○脇雅史君 私が聞きたいというか、皆さんに聞いていただきたかったのはそういうことではないんですが。つまり河川で、それぞれの川で
計画を作るって、一体どういう手順で何を決めるんだろうか。まず、この川は何年確率、これは日雨量なり三日雨量なり、雨量確率で安全度の度合いを決めますね。一番安全にしなくちゃいけない川は二百年確率、低い川は五十年とか三十年と。まず、この川の重要度からして、どれだけの対象の規模にしましょうかと、安全度をどれぐらいにしましょうかと。そして、それは雨量で確率計算をするんですね、雨量、全体、面積の雨量、そこに降る雨の量を確率処理しまして、二百年確率、二百年に一回降るぐらいの量の雨を降らせましょうと。ところが、降らせるときに降り方が違うんですね。朝降ったけれども夜降らなかったとか、ピークにうんとどかっと降ったり、だらだらと降ったり、いろんな降り方があります。これは降雨時間パターンと言いますね。
それから、同じ流域の中でも、例えば利根川でいえば、東京には降ったけれども群馬県には降らないとか、やたら群馬県に降ったとか、それぞれ降り方が違いますね。それがまた
地域パターンと言うんですね。その様々な降雨パターン、時間雨量、
地域雨量、そういう時間分布、
地域分布というものをそれぞれ変えながら、同じ量の雨でも高水は倍半分違ってくるんですね。本当に様々な雨を想定して、そして計算をして、そしてどんな高水が出てくるかという検討をするんですね。それが出てくるのが基本高水なんです。こういう波形、基本高水というのは時間と流量をずっとグラフにしますとこういう絵になるんですね。上に凸の、何時間ごとにどんな量が、流量が流れるかというようなことが出てきて、その基本的な基本高水という流量をどうやって処理しましょうかというのが治水
計画なんですね。
そうすると、そのとき考えるのが、一番大事なことは今ある河川、この間、カドウと言ったら稼働
状況の稼働というふうに速記で書いてありましたが、これは河の道ですね。今ある河川、現況の河川で最大限流しましょうというのがこれ原点なんですね、今あるんだから、最大限流すと。そのときに何が大事かというと、ハイウオーター、
計画高水位と言っていますが、
我が国はまさに川があふれてできた平野に人が住んでいるものですから、みんな河川の高水位より低いところに住んでいるんですね。これがヨーロッパなんかと基本的に全く違うところであって、大多数の国は一番低いところに川が流れているものだから、流量が増えてもずっとじわっと水位が上がっていくだけで、破堤はんらんということはないわけですよ。ところが、
我が国はある規模を超えると破堤はんらんがあるものですから、この
計画高水位というものは、これまでのものは高くしないと、ずっとこれは基本的な哲学と。これは河川砂防技術基準にも書いてありますが、そこで抑えているんですね。それを高くしちゃうと、もう破れたときのエネルギーが倍加してきますので、怖いんです。だから、できるだけ水位は上げない。川を掘ることもあるんですが、掘ってもこれはなかなか、すぐ埋まったり、維持が難しいものだから、現況の川の
状況を見ながら、広げたり、いろんなことはしますが、それで最大限流れる流量を取るんですね。
そうすると、大体
計画二百年なんかやると、川で流れません。川を倍ぐらい広くしようかといったって、それはもうみんな人が住んでいるからできない。そこでダム
計画というのが出てくるんです。ダムや遊水地、どこかにためるしかないぞということでダムが出てくるから、ダム要らないといったらその
計画論ができないし、また、例えば一度こうやって
計画しても、とんでもない雨が降ったりするんです。この間、奄美大島で降りましたね。あれ多分、今までの川を倍ぐらい広げたって流れません。それぐらいの雨が降るんです。そうすると、雨が降るたびにどけどけと、これまでそういうことをやってきたわけですが、今更またどけと言われても、田んぼも家もなくなっちゃうよなというわけで、できないということがよくあるんですね。
そこで、総合的に考えて、どこにどうためて、どういう放水路を造るとか遊水地を造るとか、様々なことを総合的に流域全体で検討する、つまり、流域全体の総合性というのが要るんですね。総合的な
計画なんです。それがまさにあの基本方針で決めるべきこと。その基本高水を処理して、河道でどれだけやりますかというのが
計画高水流量であって、様々な施設でそういう
計画高水流量になるように施設配置
計画を作っていくと。簡単に言うと、これが河川
計画で、ちょっと分かりにくいかもしれませんが。それを決めるのが実は河川
整備基本方針、今申し上げたのが、それが基本方針の段階なんですよ。だから、ダム
一つ取って、このダムやめますよと言われても困るんです。総合的に決めると。
今日、ちょっともう
一つお配りした一枚紙があったと思うんですが、これがまさにその基本方針で、これに続くいろんなものがあるんですが、まさに総合的に決めなさいよとか、いろんなことを考えて決めなさいよというようなことが書いてある。これはもう、河川砂防技術基準というのはそんなことは百も承知でよく書いているんですが、そういうことで決める。それを、ダム
一つ、これ、このダム
見直ししましょうといってやめたらどうなる。このダムの代替施設はどうしますかなんて個別にはできないんです。まさにもう一回原点に戻って、このダムをやめるとしたらどういう施設
計画にしたらいいんだと、元からやり直さなくちゃ駄目なんです。
つまり、ダムの
見直しというのはまさに河川
整備基本方針の変更なんです。そうでしょう。だって、ダム
一つやめたら、その下流の
計画高水流量って変わるんですよ。
計画高水流量を決めるのは、これは河川
整備計画では決めないですよね。河川
整備計画というのは、それは方針で決めた全体の施設に対してどうやって、当面、お金がない中で取りあえずやるべき仕事はどこでしょうかということを考えながらやるのが基本
計画だから。その基本
計画に合わせてダム
見直し決めましょうと言われたら、私は途方に暮れちゃうんです。基本方針にまで戻らなかったらできないんです。特に直轄のダムはね。そういうダムなんだから。本当に
地域的に効かすダムだったらそういうことはあり得るわけですが、補助ダムの中で、中にはそういうのもあるでしょう。しかし、直轄でやっているダムは全部基準点に効く、基準点に効くという言い方もよく分かりにくいかもしれませんが、要するに、流量をカットして、基本高水から
計画高水流量まで下がる、そういう
効果を持つというダムにしていますから、そのダムをやめたらその量だけ増えるんですね。だから、それはもう、もう一回総合的に基本方針をやり変えねばならぬ。つまり、ダムの
見直しというのは基本方針をやり変えると言わないといけないんです。基本
計画に合わせてやると言ったのでは
見直しにならない。これ、どうでしょうか。