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内閣総理大臣(菅直人君) 経済
産業大臣として二度の
APECに出席された甘利
議員から内容の込もった御質問をいただきまして、ありがとうございました。
ただ、最初に申し上げたい一言は、機嫌を損ねたら
APECに来てもらえないのではないかといって私が逃げ腰だったと言われますが、まさか、この
APECに、これだけの成長センターの
会議に、私は、ロシアや中国の首脳が来ないことはあり得ない、そのように当初から確信しておりました。二国間の問題と
APECの重要性の違いは甘利さん御本人もよくよくわかっておられるはずでありまして、そういう、いわば、これ以上言うと言葉が過ぎますのでやめますけれども、そういう目線の余りにも低い見方はぜひおやめをいただきたいということを冒頭申し上げておきます。
今般の
APEC首脳会議での重要なテーマの一つは、二〇一〇年のボゴール目標達成に区切りをつけ、アジア太平洋
地域の持続可能な成長を実現させるための将来像を構想することでありました。私は
議長として、そのような構想を横浜ビジョンとして取りまとめました。
この横浜ビジョンを踏まえ、太平洋をまたいで、アジア、大洋州、北米そして南米の国々がそれぞれ連携していくことで、この
地域全体の持続可能な成長につながると考えております。
特に、アジア太平洋自由貿易圏、FTAAPの実現に向けた具体的な手段をとることに合意をいたしました。また、この
地域として初めての、長期的かつ包括的な成長戦略を取りまとめたところであります。
また、このような
APEC首脳会議の成果を踏まえ、
我が国が大きく国を開き、発展著しいアジア太平洋
地域とともに成長の道を歩むことが国益につながること、そして、このような
考え方から、今回の
会議の成果は、
APECの、そして
我が国の歴史の新しい一ページになると私は確信をいたしております。
このように、世界の成長センターであるアジア太平洋の国と
地域の首脳が一堂に会し大きな成果を生んだ
APEC首脳会議にこの
地域のこうした首脳国はすべて出席をしていただいたことは、もちろん御承知のとおりであります。
そこで、FTAAPの実現に向けた道筋についての御質問をいただきました。
FTAAPについては、二国間のFTAやEPAを積み重ねる、あるいは多国間におけるASEANプラス3、ASEANプラス6、TPPといった協議など、いろいろな道筋があります。ASEANプラス6について言えば、市場として大きな潜在力を有するインドや、先進
民主主義国の豪州も参加しており、大いに意義があると認識をいたしております。
日本とインドとの間では既にEPA交渉が完了し、将来のアジア太平洋
地域の自由貿易圏に向けて具体的な一歩を踏み出しております。そういった
意味で、甘利さんがASEANプラス3よりもプラス6を重視するという一つの
考え方については、傾聴に値する御意見として聞いておきたいと思います。
我が国としては、アジア太平洋
地域全体における自由貿易圏を目指し、このように
幾つかの道筋についてそれぞれ積極的に進めていく、これが横浜ビジョンでの大きな方向性であると確認をいたしているところです。
来年は米国オバマ大統領がハワイのホノルルで
APECを主催することになっています。それに向けて、大変実り多くのことを盛り込んだ横浜ビジョンを着実に実現してまいりたいと考えております。
次に、東アジア・アセアン経済研究センター、ERIAの
予算等についての御質問をいただきました。
議員の御指摘のとおり、このERIAについては、G20の場などで何度もASEAN事務総長のスリン事務総長からお話をいただき、西村事務局長に大変頑張っていただいて、ASEANや
APECにとって本当にかけがえのない存在だということを何度もお聞きかせいただきました。そういった
意味で、甘利
議員がERIAについて高い評価をされていることを私も改めて、このことについて御支援などをいただいたこともあったと思いますが、お礼を申し上げたい、このように思っております。
事業仕分けの結果は同センターの拠出金のあり方等について問題提起をしたものと聞いておりますけれども、少なくともこのERIAという組織の重要性ということについてはしっかりと念頭に置いて来年度の
予算を考えてまいりたいと思います。
なお、一つだけ申し上げますと、
APECの常設事務局というものをERIAがやっているというのはちょっと
意味が違っておりまして、
APECの国際事務局は一九九二年以来シンガポールに設置されておりまして、その機能の強化が課題でありましたが、二〇〇七年の
APEC首脳会議において事務局長の常任化など事務局機能の強化が合意され、本年から、初めて、専任事務局長としてヌール氏が就任しておられます。
なお、現在のこの
APEC専門の事務局は、事務局員六十五名、こういうふうに聞いているところであります。
いずれにいたしましても、
APECに対してもASEANに対しても大きな力を発揮しているERIAの重要性については、御指摘もいただきましたので、十分に頭に入れて
対応していきたいと考えております。
次に、TPPへの
判断及び
農業分野の
対応に関する御質問をいただきました。
甘利
議員からは、TPPのルールづくりへの
我が国の関与の必要性及びセーフティーネットの準備について、大変傾聴すべき御意見をいただいたと認識をいたしております。
自由民主党の中には、保守的な
考え方で質問される方もたくさんおられまして、ぜひとも甘利
議員の方向で党内の御意見の集約をいただけるとありがたい、このように思っております。
APEC開催を前にして、包括的経済連携に関する基本方針を
閣議決定いたしました。今、再び大きく国を開くとの決意のもと、すべての品目を自由化交渉の対象として、世界の潮流から見て遜色のない高いレベルの経済連携を進めております。
具体的には、二国間及び多国間の経済連携
協定の交渉等に妥結及び加速化を進め、さらに、TPPについても関係国との協議を開始することといたしました。事実、
