。しかし、近年の東シナ海油ガス田での中国姿勢、南シナ海への進出、海軍力の増強などを併せて考えれば、事件の背景には中国の拡張主義、大国主義的な動きがあるように思いますが、総理はどのように考えますか。  時あたかも、民主党の枝野幹事長代理が中国はあしき隣人と発言をしました。飽くなき拡張主義やチベット、ウイグルなどでの弾圧、法治よりも人治を優先する点、知的財産権の侵害等々を見れば、そうした批判にもうなずける面があるのではないでしょうか。仙谷官房長官は不適切な発言との認識を示したようですが、総理はどうお考えですか。少なくとも良き隣人とは程遠いと思いますが、いかがでしょうか。  私たちは、中国に対して居丈高になる必要はありません。しかし、民主党政権のように位負けする必要もこれまたないのです。道理の通った主張はしっかりとしていかなければなりません。  そこで、東シナ海のEEZや大陸棚について伺います。  日本側は公平な解決策として中間線を提唱し、一方、中国は大陸棚自然延長論に固執をしております。しかし、国連海洋法条約を見ても、そもそも日本側も本来二百海里の権利は持っているはずです。中間線と言っていること自体が譲歩といえば譲歩なわけです。まさか、この部分で更なる譲歩をすることはないと思いますが、総理に確認をいたします。  急速な軍拡を続ける中国への対処として、日米同盟を堅持し、信頼関係を高めるのは急務の課題です。その前提として日本自身が自らの国土を守っていくんだという気概を示すのは、言わずもがなのことであります。  これらに加えて、中国の海洋進出に脅威を覚えている東南アジア諸国との連携も必要と考えます。現在、南沙諸島や西沙諸島で中国を含む複数の国々が領有権主張しておりますが、日本としてはこの領有権問題にどういう立場を取っているのでしょうか。総理にお伺いをいたします。  総理は、先日ASEMの会議に出席しました。国際社会に尖閣は日本固有の領土であるとの認識を深めてもらう働きかけをしたのでしょう。それ自体は結構です。  ところで、現在、尖閣は日本領だと明確に支持してくれている国は世界にどれくらいあるのでしょうか。ASEMなどでの働きかけで増やすことができたのでしょうか。総理にお伺いをいたします。  いわゆる政治介入について伺いたいというふうに思います。  今回は、衝突から船長の逮捕、送検、勾留延長と続き、当初は一見毅然とした対応をしているようにも見えました。野党のある総裁は逮捕が間違っていたかのような事なかれ主義的な発言をされましたけれども、それよりはましだと感じる人も多かったでしょう。しかし、それだけに、突然、処分保留、釈放となったその落差の大きさに衝撃が走ったのも事実です。ですから、この過程を検証してみる必要があると思います。  外務大臣にお伺いをしますけれども、報道によれば、当時国土交通大臣だった前原大臣はおれが逮捕を決めたと豪語したとのことですが、それは事実でしょうか。  問題の処分保留、釈放について伺います。  政府は再三にわたって捜査への介入はなかったと言っておりますけれども、多くの人がそれを信じていません。確かに、検察庁法十四条のただし書に規定をしているような明示的な指揮権の発動はなかったのかもしれません。しかし、少なくとも検察に対し、官邸の意向をそんたくさせるような言動、働きかけはあったのではないですか。  また、気になるのは、官房長官が会見で、釈放という那覇地検の決定を了としたと言っている点です。了とするというのは、普通、了解する、了承するという意味だと考えられます。官房長官はそもそもそんな権限を持っているんですか。それでは、時には検察判断を了解しないということもあり得るのですか。官房長官、お答えください。  那覇地検は、釈放を発表したときの会見で、理由の一つに外交配慮も挙げています。検察がそこまで踏み込むのならば、検察官も国会に呼んで見解をただすべきだと考えます。昭和三十年代ごろから、検察官を国会に呼ぶのではなく、代わって法務省幹部に答弁してもらう慣習が確立しました。その理由として、政府はこれまで、検察は司法権と密接に関係しているからと言っていたはずです。しかし、外交権とも密接に関係をしているならば、検察官にも国会答弁してもらう必要があると思いますが、総理見解を伺います。  なお、衝突ビデオ公開は当然のこととして要求します。  菅首相は、有言実行内閣をキャッチフレーズに掲げ、改造内閣発足直後の記者会見では、この一年は試行錯誤を繰り返したと述べています。どうも民主党政権が約束したことを実行していないとの自覚は持っておられるようですが、この一年間、約束をしながら何が実行できていないのか、具体的に御答弁を願います。多過ぎて答弁が大変かもしれませんけれども、お答えいただきたいと思います。  九月の民主党代表選挙では、昨年の総選挙マニフェストを守るのか修正するのかが論点の一つになっていました。修正に柔軟な菅代表が再選をされたわけですけれども、お伺いをしたいのは、今後、必要があれば、今年の参議院選挙のときに約束をした政権政策マニフェスト二〇一〇、こちらの方もまた修正していく可能性はあるのでしょうか。総理にお伺いをします。  さて、民主党の目玉政策の一つが高速道路の無料化でした。今ではこれも約束違反の象徴になっています。社会実験として全国の高速道路の二割弱だけを期間限定で無料化というのでは、看板に偽りありと言わざるを得ないでしょう。にもかかわらず、どうやら今でも原則無料化の旗は降ろしていないようにも見えますが、その点を総理に確認をさせていただきます。  この問題では、そもそも無料化という方針そのものが間違っていたのではないでしょうか。無料化といえば聞こえはいいですが、通行料をなくす代わりに多額の税金をつぎ込んで無料化するのですから、実際は税金化です。振り返ってみれば、高速道路は数年前まで日本道路公団など特殊法人が運営していました。当時は年間三千億円もの税金を日本道路公団につぎ込んでいました。それでも放漫経営の結果、公団全体で四十兆もの莫大な累積債務を負うことになったのです。その反省から税金を投入せずに自助努力で再建するために民営化したはずではないですか。  民営化された会社に多額の税金をつぎ込むというのは、いかに料金を安くするためとはいえ、改革に完全に逆行しているのではないですか。総理見解を伺います。  所信表明では地域主権改革の推進がうたわれています。地域主権それ自体には私たちも異存はありません。しかし、私たちは更に一歩進めて地域主権型道州制を訴えています。これなくして言葉だけ地域主権と言っていても絵にかいたもちになるからです。総理は、道州制についてどう考えますか。  地域主権と言うときに、権限だけでなく財源も渡すことが重要だということはかねてから指摘をされております。みんなの党はその具体策として、消費税は地方の財源にと主張をしていますが、この主張について、総理、どう考えるでしょうか。  さて、検察審査会議決によって小沢一郎氏が強制起訴されることが決まりました。これに対する民主党の反応は甘過ぎるという感があります。これまでにも不祥事で離党に至った民主党議員はいました。前田雄吉衆議院議員、中島正純衆議院議員などです。彼らは起訴をされたわけではありません。それでも、自発的にせよ迫られたにせよ、離党に至っています。もちろん、起訴イコール有罪などと言うつもりはありませんが、刑事被告人になる人が民主党の現職衆議院議員のままでよいのでしょうか。党代表でもある総理見解を伺います。  そして昨日、小沢氏は離党も辞職も否定する考えを示しました。辞めないという小沢氏の判断について総理はどういう感想を持たれますか。お伺いをします。  大阪地検特捜部の問題について伺います。  証拠の改ざんということを聞いて、唖然、茫然の思いがいたします。無罪が確定した村木厚子さんは長期にわたり勾留されていたわけですから、当然、刑事補償法に基づく刑事補償の対象になるはずですが、この点、法務大臣に確認をいたします。  また、公務員の故意又は過失を要件とする国家賠償の対象になるのも当然と思いますが、いかがでしょうか。  今求められているのは検察職員の倫理の確立及び信賞必罰の徹底です。更に言えば、そのための人事評価制度構築です。しかし、これは、何も今回の事件がなくとも、平成二十年に成立をした国家公務員制度改革基本法で、法制上の措置は三年以内、その他の措置は五年以内に講じなければいけないはずです。民主党政権になってから今まで何をやっていたのか、どのような措置を講じたのか、お伺いをします。  また、この基本法では内閣人事局の設置は施行後一年となっており、既に期限は過ぎています。にもかかわらず、政府はこの臨時国会に国家公務員法改正案は提出しない方針です。来年に先送りをすること、そのこと自体が法律違反ではないですか。  民主党はかつて天下り根絶を金看板にしていました。多くの国民がそこに期待したのも事実でしょう。しかし、今やすっかりと色あせてしまいました。  特に問題なのは、菅内閣になって現役出向の拡大が進んでいることです。天下りよりもたちが悪いと言えます。退職して天下り法人に行くのはいけないが、現役のまま従来の天下り法人に出向するのはよいという理屈は、全く納得できません。国民に分かるように論拠を説明していただきたいと思います。  また、衆議院での渡辺代表への答弁で、天下りに関して監視を強めるという話がありました。それでは、現行の国家公務員法に基づく再就職等監視委員会はいつ発足させるのですか。人事案はいつ国会に提出をするのですか。法律で監視機関をつくることになっているんです。法律を執行すべき政府がこれを無視し、結果として裏下りを容認している実態をどう考えるのか、見解を伺います。  所信表明演説では、政治主導、官邸主導について何ら言及がありませんでした。政治主導や脱官僚依存を進める意欲や覚悟は既になくなってしまったのか、お伺いします。  国家戦略局への言及も所信表明ではありませんでした。こちらも意欲が薄れているような気がしますが、どうですか。国家戦略局長は閣僚にすべきだというみんなの党の主張への見解も併せて伺います。  改革を進めていくときに、国会議員自身がまず身を切る姿勢を示すのは当然です。そこで、議員特権の象徴とされてきた議員年金について伺います。  実は、議員年金は小泉政権時代の平成十八年に廃止されました。そのとき、当時野党だった民主党は、廃止といっても形ばかりだ、骨抜きだ、抜け道があると強く批判をしていました。確かに一理ある批判ではありました。その時点というのは平成十八年春のことですが、その時点で在職十年を超える議員に関しては、本人が選択すれば引退後に議員年金を受給する余地を残していたからです。  そこで、当時の民主党は、在職十年以上のベテラン議員であっても議員年金をもらう余地をなくすという案を対案として国会に提出しました。野党民主党の出した法案は成立こそしませんでしたが、抜け道をなくすという主張そのものには理解できる点もあります。  ところで、菅内閣には、総理自身を始め、平成十八年時点で既に在職十年を超えていた閣僚が十三人もいます。つまり、現行法では年金を選択できるわけです。選択するかどうかの手続は既に始まっていますが、どの議員が受給を選択したかは非公表になっています。  焦点が当たっているときだけ抜け道をなくせときれい事を言っておきながら、あらしが過ぎるとちゃっかりとその抜け道を自分も使うなどという人はさすがに閣内にはいないと信じたいところですが、菅首相自身議員年金受給を選択していないことを確認したいと思います。また、他の閣僚についてもきちんと調べて報告いただきたいと思います。いかがでしょうか。  民主党政権のこの一年余りを一口で表せば、外交はばらばら、内政はばらまきというものでした。しかも、国民生活第一のためのばらまきというならばまだしも、実際には選挙第一のためのばらまきでした。まさに、何をか言わんやです。  私たちみんなの党は、そうした政治に決別するために全力を尽くし、渡辺喜美代表の下、明日の日本を切り開いていくことをお誓い申し上げて、質問を終了いたします。(拍手)    〔内閣総理大臣菅直人君登壇、拍手〕
  7. 菅直人

