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田中(康)
委員 すると、先ほど私が降ってわいたTPPと申し上げました。わずか一カ月前には、ほとんど
皆さんが口にすることもなかった言葉でございます。
御存じのように、日韓貿易というのは、ことし上半期、韓国から
日本への輸出が一・一兆円で、逆に
日本から韓国への輸出が二・六七兆円、日韓貿易始まって以来の最高記録でございます。韓国にとって、輸入額の一五%を占めるのが
日本からでございます。
この韓国は、読売新聞も昨日、国際面の右肩で大きく報じているように、FTA、自由貿易協定こそが繁栄の道だと。韓国は、菅さんと同じ市民運動家出身の盧武鉉
政権下で、既に米韓FTAの
政府間交渉をまとめ上げているわけでございます。
また、
日本よりも一歩も二歩も先んじて、シンガポール、マレーシア、ベトナム、ブルネイ、そしてタイ、インドネシア、フィリピンを含む十カ国のASEAN、東南アジア諸国連合やチリともFTAが発効済みでございます。そして、EU、欧州連合、ペルーとも発効待ちの段階。カナダ、メキシコ、オーストラリア、ニュージーランドとも具体的な締結交渉を行っている。
すなわち、TPP交渉参加九カ国のうち、ブルネイとマレーシアを除く七カ国と既に韓国はFTA関係なわけでございます。しかも、韓国では、FTAとEPA、
経済連携協定は同じ
意味で使われている。だから、李明博
大統領は、APECを目前に控えてもTPPには静観の構えでございます。
とすると、まさに今、この関係国は、TPPには参加しない韓国も中国もインドネシアもタイもフィリピンも、そしてロシアもインドもEU、欧州連合も、
日本にとっては貿易における重要な関係国でございますから、まさに、仮に二国間EPAをこの
基本方針にも書かれているように
推進するならなおのこと、TPPが万能薬ということではないということでございます。
確かに、今までの
日本の、あるいは
政権交代前、しかし、我々も、
野党であったとはいえ、国の
政策に関しては
責任があったわけですが、それが、先ほどの、北方領土を二十年間指をくわえて見ていたのと同じようにおくれをとっていたということはあろうかと
思います。
しかし、
基本方針にも、先ほど申し上げたように、「さらに、アジア太平洋
地域においていまだEPA交渉に入っていない主要国・
地域との二国間EPAを、
国内の環境
整備を図りながら、積極的に
推進する。」と明記されているわけでございますから、なぜこの点が、TPPが先にありきのようなぐあいなのか。
二枚目のフリップを見せていただきたいんですが、
内閣官房が配付をした「
経済産業省試算 TPP不参加による基幹
産業の損失!?」では、「
日本がTPPに不参加のままではEU・中国とのFTAも遅延する」と決めつけているわけでございます。これは私は、科学からはほど遠い試算ではなかろうか、発想ではなかろうかと
思います。
では、何でTPPに参加しない中国が、私は、
日本は貿易立国でございますから、攘夷か開国かなどという不毛な二元論を申し上げているのではございません。ただし、国益というものは、この国に暮らし、まさに真っ当に自律的に生きる方々の
国民益でなくてはならないわけでございます。ですから、TPPに参加しない韓国が、EUとも
アメリカともFTA協定にこぎつけたのは、ではあり得ない話かというと現実にそうではないわけですから。共同通信も一昨日、米国が事実上主導するTPPへの参加は、中国抜きの自由貿易圏づくりに加担することを
意味する、すなわち、最大の貿易相手国である中国を無
意味に逆なでし、尖閣諸島問題でぎくしゃくした関係をさらに悪化させる火種にもなりかねないというふうに書いております。恐らくこれは、冷徹な
認識を持たれる
経済界の方々も同様の
思いではなかろうかと
思います。
確かに、中国という大国は、貪欲に国益を追求するナショナリズムの大国であります。正直に申し上げて、改めていただかねばならない数々の点があろうかとは
