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2010-03-16 第174回国会 参議院 予算委員会公聴会 第1号 公式Web版

  1. 会議録情報

    平成二十二年三月十六日(火曜日)    午前十時六分開会     ─────────────    委員の異動  三月十五日     辞任         補欠選任      広野ただし君     喜納 昌吉君      小池  晃君     山下 芳生君  三月十六日     辞任         補欠選任      一川 保夫君     尾立 源幸君      武内 則男君     芝  博一君      徳永 久志君     蓮   舫君      米長 晴信君     櫻井  充君      山下 芳生君     大門実紀史君      山内 徳信君     近藤 正道君     ─────────────   出席者は左のとおり。     委員長         簗瀬  進君     理 事                 大島九州男君                 辻  泰弘君                 平野 達男君                 藤末 健三君                 牧山ひろえ君                 川口 順子君                 西田 昌司君                 舛添 要一君                 弘友 和夫君     委 員                 植松恵美子君                 梅村  聡君                 尾立 源幸君                 喜納 昌吉君                 小林 正夫君                 今野  東君                 櫻井  充君                 自見庄三郎君                 芝  博一君                 下田 敦子君                 鈴木 陽悦君                 谷岡 郁子君                 友近 聡朗君                 円 より子君                 山根 隆治君                 吉川 沙織君                 蓮   舫君                 荒井 広幸君                 泉  信也君                 加納 時男君                 木村  仁君                 小泉 昭男君                 佐藤 正久君                 世耕 弘成君                 西島 英利君                 牧野たかお君                 森 まさこ君                 山本 一太君                 加藤 修一君                 草川 昭三君                 澤  雄二君                 大門実紀史君                 山下 芳生君                 近藤 正道君    事務局側        常任委員会専門        員        藤川 哲史君    公述人        早稲田大学教授  榊原 英資君        東京大学総括プ        ロジェクト機構        ・知的資産経営        ・総括寄付講座        の特任教授    小川 紘一君        内閣総合科学        技術会議議員   白石  隆君        帝京大学法学部        教授       志方 俊之君        中央大学教授   山田 昌弘君        JA東京青壮年        組織協議会顧問  加藤 篤司君     ─────────────   本日の会議に付した案件 ○平成二十二年度一般会計予算内閣提出衆議  院送付) ○平成二十二年度特別会計予算内閣提出衆議  院送付) ○平成二十二年度政府関係機関予算内閣提出、  衆議院送付)     ─────────────
  2. 簗瀬進

    委員長簗瀬進君) ただいまから予算委員会公聴会を開会いたします。  本日は、平成二十二年度一般会計予算平成二十二年度特別会計予算及び平成二十二年度政府関係機関予算につきまして、六名の公述人方々から順次項目別に御意見をお伺いしたいと存じます。  この際、公述人方々に一言ごあいさつ申し上げます。  本日は、御多忙中のところ本委員会に御出席いただきまして、誠にありがとうございます。委員会を代表して厚く御礼申し上げます。  本日は、平成二十二年度総予算三案につきましてお二方から忌憚のない御意見を拝聴し、今後の審査の参考にいたしたいと存じますので、どうかよろしくお願いを申し上げます。  次に、会議の進め方について申し上げます。  まず、お一人二十分程度で御意見をお述べいただいた後、委員の質疑にお答え願いたいと存じます。  それでは、財政経済について、公述人早稲田大学教授榊原英資君及び東京大学総括プロジェクト機構知的資産経営総括寄付講座特任教授小川紘一君から順次意見を伺います。  まず、榊原公述人にお願いいたします。榊原公述人
