○江利川
政府特別補佐人 人事院は、八月十日、
国会と内閣に対しまして、
公務員の
給与等に関する報告及び勧告を行い、あわせて
公務員人事管理に関する報告を行いました。また、
国家公務員の育児休業等に関する法律の改正についての
意見の申し出を行いました。
このたび、その内容について御説明申し上げる機会を与えていただき、厚く御礼申し上げます。以下、その概要を御説明いたします。
本年も、昨年に引き続き、月例給及び特別給について、以下のように引き下げ改定を勧告いたしました。
月例給については、例年と同様に、
行政事務を行う
公務員と、
企業規模五十人以上の
民間企業で事務・技術等の業務を行う従業員の四月時点の
給与を精確に
調査し、
比較いたしました。その結果、厳しい
民間給与の
状況を反映し、
公務員給与が
民間給与を七百五十七円、〇・一九%上回っていることが判明しました。この結果を踏まえて、
国家公務員法第二十八条の情勢適応の原則に基づき、
民間給与との較差を解消するため、月例給の引き下げ改定を行うこととしました。
その際、
公務員給与を
民間と
比較すると、若年層では公務が
民間を下回っている一方で、特に五十歳代後半層の官民の
給与差が大きくなっている傾向にあることを踏まえ、五十五歳を超える
職員の
給与について、本府省課長級から課長補佐級に相当する
職員の俸給及び俸給の特別調整額の支給額を一・五%減ずる措置を講ずることとしました。また、
公務員給与が
民間を下回っている三十歳代にまで影響を及ぼさないよう、四十歳代以上を念頭に置いて俸給表を平均〇・一%引き下げることとしました。なお、人材確保の必要がある医師に適用される俸給表については、引き下げ改定を行わないこととしました。また、指定職俸給表については、平均〇・二%引き下げることとしました。
特別給についても、例年と同様の方法により
民間企業における昨年冬と本年夏の賞与の支給割合を
調査し、これとの
比較を行いました結果、特に昨年冬の
民間賞与が大幅に減少したことにより、公務が
民間を上回っておりましたので、支給月数を〇・二月分引き下げることとし、本年度につきましては、十二月期の特別給から差し引くこととしました。
実施時期につきましては、公布の日の属する月の翌月の初日としておりますが、本年四月から改正法施行までのマイナス較差相当分は、十二月期の期末手当で解消するよう調整を行うこととしております。
以上の措置により、
職員の平均年間
給与は、約九万四千円、一・五%の引き下げとなります。
また、
平成十八年度から
給与構造
改革を実施していますが、当初予定していた施策は、本年度ですべて導入されることとなります。この
改革では、地域間
給与配分の
見直しや年功的な
給与上昇の抑制などを実現するため、俸給表水準の平均約四・八%、最大約七%の引き下げを、個々の
職員について経過措置を設けながら行う一方で、地域手当を新設して、その支給割合を段階的に引き上げる等の施策を講じてきました。
その効果の検証の一環として、昨年に引き続き、四月時点における地域別の公務と
民間の
給与較差を算出しましたところ、地域別較差は、昨年よりもさらに縮小して、約二・〇
ポイントとなり、
改革前の約四・八
ポイントと比べると二・八
ポイント程度縮小してきております。今後、俸給引き下げに伴う経過措置額がさらに解消することに伴い地域別較差は縮小していくと見込まれますが、地域間の
給与配分について、最終的な検証を行う必要があると
考えております。
なお、
給与構造
改革では、経過措置を設けながら
制度改正を行うに当たって必要な原資を確保するため、四年間にわたり全
職員の昇給を毎年一号俸抑制しましたが、先ほど申し上げたように、当初予定していた施策は本年度ですべて導入されることとなりますので、本年度中に解消する経過措置分については、これまで昇給を抑制されていた若年・中堅層に対する一号俸分の昇給回復措置に充てることとしております。
次に、
公務員の高齢期の雇用問題について御説明申し上げます。