    内閣総理大臣(菅直人君) 水野賢一議員にお答えを申し上げます。  まず、中国の拡張主義、大国主義的な動き及び私の対中国観についての御質問をいただきました。  日中両国は一衣帯水のお互いに重要な隣国でありまして、両国関係はアジア太平洋地域、ひいては世界にとっても大変重要な関係だと認識をいたしております。  近年、中国の台頭については著しいものがありまして、同時に、透明性を欠いた国防力の強化やインド洋から東シナ海に至る海洋活動の活発化には懸念を有しております。中国には、国際社会責任ある一員として適切な役割と言動を期待するところであります。戦略的な互恵関係、つまりは良き隣人となるよう双方が努力することが必要だと考えております。  東シナ海における海洋の境界画定についての質問をいただきました。  東シナ海における海洋の境界画定について対象となる水域は、両国の二百海里までの水域が重なり合う部分であります。そのような水域において衡平な解決を達成するためには、国際判例等に照らせば中間線を基に境界画定を行うべきであるとの立場であります。日中双方の主張には大きな隔たりがありますが、境界の画定に向けた我が国の立場をしっかり主張しつつ、政府として粘り強く取り組んでいく考えです。  同時に、日中間では、東シナ海の境界画定が実現するまでの過渡的期間において、双方の法的立場を損なわないことを前提として、二〇〇八年六月に東シナ海における資源開発について合意に至っております。東シナ海を平和、協力、友好の海とするためにも、この合意を実施に移すことが肝要だと、このように考えております。  南沙諸島、西沙諸島の領有権問題及び尖閣諸島について御質問をいただきました。  南シナ海における領有権問題については、我が国関係当事者の努力の積み重ねにより緊張が緩和され、できるだけ早期に本問題が平和的に解決されることが重要と考えており、関係当事者間の対話を通じた解決努力を支持しております。また、すべての関係当事者が緊張を高める行動を自制することを強く希望をいたしております。  尖閣諸島我が国固有の領土であることは歴史的にも国際法上も疑いのないところであり、領有権をめぐる問題はそもそも存在をいたしておりません。我が国のかかる立場は一貫しており、諸外国もこれを十分承知をしているものと考えます。  ASEMの際の二国間会談では、日中関係はアジア太平洋地域、ひいては世界にとって非常に重要な関係である、我が国としては大局的な観点から冷静に対処している旨を申し上げ、各国から理解を得ました。二国間会談の詳しい内容というのは、これは外交上の議論でありますので、こうした場で申し上げることは控えておきたいと思います。我が国の立場に関し、国内外で正しい理解が得られるよう今後とも努力をしてまいる所存であります。  検察当局に対する働きかけの有無について質問をいただきました。  本件については、検察当局が事件の性質等を総合的に考慮した上で、国内法に基づき、粛々と判断を行った結果と承知をしております。その過程において、検察当局に対して官邸から働きかけが行われた事実はないと承知をしております。  検察官の国会への出頭についての質問をいただきました。  中国人船長の釈放については、検察当局が国内法に基づき、事件の性質等を総合的に考慮した上で、粛々と刑事手続上の処理について判断をしたものであります。外交権一般と密接に検察関係しているという認識は持っておりません。また、検察は、検察捜査の独立性の保障が要請されており、検察官に国会答弁させることはその独立性に悪影響を及ぼすおそれがあると考えております。  マニフェストについて御質問をいただきました。  民主党は、民主党政権は、昨年のマニフェストについて自ら進捗状況を調べておりますが、百七十九の政策のうち、実施したものが三十五、一部実施したものが五十九、着手済みが七十、未着手は十五となっており、総選挙マニフェストはその七割程度が前進していると、このように認識をいたしております。  有言実行内閣と申し上げたのは、六月に政権を担って四か月、政権を本格稼働させる段階に入り、長年にわたり先送りしてきた重要政策課題に着手し、次の世代に残さないで解決していくという私の覚悟を申し上げたものです。  また、昨年の衆議院マニフェストは、任期中の実現国民の皆さんに約束したものであり、財源を確保しつつ、引き続き最大実現するよう取り組んでまいります。参議院のマニフェストは、国民の皆さんの声にも耳を傾け、〇九年の衆議院マニフェスト以降の環境や状況の変化に対応して追加的に記載したところであります。  なお、どうしても実現できないものなどについては、その理由を国民の皆さんに説明して御理解をいただきたいと、このように思っております。  高速道路無料化について御質問をいただきました。  高速道路の原則無料化については、社会実験を通じて、地域経済効果、渋滞や環境への影響、他の交通機関への影響など無料化のメリット、デメリットを総合的に検証した上で段階的に進めてまいります。また、高速道路の無料化は地域経済活性化などのために実施するものであり、そのために国費を投入したとしても無制限な道路建設を進めるものではなく、民営化の趣旨に逆行するとの指摘は当たらないと考えております。  道州制及び消費税を地方の財源にという主張について御質問をいただきました。  地域主権改革においては、住民に身近な行政は基礎自治体が広く担うことを原則とし、広域自治体については、当分の間、現行の都道府県の枠組みを基本とすると考えております。ただし、地域主権改革を推進している中で、地域の自主的な判断を尊重しつつ、現行制度前提とする広域連合や合併の実施、将来的な道州制の導入についても検討していくことはあり得ると考えております。地域主権を確立するためには、国と地方の役割分担の大幅な見直しと併せて、それぞれの担う役割に見合った形へと国、地方間の税財源の配分の在り方を見直す必要があると考えております。  いずれにせよ、消費税の取扱いについては、社会保障改革の全体像について議論する中で、税制全体の議論として一体的に進めていきたいと考えております。  小沢氏の強制起訴にかかわる問題について御質問をいただきました。  政治家の行動は、まず政治家自らが判断していくのが基本と考えます。小沢議員についてもこの原則は当てはまると思っております。その上に立って、党としては、検察審査会議決による強制起訴議員に初めて適用されるケースであり、まず党務を統括する幹事長が党内の意見などを聞いて対応を検討をしていくことといたしております。  村木氏に関する国家賠償の質問についてお答えします。  国家賠償法は、公務員が、その職務を行うについて、故意又は過失によって違法に他人に損害を与えたときは、国等に賠償責任が生じる旨を定めております。この責任の有無については、事実関係の詳細を踏まえ、同法の規定に照らして判断されるべきものと、このように考えております。  国家公務員制度改革基本法に基づく人事評価制度構築について質問をいただきました。  国家公務員制度改革基本法平成二十年六月十三日から施行されております。人事評価制度については、民主党政権成立後の昨年十月から、検察職員を含めた一般職の国家公務員に対し本格的に導入しております。政府としては、本制度の着実かつ円滑な運用を推し進めることにより、公務員の倫理の確立及び信賞必罰の徹底に努めてまいりたいと考えております。  内閣人事局についての御質問をいただきました。  内閣人事局については、国家公務員制度改革基本法では、労働基本権の在り方といった内閣人事局以外の法制上の措置を二十三年六月までに講ずることとしていることを踏まえ、内閣人事局だけを切り出して先に議論するのではなく、残された他の課題と一体的に検討することが総合的、抜本的な改革を実現する上でより適切で適当であり、基本法の趣旨にも合致すると判断し、次期通常国会に関連法案を提出することとしたものであります。  なお、内閣人事局については、自公政権下の二十一年三月に法案を出されておりますが、廃案となり、昨年政権交代後も、本年の通常国会に法案提出いたしましたが、残念ながら再び廃案になったところであります。  このように、政府はこれまで必要な法案を提出しており、今国会に法案を提出しないことをもって直ちに先送りとか法律違反との御指摘は当たらないと考えております。  現役出向、監視機関についての御質問をいただきました。  天下りについては、民主党政権発足後直ちに公務員の再就職あっせんを内閣の方針として禁止するなどの措置を講じ、天下りあっせんを全廃いたしたところであります。特殊法人等への現役出向については、官を開くとの基本認識の下、公務員の専門的知識を他分野で活用するとともに、他分野での経験により公務員のコスト意識、現場感覚を高めるため、大臣の任命権の下で実施するものであります。国への復帰を前提とし、出向時や復帰時、つまり法人退職時に退職金が払われることはありません。職員の出向先の給与水準についても、国民から批判を受けることがないよう適切な対応を取ることといたしております。  以上のことから、現役出向は、従来の退職金を次々にもらっていくような退職後の天下りとは異なるものであり、天下りよりも質が悪いとの指摘は全く当たっておりません。  御指摘のあった監視機関については、次期通常国会に提出することになる国公法改正法案において監視機能を強化した新たな監視機関を設置したいと考えており、規制違反行為の監視は、今後新設する中立公正の第三者機関に行わせることが適当であると考えております。  なお、いわゆる裏下りについても、公務員の再就職あっせんの全廃、独立行政法人の役員ポストの公募による後任者の選考などの措置を講ずる中で適正化を進めてまいります。  政治主導、官邸主導に言及がなかったことについて御質問をいただきました。  政治主導、官邸主導は民主党のこの政権交代における国民への公約であり、このことをおろそかにするつもりは全くありません。今回、所信表明演説では、有言実行内閣として、先送りしてきた重要政策課題を次の世代に残さないで解決することを申し上げたところであります。こうした課題解決のため、国民に選ばれた国会議員が全力を尽くすこと、これこそまさに政治主導の姿であると考えております。  国家戦略局の設置の意欲について御質問をいただきました。  政治主導、官邸主導による政府政策決定を強力に推進するため、現在の国家戦略室を法律上明確に位置付け、国家戦略局とすることなどを内容とする政治主導確立法案をさきの通常国会に提出し、現在、継続審議の扱いとされているところであります。本法案は、今臨時国会において御審議の上、速やかに成立をさせていただきたい、できるだけ国家戦略局が発足できるよう、みんなの党にも御協力をお願いいたしたいと思います。  国家戦略局長に関するお尋ねについては、本法案においては国家戦略局長に内閣官房副長官を充てることとしており、内閣総理大臣のリーダーシップの下、国の重要政策の司令塔としての機能を十分発揮し得るものと、このように考えております。  議員年金の廃止の抜け道に関する質問をいただきました。  議員年金制度が廃止された際に経過措置が講じられ、その適用議員に一時金か年金かの選択の判断がゆだねられたのは承知をいたしております。  また、民主党が当時対案を提出し、他の野党とともに与党案に反対したことも事実でありますが、成立をした法律の個々人への適用については、何らかの拘束を行った事実はございません。  さらに、水野議員本人が提出をされた質問主意書に対する内閣としての答弁書でもお答えをいたしましたが、年金や一時金の支給の請求の有無やその内容は議員個人に関する情報であり、閣僚の立場であるかなしかのいかんにかかわらず公開を求められるべき情報ではないと、このように理解をいたしております。  以上、答弁とさせていただきます。(拍手)    〔国務大臣前原誠司君登壇、拍手〕
  8. 前原誠司

    国務大臣(前原誠司君) 尖閣諸島周辺領海内での衝突事件に関する私の発言に関する報道についての御質問がありました。  議員御指摘の報道のような事実はございません。  以上です。(拍手)    〔国務大臣仙谷由人君登壇、拍手〕
  9. 仙谷由人

    国務大臣(仙谷由人君) 私の記者会見での了としたという発言の意味をお聞きいただきました。  九月二十四日午後の記者会見で諒としているというふうに言っておりますが、これは検察当局の判断が適切だということを私が認識しているという意味でありまして、了解したという意味ではありません。  なお、諒としているのリョウという字は、こういう終了の了ではなくて、あえて言えば、ごんべんに京都の京という字を書く諒でございます。(拍手)    〔国務大臣柳田稔君登壇、拍手〕
  10. 柳田稔

    国務大臣(柳田稔君) 村木さんに関する刑事補償についての御質問がありました。  刑事訴訟法による通常手続等において無罪の裁判を受けた者が同法等によって未決の抑留又は拘禁若しくは刑の執行を受けた場合には、刑事補償を請求することができるものとなっております。  本件につきましては、村木さんから刑事補償の請求がなされた場合には、法に基づき適切に対応されるものと考えております。  次に、国家賠償については、総理答弁と同じでございます。  以上です。(拍手)     ─────────────
  11. 西岡武夫