  3. 榊原英資

    公述人榊原英資君) まず、予算議論に入る前に今の経済状況の話から始めたいと思います。  景気回復、少なくとも数字の上ではかなり順調にしているということでございまして、リーマン・ショックで、二〇〇八年の十—十二月、二〇〇九年の一—三月が年率でいうと二けたの減速、二けたの減少であったわけでございますけれども、去年の四—六からプラス成長に転じて、去年の十—十二月は、最近データが出ましたけれども、年率で三・八%、改定値で三・八%の成長ということでございます。  民間シンクタンクの見通しですと、来年度も、平均でいいますと大体来年度の実質成長率が一・六%ぐらいということで、景気回復が去年の夏ぐらいから順調に進んでいるということではあるんですけれども、実感としてやっぱり景気回復感が余りないというのが実は実態でございまして、なぜ実感として景気回復感がないかといいますと、実感はむしろ名目で感じるわけでございますね、実質というのは後からつくり出された数字でございますから。名目でいいますと、去年の十—十二月も前期比で〇・一%ですから、ほとんど成長していないということでございますね。ですから、一方で実質GDPは伸びているんだけれども、デフレが進行していることによって景気回復感がないということが現状でございます。  今のデフレというのは、通常デフレというのは貨幣的な現象だというふうに言われているわけです。インフレデフレ金融政策によってある程度コントロールできるということでございます。インフレのときには金融引締めをし、デフレのときには金融の緩和をすれば、ある程度物価上昇率はコントロールできるということでございますけれども、現在のデフレ貨幣的現象でない部分が極めて大きいと、むしろ構造的であるというふうに言えるんではないかと私は思っております。  実は、アメリカヨーロッパデフレにはなっておりませんけれども、ディスインフレーションにはなっているわけですね。アメリカヨーロッパも、かつては四%、五%消費者物価が上昇したのが一、二%になっているということでございます。  先進国の中では独り日本だけがデフレになっているわけでございますけれども、実はこれは理由がありまして、日本の場合には東アジアとの経済統合が非常に進んでいるということでございます。中国なんかと非常に密接になっているということでございまして、実は経済統合というと普通ヨーロッパのことを考えるわけでございますけれども、ヨーロッパの場合には制度的、政治的に経済統合が進んだわけでございますけれども、東アジアの場合には、私は市場主導経済統合というふうに呼んでおりますけれども、企業が先導して経済統合が進んでいるということでございます。  例えば、東アジア域内域内貿易比率というのが大体五八%から五九%になっているんですね。一九九〇年には四〇%でしたから、域内貿易比率が非常に増えていると。恐らくあと五年から十年のうちには六〇%に達するだろうと。EU域内域内貿易比率は六五%ですから、実はEUかなり近いところまで東アジア経済統合市場主導で進みましたよと、こういうことなんですね。  こういうことになってきますと、やはり東アジアの中で一番大きな国というのは、GDPでいいますと中国日本でございますけれども、中国日本の間にある程度裁定が働いてくるということですから、そういうことで、要するに日本ではデフレーションが起こるということですね。中国で製造して日本に持ってくると。ユニクロ現象ですけれども、ユニクロのように中国で製造して日本に持ってくれば安くなるというようなことで、実はグローバリゼーション、特に日本の場合には、東アジアとの経済統合によってデフレが進んでいる、物価も上がらない、賃金も上がらないというようなことでございますね。  ですから、デフレとかあるいは賃金の下落、あるいは雇用問題などに対して、もちろん政治的に対応するというのは必要なことではありますけれども、政策でコントロールできる余地はそれほど大きくないと。構造的に中国との統合が進んでいるわけでございますから、もし雇用についてかなり厳しい条件を国内で付けるとすると雇用が逃げてしまう、つまり中国へ行ってしまうというようなことが実は起こるわけでございまして、非常にある意味では難しい状況になっていると。  実は、もう東アジアには国境を越えた、プロダクションネットワークと言われていますけれども、生産のネットワークができているというふうに言われておりまして、タイで例えば自動車部品を作り、それを中国に輸出してアセンブルすると、それを欧米に輸出するとか日本に輸出するとか、そういうことでございまして、まさに東アジア全体、日本中国中心とした東アジア全体が世界の工場になっているという、そういう状況でございます。  こんな中で一体政府が何をすべきかということになってくるわけでございますけれども、例えば平成二十二年度予算を見ますと、税収が八・七兆円減少しているわけでございますね。