国家公務員制度改革基本法は、雇用と年金の接続の重要性に留意して、定年を六十五歳に引き上げることについて検討することと規定しています。人事院としては、来るべき本格的な高齢社会において公務能率を確保しながら
職員の能力を十分活用していくためには、年金支給開始年齢の引き上げに合わせて、
平成二十五年度から、定年を段階的に六十五歳まで延長することが適当と
考え、今般、定年延長に向けた
制度見直しの骨格をお示ししました。
その骨格においては、一定範囲の管理職を対象とした役職定年制を導入すること、定年前の短時間勤務
制度を導入すること、また、定年延長に伴う
給与制度の
見直しについては、職務と職責に応じた
給与を支給することを基本としつつ、
民間における再雇用
制度を中心とした六十歳代前半の
給与等の実情等を踏まえ、具体的な
給与水準及び
給与体系を設定すること等を報告しております。
人事院としては、この骨格に基づき、
関係各方面と幅広く
意見交換を重ねながらさらに検討を進め、定年延長について本年中を目途に成案を得て具体的な立法措置のための
意見の申し出を行う所存です。
続きまして、
公務員人事管理に関する報告について御説明申し上げます。
今回の報告におきましては、
国家公務員制度改革基本法に掲げられた諸課題のうち、
公務員の
労働基本権について論点整理を行うとともに、人事院が取り組むべき課題についての取り組み
状況について報告しております。
公務員制度は、
公務員が国民全体の奉仕者として適切に
行政施策を
推進していくための基盤であり、社会経済情勢の変化に対応し、不断に
改革に取り組むことが求められております。このためには、基本法に掲げられた諸課題について検討を進め、
改革を実現していくことが重要であると
認識しております。
基本法に掲げられた課題の中でも、とりわけ
公務員の
労働基本権のあり方は、現行
公務員制度の根幹にかかわる問題であり、
見直しの内容によっては国民生活に大きな影響を与える可能性がありますので、基本権制約の
見直しに当たってはその目的を明確にするとともに、基本法第十二条にあるように、協約締結権を付与する
職員の範囲の拡大に伴う便益、費用を含む全体像を国民に提示し、広く
議論を尽くし、その理解のもと、
結論を得る必要があります。
検討に当たっては、内閣と
国家公務員との
関係について、両者が一体となって国民に対し
行政執行の責務を負うとともに、他方で双方が一定の制約のもとで労使
関係に立つという二つの側面を有していること、
給与決定に
当たり利潤の分配などの内在的制約が存在しないことといった公務特有の基本的枠組みを十分踏まえる必要があります。
この
議論に資するよう、自律的労使
関係について四つのパターンを示すとともに、
国会による法律や
予算を通じた民主的統制という憲法上の要請と自律的労使
関係制度との間の整合性をどのように図るのかなどの
制度的論点や、労使交渉の
体制整備などの実施上の論点といった詰めるべき具体的な論点を整理しました。
このほか、
採用試験の基本的な
見直し等、基本法に定める課題のうち本院が取り組むべき課題や、その他、非常勤
職員制度の改善など
公務員人事管理に関する課題について報告しております。
続きまして、
国家公務員の育児休業等に関する法律の改正についての
意見の申し出について御説明申し上げます。
今般、非常勤
職員について、日々任用が更新されるという日々雇用の
仕組みを廃止し、一定の任期を定めて任用される
期間業務
職員の
制度を設けることとしました。また、
民間における
期間を定めて雇用される者については、一定の要件のもとで、育児休業等をすることができることとされています。
このような
状況を踏まえて、仕事と育児の両立を図る観点から、非常勤
職員について育児休業等をすることができるようにすることが適当と認め、
国家公務員の育児休業等に関する法律の改正について
意見を申し出たものであります。
以上、本年の報告及び勧告並びに
意見の申し出の概要を御説明申し上げました。
委員長初め、
総務委員会の
委員の皆様におかれましては、人事院の勧告
制度の意義や役割に御理解を賜り、この勧告及び
意見の申し出を速やかに実施してくださいますよう、よろしくお願い申し上げます。