    ○議長(西岡武夫君) 岩本司君。    〔岩本司君登壇、拍手〕
  12. 岩本司

    ○岩本司君 民主党・新緑風会の岩本司です。  菅総理大臣の所信表明に対しまして、会派を代表して質問いたします。国民の皆様に分かりやすい質問をさせていただきますので、どうか分かりやすい御答弁、よろしくお願いいたします。  我が国経済は、リーマン・ショックに端を発した不況がなお続いているのに加えて、このところの円高で輸出の不振が続いており、とりわけ我が国経済の主力である中小企業は青息吐息の状態です。各種経済指標は、二〇〇九年一月から三月期に底を打ち、現在、経済は緩やかな回復傾向にあるとされておりますが、先進諸国経済の不振に加え、内需の冷え込みやデフレの長期化、株安などが懸念され、また雇用情勢改善の兆しが見られないことなどから、景気の先行きに依然として不透明感があります。  こうした中、政府は、先月二十四日、経済危機対応地域活性化予備費九千百七十九億円の活用を閣議決定し、二十七日には菅総理自身が、雇用・人材育成や新成長戦略の推進などを柱とする今年度補正予算の編成を指示するなど、矢継ぎ早の対策を講じております。  そこで、まずこの補正予算についてお尋ねいたします。  菅総理は、補正予算の編成に当たり、国債の追加発行に否定的であるとされ、厳しい財政状況最大限配慮する姿勢も示しておられます。衆参ねじれの国会運営という大変厳しい状況下ではありますが、政府は、経済財政に対して責任ある対応を行う必要があり、限られた財源の中で最大限の効果が上がるように補正予算を編成することが求められております。予算案の提出は今月下旬とも言われておりますが、補正予算の規模の確定や財源の確保に向けた今後の道筋を伺います。  まず、政権交代後、民主党政権が打ち出す政策について、国民最大の関心事は、その実現に必要な財源の有無についてであります。その補正予算の財源について、玄葉国家戦略大臣は、二十二年度国債費の減額分として約一兆円、二十一年度決算剰余金として一・六兆円、二十二年度税収の増加分として約二兆円などが見込めると御発言をされていらっしゃいます。決算剰余金の全額を補正予算の一般財源として活用するためには特例法の制定が必要となりますが、現時点でこのお考えはあるのか、お伺いいたします。  次に、円高対策について伺います。  先月十五日の為替介入は六年半ぶりに実施されたもので、しかも介入規模も一兆八千億円とも言われる大規模なものでありました。政府、日銀が急激な円高の阻止に向けて強い姿勢を示したという点では大きな意義があったとも思いますが、今回の為替介入の効果についてお伺いいたします。  この介入直後、一ドル八十二円台から八十五円台まで急反発いたしました。しかし、その介入効果は長続きせず、ここ二、三日の対ドル為替レートは再び八十二円台に突入いたしました。こうした動きを踏まえれば、今回の円高の背景には欧米の景気の先行き不安があり、この状況が解消されない限り円高圧力は消えないと思います。このような中で、政府はどのような方針で円高阻止に臨もうとされるのか、見解をお伺いいたします。  また、介入に際しては、各国との摩擦を生じないように国際的な理解を得ておくことが重要であります。介入に対する日本の立場を説明し、為替安定について国際的な理解をどのように得ていくのか、取組方針についてお伺いいたします。  次に、来年度の当初予算の編成について質問いたします。  政府は、元気な日本復活特別枠の活用などにより、需要・雇用創出効果の高い施策への重点配分を行い、新成長戦略を本格実施するとしております。一兆円を相当程度超える規模とされておりますこの特別枠は、公開の政策コンテストを経て予算を組み替える仕組みとされておりますが、政府は、効率的な予算の実現に向けてどのような政策コンテストを実施しようとされているのか、また、政策コンテストを踏まえて編成される平成二十三年度予算はどのような理念に基づいて編成し、元気な日本を復活させようとしているのか、明らかにしていただきたいと存じます。  政府は、今月中に事業仕分の第三弾を開始し、全特別会計について事業の見直しを実施するとしております。特別会計の歳出規模は重複分を除いても百七十六兆円に上り、厳しさが増す財政現状を踏まえますと、事業仕分によって予算の無駄を徹底的に洗い出し、財政健全化に向けた取組を強力に進める必要があります。  鳩山内閣が実施した昨年の事業仕分は大規模な予算の組替えにつながり、菅内閣が実施する事業仕分においても特別会計の効率化に向けた成果が期待されるところであります。  仕分の実施も踏まえ、政府は今後どのように特別会計改革を推し進めようとされているのか、見解をお伺いいたします。  次に、経済産業対策について伺います。  我が国企業は、必要に迫られてその企業活動のグローバル化を進めております。しかし、様々な弊害をもたらす産業の空洞化を防ぐには、企業の国内立地を確保するとともに、企業の製造や研究開発拠点の海外流出を抑制する必要があります。そのためには、他国に比べ高いとされている法人実効税率の引下げ等を実施し、我が国の立地競争力を高めていくことが肝要であると考えます。  法人実効税率の引下げに当たって財源の確保が必要となりますが、二十三年度の税制改正において実施するのか、その場合、どの程度の引下げ幅となるのか、御見解をお伺いいたします。  景気回復の先行きが不透明な中で、中小企業は売上げ減少、収益圧迫、資金繰りの悪化など、依然として厳しい状況にあります。こうした中で、中小企業の資金繰り対策に万全を期し、その倒産を防ぎ、事業を継続させ、雇用を守っていく必要があります。そのためには、景気対応緊急保証制度や金融円滑化法の延長などの施策を実施する必要があると考えますが、政府は今後どのように中小企業の資金繰り対策を実施していかれるのか、方針をお聞かせいただきたいと存じます。  我が国日本にとって、中国は輸出、輸入共に最大の貿易相手国であり、経済的にも最も重要な国の一つであります。このように緊密な関係を持つ国同士であるにもかかわらず、今回の尖閣諸島問題で日中関係は深刻な危機に陥りました。とりわけ、最近の中国によるレアアースの輸出制限は、国内のハイテク産業中国へ移転させようとする意図もあるのではないかと指摘されております。    〔議長退席、副議長着席〕  一方で、フジタの件のような事態を教訓にして、中国から他国へ、あるいは我が国が設備投資等への補助制度を整えれば日本へ帰ってくる企業も増える可能性もあるかと思います。  いずれにしましても、我が国の今後の経済成長に不可欠なハイテク産業発展のためには、レアアースの一国への依存は危険であり、供給を多様化する必要があります。レアアースの安定供給源の多様化のために具体的にどのような取組をしていくのか、お伺いをいたします。  次に、地方主権の問題についてお伺いいたします。  昨年十二月、原口前総務大臣のときにできた地域主権戦略工程表案では、地域主権改革の一環として地方自治法の抜本的見直しを行い、新たな自治の在り方を示す地方政府基本法を制定することとしておりました。現在、総務省に設置されております地方行財政検討会議において地方自治法の抜本改革について検討が行われておりますが、道州制や基礎自治体の在り方など地方公共団体の基本構造とともに、首長と議会の関係など地方自治の在り方について総理の御所見をお伺いいたします。さらに、地方自治法の抜本改革についての検討状況についてもお伺いしたいと思います。  ひも付き補助金の一括交付金化についてお伺いいたします。  ひも付き補助金を一括交付金化すれば地方の裁量権が拡大し、各地域の実情に合った施策が進められ、疲弊している地方経済活性化に大きく貢献するものと考えます。  今年六月二十二日に閣議決定された地域主権戦略大綱では、ひも付き補助金の一括交付金化が盛り込まれました。地方経済を根っこから良くするため、今後どのようにして一括交付金化を実現していく予定なのか、その見通しについてお伺いいたします。  次に、今回の尖閣諸島をめぐる日中間の問題を踏まえて、今後の課題になると思われる点を質問いたします。  尖閣諸島は、歴史的にも国際法上も明確に我が国固有の領土であることは間違いありません。そうしたことを広く国際社会に周知させていくことが重要であり、そのための活動をこれまで以上に積極的に展開していく必要があると考えます。各国首脳との会談などにおいて尖閣諸島をめぐる問題での日本の立場を説明し、理解を求めていかなければなりません。今回のアジア欧州首脳会議、ASEMでの成果も含め、今後の菅政権としての方針をお伺いいたします。  また、中国船舶による東シナ海での活動が活発になっている現状を踏まえると、尖閣諸島の実効支配を継続し、さらには、東シナ海における我が国の海洋権益を守っていくという観点からは、当該海域での警備活動を行っている海上保安庁の体制強化喫緊課題であります。  現在、海上保安庁は、今回の事案を踏まえ、尖閣諸島周辺海域への更なる巡視船の配備や航空機による哨戒などの警備強化に取り組んでいるようですが、一方で、海上保安庁の巡視船艇や航空機は老朽・旧式化が進んでおります。特に、昭和五十年代に集中的に整備された巡視船や航空機は、老朽・旧式化により、警備活動を含めた各種の業務遂行に支障が生じているとのことであります。  菅政権として、海上保安庁の巡視船艇、航空機の早急な整備はもちろんのこと、海上保安庁の警備体制の充実強化を早急に図っていくべきだと考えますが、見解をお伺いいたします。  次に、中国の軍事の透明性について伺います。  中国政府は、二〇一〇年度の国防予算を前年度比九・八%増の五千百九十一億元になると発表しております。これは、一元を十四円で換算すると約七兆二千六百七十一億円となり、同年度の日本の防衛関係予算の四兆七千九百三億円を大きく上回るものであります。さらに、実際の中国の国防費は、北欧のシンクタンクや米国国防省の報告によれば、公表額の一・五倍から三倍に上るとの指摘もなされております。  また、近年の中国海軍による日本周辺海域での活発な活動は、我が国にとって大いに懸念すべきものとなっております。  中国は、政治経済共に着実に成長し、軍事に関しても各国がその動向を注目する存在となっているにもかかわらず、国防費の詳細を明らかにしておらず、透明性が不十分であり、周辺諸国が懸念を示す状況となっております。菅政権として、国防政策や軍事力に関する具体的な情報開示など、中国に対して軍事の透明性の向上を強く求めていくべきと考えますが、菅総理見解をお伺いいたします。  最後になりますが、国民菅内閣に対する期待は非常に大きなものがあります。政権交代の成果を国民の前に本格的に示していくのはこれからであります。菅総理には強い決意を持って改革を進めていただくことをお願いし、私の質問を終わります。(拍手)    〔内閣総理大臣菅直人君登壇、拍手〕
  13. 菅直人

    内閣総理大臣(菅直人君) 岩本司議員にお答えを申し上げます。  まず、補正予算の規模、財源について御質問をいただきました。  本日、午前中の閣議で補正予算を含む経済対策決定したところであります。その規模は国費・限度ベースで五・一兆円程度であり、これを実施するための補正予算の財源として、二十一年度決算剰余金の二分の一の約〇・八兆円、税収補正及び予算の不用を活用することを考えており、特例法の制定は予定しておりません。この対策に基づき、補正予算の策定作業を速やかに進めてまいりたいと、このように思っております。  円高対策についての御質問をいただきました。  現在、我が国においてデフレが進行し、経済情勢が依然として厳しい中、為替相場の過度の変動は、経済、金融の安定への悪影響から看過できない問題であります。こうした考え方を踏まえ、為替相場の過度の変動を抑制する観点から、先般、為替介入を実施し、一定の効果を上げたと認識をいたしております。引き続き為替の動向に注視していくとともに、必要なときに断固たる措置をとってまいりたいと思います。  また、関係国通貨当局間では、為替を含む金融情勢について常日ごろから連絡を取りつつ意見交換を行っているところであります。今後ともG7会合などを通じて各国等と適切に協力をしてまいりたいと、このように思っております。  二十三年度予算編成について質問をいただきました。  二十三年度予算は、御指摘の元気な日本復活特別枠も活用し、需要創造と雇用創出強化することにより、デフレから脱却し、日本経済を本格的な成長軌道に乗せていきたいと考えております。特別枠要望に関しては、検討過程をオープンにする観点から公開手法を導入することとしており、要望の評価を行う体制について、党からの提案もいただきながら現在検討いたしているところであります。  次に、事業仕分第三弾による特別会計の見直しについての御質問にお答えします。  特別会計については、事業についての無駄削減のみならず、制度そのものについても検証し、透明性の向上や見直しを進めていくことが必要です。このため、今月下旬に実施する事業仕分第三弾前半では、十八会計五十一勘定すべての特別会計をゼロベースで見直すことといたしております。引き続き、強力に無駄の削減を徹底していくためにも、事業仕分第三弾の結果を踏まえて特別会計制度の刷新を行ってまいりたいと考えております。  法人の実効税率の引下げと財源の確保について御質問をいただきました。  法人実効税率の引下げについては、日本から企業が海外に流出して雇用が失われることを防ぐといった観点も含め、課税ベースの拡大等による財源確保と併せ、二十三年度予算編成・税制改正作業の中で検討して結論を得ることといたしております。  中小企業の資金繰り対策の方針についての質問をいただきました。  中小企業の資金繰り対策については、景気対応緊急保証が来年三月末に期限切れとなる中でも中小企業者の資金繰りに不安を生じないよう、本日決定した対策において所要の資金を確保するなど、十五兆円の融資・保証規模を用意いたしました。中小企業金融円滑化法を延長するかどうかについては、経済情勢や中小企業等の資金繰り、金融機関の取組状況を勘案して総合的に検討することといたしております。  次に、レアアースの供給源の多様化に関する質問をいただきました。  レアアースの供給源の多様化は、レアアースの安定供給確保のために重要であります。このため、カザフスタン、ベトナム、モンゴル等での鉱山開発、探査について、JOGMECを通じて支援をしてきているところです。先日、私も、モンゴルの総理大臣が来日され、日本のこのJOGMECを含む多くの企業のトップにもお集まりをいただき、この問題で前進を図ることができたと思っております。  また、レアアースのリサイクル技術や代替材料の技術開発など供給源多様化以外の取組も大切であることから、レアアースの安定供給確保に総合的に取り組んでまいる所存であり、今回の、今日決定した経済対策にも盛り込んだところであります。  地方自治法の抜本見直しについての質問をいただきました。  私は、所信表明演説でも述べましたように、地域が主役となって特色ある産業振興や住民の要望に応じた社会サービスの提供ができるよう、我々の世代で確たる道筋を付けなければならないと考えております。地方自治法はこのような観点から抜本的に見直すことが必須であり、総務大臣を議長とする総務省の地方行財政検討会議において、地方自治体の基本構造、長と議会の関係、基礎自治体の在り方などについて鋭意検討を進めているところであります。さらに、議会の在り方、住民の政治参画機会の拡大等についても検討を進めたいと考えております。今後、成案が得られたものから地方自治法改正案として順次国会に提出していくことにより、地域主権改革を着実に実現してまいりたいと考えております。  地方向け補助金改革について御質問をいただきました。  地方向けの補助金、交付金等のうち、投資に係るものについては、平成二十三年度以降、段階的に一括交付金化を実施いたします。このため、昨日の地域主権戦略会議において、一括交付金の対象範囲や制度設計については各府省の枠を超えて自由度の高い交付金に再編するよう検討を指示したところであります。引き続き、地域主権戦略会議を中心に関係府省とともに検討し、予算編成過程を通じて決定してまいる所存であります。  尖閣諸島に関する我が国の立場の国際社会への周知についての御質問をいただきました。  尖閣諸島我が国固有の領土であることは歴史的にも国際法上も疑いのないところであり、領有権をめぐる問題はそもそも存在をしておりません。  ASEMの際の温家宝総理との懇談においても、私からこうした我が国の原則的立場を述べた上で、現状の在り方が問題があること、また六月に私が総理に就任したときに、六月の段階で戦略的互恵関係を進めていくということ、この原点に戻って対応しようということ、さらにはハイレベルの政治会談、さらに民間の交流などを再開することなどで一致をいたしました。そのほかの二国間会談では、日中関係はアジア太平洋地域、ひいては世界にとって非常に重要な関係であること、我が国としては大局的な観点から冷静に対処している旨を申し上げ、各国から理解を得ることができました。  引き続き、我が国の一貫した立場に関し国内外で正しい理解が得られるよう努力をしていく考えであります。  海上保安庁の体制の強化について質問をいただきました。  海上保安庁においては、平素から尖閣諸島周辺海域に常時大型巡視船を配備するとともに、情勢に応じて体制を強化するなど適切に警備を行ってもらっております。大変この海上保安庁には多大な仕事、任務を遂行していただいていることを、この場を借りて感謝の意を表したいと思っております。現下の情勢を踏まえ、引き続き必要な体制の充実強化を図ってまいりたいと考えます。  中国の軍事力の透明性について御質問をいただきました。  岩本議員がおっしゃるように、近年、中国の台頭については著しいものがありますが、透明性を欠いた国防力の強化や、インド洋から東シナ海に至る海洋活動の活発化には懸念を有しております。中国には、国際社会責任ある一員として、国防政策の透明性向上を含む適切な役割、適切な責任を期待をいたしているところであります。  以上、答弁を申し上げました。(拍手)
  14. 尾辻秀久