その分、国債発行が十一兆円増加しているということで、子ども手当あるいは高校授業料無償化というようなことをやっておるわけでございまして、社会保障予算が九・八%増大、文教予算が五・二と、その代わり公共事業が一八・三%減少しているということでございまして、私は、これは適切な方向感だというふうに感じているわけでございます。  こういう形で経済がグローバル化して、デフレあるいは賃金が上がらないというような状況では、政府がやっぱり福祉の拡大をしていくということが必要じゃないかと。今まで日本というのはかなり福祉部分企業が担っていたわけですね。企業従業員の面倒を見るということをやって、それが福祉というようなことになっていたんですけれども、いよいよ企業が面倒見れなくなったというようなことでございますから、これは政府がやはり福祉を拡大するという方向が必要なんじゃないかと。今までの社会保障というのは大体年金と医療が中心だったわけでございます。これをやはり雇用とか育児を含めた方向に拡大するのかどうかというのが今問われていると。  今の政権の方針は、むしろ拡大するという方向に向かっているんではないかと思います。これはヨーロッパ型の福祉社会への道だというふうに私は思っているわけでございますけれども、日本でも子ども手当始めましたけれども、フランス育児手当がいろんな形であって、十から十一ぐらいあるわけですね。ですから、女性育児をしながら働くということが非常にたやすくなっているということで、最近、パリの女性は産んでいるという本が出ていますけれども、育児をしながら子供を育てるということがフランスでは非常に容易だと。これは、やはり育児ということに社会保障が拡大されているわけでございますね。  ですから、そういう意味で、ヨーロッパ型福祉社会を目指すのかどうかということが実は今の政権に問われていると。私は、そういう方向を目指すべきだと思っております。今までの自民党政権は、どちらかというとアメリカ型で、小さな政府を目指してきたと。今の民主党は、どちらかというと大きな政府を目指していると。これは、どちらがいいかということはいろんな議論があるところでございます。議論があるところでございますけれども、私は大きな政府を目指すということは必要なのではないかと。つまり、企業福祉が後退しているわけですから、フランスやあるいはドイツのようにその分を国がカバーするということが非常に必要ではないかというふうに思っております。  そういう議論をするときに、そんなことを言っても当面財源がないじゃないかということですね。子ども手当も今度の予算では半分しかやらなかったということでございますが、私は全額やるべきだというふうに思っておるわけでございますけれども。なぜかと申しますと、実は財源がないというのは財務省に余りにも説得され過ぎた議論だというふうに思っておりまして、私も財務省出身でございますけれども、財務省は金がないないと言うのが商売でございますからこれはしようがないんですけれども、それを余り信用することはないというふうに私は思っておるわけでございます。  なぜかと申しますと、確かに日本国債残高、特に地方と国を合わせますと八百六十二兆円ですね。GDPでいうと一八一%あると。これは大体、アメリカイギリスフランスもこのごろ財政出動していますから増えていますけれども大体八〇%から九〇%ですから、アメリカイギリスの倍じゃないかと、これはもうとてもどうしようもないんだ、財源がないんだというのが財務省の言い分ですけれども、これはバランスシートの片側しか見ていないんですね。バランスシートの負債の項目だけ見ているわけでございまして、実は日本の場合には個人金融資産が千五百兆円近くあるんですね。しかも、個人借金を引いてみても、ネットで見ても百十兆円の個人金融資産がある。  これはどういうことかというと、その個人金融資産かなり部分国債の購入に向かっているわけです。ですから、日本国債というのは九四%日本国民が持っているわけです。政府というのは国民の総体ですから、政府借金していて、国民借金していて国民がその借金をカバーしているわけですから、国全体としては借金していないということになるわけです。  ですから、先進国の中で日本は一番の債権大国ということになります。対外的に見ると非常に債権が多いということでございまして、国債の金利にしても先進国の中で一番低いと。十年債が一・三%から一・四%というような非常に低い水準でございます。ですから、当面国債消化には問題がない。まあ四、五年のことでございますけれども、国債消化には実は問題がないということでございますから、私は例えば今回の予算子ども手当二万六千円付けてもよかったと思っております。  国債四十四兆円というのは多過ぎるという批判があるんですけれども、私は六十兆円出しても大丈夫だと。つまり、消化できるということです。消化できるということでございますから、消化できるということは国民が買ってくれると。直接買わなくても、個人が直接買わなくても、個人が預金をし、個人が保険を掛け、機関投資家が買っているということでございますから、間接的に言うと国民国債を買っているという状況があるわけですから、その状況が続いている限りは国債発行がある程度大きくなっても問題はないと。