APEC期間中もTPP参加九カ国の首脳
会議が開かれ、私も
APEC首脳会議の
議長としてオブザーバー参加をし、
情報収集に直接当たったところであります。この場では、来年
APECホノルル会合までに交渉に結論を出すという意欲が各首脳から示されておりました。
農業分野の
対応策については、必要
予算額等について、今般設置する
農業構造改革
推進本部において、
平成二十三年六月をめどに基本方針を決定し、さらに、必要な
財政措置及びその
財源を検討することといたしており、中長期的な視点を踏まえた行動計画を
平成二十三年十月をめどに策定することといたしております。
具体的な対処については同本部の場で徹底して議論をしていただくことになりますが、例えば、
農業の二次、三次
産業への進出による六次
産業化、新規参入支援を進めるための農地利用のあり方の検討、
規模拡大や生産向上、
輸出支援等の
措置を抜本的に検討してまいりたい、このように考えております。
次に、日ロ
首脳会談について御質問をいただきました。
北方四島が
我が国固有の領土であるという
我が国の原則的な立場はしっかりと伝えました。そして、今回、自分は、メドベージェフ大統領の国後訪問について、その立場から改めて抗議をいたしたところであります。そして、日ロ間の平和
条約交渉においてもこの
日本の原則的な立場を前提として
対応するということも申し上げたところであります。
日米、日中、日ロ
首脳会談についても重ねて御質問をいただきました。
今般の
APEC首脳会議において、米国、中国、ロシア、韓国を初め七カ国との間で
首脳会談を行い、それぞれ大きな成果があったと私は考えております。
日米関係については、一部に同盟関係が必ずしも十分に機能していないのではないかという御心配や御指摘もありましたけれども、今回、オバマ大統領との三度目の
首脳会談を行い、
日米同盟こそが、
日本においても、この
地域においても必要不可欠なものであるという認識で一致し、
信頼関係を深めて、
回復してきたと考えております。
このような
信頼関係のもと、先日の日米
首脳会談では、さらに
日米同盟を
深化、発展させ、来年前半に招致をいただいた私の訪米の機会に、二十一世紀の
日米同盟のビジョンを共同声明のような形で示すことで一致をいたしました。
日米同盟は新たな段階に進む準備に入ったと考えております。
日中関係については、尖閣諸島沖の漁船衝突問題以降、ぎくしゃくした
状況が続いておりました。そして、今回の
首脳会談で、改めて、自分の就任時の六月における戦略的互恵関係の
推進という原点に戻ることを確認いたしたものであります。
甘利さんは、白紙に戻したからプラスになったとは言えないと言われましたが、私の数学の知識でいえば、マイナスからゼロになったということは大きな前進だ、このように考えているところであります。
日中
首脳会談では、尖閣諸島について
我が国の確固たる立場を述べるとともに、戦略的互恵関係を発展させていくことや
政府間・民間交流の促進、経済分野を含むグローバルな課題での
協力を強化していくことで合意をいたしました。
日ロ
首脳会談では、先ほども述べたように、
我が国固有の領土であることを申し上げた上で、国後島訪問について抗議の意を明確に伝えました。従来、首脳間での領土交渉がこの間必ずしも進展をしていなかったわけでありますけれども、これから、領土問題の解決のための協議と経済
協力のための協議を首脳同士で進めていくことについて合意をいたしました。その上で、メドベージェフ大統領の方から訪ロの招待をいただきましたので、私の方も、検討の上、
対応を、希望しているということを申し上げました。
そういった
意味で、何の成果もなかったという御指摘は全く当たらないということを改めて申し上げておきたいと思います。
次に、山積する諸課題についての覚悟と
リーダーシップに関する御質問をいただきました。
議員が御指摘のとおり、
我が国は、この二十年間の長きにわたって先送りしてきた重要
政策課題がたくさん存在しております。経済、
財政、
社会保障、
地域主権、
外交の改革は、過去の
政権が積み残して、もはや次の世代に残していくことができない課題だということで、私はこの
国会における冒頭の所信表明演説でそのことを申し上げたところであります。菅
内閣発足以来、喫緊の、景気、経済、
雇用対策に不断に取り組みを行い、同時に、今申し上げたような重要
政策課題については、いわばこれを次世代に残さないという覚悟の中で取り組んでいくことを改めてこの場でも申し上げたいと思います。
また、いろいろと世論調査の結果についてお述べをいただきました。
確かに世論調査は一つの世論の指標でありますから、それは真摯に受けとめなければなりませんけれども、非常に短期に上下をする傾向もありまして、そのことについて一喜一憂をし過ぎることも大変問題だと思っているところであります。そうした立場でしっかりと
政治に取り組んでまいりたいと思います。
また、
政治と金の問題についても、
岡田幹事長のもとで党として
政治改革
推進の議論を積み重ねております。
代表選のことにも触れられましたけれども、
代表選では私が再選されて、そして、新たな党執行部と
内閣を改めて構成いたしました。決して二重権力構造といったことにはなっておりませんので、どうか御心配をされないでいただきたいと思います。
また、大変困難な道のりではありますけれども、まさに私があえて有言実行という表現をいたしましたのは、つまりは、黙っていても、物を言わなくても、後に残すか残さないかが問われているわけでありまして、そういった
意味では、二十年間にわたって長く大部分の時期に
政権を担当されていた
自民党の皆さんも、次世代に残さないという、そのことを共通の目標としてしっかりと
政策的な対案を出していただくよう心からお願いして、答弁とさせていただきます。
なお、残余の件については、担当の大臣から答弁させます。(
拍手)
〔国務大臣蓮舫君
登壇〕