    ○副議長(尾辻秀久君) これにて午後一時十五分まで休憩いたします。    午後零時八分休憩      ─────・─────    午後一時十六分開議
  15. 尾辻秀久

    ○副議長(尾辻秀久君) 休憩前に引き続き、会議を開きます。  国務大臣演説に対する質疑を続けます。岸信夫君。    〔岸信夫君登壇、拍手〕
  16. 岸信夫

    ○岸信夫君 私は、自由民主党代表して、菅総理所信表明演説に対し、総理及び関係閣僚に質問いたします。  総理、あなたは、昨日の我が党の小坂幹事長の質問に対し、逃げ菅の名前のとおり、かわしの答弁に終始いたしました。逃げはあなたの政治信条でしょうが、最後まで逃げおおせるとは思わないでください。もし答弁が不明確、不十分である場合は再質問、再々質問を行うことをあらかじめ申し上げておきます。  まず、民主党と労組の関係について伺います。  十月十二日に衆議院北海道五区の補欠選挙が告示されますが、この選挙は、北海道教職員組合の政治資金規正法違反事件民主党議員が辞職し、政治と金、政治と労働組合の関係が厳しく問われる選挙であります。既に北教組で勤務時間中の組合活動や選挙活動について会計検査が行われる事態にもかかわらず、本補欠選挙でも、勤務時間中、自治労の支援活動が民主党候補に行われていることが明らかになっています。全く反省の色がありません。  民主党代表としての菅総理に、労働組合の違法な活動を防止するための取組について、地方公務員の政治的行為について国家公務員と同様に制限する考えはないか、伺います。  中国漁船問題について伺います。  総理、あなたは、総理就任以来の四か月、一体我が国のために何をしてきたんですか。参議院選挙の間も世界は動いている。日本のリーダーとして国際社会に何かを発信しましたか。疲弊した地方経済が進行する円高悲鳴を上げていたにもかかわらず、民主党代表選挙にうつつを抜かし、対策が後手後手に回ってしまった。そして、代表選挙のさなかに尖閣諸島周辺の我が国領海で起こった中国漁船による海上保安庁巡視船への衝突事件では、中国が反応してくることが容易に想像できたにもかかわらず、すべてを地検に押し付けた形にして、自ら前向きに対処しようという気構えが全く見られない。むしろ早く厄介払いしたかったようにしか思えません。国難に際し、国民の先頭に立って乗り切っていこうという強い意思が感じられないんです。  最近、マスコミの全国調査で、内閣支持率は急落し、その理由として、中国漁船衝突事件の船長釈放など、菅内閣の一連の対応が適切ではなかったとの回答が七割から九割近くを占めています。  総理政府の最も重要な役割は、国民の生命、財産を守ることです。中でも、領土、領海を守ることは基本中の基本であります。国土を持たない民がどれほど悲惨な運命を歩んできたか、知らない人はいません。ゆえに、政権を持とうとする者は外交安全保障政策について確固たる意思と戦略を示さなければいけないのです。  以前、友愛の海などと言った方がおられましたが、実際には一触即発の火種を抱えたこの海域で、我が国の領土、領海を命懸けで守っている海上保安庁、そして自衛隊の皆さんの心情を思うとやりきれない気持ちです。この度の釈然としない船長釈放によって、最前線で体を張っている海上保安庁の皆さんの士気がどれだけくじかれたか、総理にはお分かりになりますか。答えてください。  総理は、八月十九日、自衛隊のトップを官邸に呼んだ際に、改めて法律を調べてみたら総理大臣は自衛隊に対する最高の指揮監督権を有することが分かったとおっしゃったそうです。六月十五日の本会議では、同僚の佐藤議員質問に対して、自衛隊の最高指揮官として日本という国を守り抜く覚悟がなければ総理に就任することはできないと御自身で述べておられます。その二か月後にこのようなことをおっしゃるということは、そもそもあなたは最高指揮官として先頭に立って我が国を守ろうという気構えがないということではないですか。総理、お答えください。  鳩山総理日本安全保障について何の知識もビジョンもありませんでした。理想だけで現実に対処しようとし、米軍基地移設を迷走させました。その結果、地元住民の信頼を失っただけではなく、日米同盟をも危うくさせたのであります。この度の尖閣諸島での漁船衝突は、その間隙をついて中国が仕掛けてきた海洋進出の結果じゃないですか。総理の御見解を示してください。  普天間問題についてお伺いします。  鳩山政権で副総理であった菅総理にも当然重大な責任があるはずですが、当時も現在も普天間基地問題解決に向けて積極的、具体的に動かれた様子は全くありません。民主党政権は自らの外交無作為を棚に上げ、普天間の将来を沖縄に押し付けてきました。民主党政権選挙で何度民意を問えば気が済むのでしょうか。  言うまでもなく、安全保障政策は地元の意見を聞きながらも最終的には国が全責任を持って決定すべきことなのです。しかし、菅政権は、五月に合意された普天間飛行場の辺野古移設を八月末までに決定するとの日米共同声明をもあっさりと先送りしています。  さらに、閣僚の意見はばらばらです。総理はだんまり、前原大臣は期限を区切るべきではない、そして北澤防衛大臣は微妙な段階で時期設定を云々するのは尚早で配慮に欠けると。総理のリーダーシップはどこにあるのでしょうか。いつまでに普天間基地移設先について詳細を決定されるのか、菅総理、前原外務大臣、北澤防衛大臣、それぞれが自らのお考えをお答えください。  漁船衝突問題では、更に政府の無責任ぶり、うそつき体質が明らかになりました。船長を釈放する際、会見で那覇地検は、今後の日中関係を考慮すると、拘束は相当でないと述べました。こんなコメントがかつてあったでしょうか。仙谷官房長官は、那覇地検の判断なのでそれを了としたいとおっしゃられましたが、いつから一地検が日本外交問題をそんたくするようになったのでしょうか。  外交問題が複雑に絡む船長釈放の判断を一地検に任せる、だれがそのようなことを信じますか。国民のだれもが信じておりません。菅内閣はうそつき内閣だ、こうだれもが思ったから支持率が急落したのではないでしょうか。  菅総理は、船長逮捕から釈放に至るまで、きちんと事態を把握していたんですか。もちろん、国内法にのっとって粛々と対応すべきですが、相手は中国の漁船であります。中国外交問題化してこようことは、当然ながら最初の段階から予想されたことであります。一国の総理が知らぬ存ぜぬでは、危機管理が全くなっていません。  仙谷官房長官は、九月十三日、船長以外の船員十四名を返すに当たっての記者会見で、ガス田交渉などの見通しについてこのように答えておられます。多分、私、すなわち長官の予測では、十四名と船がお帰りになれば、また違った状況が開けてくるのではないか。中国も理解してくれるという一方的な希望的思い込みで事態を悪化させたのではないですか。本当はだれが船長を釈放する判断を下したのでしょうか。  菅総理、今日はテレビ中継がなされております。何が真実なのか、正直にお話しください。うそをつけば、総理、あなたの顔に出ます。賢明な国民にはすべてが分かってしまいます。私の質問と思わず、国民の疑問に答えるつもりで正直に御答弁をお願いします。  今やGDPが日本を抜くと言われる中国は覇権主義の国であります。国防費は過去五年で二倍以上、過去二十一年では二十二倍となっています。中国の海洋進出は建国以来の大戦略と言われており、実際、フィリピン・スービック基地からの米軍撤退後、軍事力を背景に西沙諸島や南沙諸島に進出してきています。日本は、明確な国家戦略を持ってこの隣人に向かい合っていかねばなりません。決して譲ってはならないのです。  民主党の掲げる政治主導は一体どこに行ったのでしょうか。船長釈放は本当に那覇地検の判断でなされたのか。我が党は、真相解明のため那覇地検、検察関係者国会招致を求めたいと思いますが、総理、その前にあなたの言葉で真実をお話しください。  総理国連総会やASEMに出席し、日本の立場を主張しようというときに、その証拠である衝突事件ビデオを全く見ていないということは到底信じられません。蓮舫大臣は、尖閣諸島に領土問題が存在するかのような発言をされていましたが、尖閣は日本固有の領土であり、そこに領土問題が存在しないことは明らかであります。しかし、中国外交問題に仕立て上げてくることは容易に想像できたのでありますから、総理が積極的に事件を把握し、内閣一体となって注意深く対処していかなければならなかったにもかかわらず、ビデオも見ず公開もしなかったというのは外交問題に鈍感で無関心な菅内閣の象徴的な行為であります。  前原大臣は、先日、私が参議院外交防衛委員会で質問した際に、ビデオを見て体当たりをしてきたのが明白であるので最終的には逮捕に至ったと明言されておられます。相手の瑕疵が一見見て分かる、日本が逮捕した正当性を国際社会にアピールできる、そのようなビデオをなぜ公開しなかったのか。公開が遅れたことによって毎日毎日国益を失っているんではないですか。  仙谷官房長官もこのビデオを見て悪質だとは思われませんでしたでしょうか。官邸の官房長官室で御覧になったのに、なぜ身近にいらっしゃる総理にお見せにならなかったのでしょうか。菅総理代表選で票集めにお忙しく、邪魔してはいけないと、女房役の官房長官は気を遣われたのでしょうか。前原大臣もそれに倣ったのでしょうか。明快に御答弁ください。  かつて、大韓航空機爆破事件では、当時、中曽根内閣の後藤田官房長官の決断によって、米国と協調し、国連安保理事会で、自衛隊が傍受したソ連戦闘機の交信記録の公表に踏み切りました。その結果、ソ連に撃墜を正式に認めさせたのです。傍受技術の水準が判明してしまうのを嫌がる防衛庁の抵抗を押し切っての、まさに政治主導です。  菅総理と前原大臣は、中国態度を硬化させる中、米国での国連総会に出席されており、日本主張をアピールする絶好のチャンスでありました。総理が自らの口で真実を訴えようとしないのなら、全世界ビデオを公開するのが一番説得力があったのではないですか。  ビデオの公開については、これも検察判断として逃げている。いつも引用する刑事訴訟法四十七条には、公益上の必要がある場合の例外を認めているではないですか。早期にビデオを公開し、同盟国、米国としっかりスクラムを組んで、国際社会日本の正当性を訴えるのがまさに国益に資するやり方であって、国益以上の公益上の必要はないと考えますが、総理国益を失したとはお考えにならないのでしょうか。  このところ、総理への質問に対し、仙谷官房長官答弁するのが大変目立ちます。陰の総理と呼ばれるまさに仙谷時代ではないですか。もし、衆議院の合意に基づいてビデオ国会に提出されないのであれば、我が党としては、参議院においても国政調査権に基づき、正式な手続を取りたいと思います。総理、何を恐れているのですか。公開を検察判断に任せるのではなく、あなたの決断をお聞きしたいのです。お答えください。  菅総理は、当初欠席の予定だったASEMに、国会日程を先延ばしにしてまで出席されました。さぞや大変な成果を持ち帰ってくれるのだろうと大変期待をしておりました。  尖閣諸島は歴史的に見て日本の領土であることに疑いの余地がないこと、今回の事件は明らかに中国側に非があり中国の謝罪と賠償を要求する権利を有すること、拘束中のフジタの日本人社員を一刻も早く解放すること、中国側の対応国民は非常に憤っていることなど、温首相との立ち話で総理はきちんと主張されたのでしょうか。  この立ち話で、温家宝首相とは偶然遭遇した形を装っていますが、中国側は日本語の通訳を周到に準備していたのに、日本側は英語通訳しかいなかったというではないですか。総理は、温家宝首相に会えるだけでよいと考えていたのではないですか。そんな甘い考えで準備もせずに国会を抜けてのこのこ出かけたとすれば、国民に対する裏切り行為です。  特に、拘束されているフジタ社員については、一国のリーダーである総理日本国民の人権を守るために一刻も早い解放を要求するのは当然です。御家族はいかに心配しているでしょうか。  昨日、小坂幹事長には外交という面で差し控えたいとの答弁がありましたけれども、日本人の人権が懸かっている大問題であります。答弁を差し控える理由にはなりません。直接、温家宝首相に解放を要求したのか、逃げずに明確に答弁してください。  二国間の首脳会談においても、この衝突事件についての我が国の立場を積極的に主張されたのですか。中国との間で領土問題を抱えているベトナムのズン首相との会談はどうだったのでしょうか。時間が短かったでは済まされません。しっかり我が国の立場を説明して、我が国を支持してもらったのでしょうね。隠さずはっきりとお答えください。  メドベージェフ・ロシア大統領が、十一月に行われる横浜でのAPECの前後に北方領土を訪れる意向を表明しています。これは日中関係の悪化に乗じたものだという指摘もなされていますが、ロシアにはどう対処されるおつもりでしょうか。  昨日の答弁では、具体的な計画は明らかにされていないと、答弁を逃げています。情報はきちんと取れているのでしょうか。入ってくる情報をただぼうっと待っているうちに対応が遅れて大統領が訪問してしまったら、それこそ手遅れなんです。きちんとこちらから情報を取って先手を打つべきではないでしょうか。総理の御所見をお伺いします。  拉致問題についても、菅内閣は積極的に取り組んでいる様子は全く見られません。被害者家族は、金総書記の健康状態悪化などによって北朝鮮内が大きく混乱した場合に備え、拉致被害者を救出するための法整備や脱北者団体との連携を強め、被害者に関する情報を収集していくことを求めているそうですが、政府としてはこれらの要求にどうこたえていかれるおつもりか。拉致実行犯の助命嘆願書に署名をした菅総理であればこそ、もっと真剣に取り組むべきじゃないですか。お答えください。  尖閣諸島沖の漁船衝突事件菅内閣対応は、所信表明演説のとおり、まさに日本外交の分水嶺であります。後々、中国の圧力に屈し我が国の領土、領海について日本が譲歩したことが日本外交最大の敗北の日として歴史に残るかもしれません。この責任菅内閣はどうお取りになるつもりでしょうか。普天間問題といい、尖閣問題といい、民主政権は国を守る気概に全く欠けています。政府の無策ぶりは明らかであります。  昨年、浜田防衛大臣の下で、我々は与那国島への陸上自衛隊部隊の配備を決めました。しかしながら、その後の政権交代で北澤大臣は、隣国をいたずらに刺激することは得策ではないとしてこれを取り消したのです。今となれば、あのときにちゃんと進めておけばよかったと思いませんでしょうか。島嶼部での自衛隊部隊の配備について、総理のお考えをお聞かせください。  平成十六年策定の防衛計画の大綱以来、我が国を取り巻く状況は一変いたしました。  北朝鮮我が国の領土上空に向け弾道ミサイルを発射し、国際的な非難にもかかわらず核実験を行いました。中国海軍は艦艇部隊を沖縄近海に進出させています。  早期の防衛体制の見直しが必須であったにもかかわらず、昨年策定される予定だった新大綱は、現状を全く理解していない民主党政権によって政権交代を理由に先送りされたのです。その結果、旧大綱に基づき古い情勢認識に立って二十二年度防衛予算は編成されました。あきれ返るばかりではないですか。  本年八月発表された新たな時代の安全保障と防衛力に関する懇談会報告書では、中国海軍が進出している南西諸島を念頭に、離島への部隊配備をするなど意欲的なものであります。  さらには、集団的自衛権の解釈や武器輸出の三原則の見直し、非核三原則についての将来的な見直しについても求めております。総理、いかに外交防衛に興味のない総理であっても、この報告書には当然目を通し、内容を新大綱に反映されるのでしょうね。明確にお答えください。  総理、あなたは六月に総理に就任された際、自らの内閣を、それが何たるかの知識や理解も十分にないままに奇兵隊内閣と命名されたようですが、今でもこの名前を名のっておられますか。あなた自身を奇兵隊を率いた高杉晋作になぞらえたおつもりでしょうが、我が郷土の英雄である高杉晋作は、こそくな手段を弄して自らの責任を回避するようなひきょうな武士ではありません。あなたが守ろうとしているのは国家国民ではなく、あなたの内閣自身なのです。  総理は、所信表明演説の冒頭で有言実行内閣を高らかにうたっておられます。  しかし、総理、あなたは昨日の衆議院本会議で驚くべき答弁をされました。所信表明演説では大ぶろしきを広げたと堂々と認められたのであります。どこが有言実行なのですか。全く正反対ではないですか。  総理、あなたはただのほら吹きになってしまいます。こんな発言国会で許されること自体、国会発言を軽くし、政治への信頼を失わせているのではないですか。  まさに、国民を欺く大ぶろしき政権、ほら吹き内閣ではないですか。このような不誠実で無責任内閣政権を任せておくわけにはまいりません。菅内閣の一刻も早い退陣を求めて、質問を終わります。(拍手)    〔内閣総理大臣菅直人君登壇、拍手〕
  17. 菅直人