ですから、少なくともこの四、五年はかなり国債発行をして福祉を増大する、あるいは景気回復させると、その余地は十分あるというふうに思っております。  もちろん、中長期的な財政再建というのは必要だと思っております。今の余裕というのは、恐らく個人金融資産といっても今、日本貯蓄率はそれほど高くございませんから、今個人金融資産が高いのはかつての貯蓄が多かったということでございまして、今、日本貯蓄率というのは五%を切っております。それから、財政赤字というのはそれ以上に増えておりますから、実は今相当国債市場余裕があるというのは、恐らくこのまま行くと、三、四年、四、五年しか続かないということでございます。ただ、当面余裕があるということは十分意識しなければいけない。ということは、当面は国債をむしろ大量に発行してもいいわけでございます。  それで、景気回復をするのでございますけれども、中長期的には財政再建計画を立てなきゃいけないと。特に、私が申しましたように、ヨーロッパ型の福祉社会をつくるということですね、育児手当子ども手当なんかを充実すると。あるいは、子ども手当だけではなくて、雇用とか育児とかそういうところに政府が入っていって社会保障を拡大するということをもしやるとすれば、これは当然のことながら、当面は国債発行できるとしても、五年、十年のスパンで考えると財源が必要になってくるわけでございます。  当然、ヨーロッパ型にするということであれば、歳入の方もヨーロッパ型ということでございますから、五年、十年の間には、やはり消費税増税ということを考えなきゃいけないと、そういうことでございますね。大きな政府というのは当然ファイナンスしなきゃいけないわけでございますから。  今、日本財政赤字が非常に大きいのも、過去、実は増税をしなきゃいけなかったのに政治的にできなかったと。消費税増税というのは、実は五年前にやっておかなきゃいけなかった、十年前にやっておかなきゃいけなかったんですけど、いろんな政治的な条件があってそれができなかったということでございますから、当然五年先には、あるいは六、七年先には消費税増税ということを考えてヨーロッパ型の福祉社会を目指すというのが私が好ましいと思っている姿でございます。  そういう意味で、今回の予算は私は評価しておりまして、子ども手当あるいは農家の戸別補償あるいは高校授業料無償化というのはヨーロッパ型福祉社会への第一歩だと思いますから、それを更に進めるということが必要なんではないかというふうに思っております。  先ほども申し上げましたように、当面国債発行に十分の余裕があるわけでございますから、子ども手当などは初年度から二万六千円付けてもよかったんではないかというふうに思っておりまして、選挙もあることですから、本当は全額付ければよかったんだと思いますけれども、そういうことで、二十分にはなりませんですけど、私の陳述は終わりにさせていただきます。  どうもありがとうございました。
  4. 簗瀬進

    委員長簗瀬進君) ありがとうございました。  次に、小川公述人にお願いいたします。小川公述人
  5. 小川紘一

    公述人小川紘一君) 小川でございます。  それでは、今、榊原公述人は非常にマクロな経済状況をお話しいたしましたけど、私の方は、もう少しミクロなといいますか、日本製造業が置かれた現状についてお話し申し上げます。  御存じのとおり、製造業というのは日本GDPの約六割ぐらいです、それから外貨の八割以上でしょうか、それから研究開発投資の約九割ぐらいを使う大変巨大な産業でございます。それが、何か知らないうちに負けてしまっている状況がいっぱい出てきましたので、そのことを、技術とか特許をいっぱい持っているはずなのに、何か知らぬうちに負けてしまっている、それはなぜなんだろうかと、こんな話をいたします。  まず最初、エレクトロニクス産業からそれが始まりました。御存じのとおり、パナソニックもソニーもサムソンに勝てないわけです。こういう状況というのは実は十から十五年前に起きたわけですけれども、それはなぜそうなったのかという話ですね。それから二番目は、実はその背後に、一九八〇年代にヨーロッパアメリカ産業構造を強制的に変えたんだと。今、榊原先生が小さな政府とおっしゃいましたけど、違うんです、小さな政府がそのころ強烈にあったんですね。それから三番目は、実はそれに呼応しましてアジア諸国産業政策を変えていったと。この二つが実は影響して日本がなかなか勝てなくなっているという、こんな話をいたします。  じゃ、勝てなくなったのは、そのままじゃ駄目なわけでして、何をすればいいんだろうかということを若干お話し申し上げます。大変大きな資料になってしまいましたけど、実はいろんなデータでお見せしたいと思ったものですから、その方がいいだろうと思いまして、さっさっとやりますので、時間は二十分を守りたいと思います。  まず、二ページ目を御覧ください。黄色で書いた部分。この左側は、実は二十年から三十年ぐらい前の産業でございます。電機産業ですね。携帯電話右側が現在の電機産業です。