○吉井
委員 企業がなぜ海外へ行くのかということについては、実は経産省
自身が、二〇〇九年度に貿易経済協力局の方から海外事業
活動基本
調査というのを出しております。
一番多いのは、現地の需要、それから進出した先の近隣三カ国の需要あるいは需要が伸びることが見込まれる、合わせますと回答の八六・八%なんですね。それから、安い労働力、これは回答の中で二九・六%で次に大きくて、アジア諸国の税制が低いとか優遇税制があるとかで海外へ行くというのは八・三%しかないわけですよ。
ですから、大事なことは、輸出大企業に
法人税減税をやっても、円高不況対策にも
産業空洞化対策にもつながってこない。企業が海外に出ていくのは、そういう巨大な需要地があることに着目してですから、逆に、円高に振れる、円高でも輸出できるようにということで、国内で雇用者の賃金を下げるとか、あるいは正社員をリストラして派遣に置きかえるとか、下請中小企業の単価たたきをやるとか、これをやればやるほど
国民所得が減りますから内需は落ち込んでしまう。今、悪循環にあるわけですね。ですから、これでは国内に投資しても当然利益は見込まれませんから、めどがなければ国内投資をしようということになってこないわけですよ。
やはり内需を伸ばすには、多国籍企業化した
日本の民間大企業に対して、その持っている、海外の方ではだぶついている埋蔵金をきちんと還流したり、あるいは国内に還元させ、それを
国民の所得その他に回るように社会的責任をきちんと果たさせる、消費購買力を伸ばすということが最も大事なことなので、先ほど来の
議論で、
大臣も研究していくということですから、これはぜひそういうことで、どのようにして
日本の今直面している問題を解決するのかということについてよく研究していただきたいと思うんです。
時間が大分参りましたので、内需拡大という点については、官公需問題などについては九月にもやったんですが、
一つ、自治体がさまざまな取り組みをやっているんですね。中小企業庁が上にあっても、これは実のところお役所ですから、現場でどれだけ中小企業施策をやるかということが大事です。
そういう点では、自治体によっては中小企業振興条例をつくったりとか、いろいろやっております。この間も墨田へ見に行ってきたんですが、ここは中小企業振興条例をつくってから悉皆
調査をやって、企業台帳を持って支援をずっとやってきているわけですが、そういう振興条例をつくって取り組んでいるところでもなかなか大変なんです。
墨田の例えばメッキ工場へ
調査に行きますと、かつて五十人いらっしゃった。一ドル八十円を切ったとき、三十六人にそのころ減ったんですが、今、円高と、ニッケル、クロム、金、銅など材料費の高騰で、もう七人ですよ。しかし、何とか技術を維持しなきゃいけないということで、七十代になった人でも、いい技術を持っていらっしゃるから、終身雇用でいきますから、通常の終身雇用ももう超えている年齢ですよ、それでも頑張ってもらいたいということでやっているんですね。
しかし、メッキ工場なんかですと、廃液処理で物すごいコストをかけて
日本でやっているんですよ。ところが、発注する企業からすると、たとえ海外でメッキの廃液処理をやらなくて垂れ流しても、安ければいい、当面の利益さえ出ればいいという発想でそっちへ行ってしまうということが、ますます国内の中小企業を痛めつける要因の
一つになっているんですね。
そうすると、廃液処理の設備投資をしたとか、その固定費について、固定資産税の減免とか、さまざまな手段、方法を考えるにしても、この不況の時期を脱出するまで、直接の支援策を考えないと、技術を持ったところ、基盤的技術の集積地が次々とつぶれてしまったら、幾ら大企業にドクターを持った研究者が来ても物はできないわけですよ。だから、そういう点では、やはり振興条例が本当に生きてくるように取り組むことが大事だということで、これは
一つ伺っておきたい。
もう
一つは、岩手県の宮古市は、まだ振興条例をつくっているわけじゃないんですが、今年度一年限りの経済対策として、住宅対策ではなくて経済対策として住宅リフォーム制度をつくりました。これは市内業者に限るということになりますが、非常に市民の要望が殺到して、当初予算は五千万円組んで五百件分の予算でしたが、すぐ消化されて、六月の議会と九月議会で一億五千万ずつ補正予算を組んで、合計三億五千万円、三千五百件分の準備をしたんです。これは市の財政の大体一%ぐらいなんですよ。中小企業振興のために、予算の一%ぐらいで、ややこしい条件をつけないで条件を緩和して、総工費二十万円以上の住宅リフォームに対しては、これは住宅リフォームといってもさまざまな名目で皆認めるんですが、一律十万円の補助金を出すというシンプルな制度にしたんですよ。
これで市内の建設関連業者の仕事がぐっとふえてきた。その結果、さらにそれは波及効果が及びますから、クリーニング屋さんから飲食店やスナックに至るまで、十万円の補助を出したことで、建設業者では平均四十五万円の受注が来る。
産業連関表を使って計算すると、波及効果が、三億五千万の予算ですが、十六億円の経済効果が出ておる。しかし、これは今のところ今年度限りになるんですね。
だから、自治体が振興条例をつくったり、条例はなくても独自に頑張っていこうとしているところについて、口は出さないが財政面では応援する。これは例えば総務
大臣などとも相談されたり協力して、特別交付税で考えるか、どういうことで考えるかは別にして、財政的にもそういう中小企業支援の地方自治体の取り組みを応援するということが経産
大臣にぜひ取り組んでもらわなきゃいけないことじゃないかと思うんですが、伺います。
〔楠田
委員長代理退席、
委員長着席〕