    内閣総理大臣(菅直人君) 岸信夫議員にお答えをいたします。  まず、地方公務員の政治的行為の制限についての御質問についてであります。  公務員の政治的行為の制限は、基本的人権にもかかわる問題として立法府や司法府でも様々な議論があったものであり、その取扱いについては慎重に考えるべき問題だと思っております。  船長釈放による海上保安庁の士気の影響についての御質問をいただきました。  海上保安庁の職員の皆さんが日々高い士気を持って活動に当たっておられることに対して、私も大変評価をし、そういう皆さんの御苦労に心から感謝を申し上げるところであります。  今回の事案においても、海上保安庁が我が国領海内における犯罪行為に対して毅然と対応したものと承知をいたしております。  海上保安庁職員においては、今後とも、関係省庁と連携しつつ、国内法秩序や海洋秩序の維持のため誇りを持って業務に邁進していただきたい、また、そうしていただけるものと確信をいたしております。  最高指揮官としての気構えに関する御質問をいただきました。  自衛隊法第七条において、内閣総理大臣が内閣代表して自衛隊の最高の指揮監督権を有するとされていることは当然承知をいたしており、我が国の平和と独立を守り、国の安全を保つという自衛隊の任務を内閣総理大臣の立場でしっかりと果たしていく覚悟があることを、改めてこの場ではっきり申し上げます。  なお、御指摘の八月十九日の自衛隊各幕僚長等との意見交換においては、内閣総理大臣は内閣代表して自衛隊の最高の指揮監督権を有するという自覚を持って意見交換会に臨む旨を申し上げたものであります。  日米同盟尖閣諸島周辺領海での衝突事件についての御質問をいただきました。  私の内閣が発足して以来、六月末のカナダのG8、G20、また、九月にニューヨークにおいて日米首脳会談を行い、そうした会談を通して、オバマ大統領との間で、普天間問題で若干いろいろ御心配を掛けたかもしれませんが、私の内閣になってそういう二度の会談、加えて一度の電話会談を加えますと、そういう中で信頼関係がだんだん積み上がってきていると、このように私は認識をいたしております。また、外相同士においても緊密な連携が保たれております。日米同盟が危うくなっているという御指摘は全く当たらないと思います。  こういった首脳同士、外相同士の強固な信頼関係の下、日米関係は、普天間の問題を含め、二国間、地域及びグローバルな課題につき十分な信頼関係に基づく緊密な対話、協力を行っております。なお、所信表明演説でも述べたように、中国の動向については、透明性を欠いた国防力の強化や海洋活動の活発化などを懸念しており、注視をいたしております。  いずれにしても、日米同盟を二十一世紀にふさわしい形で更に深化、発展させていく考えであります。  普天間飛行場移設問題に関する御質問をいただきました。  普天間飛行場の移設問題については、本年五月の日米合意を踏まえて取り組むということは何度も申し上げております。同時に、沖縄に集中した基地負担の軽減にも全力を挙げて取り組んでいるところであります。沖縄の方々の御理解を求め、誠心誠意話し合ってまいりたいと思います。  八月の三十一日には、日米合意に基づいて日米両国の専門家による検討が終了し、報告書が取りまとめられました。今後とも、普天間飛行場の危険性を早期に除去する必要があるとの観点から、全力で取り組んでまいりたいと考えます。  検察当局が釈放の判断を行ったことの真偽と検察当局の国会招致についての御質問をいただきました。  中国漁船船長の釈放については、検察当局が、被害が軽微であること、犯行の計画性がないこと、初犯であることなどの事件の性質に加え、我が国国民への影響、今後の日中関係など、その他の諸般の事情等を総合的に考慮した上で、国内法に基づき粛々と判断を行った結果と承知をいたしております。  なお、検察は、検察捜査の独立性の保障が要請されており、検察官を国会に招致することはその独立性に悪影響を及ぼすおそれがあると考えております。  衝突時のビデオの公開について御質問をいただきました。  尖閣諸島が歴史的にも国際的にも我が国固有の領土であることは全く疑いのないところであり、現に我が国が有効に支配をいたしております。今回の事案については、必要な場面において国際社会に対し、しっかりと我が国の立場を説明してきたところであり、今後もこの方針に変わりはありません。  ビデオの公開については、現在の捜査の状況及び国会等の要望を踏まえて、捜査当局において適切な判断がなされると思っております。  なお、他の議員にも申し上げましたけど、質問に対しても申し上げましたが、ビデオについて、それを見た国交大臣や官房長官からその状況について報告は受けておりまして、しっかりとその状況を把握していたことも申し添えておきたいと思います。  温家宝総理との懇談について御質問をいただきました。  温家宝総理との懇談においては、尖閣諸島我が国固有の領土であり、領土問題は存在しないという原則的な立場を申し述べた上で、第一に、日中関係現状は望ましいものではない、第二に、六月の私と胡錦濤国家主席との会談で一致したように、戦略的互恵関係を推進させるという原点に戻ること、第三に、ハイレベルの交流及び民間交流を行っていくこと、この三点を確認をいたしました。  外交上のやり取りの詳細について申し上げることは差し控えたいと思いますが、いずれにせよ、従来よりもそうですが、引き続き中国側に対して、いまだ釈放されていない一名の方の身柄の安全確保とともに、人道的観点からの迅速な解放を求めているところであります。  ASEMでの二国間の首脳会談について御質問がありました。  外交のやり取りの詳細について申し上げることは控えた方がいいと思いますが、ベトナムを含む二国間会談では、日中関係はアジア太平洋地域、ひいては世界にとって非常に重要な関係である、我が国としては大局的な観点から冷静に対処している旨申し上げ、各国から理解を得ることができました。  尖閣諸島我が国固有の領土であることは歴史的にも国際法上も疑いのないところであり、領有権をめぐる問題はそもそも存在いたしておりません。我が国のかかる立場は一貫しており、国内外で正しい理解が得られるよう今後とも努力する考えであります。  北方領土についての御質問をいただきました。  我が国として必要な情報収集は行っておりますが、メドベージェフ大統領北方領土訪問については、現時点で具体的な計画は明らかにされていないと承知をいたしております。我が国の立場は、しかるべくロシア側に伝えているところであります。  いずれにせよ、北方領土問題については、引き続き強い意思を持って首脳レベルで粘り強く交渉し、前進を図っていくことが重要だと考えております。  拉致問題についての質問をいただきました。  拉致問題については、国の責任において、すべての拉致被害者の一刻も早い帰国に向けて全力を尽くす所存です。例えば情報の収集、分析については、拉致問題対策本部事務局の体制を拡充するとともに、関連予算を大幅に増額し、取り組んでいるところであります。  拉致被害者の皆さんの帰国を実現するために政府としてやれることは何でもやるという覚悟で臨んでまいりたいと思っております。  島嶼部への自衛隊配備及び新安防懇報告書の防衛大綱見直しへの反映についての御質問をいただきました。  自公政権の当時に与那国島への陸上自衛隊の配備を決定したとの事実はないものと承知をいたしております。  自衛隊部隊の配備については、配備先の地理的特性を始めとする様々な要素も踏まえつつ、我が国全体の防衛体制整備の観点から議論されるべきものであると考えております。いずれにせよ、与那国島を含む南西諸島の防衛に万全を期してまいりたいと思います。  防衛計画の大綱の見直しについては、政府責任において検討し結果を出すこととしておりますが、去る八月に提出していただいた新たな時代の安全保障と防衛力に関する懇談会の報告書については、その際の検討材料の一つとさせていただきたいと思っているところであります。  奇兵隊内閣と大ぶろしきを広げたとの答弁についての御報告であります。  私も山口県に生まれて十七年を過ごしました。私のイメージする高杉晋作という人はかなり大ぶろしきを広げる人であったと、こんなふうにも思っております。そのことが、それに加えて、私が奇兵隊内閣と申し上げたのは、奇兵隊内閣と申し上げたのは、(発言する者あり)いいですか、お聞きいただけますか。私が奇兵隊内閣と申し上げましたのは、奇兵隊というのは、代々の武士だけではなくて一般庶民が参加をして成り立った政権といいましょうか、奇兵隊であります。私たち現状内閣も、代々の総理の子供とか孫だけで構成するのではなくて一般庶民の代表から成っているということをもって、奇兵隊内閣という言葉は今も生き生きと生きていると考えているところであります。  昨日の大ぶろしきを広げたという答弁は、日本が現在抱える課題解決し次の世代に先送りしないためには、私一人や民主党一党だけでは到底困難であるという認識に立った上で、この議場におられるすべての皆さん、野党の皆さんの協力も含めてお願いしたいという趣旨で申し上げたわけであります。  所信表明演説で述べた重要政策課題実現は、これは民主党課題というよりは今に生きる政治家すべての課題だと思いますが、どうでしょうか。私が全力を尽くすことはもちろんでありますが、野党の皆さんにも真摯に説明を尽くし、誠実に議論を行い、合意形成に全力を尽くしてまいりたいと思いますので、どうか野党の皆さんにも是非御協力をお願いして、答弁とさせていただきます。(拍手)    〔国務大臣前原誠司君登壇、拍手〕
  18. 前原誠司

    国務大臣(前原誠司君) 岸議員から私に二問質問がございました。  まず一点でありますけれども、普天間飛行場の移設問題に関する質問であります。  普天間飛行場の移設問題につきましては、本年五月二十八日の日米合意を踏まえて取り組むと同時に、沖縄に集中した基地負担の軽減についても全力を挙げて取り組んでまいりたいと考えております。  今後は、本年五月の日米合意を含め、代替の施設の計画についての検証と確認の過程を経て、しかるべき時期に開催されます2プラス2によって政府としての決定を行うことになります。決定に向けた過程では、移設計画や負担軽減の具体的措置について沖縄県を始め地元の方々に誠心誠意説明をして御理解を得ていきたいと考えております。  また、ビデオに関する総理への報告の質問がございました。  今回の事件ビデオにつきましては、私が国土交通大臣時代、海上保安庁からこの事案について説明があった際に見ました。その内容につきましては、官房長官等からしかるべく総理にも報告が行われたと承知をしております。  以上です。(拍手)    〔国務大臣北澤俊美君登壇、拍手〕
  19. 北澤俊美