左側はいわゆるアナログとか、右側はオープンとかデジタル世界でございます。例えば、一番上の携帯電話、年間にアナログ携帯電話は三千三百万台でした。ところが、デジタルになりますと一瞬にして十二億台の市場になっています。それから、VTRは最大でも五千万台でした。ところが、DVDは五億台です、年間に。銀塩カメラ、フィルム、これは七十年の時間を掛けまして三千七百万台の市場をつくりました。しかしながら、デジカメは一瞬にして一・三億台です。今日も何か新聞に載っていましたけど、デジカメでもうかりましたというのが新聞に載っていましたけれども。それから、携帯電話に入っているカメラモジュール、二〇〇七年の段階で七億台ですが、現在十億台を超えているそうですね。このように巨大な市場が実はデジタル化とか標準化というもので生まれるんです。  ところが、このとき日本が勝てるかというと、勝てていないと。アジア諸国が強烈に成長しているんですね。  次、お願いします。  ちょっと今言葉で申しましたけれども、実は今申し上げたような巨大な市場の中で、日本特許というのは物すごくあるんです。それから、技術も強かったはずだと。ところが、なかなか勝てないんですね。だから、結局、研究開発投資国際競争力に寄与していないと。ですから、科学技術立国とか知財立国という話がありますけれども、実はそれはなかなか競争力に結び付いていないということでございます。  具体的なデータを次にお示しします。  右側の図は、特に液晶の例なんですけれども、アメリカに登録された特許二万五千件あります。このうちの八五%以上が実は日本特許です。ところが、韓国は一三%ぐらい、台湾は一、二%ですが、実は勝てないんですね。それから、DVDも、日本基礎技術研究開発市場開拓から標準化までみんなやりました。しかし、勝てないんです。勝てない様子を次の五ページに書いています。  この図でお分かりのように、真ん中辺に書いていますけれども、DVDプレーヤーとか液晶パネルというのは、確かに初期のころは日本が圧倒的に投資をしましてプロダクトイノベーションを起こしましたので圧倒的にシェア高いんですが、何か知らぬけれども全く同じカーブ描いて負けてくるんです。今、環境エネルギーで重要なテクノロジーである太陽光発電、これも今は二〇%をもう切っています。半導体もすごいと思ったんですけれども、実は同じようにもっとすごいものがいっぱいありまして、実は、約十年か十五年前からこういうことが起きている。ということは、これ、特定の産業の問題ではないということですね。構造的な問題だということになります。  じゃ、ヨーロッパアメリカはどうかといいますと、六ページ目ですが、一九八〇年代のアメリカも実は日本と同じような状況に置かれました。IBMなどは、あれだけの基礎研究を一生懸命やって膨大な開発投資をするんです。ところが十五万人の人を首にするんです。そうせざるを得ない状況に追い込まれたと。結局、伝統的な企業制度、フルセット統合型というんですか、こういうものが崩れていきまして、オープンだの分業化だの、こういうことが出てきました。  次、お願いします。  これはごちゃごちゃして大変恐縮ですが、上の方の左側に七〇と書いたのです。ここは石油危機がありまして、御存じだと思いますけれども、長期のインフレと大量失業が止まらないんです。どうしようもない状態にアメリカヨーロッパが置かれたと。  それから二番目。戦後、アメリカ基礎研究に膨大な金をつぎ込みました。いっぱいテクノロジーイノベーションを起こしたんですね。ところが七〇年代、八〇年代になって気が付いてみたら、何か負けているじゃないか、勝っているのは日本とかドイツとかじゃないか、何かおかしいと言い始めまして、盛んにそこから貿易摩擦が起きるわけですけれども。  しかし、アメリカがやったことは、八〇年にレーガンが大統領になったときにいろんな政策をやりましたが、今日の私のお話で関係するのは八一年の独禁法の大幅緩和です。それから、八四年の国家共同研究法。これは、当時は独禁法が非常に厳しいものですから、複数の企業が一緒になって標準を作ったり技術開発すると、これは無条件に独禁法違反なんですね。何か当然の違法と言うんだそうです。ところが、日本は超LSI研究組合で半導体開発しました。それで日本が圧倒的に強くなったものですから、日本だけ独禁法違反じゃなくて何でアメリカが違反なんだと、当然こういうのが起きますね。そこで共同研究法ができて、合理の原則、要するに世のため人のためというんですか、はっきり言えば、アメリカ競争力の強化になるんだったらこれは独禁法違反じゃないと。ただし、プロセスと結果は全部オープンにしなさいと、こういうことなんです。  ですから、ここからいわゆる我々が言うようなオープンイノベーションとか国際標準等がアメリカで出てきます。それまではありませんでした。ただし、分業だのオープンって言ったって、例えば自動車産業だの鉄鋼産業ってオープンなかなかできませんので、それが一番やりやすいのが実はデジタルテクノロジーなんです。したがって、下の方の、黄色で書きましたけれども、デジタル型の産業から、実はすべて自前主義じゃなくて分業構造に全部分解していくんです。ここからIBMがおかしくなるんですね。  次、お願いします。  