思います。しかし、
アメリカとて、これは同様に貪欲に国益を追求するデモクラシーの大国なわけでございまして、そもそも国益というものは、国家は国益を追求して私は何ぼの存在ではなかろうか、このように思っております。
ですから、菅さんは先ほど、石にかじりついても
政権をとおっしゃいましたが、まさに私
たちは、よい
意味でのナショナリズムやデモクラシズムの通商国家を目指す、ヒューマニズムやセンチメンタリズムだけでは冷徹な国家運営はできないと私は考えております。
ですから、貿易立国の
日本も、農業にとどまらず、いかなる
産業を守りはぐくむかという国家
戦略を具体的に示して、同時に
議論をしていかなければ、単なる青年の主張としてAPECの前に宣言だけなさるという形では、
国民は疑心暗鬼になられようかと私は
思います。
そして、TPPというのは、すべての分野はゼロベースでございます、
皆様。ですから、これは農業にとどまる問題ではないということでございます。まさに、金融や保険や医療も、さらには、ただいま放送されておりますが、電波というものも、それは貪欲に国益を追求する国家の究極のねらいでもあります。とするならば、今この
質疑をテレビやラジオで見たり聞いたりしていらっしゃる方々のこの放送というものも、いわばルパート・マードックのような人が十人も二十人も諸外国から「開かれた
日本」にやってくるというようなこともあり得ることなわけでございます。ですから、
日本は、先ほど申し上げたように、交差点外交をするべきでございまして、私は、これは八方美人ではない
戦略と覚悟が必要かというふうに思っております。
実は、
一つ苦言を呈させていただければ、菅さんは、
政権が何をやりたいか、
国民に伝わっていないのではないかと、放送局出身の新しいスタッフと三時間にもわたっておすし屋さんで広報体制の
議論を重ねた翌日に、土曜日でございますが、包括的
経済連携に関する閣僚
委員会が開催されました。しかし、この決定した基本事項は、それから二日間が経過した本日の朝九時過ぎに至っても、残念ながら、首相官邸のホームページにはその全文はおろか骨子や概略すら掲載をされておりません。「
菅総理の動き」と題して、その会合であいさつする菅さんの写真のみが載っているわけでございます。
しかし、すべて、
日本経済新聞はこの
基本方針の全文を掲載しております。他のメディアも皆、その骨子と内容を載せております。やはり、広報体制というものはどういうものなのかということ、まさに新聞紙上でうかがい知るのみという形では、
政権が何をやりたいか、私は
国民に伝わるはずもないと思っております。
ところで、菅さんに改めて
お尋ねを申し上げたいと
思います。
焦点となる農業振興策は、来年六月をめどに
基本方針、十月をめどに
行動計画を策定と、随分と悠長な計画ともメディアは伝えております。
菅さんは、これは複数のメディアが報ずるところでは、農業者戸別所得補償
制度を初めとする関連経費が何兆円になってもおれが
責任をとると断言されたというお話です。が、その額は、農業者の自立とは対極の単なる箱物行政と終わってしまったウルグアイ・ラウンド対策の六兆円をはるかに上回る数十兆円になろうかと
思います。その財源はどのようになさるおつもりなのか。御
自身の私財をなげうたれるのか、
国民負担の増税に走るのか。
あるいは、先般、私も
衆議院の本
会議で、金融機関は、まさに、お亡くなりになった方等の口座で動きがないものを十年たつと自動的に、毎年九百億円も金融機関の不労所得となっておる。これをイギリスの
政権と同じように
政府のアカウントにして、しかし、それは
政府が無駄遣いをするのでなく、NPOを初めとする、まさにビッグ・ソサエティー・バンクという構想のもと、
地域の人々、
国民の人々のために活用しようということを考えております。
どのような形でその財源というものは確保なさるおつもりなのか、あるいは別の形で何か
責任をおとりになるのか、その方針のところをお聞かせください。