    国務大臣(北澤俊美君) 岸議員にお答えをいたします。  普天間飛行場移設問題については、ただいま菅総理答弁されたとおりでありまして、本年五月の日米合意を踏まえて取り組むと同時に、沖縄に集中した基地負担の軽減にも全力を挙げて取り組みます。総理のリーダーシップの下、沖縄の方々の御理解を求め、誠心誠意話し合ってまいりたいと思います。  それからもう一つ、島嶼部への陸上自衛隊の配備でありますが、岸議員は、浜田防衛大臣の下、我々は与那国島への陸上自衛隊部隊の配備を決めました、これを北澤防衛大臣は取り消したと、こういうふうに御発言をなさいましたが、浜田大臣から大臣としての引継ぎを受けたのが私でございまして、浜田大臣は国会でも再三答弁をいたしておりますが、これを決定したということは事実としてありません。検討をしているということはおっしゃっておるわけでありますが。  私は、与那国島を視察して、その後二十三年度の予算要求で三千万の調査費を今要求しておるということでございます。付け加えさせていただきます。(拍手)    〔国務大臣仙谷由人君登壇、拍手〕
  20. 仙谷由人

    国務大臣(仙谷由人君) 岸信夫議員から、ビデオに関する総理への報告についての御質問をいただいております。  今回の事件ビデオにつきましては、私は、事件の発生した日の夜にビデオを見る機会がございました。逮捕状が発付される前の段階でございました。そのビデオを拝見しながら、海上保安庁から当該漁船の船長を逮捕する予定でその手続を今行っているという報告を受けたところでございます。  したがいまして、その受けた報告は、しかるべく総理にも私の方から報告をいたしました。  以上でございます。(拍手)
  21. 尾辻秀久

    ○副議長(尾辻秀久君) 岸君から再質疑の申出があります。これを許します。岸信夫君。    〔岸信夫君登壇、拍手〕
  22. 岸信夫

    ○岸信夫君 総理は私の質問に対してどれも真っすぐにお答えいただけなかった、大変残念でございますが、多くの質問の中で最も私がお答えをいただきたかった点についてもう一度御質問をいたします。  ASEMの会合のときに温家宝首相との会談を行った、立ち話を行った際に、日本人の解放を要求をする、このことを直接お話しになったのかならなかったのか、ここの点でございます。我が国の、日本人の人権が侵されている、そのような状況に対しても、これが外交上の詳細、こちらの方が優先されるのでしょうか、もう一度お聞きいたします。温家宝首相に対して総理は直接日本人のフジタの社員の解放を要求をされたのでしょうか、イエスかノーかでお答えください。  以上です。(拍手)    〔内閣総理大臣菅直人君登壇、拍手〕
  23. 菅直人

    内閣総理大臣(菅直人君) 温家宝総理との懇談について再度の御質問をいただきました。  外交上のやり取りの詳細についてどこまで申し上げるべきかということは、その都度判断をいたしております。  いずれにいたしましても、このフジタの一人について早く解放してほしいということはいろいろな機会を通して申し上げてきたところでありまして、現在も強くそのことを求めているということを申し上げさせていただきます。  以上です。(拍手)
  24. 尾辻秀久

    ○副議長(尾辻秀久君) ただいま理事が協議中でございます。しばらくお待ちください。     ─────────────
  25. 尾辻秀久

    ○副議長(尾辻秀久君) 片山さつき君。    〔片山さつき君登壇、拍手〕
  26. 片山さつき

    ○片山さつき君 自由民主党の片山さつきです。自民党を代表して、総理所信表明演説に関して質問させていただきます。  なお、答弁が不十分であった場合は再質問させていただくことをあらかじめ申し上げます。  まず、現下の深刻な経済情勢ですが、日本経済の今年の第一・四半期の需給ギャップは二十五兆円もあると推計されていますが、それがこの夏以降の円高、株安、デフレの進行と後手後手に回った政府対応によって更に悪化している可能性が高いわけです。日銀もゼロ金利に戻すに当たってこの悪化をはっきり言っているわけですが、GDPギャップの七割は製造業が占めています。ここまで大変苦しい中、何とか頑張って利益を確保して国内にとどまってきた輸出産業がついに日本を捨て、海外への移転を決断せざるを得ないかどうかの最終局面に追い込まれております。  だから、この対策が有効なものとなるかは非常に決定的に大事なんですが、政治で重要なことは事実認識です。総理は、このGDPギャップの拡大、どのように認識されているのか、まずお伺いします。  経済産業省の緊急調査によりますと、八十五円前後の円高が定着すると製造業は約四割海外移転し、六割は海外生産をシフトすると。為替相場は介入やゼロ金利政策にもかかわらず今八十二円台まで円高が進んでおり、企業は更に苦境に追い込まれ、中小零細は廃業か一家離散しかないと悲痛な叫びを上げているわけです。  ところが、日本から出ているIMFの副専務理事は先日、この八十二、三円の為替相場はファンダメンタルズから見て整合的と言い、以前、仙谷官房長官自身も八十二円ぐらいが財務省のボーダーなのかという発言をし、昨日は櫻井副大臣が、日本が思っているようにはいかないと不用意な発言をなさったため、八十二円台が定着してしまっているわけです。  八十五円で四割移転するのであれば、八十二円になってしまったらどのぐらい企業が追い出されてしまうのか。円高を仮に容認するとでも言うなら、それを補って余りある巨額の対策産業をつなぎ止めない限り、国内製造業は本当に死んでしまいますが、財務大臣、これからG7に行かれますね。そして、経済界の苦しい叫びを聞いているはずの経済産業大臣、採算レートは八十九円から九十円ですよ。そして総理、この御三方に、国益を守るため、いや応なしの通貨安戦争をどう戦うおつもりなのかをお聞きします。  民間のシンクタンクが、この六月に支給された子ども手当がどのぐらい貯蓄に回ったかどうか、もう調査を始めているんです。何と半分以上から六割ですよ。これでは政府に同僚議員が幾ら問いただしてもお答えがないわけですが、だから我が党は、子ども手当やばらまきをやめて、そのお金を本当に景気にすぐ役立つ対策に回すことを提言してきたわけです。  その我々の対策の申入れに対して与党から示された補正予算の規模は四・八兆円でした。今朝閣議決定された対策の規模は五・一兆円と説明されていますが、実はこれ、一・三兆円は地方交付税でありまして、そのうちかなりの部分は来年度に繰り越されることになるんじゃないでしょうか。しかも、そのためには、総務委員会で今国会、法律を通さなければいけないはずです。なのに、午前中、総理民主党議員質問に対して、特例法的なものは必要ないとおっしゃったんじゃないですか。要らないわけですか。  いずれにしても、これを考慮すると、実際には年内にお金が流れるわけではないゼロ国債を足しても、補正予算の規模は三・八兆円にすぎません。これをなぜ表に出して説明しないのか。これでは、規模も粉飾か、大ぶろしきならぬ小ぶろしきと言われても仕方がないかもしれません。いずれにしても、このGDPギャップを埋めるにはせめて乗数効果、この言葉はお嫌いかもしれませんが、乗数効果のある未来につながる社会資本整備をもう少し盛り込むべきではないでしょうか。  コンクリートから人へに建前だけこだわる余り、ツーリトル・ツーレートになると来年の通常国会の冒頭でまた補正、そのときにはかえって大きな額の赤字国債を出さざるを得なくなる可能性が非常に高いと思いますが、この点について総理と財務大臣に伺います。  円高デフレで最も苦しむのは日本企業全体の九九%を占める中小零細企業や町の商店街です。昨年来、民主党政権で、自民党時代からずっと積み上げてきたきめ細かな対策がパフォーマンス目当ての事業仕分でどんどん切られて、不安が高まっています。特に、ほんの数十万円で足りるようななけなしの商店街対策などを残酷にばさばさ切られて泣いている人たちが全国にいるわけですが、その仕分をやった方が一着百数十万円のドレスを取っ替え引っ替え着ておられるということを御存じになったら、その心中は察して余りあるものがあります。  いずれにしろ、大企業仕事の繁閑に合わせて雇用調整をせざるを得ないのが下請中小企業の悲しい運命ですが、派遣法改正、これを国会に出すと言っておられますが、これによって人の確保ができなくなって、追い詰められてしまうんです。その一方で、国が一〇〇%株を持ち続ける日本郵政では非正規職員がスムーズに正規化しており、その不公平感から国民の間では怨嗟の声が上がっております。  総理経済産業大臣は、このような中小企業雇用の実態の現場を踏まえても、なおかつ派遣法改正を強行する御認識なんでしょうか。お答えください。  法人税に関して伺います。  円高で利益が激減した産業界の一縷の望みが法人税減税ですが、一兆円を超える財源が見付からないから、税率は五%下げてあげるけど課税ベースも拡大させてもらうよ、だから税負担は減らさないよとの方針を与党が示していると漏れ聞いております。これでは、菅総理が昔、国会でお使いになったきれいなお言葉をお借りしますと、やるやる詐欺減税ではないでしょうか。総理と財務大臣に伺います。  二十二年度予算ができたときに、埋蔵金伝説は白日の下に崩壊しましたが、まずこのマニフェスト違反、埋蔵金詐欺を国民の前で謝っていただきたいと思います。  ところで、先日、海江田大臣とテレビの経済番組で御一緒したときに、財政投融資の貸付金を束にして証券化して売るとか、相続税を払えるような資産家向けに無利子国債を出してはどうかとか、まあ、ちょっと苦し紛れとしか思えないような財源策を次から次へとおっしゃっておられました。菅総理、野田財務大臣は、この財源策を採用するおつもりなんでしょうか。  埋蔵金騒ぎといい、民主党の財源探しは、近くに行くとすうっと消えてしまう逃げ水、蜃気楼の繰り返しに見えますが、そこまでして財源を徹底して洗い出そうとおっしゃるんだったら、一般会計と国債整理基金特会と合わせて八兆二千六百億円という大変な資産がバランスシートのど真ん中に載っていますよ。これは必要な法人税減税額の八倍です。何でしょうか。日本郵政の株式ですよ。この売却を法律で凍結し、しかも将来もそれを一部しか売らない、しかもいつまでに売却するとの予定も付けていないので、つなぎ国債の財源にしようとしてもできない、この郵政改革法案をこの国会に提出するとも所信表明総理はおっしゃっていますが、全国百四十万人の金融、保険、JAバンク、漁業や林業の共済で金融をやっている方、百四十万人の方々が自分たち仕事を極端に圧迫される、職場を脅かされるとこぞって全部反対している民業圧迫法案であります。  この法案に民主党内で最もこだわっておられたのは強制起訴となった小沢前幹事長ですが、私がかつて金融国会の前後、伺っていた限りでは、菅総理は金融についてはかなり自由主義的なお考えをお持ちでした。岡田幹事長も、郵貯の預入限度額を五百万円に引き下げるべきではないかと御主張されておられました。にもかかわらず、この法案の成立を強行するというのであれば、ああ、菅内閣もやっぱり小沢内閣だったんだなと、そのように言われても仕方がないのではないでしょうか。  強制起訴になっても、何が怖いのか知りませんが、処分とかもなされないようですが、総理官房長官のお考えを伺います。  次に、環境の問題です。  環境、この非常に重要な問題につきまして、今回提出されるという地球温暖化対策基本法案が仮に成立してしまうと、雇用国内投資に悪影響を与え、成長に不可欠な技術開発の原資を奪ってしまうという産業界の悲痛の叫びは総理のお耳には入っていないんでしょうか。既に、円高、法人税高、派遣法改正の三重苦によって日本産業は大打撃を受けており、このCO2削減強行の四重苦は、とどめを刺すほどきついものなんですよ。    〔副議長退席、議長着席〕  昨年の十一月に、地球温暖化に関する閣僚委員会、これ、民主党の閣僚委員会ですからね、現与党の。ここに提出された与党の、二〇二〇年までにCO2を九〇年比二五%削減する場合の毎年の家計の負わされる負担、失われる雇用、失業率の上昇の試算の中には、家計の御負担最大で一年に何と七十七万円にもなるという、そして雇用は百二十万人も失われるという日本経済破局シナリオがかなり信用のあるシンクタンクから、大学から指摘されているのを、これも総理は御存じないんでしょうか。  経済政策では、ワーストシナリオをも検討するのが当然でございます。なのに、前環境大臣は、この不都合な真実を隠ぺいし、都合のいい試案だけで前国会を終わらせてしまいました。しかも、二五%削減を海外との排出権取引にも頼るというなら、CO2の最大の排出先の一つは中国、その中国に巨額に日本人の血税を支払うことになりかねないんです。それも、場合によっては何兆円の規模です。信じ難い愚策ではないでしょうか。  これらの点に関して、総理官房長官経済産業大臣に納得のいく御説明を求めます。  国際社会での中国、日中との経済関係ですが、最近、中国は、財政破綻したギリシャに支援を申し出てヨーロッパに感謝されるなど、国際金融界での存在感を着々と高めています。そして、中国は、IMFの大規模増資によって日本を抜いて世界第二位の発言権を持つ可能性が出てきているんです。  その中国の通貨人民元は、日本円と異なって自由取引通貨ではなく、日米欧からの再三の要請にもかかわらず大幅に過小評価されたままです。また、今回のレアアースの対日輸出の一方的制限に見られるように、WTOルールにも、しばしば勝手に破るなど、先進国としての責任を自覚せず、振る舞いができない国であります。  そんな国に対して、我が日本がプラザ合意、構造協議、繊維、自動車、半導体、金融など累次の通商摩擦を乗り越え、国際社会に払ってきたような痛みを何一つ経ることなく世界第二位の発言権を明け渡すという判断を仮にするならば、一体それはどういう国益によって正当化できるというのでしょうか。この話は政権交代後、この一年に進んだんですよ。  これからG7に行かれる財務大臣及び財務大臣時代の菅総理は今までどういう交渉をしていらしたのか、また外交は一元化というんですから、前原外務大臣、知らないでは済みません、どのように対応されるのか、お答えください。  ガス田問題についてお伺いします。  九月十七日、海上自衛隊P3Cが撮影した写真によって白樺ガス田の海面が濁っていることが確認されました。自民党の部会で経産省の担当者が、掘削が行われた可能性が高いと発言し、報道もされていますが、撮影された写真の公表、国会提出を何度かお願いしても断られておりますが、拒否される場合、どなたのどのような判断なのか、経済産業大臣、官房長官に伺います。  ガス田交渉に当たって、仮に約束に違反して中国が掘削を始めたとしても、経済産業省保有の探査船などを使用し、日本もこちら側の鉱区で試掘調査を始めればいいわけですよ。  この対抗措置のマニュアルのあるなし、そしてその内容の事実関係について経済産業大臣に御確認します。そして、仮に掘削が行われてもこの対抗措置を発動しないという判断があり得るのか、だったら、だれがそれを判断するのか、経済産業大臣、外務大臣、官房長官に伺います。  尖閣、魚釣島は、埼玉の民間の方の所有地を国が借り受けているとの説明を内閣官房から受けています。仮に、日本国籍の民間人が居住を希望し、持ち主も許可する場合、受け入れていただけるのでしょうか。  尖閣問題での国の煮え切らない態度日本中がいらいらしております。そこで、愛国心にあふれた方が、多少の不便はあっても自分が国境の防人になると実は既に私に言ってきておられる方がいらっしゃいます。この愛国心をまるで押し殺すかのように居住が駄目だというのであれば、どなたのどういう理由による判断なのでしょうか。  また、民間人の居住を断り続けて、日本による実効支配を進めるのだというのであれば、当然国の機関による利用、例えば自衛隊の演習、海上保安庁の灯台以外での施設での駐在、そういったことを進めていただけるのでしょうか。官房長官、尖閣はしっかり守っているから大丈夫だと講演等でおっしゃっている外務大臣、さらに、最終責任者として総理にもお伺いします。  次に、特別要望枠を政策コンテストにかけることの危険性、内閣としての政治責任の放棄及び国会における予算審議の形骸化について伺います。  新成長戦略実現する財源であるはずの元気な日本復活特別枠には、我が国を取り巻く最大の脅威である中国北朝鮮のミサイルに対抗し得る唯一の手段であるミサイル防衛の整備経費、尖閣で重要性が浮き彫りになった在日米軍の思いやり予算、海上保安庁の体制整備などが含まれていますが、財務大臣は、この二・九兆円の要望を何と半分以下に削り込む意向を委員会で私に答弁されています。つまり、国民の安全を守るという主権国家の基本的な責務をこの内閣は投げ出しているのであります。  こうなってしまった最大の原因は、社会保障や地方交付税以外の経費を、防衛費であろうが、海の警察であろうが、法律上使途が特定されているエネルギー財源であろうが、すべて一律一割カットという理念のない要求基準を作ってしまったからであります。  パブリックコメントは、日本国民が一人一コメント出しているのか、外国人やその影響下にある勢力が成り済ましているのか、あるいは買収された意見なのか、確認するすべがありません。なのに、それを参考に評価会議で優先順位を付けるというのは余りに無防備で危険です。そもそも政治とは、政策の優先順位を決めるということではないですか。せめて今からでも、パブリックコメントの対象から除いて、二度とこのような亡国的予算要求基準を作らないようにしていただきたい。外務大臣、財務大臣、そして総理の御説明を求めます。  ここまでの重要事項を正しく民意が反映され得ないと民主党の閣僚も認めているパブリックコメントにかけるほど理念に自信がないなら、衆議院を解散して国民の皆さんに聞いてみてはいかがでしょうか。  最後に、総理国民の命を守る決意、覚悟の欠如を指摘しておきます。  先ほどの答弁でも、ASEMでの日中首相会談でフジタの残ったたったお一人の身柄の釈放について話し合ったのかについて、確たる答えがございません。日本中の四千万人のお勤め人、サラリーマン家庭にとって、これは他人事ではありません。中国に出張、滞在することは、今やどこの御家庭にも起き得ることです。外国で拘束されても助けてくれないような政府では、企業国民も国を捨てるでしょう。  菅総理政治姿勢こそが国民に、日本の空洞化の最大の元凶となっていることを最後に申し上げて、私の質問を終わります。  御清聴ありがとうございます。(拍手)    〔内閣総理大臣菅直人君登壇、拍手〕
  27. 菅直人