次はヨーロッパの例ですが、詳細は添付ありますけれども、ヨーロッパも八〇年から実はオープン型に全部切り替えています。現在のヨーロッパのイノベーション、フレームワークプログラムと言いますけれども、約一千億ユーロ、約十二兆円でしょうか、ひところ前でしたら十七、八兆円でしょうか、のお金を使うこういう巨大プロジェクトなんですけれども、これ二つ特徴がありまして、右上の方にありますけれども、イノベーションを起こすのは実はヨーロッパだけじゃなくて、ロシアも中国もインドも起こします。そういうようなイノベーションの成果をヨーロッパに取り込むための手段としてもういろんなインセンティブ制度を付けます。ですから、世界のイノベーションを全部呼び込むわけですね。  それからもう一つ、イノベーションの成果を世界に広げていく手段として、下の方にありますけれども、国際標準化が使われていると。こういう構造になって、その代表的な例が携帯電話。  次、お願いします。九ページ目。  携帯電話の例ですが、携帯電話というと、この一番左下の、我々、ハンドセット、携帯端末だけを言いますけれども、実はいっぱい我々の電波を受けてまとめてくれる基地局というのがございます。基地局を介して、交換機を介して、ゲートウエーという、東京なら東京に一つありまして、ここからニューヨークとかに飛ぶわけです。こういう構造になっていますが、実は彼らが標準、オープンと言ったのは左下の携帯電話の端末だけです。真ん中にあります基地局というところは全くオープンにしていないんです。ところが、この基地局がないと携帯電話のシステム機能しませんよね。ですから、左下のオープンにしたところは中国なんかいっぱい作れるわけです。ところが、基地局のところはヨーロッパだけがみんな握ると、こういう構造。完璧な分業構造です。  その成果がどうなったか。次に、十ページでお話しします。  これは、ヨーロッパではなくて中国市場ヨーロッパの基地局がどれぐらいのシェアを持っているかを示したものです。このブルーで書いたところですが、過去十年以上にわたって八〇から九〇%以上の圧倒的なシェアですね、中国市場でですよ。ところが、中国では携帯電話は何億台も作られるわけです。ですから、工場がいっぱいできて雇用がいっぱい生まれて経済成長するわけです。でも、そういうのが増えれば増えるほど、ヨーロッパの基地局を介してヨーロッパの人がハッピーになる仕組みになっていると。だから、お互いにウイン・ウインでございますね。こういう構造を、実は国際標準を作ってつくりましたということでございます。  次、お願いします。十一ページ目。  じゃ、アジアはどうなっているんだろうかということですが、このように分業型、つまりヨーロッパアメリカが分業構造に変わっていったときに、それに合わせた産業政策を取ります。例えば、真ん中に書いていますけど、サプライチェーンの特定セグメントとありますが、例えば半導体なら半導体の製造だけとか、組立てだけとか、こういうようなところに特化した優遇策、それから、研究開発基礎研究はやらないと、実ビジネスです、市場で勝つためのフェーズでいろんな助成をするわけです。こういうことはテクノロジーがないと幾ら助成したって始まりません。ですから、テクノロジーが伝播しやすいもの、産業だけでこれらは有効になるわけですね。デジタルテクノロジーのいわゆるエレクトロニクス産業が最初にこういう状況に陥ったということです。  次、お願いします。  これは実は生々しいデータでございますが、これは半導体産業の例です。  左下の一九九七年からごく最近の二〇〇六年まで十年間にわたって日本企業制度を基準にしたときに、韓国のサムソン電子が、例えば右上で、約三千五百億のフリーキャッシュフローでプラス、有利に働いていると。要するに、これだけ次のどんどんどんどん投資できるようなお金が出るわけです。台湾の場合には二千から二千五百億円ぐらい。ところが、同じ時期に、右下に日本を書いていますけど、上位五社のフリーキャッシュフローはマイナス二千億です。これじゃほとんど投資できませんね。したがって、半導体はテクノロジーに負けたのではない、こういう制度設計で負けてしまったんじゃないかと思えてしようがないということなんです。  次、お願いします。  次がDVDの記録メディアですけど、DVDも、これは基礎特許の九〇%以上を実は全部日本が持っているんですね。技術開発市場も全部日本がやりました。しかし、これを見てお分かりのように、台湾が六三%、製造シェアですね、日本のシェアは、DVDのデの字も知らなかったと言ったら怒られますけれども、そのインドと全く同じなんですね。こういう状況が、実は半導体やこのDVDのメディアだけじゃなくて液晶、固体照明など、ありとあらゆるところで起きます。  それで、じゃ、それが韓国や台湾のGDPにどう影響しているかと。これはGDP、いろいろありますけど、製造業だけに取ったものです。十四ページ目。  これを見てお分かりのように、下の、下にちょっと年号が書いていませんね、済みません、消えています。要するに、九五、六年ごろから、いわゆる電機、電子機器というのがありますね、この産業分野だけが強烈に上がっています、GDPが。これが十年で五倍ぐらいの伸びです。