    内閣総理大臣(菅直人君) 片山さつき議員にお答えをいたします。  まず、経済認識とGDPギャップについての御質問です。  我が国の景気は、リーマン・ショックで大きく落ち込んで以降、持ち直してはきておりますが、このところ環境の厳しさを増していると認識しております。失業率が高水準にあるなど、依然として厳しい状況にあります。GDPギャップの試算については、推計方法によって値が異なるため相当な幅を持って見る必要がありますが、最新のデータが取れる二〇一〇年第二・四半期のGDPギャップはマイナス二十五兆円程度と第一・四半期とおおむね同程度であると試算をいたしております。  円高対策についての質問をいただきました。  現在、我が国においてデフレが進行し、経済情勢が依然として厳しい中、為替相場の過度の変動は経済、金融の安定への悪影響から看過できない問題であると考えております。こうした考え方を踏まえ、為替相場の過度の変動を抑制する観点から、先般、為替介入を実施し、一定の効果を上げたと認識しております。引き続き為替の動向について注視していくとともに、必要なときには断固たる措置をとってまいりたいと考えております。  また、関係国通貨当局間では、為替を含む金融情勢について常日ごろから連絡を取りつつ意見交換を行っております。今後ともG7会合等を通じて各国等と適切に協力してまいりたいと考えております。  補正予算について御質問をいただきました。  本日取りまとめた経済対策は、単なる目先の景気刺激策ではなく、新成長戦略実現による自律的な回復という大方針の下に、その一環として策定したものであります。今回の経済対策は各党からの御提案を踏まえて策定しており、自民党の提案と比べても規模において遜色なく、内容も共通する部分が多いものとなっております。また、御指摘の成長の基盤をつくる社会資本整備もその柱の一つとしております。  補正予算の成立は国民生活に直結する課題であり、与野党間での意見交換を進め、合意を目指してまいりたいと考えており、与野党間での建設的な協議を期待をいたしております。  労働者派遣法案について御質問をいただきました。  現在御提案している労働者派遣法改正案は、まさに派遣労働者の現場の実態を踏まえ、行き過ぎた規制緩和を適正化し、派遣労働者を保護するための抜本的な改正を行うものであります。  この法案は、公労使三者がぎりぎりのところで合意したバランスの取れた内容であり、常時雇用する労働者の派遣は禁止の例外とし、その施行日も今後三年以内とするなど、企業への影響も勘案しているところであります。政府としては、施行までに職業紹介の充実に努めるほか、派遣先で派遣労働者を直接雇用した事業主への助成制度により、派遣先である中小企業の人材確保を支援していくことといたしております。  法人税の引下げと課税ベースの拡大について御質問がありました。  法人実効税率の引下げについては、日本から企業が海外流出して雇用が失われることを防ぐといった観点も含め、課税ベースの拡大による財源確保と併せ、二十三年度予算編成、税制改正作業の中で検討して結論を得ることといたしております。政府としてはこのような方針を明確に打ち出しており、やるやる詐欺との御指摘には当たらないと思っております。  財政投融資の貸付金の証券化及び無利子国債の発行による財源策について御質問をいただきました。  財政事情が厳しい中、予算編成に当たっては、歳入歳出両面にわたる最大限の努力や工夫を行う必要があります。その上で、財政融資貸付金の証券化については、財投債を財源としており、その証券化によって生じた収入は財投債の償還に充てられるべきものであるから、新たな財源とはならないなどの問題があります。  また、相続税を免除する無利子国債については、無利子ゆえに失われる利子収入よりも、軽減される相続税額の方が大きい者が主として購入するものと想定され、国の財政収支はその分悪化するなどの問題があります。したがって、国債の発行、消化が総じて円滑に行われている現在、あえてこれらの方策を導入する必要性があるのか、また、税の公平性や市場経済への影響等の観点から、慎重に検討する必要があると考えております。  次に、郵政改革関連法案について御質問をいただきました。  郵政改革関連法案は、郵政民営化によって生じた諸問題を克服し、郵政事業サービスが利用者の立場に立って郵便局で一体的に提供されるようにするとともに、将来にわたりあまねく全国において公平に利用できることを確保するための法案であります。同法案については、民主党国民新党との間の合意書において、速やかにその成立を期すとしているところであり、今国会において速やかな成立を目指してまいりたいと考えております。  地球温暖化対策基本法案の成立が与える雇用国内投資への悪影響等に関する御質問をいただきました。  地球温暖化対策経済に与える影響については、様々な試算があることは承知をいたしております。一方、新成長戦略においては、環境分野を雇用を生み出す成長分野と定め、二〇二〇年までに五十兆円超の環境関連新規市場、百四十万人の環境分野の新規雇用を想定いたしております。新成長戦略に位置付けた施策を実施し、環境分野に投資を呼び込み、経済活性化するかぎとしていくことが重要だと考えております。  また、海外との排出権購入についてのお尋ねがありましたが、二〇二〇年二五%削減という中期目標のうち、国内削減分と海外からの排出権購入分の割合については、国際交渉の状況も踏まえながら検討していくこととしております。中期目標の達成のために、国内での排出削減対策を着実に進め、いたずらに海外との排出権購入に頼る考えはありません。  中国の国際的な地位向上についての御質問がありました。  近年、中国の台頭については著しいものがあり、日中の経済的な相互依存関係も深まっております。このような中、相互に資源取引や貿易を含め国際社会の共通のルールを遵守することが重要であり、中国には国際社会責任ある一員として適切な役割と言動を期待をいたしております。こうした考え方の下、私は、財務大臣当時から中国との間で経済、金融の諸課題について緊密に意見交換を行ってきたところであります。  今後の日中関係については、アジア太平洋地域の平和と繁栄、経済分野での協力関係の進展を含め、大局的観点から戦略的互恵関係を深める日中双方の努力が不可欠と考えております。先日のASEMの際の温家宝総理との会談でも、戦略的互恵関係を推進していくことについて意見の一致を見たところであります。  尖閣諸島への民間人の居住と有効支配の強化について質問をいただきました。  国の機関を除き上陸等を認めないという所有者の意向を踏まえ、また、尖閣諸島の平穏かつ安定的な維持及び管理のためという政府の貸借の目的に照らし、政府としては原則として何ぴとも尖閣諸島への上陸を認めないとの方針を取っております。尖閣諸島我が国固有の領土であることは歴史的にも国際法上も疑いがなく、現に我が国はこれを有効に支配しております。政府としては、尖閣諸島に関する我が国の一貫した立場に基づき、従来から尖閣諸島付近海域において厳正かつ適切な警備を実施しており、引き続き万全の体制で警備に当たる考えであります。  二十三年度予算編成についての質問をいただきました。  二十三年度予算の元気な日本復活特別枠に対する要望については、検討過程をオープンにする観点から公開手法を導入することとし、要望の評価を行う体制については党からの提案をいただき、現在検討しているところであります。  御指摘のように、公開手法には様々な論点があり、それらも十分勘案した上で、最終的には内閣責任において予算を策定するということには変わりがありません。  温家宝総理との懇談と邦人拘束事案についての御質問をいただきました。  外交上のやり取りの詳細についてどこまで明らかにするかということは、これは外交に携わった方であれば、当然そのことが一つの判断が必要だということはお分かりだと思っております。  当然のことながら、フジタの一人残られている人の解放については、早い段階から今日に至るまで、あらゆるいろいろなパイプで解放を求めていることは言うまでもありません。私の内閣では、国民の生命及び財産を守るべく、主体的な外交を進めていく決意であります。  残余の質問については、関係大臣から答弁をさせていただきます。(拍手)    〔国務大臣野田佳彦君登壇、拍手〕
  28. 野田佳彦