ところが、技術が伝播しにくい一般機械とか精密機械というのはほとんど上がっていないってお分かりですね。つまり、デジタル化されたエレクトロニクス産業で実は韓国、台湾のGDPがわあっと上がっていったと。  次、お願いします。  これは台湾の例ですけれども、台湾も全く同じです。これも、下に年号ありますね。九五、六年ごろからばあっとGDPが上がるんです。これもやっぱり十年で五倍なんです。つまり、デジタル化していったときに国際分業が起きると。そうすると、ヨーロッパアメリカと呼応する形で、共に一緒に経済成長するような仕組みが何かグローバルにでき上がってしまったと、こういう構造になります。  じゃ、日本状況はどうかというと、十六ページ目ですが、日本製造業だけです。横軸に研究開発投資、縦軸に営業利益を取りまして、二〇〇五年、六年、七年の三年間ですが、左下に工作機械、右上のずっと上の方に自動車産業があります。つまり、こういうものはお金をいっぱい使えば当然利益が上がると、これは当然でございます。ところが、右下にありますエレクトロニクス産業、これだけは幾らお金を使ってもさっぱりもうからないと、こういう構造なんです。これは、榊原先生さっきおっしゃったように、要するに製造拠点が海外へ行って、そして彼らが作ると圧倒的に安くなります。そうすると、それが日本に来たりあるいは海外で競争すると、もう絶対勝てないと、こういうことですね。  実はこういうことが、次にお話ししますが、次のページですが、一九九〇年代の中ごろから起きたと。つまり、我々これに気が付いたのはごく最近ですが、よく考えると十五年前から起きていたと。この図は、一九八〇年代からごく最近まで、三十年間にわたってエレクトロニクス産業とその他の産業の営業利益がどう変わったかを書いています。これは、円高があったり、あるいは何かいろんなものが高くなった安くなったといって景気が変わるわけですね。変わっても、いろんなすべての産業は九五年ごろまでは全く同じように変化しました。しかし、九〇年代の中ごろから、いわゆるエレクトロニクス産業だけが営業さっぱりもうからなくなった、それ以外は全然問題ないと、こういうことになります。  問題は、これが、じゃ、エレクトロニクス産業、ソニーやパナソニックだけで済むんなら全然いい、いいと言ったら怒られますけれども、いいですが、実はいろんな産業領域に広がっていると。実は同じことが、左上にありますが、四十年前の、八〇年ごろのカラーテレビでも実は起きていました。実はゆっくり起きていたんですね、アナログの時代には。ところが、九〇年代の中ごろって、今申し上げたように、いろいろデジタル化されると、何か製品が現れるとすぐこういうことが起きちゃうと。  ところが、ごく最近は、右下の方に書いていますが、デジタル化しなくたってどんどんどんどん分業化されると。例えば太陽光発電のパネルなんか日本のシェアは一〇%台になりました。それから、プリンターですらそうなりましたし、乗用車も、いろいろ議論あるところですが、電気自動車になったら間違いなくそうなるだろうと言われますね。それから、もう一つ、インフラ型の産業機械、環境・エネルギー、これも世界中で標準化標準化と言っていますね。スマートグリッドなんて世界中に二百以上の標準化団体があるそうです。そういうことになりますと、間違いなく右側に行くんです。右側に行くと勝てないんですね、今までのように。こういう状況がどんどん広がってきているということで。  時間がないようでございます。ちょっと最後に。今度、新成長戦略でいろいろ研究開発投資をなさるんだと思いますけれども、日本の得意技というか、そういうものが生きる産業領域をやっぱり集中して強化しなきゃならないと。後でお話ししますが、デジカメとか自動車とか部品材料とか産業機械とかですね。  それから、二番目は、やっぱり我々が嫌だって言ったって、世界中がみんなオープン化とか分業化とかやりますので、やっぱりそういう分業化するんだという前提で、先手を取って国際標準を使ってアジアの成長日本成長にリンクさせるようなことをしなきゃいけない。ヨーロッパでこれやっていますので。アメリカもこれやっています。  それから、もう一つ、半導体の産業の例にありますように、製造段階で、研究開発体制ももちろん重要ですけれども、それが本当の競争力に寄与するには、製造段階で優遇措置をしないとこれは勝てないと。あるいは、もう工場が海外へ行けばそれはそれで結構なんですけれども、雇用が失われますのでね。  次のページにデジカメの例を書いています。これ、九六年からごく最近までの十五年ぐらいにわたって、要するにデジカメが強烈な成長をしていったという例、このデータですが、黄色で矢印いっぱいありますけれども、実はこのとき日本が主導して全部標準化をしたんですね。ここの辺からずっと市場が広がっていますけれども、実は大部分は海外市場です。つまり、デジカメはほとんど九〇%ぐらいが海外で売っているんですね。だけれども、日本が圧倒的に強いと。どれぐらい強いかが次のページにあります。  これ、右上の方が実はデジカメで、左下がDVDなんです。デジカメ市場ができてから十何年たちますけれども、日本が製造シェアで六割ぐらい、一眼レフは九五%以上です、圧倒的に日本が強いと。