    国務大臣(野田佳彦君) 片山さつき議員から私には六つのお尋ねがございました。順次お答えをさせていただきたいと思います。  まず、為替水準についての御質問でございます。  現在、我が国においてデフレが進行し、経済情勢が依然として厳しい中、為替相場の過度な変動、そして無秩序な動きは、経済や金融の安定に悪影響を及ぼし、看過できない問題でございます。  こうした考え方を踏まえまして、為替相場の過度な変動を抑制する観点から、先般、約六年半ぶりに為替介入を実施したところでございます。容認できる水準についてがお尋ねのポイントだと思いますが、為替の水準に関するコメントは控えさせていただきたいと思います。  いずれにしても、引き続き為替の動向については重大な関心を持って注視していくとともに、必要なときには介入も含め断固たる措置をとってまいる決意でございます。  二問目は、補正予算についてのお尋ねでございました。  本日取りまとめた経済対策は、デフレ脱却雇用を起点とした経済成長を目指し三段構えで実施する経済対策の第二段階であり、現下の厳しい経済情勢や先行き懸念を踏まえつつ、日本経済の抱える課題対応しようとするものであります。経済対策を実施するための補正予算の規模は五・〇五兆円程度であり、各党からの提言と比べて遜色のないものと考えております。  また、あえて付言しますが、これとは別に経済予備費九千二百億円を活用して緊急的な対応策を既に実施しているところでございます。経済対策の内容については、御指摘の成長の基盤をつくる社会資本整備も柱の一つとしております。  補正予算の成立は国民生活に直結する課題でございますので、与野党間で意見交換を進め、与野党間での建設的な協議が行われることを強く期待をしたいと思います。  続いて、法人税率の引下げと課税ベースの拡大についての御質問がございました。  既にこれはもう総理からも御答弁いただいているとおりでございまして、法人実効税率の引下げについては、課税ベースの拡大等による財源確保と併せ、平成二十三年度予算編成、税制改正作業の中で検討して結論を得ることとしています。こうした方針は昨年末に閣議決定した平成二十二年度税制改正大綱にも明記しているところであり、政府の改革の方向性に係る方針は当初から一貫をしており、御指摘のような批判は当たらないものと考えています。  続いて、財政投融資の貸付金の証券化及び無利子国債の発行による財源策についてのお尋ねがございました。これは総理答弁ですべて尽きておると思いますので、私はこれ以上付言することは控えたいと思います。  続いて、中国の国際的な地位向上についての御質問がございました。  近年、中国の台頭については著しいものがあり、日中の経済的な相互依存関係も深まっている。このような中、相互に資源取引や貿易を含め、国際社会の共通のルールを遵守することが重要であり、中国には国際社会責任ある一員として適切な役割と言動を期待をしたいと思います。  こうした考えの下、我が国中国との間で、経済、金融の諸課題について緊密に意見交換を行ってきております。私も本年八月末に日中ハイレベル経済対話に参加をし、王岐山副総理あるいは謝財政部長を始めとする中国側とも幅広く議論を行ったところであります。引き続き、中国との間で経済、金融の諸課題について幅広く議論してまいりたいと思います。  平成二十三年度予算編成についてのお尋ねでございますが、元気な日本復活特別枠に対する要望については検討過程をオープンにするという観点から公開手法を導入することといたしました。要望の評価を行う体制等については現在検討しているところでございます。  いずれにせよ、最終的には総理判断の下で優先順位を付けて予算措置を講じていきますので、御指摘あったような御懸念は無用かと思います。  以上です。(拍手)    〔国務大臣大畠章宏君登壇、拍手〕
  29. 大畠章宏

    国務大臣(大畠章宏君) 片山さつき議員から五つの御質問をいただきました。  第一の質問は、為替水準についての質問でございます。  これにつきましては、先ほど財務大臣からも御答弁がございましたが、為替水準への言及は控えさせていただきたいと存じます。ただし、急激な円高産業界に与える影響は深刻だと強く認識しております。したがいまして、企業は年末にかけて、来年度の投資大枠を策定することにかんがみ、国内投資促進プログラムを取りまとめ、しっかりと実行させていただきたいと考えております。  二点目の質問でございます。労働者派遣法改正案について御質問がございました。  現在、この労働者派遣法改正案は継続審議となっているものでございますが、派遣労働者の雇用の不安定などを背景として、厚生労働省の労働政策審議会において議論され、登録型派遣、製造業務派遣を原則禁止とすることで労使が一致したものと認識をしております。改正法案では、政府は、企業の労働力の確保を支援するため、職業紹介事業の充実等の措置を講ずるよう法律に明記されております。  経済産業省といたしましては、厚生労働省としっかりと連携をしながら、製造業務派遣で働く労働者や人材確保面での中小企業への影響など現場の実態を注視し、問題があれば適切に対処してまいりたいと考えているところでございます。  三点目の質問でございます。地球温暖化対策について御質問をいただきました。  まず、地球温暖化対策世界全体で取り組むものでなければならないと私は認識をしております。したがいまして、日本の技術と知恵を生かし、国内外の取組を積極的に進め、特にアメリカ中国の背中を押していくことが重要だと考えております。  排出削減を進めた場合、家計等にどの程度の影響が出るのか、様々な試算があることは承知しております。温暖化対策経済雇用に大きく悪影響を与えることがあってはなりません。環境と経済の両立を第一に、産業界や労働界を含め国民の御意見を十分に踏まえ、国際競争力の確保や雇用の維持に十分配慮し、実効性ある取組を進めてまいりたいと考えております。  京都議定書の下では、我が国の排出削減約束を達成するため、我が国として海外からの相当量の排出枠を購入せざるを得ないことは事実であります。アメリカ中国を含むすべての主要国が参加し、公平で実効的な一つの法的枠組みの構築を目指すことが大切です。我が国の低炭素技術や製品、インフラ等の海外展開による他国での排出削減が我が国の貢献として評価される仕組みづくりなどを進めることが、国富の流出を防止し、環境と経済の両立に大変大事だと思いますので、この辺も含めて全力で頑張ってまいりたいと思うところでございます。  四点目の質問でございます。海上自衛隊が撮影した白樺油ガス田の写真についての御質問がございました。  白樺油ガス田プラットフォームの写真を政府が対外的に公表することは、政府の情報収集の内容等について明らかにすることになり、今後の情報収集や外交交渉等に支障を来すおそれがあることから差し控えたいと考えております。また、これは政府としての判断でございます。  最後質問でございますが、中国側が白樺油ガス田で掘削を開始した場合の対抗措置についての御質問をいただきました。  お尋ねの対抗措置に関するマニュアルは存在いたしません。白樺については、引き続き外交ルートを通して中国側に一方的な活動を控えるよう強く求めていくと同時に、事実関係の確認を要求していく考えでございます。また、仮に掘削が確認された場合には、東シナ海における日中間の協力についての二〇〇八年六月の合意に反するものとみなさざるを得ず、しかるべき措置をとることになると考えております。  以上で終わります。(拍手)    〔国務大臣仙谷由人君登壇、拍手〕
  30. 仙谷由人

    国務大臣(仙谷由人君) 片山さつき議員から私には五問質問をいただいたと思っております。  郵政改革関連法案についての御質問がございましたが、総理答弁と全く同じであることを申し上げたいと存じます。  それから、地球温暖化対策基本法案の成立が雇用国内投資への悪影響を与えるのではないかという質問でございますが、これは今、大畠経済産業大臣がお答えになったのと私の答えも同じでございます。  ただ、あえて申し上げると、政府としては、総理から答弁したとおり、我が国が持つ環境分野の強みを生かし、五十兆円超の環境関連新規市場と百四十万人の環境分野の新規雇用の創出を目指しており、いたずらに海外に依存せず、国内での排出削減を着実に進めてまいります。  海上自衛隊のP3Cが撮影した写真で、白樺ガス田の写真についての御質問がございました。この点については、大畠経済産業大臣が答弁したのと全く同じでございます。  次に、東シナ海油ガス田交渉についての御質問がございました。この点についても私の答えは大畠経済産業大臣が答弁したのと全く同じでございますので、繰り返しません。  尖閣諸島への民間人の居住と自衛隊や海上保安庁による駐在についての御質問が片山議員からございました。この点につきましては、菅総理大臣の答弁と全く同じでございますので、割愛をいたします。  以上でございます。(拍手)    〔国務大臣前原誠司君登壇、拍手〕
  31. 前原誠司

    国務大臣(前原誠司君) 片山議員からは私に四問質問がございましたが、東シナ海のガス田の問題は大畠経済産業大臣が御答弁をされました。また、尖閣諸島の管理については菅総理答弁をされましたので、私は二点だけ答弁をさせていただきたいと思います。  まずは、中国に対しての外交一元化についての質問でございますけれども、日中の経済的な相互依存関係が深まる中、相互に資源取引や貿易を含めて国際社会の共通のルールを遵守することが重要であり、中国には国際社会責任ある一員として適切な言動を求めてまいりたいと思います。  他方で、世界全体でも中国がレアアース生産の約九六%を占めており、中国のみに過度に依存しない多角的な資源外交の展開も必要でございます。  これまでも、外務省及び関係省庁が緊密な連携を取り、経済面も含め外交を行ってきたところでございますが、今後も、そのような戦略性も含め、緊密な連携を維持して政府一体となって取り組んでまいりたいと考えております。  最後に、元気な日本復活特別枠を政策コンテストにかけることについての是非がございました。  国民に個々の予算の必要性をより良く知ってもらうことは、私は大事だと思っております。特に、国防や海保による領域警備の必要性をいま一度真剣に考えていただくことは大変重要であり、そういった意味でも評価できる面もあろうかと思います。  いずれにいたしましても、最後内閣がその必要性を踏まえて責任を持って判断することになりますので、御指摘の点は当たらないと考えております。  以上です。(拍手)
  32. 西岡武夫

    ○議長(西岡武夫君) 片山君から再質疑の申出があります。これを許します。片山さつき君。    〔片山さつき君登壇、拍手〕
  33. 片山さつき

    ○片山さつき君 御答弁は本当に官僚の準備したそのままで、しかも閣内同じような答えが準備されて、やはり菅内閣は官僚にとっての最小不幸内閣という霞が関のうわさは本当だったんだなと思いますが。  中国がIMFに出資比率が二位になったときにどうするのかについてもお答えがなかったし、ホームページで今いろんなところからミサイル防衛や思いやり予算について寄せられてきているコメントを、本当にそういう形でいいのか、止めないのかについてもお答えがなかったし、そして、一番重要なことは人命の問題ですが、ずっと聞き続けていることなんですよね、これは。  フジタのたった一人お残りになった社員につきまして、外交の問題とおっしゃいますが、中国外交部の方は自分の首相が言ったことをある程度公表しているんですね。中国は共産主義国で我が国は自由主義国家じゃないんでしょうか。なぜ言えないのか、本当に家族の気持ちになっているのか、国民の不安を解消しないと本当に日本人が出ていっちゃいます。  もう一回、明確に誠意を持ってはっきりと頼んだのかをお答え願いたいと思います。(拍手)    〔内閣総理大臣菅直人君登壇、拍手〕
  34. 菅直人

    内閣総理大臣(菅直人君) 片山さつき議員質問にお答えをいたします。  先ほども申し上げましたけれども、外交交渉というのはいろんなパイプを通していろんな形で行います。ですから、フジタの四人の社員が拘束された時点から、いろいろなパイプを通してその釈放を求めてきたところであります。そういった中で、今日まで三人の解放は成りましたけれども、最後の一人についても早急に解放するよう申し上げているところであります。  この温家宝総理との懇談、あるいは他の二国間の懇談などいろいろな場面がありました。例えばある国との懇談では、率直に申し上げてかなり突っ込んだ話もしたことがあります。しかし、その中身を公表することは、場合によってはその国とある国との関係にも影響する問題もあるわけでありまして、そういったことを含めて判断するのがまさに外交交渉というものだと私は認識をいたしております。  そういった意味で、私と温家宝総理との懇談では、先ほど申し上げましたように、原則的なこの主権についてしっかりと申し上げた後に三点について合意をいたしたわけであります。その一点は、現在の日中関係が好ましい状況ではない、そして、私が総理に就任した六月に胡錦濤総書記との間で確認した、戦略的互恵関係を進める、そしてハイレベルの政治的な交流、さらには民間交流を再開する、この三点で合意をいたしたわけでありまして、私は、この三点の合意の中からこれからの日中関係改善道筋が、十分ではないかもしれないけれども、一つ見えてきたものと、このように理解をいたしております。  以上です。(拍手)
  35. 西岡武夫

    ○議長(西岡武夫君) これにて質疑は終了いたしました。      ─────・─────
  36. 西岡武夫

    ○議長(西岡武夫君) この際、お諮りいたします。  鴻池祥肇君から裁判官弾劾裁判所裁判員を、平山幸司君から同予備員を、ツルネンマルテイ君、衛藤晟一君及び山本一太君から裁判官訴追委員を、牧山ひろえ君、梅村聡君及び外山斎君から同予備員を、それぞれ辞任いたしたいとの申出がございました。  いずれも許可することに御異議ございませんか。    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  37. 西岡武夫

    ○議長(西岡武夫君) 御異議ないと認めます。  よって、いずれも許可することに決しました。      ─────・─────
  38. 西岡武夫

    ○議長(西岡武夫君) この際、  裁判官弾劾裁判所裁判員、同予備員、  裁判官訴追委員、同予備員、  皇室会議予備議員、  皇室経済会議予備議員、  検察官適格審査会委員、同予備委員、  日本ユネスコ国内委員会委員、  国土審議会委員及び  国土開発幹線自動車道建設会議委員の選挙 を行います。  つきましては、これら各種委員の選挙は、いずれもその手続を省略し、議長において指名することとし、また、裁判官弾劾裁判所裁判員予備員裁判官訴追委員予備員、皇室会議予備議員、皇室経済会議予備議員の職務を行う順序は、これを議長に一任せられたいと存じますが、御異議ございませんか。    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  39. 西岡武夫

    ○議長(西岡武夫君) 御異議ないと認めます。  よって、議長は、裁判官弾劾裁判所裁判員その他の各種委員を議席に配付いたしました氏名表のとおり指名し、職務を行う順序を決定いたします。     ─────────────      ─────────────
  40. 西岡武夫

    ○議長(西岡武夫君) 本日はこれにて散会いたします。    午後三時四分散会