しかも、大部分は海外市場です。だから、これは日本の地方で作っても、つまり雇用がどんどん生まれていくわけです、勝てますので。  ところが、DVDの場合には、どんどんオープン化してみんな作れるようになりますので、中国でいっぱい作ります。日本で作ったら絶対負けますので。そうすると、中国で作ると、先ほど榊原先生おっしゃったように、日本に来る、そうするとデフレが起きると、こういうことになります。こういう状況に我々はいて、DVDのようなやつですと日本雇用に寄与しないと、こういうことになります。  次のページですが、デジカメのような話は実は極めて少ない成功事例でございまして、成功したものを抽象化して言えば、製品が丸ごとすり合わせ型というか、ブラックボックスとか、こういうものでしたら日本の地方工場で製造してもグローバル市場で勝てると。つまり、研究開発投資日本雇用に寄与すると、こういうことになります。  ところが、環境・エネルギー分野で間違いなく国際分業が起きると、世界中に二百も三百も標準化団体がありますので。例えば、スマートグリッド、電気自動車、それから省エネ型のインバーターエアコンですら、もう日本で作るよりも中国で、会社の名前言っちゃいけないかもしれませんが。ですから、多くの工場が海外に行かないともうどうしようもないんですね。それはそれでいろんな議論がありますけど、現実的には日本雇用に貢献するのは限定的であると、こういうことになります。  では、日本が強い強いと言われた蓄電池が実はこれは危ないというデータでして、この黄色で書いた蓄電池、今、右下の方にありますが、約五〇%ぐらいのシェアです。ごく数年、四、五年前までは日本だけしか作れなかった。日本にいっぱい工場があったんですね。今ほとんど駄目でして、これは五〇%、海外の工場も含めてですから、日本の工場は四〇%切っています。こういうものですらこういうことが起きるんです。  ちょっと、あと二、三分時間いただきまして、二十四ページですが、環境・エネルギー関連の産業で要するに重要施策でお金をいっぱいつぎ込むとすると、やっぱり日本の得意技が生きる産業領域を強化、例えばすり合わせブラックボックスと言われるようなやつとか、それから技術伝播が起きるとそういうことが非常に起きやすい問題ですから、政策的にODAを上手に使うとか、いろんなものを使って政策的にコントロールするということをやることが非常に重要じゃないかなと思います。  二番目は、アジアの成長を取り込む、どうやってやるんだろうという話ですけれども、実は携帯電話の例でありますように、ヨーロッパ諸国が見事に取り込んでいます。今日御紹介しませんけれども、パソコンに使われているインテルのプロセッサーがありますけど、あれも実はアジアと連携して初めてあのモデルができ上がるんです。ですから、アジアが活性化すればするほどインテルが利益がいっぱい転がり込むと、そういう構造になっています。そういうための標準化ビジネスモデルとか知財のマネジメントをやらないと駄目だと。これは企業側の問題でございます。  次、お願いします。  三番目は、先ほど半導体の例でありますけれども、やっぱり製造段階で強力な優遇策をやらないと国内に工場はとても持てないということです。経済特区でもつくらないとアジアとイコールフッティングにならないと。こういうことをあえてやる必要はなくて、そういうの任せりゃいいじゃないかという意見もございます。ただ、日本に工場を造って雇用を守るとするとやっぱりこういうことをやらざるを得ないと。  例えば蓄電池で、自動車用の電池でサムソンが、ドイツのボッシュ、世界最大の自動車部品メーカー、これと合弁会社をつくって、韓国の経済特区で電池の工場を造り始めました。これやると、必ず半導体と全く同じ構造ができますね。だから、日本で工場を造ったら、もしサムソン・ボッシュ連合が日本と同じテクノロジーの近いレベルになったら、日本は絶対かなわないということになります。また、これ繰り返されるということになります。  それから、四番目。優遇策ってお金掛かりますので、皆さんの合意が得られないとすれば、一番目というのはもう得意な領域を徹底して守るとか、二番目というのはアジアの成長標準化ビジネスモデルとか知財を上手に使って上手にリンクするような仕掛けつくるとか、何かこういうこと、これは企業の問題ですけれども。  最後に黄色で書きましたけれども、実はこういうことをやっぱりやるには、我々なかなか気付かないわけでして、世界中のと書いたつもりなのに「に」となりましたが、日本に社会学者はいっぱいいますので、世界からもいっぱい呼んできて、一緒になって欧米とかアジア諸国競争力とか産業政策をやっぱり調査分析しなきゃ駄目なんじゃないかと思います。というのは、一九八〇年代にアメリカヨーロッパが相当ひどい目に遭って経済が大変になりましたね。あのときの産業政策、実は日本を調査分析することから始まっています。日本でなかなかそういうまとまったことをやっているところないものですから、もし可能ならやっていただきたいなと思います。  これで終わらせていただきます。
  6. 簗瀬進

    委員長簗瀬進君) ありがとうございました。大変有益なお話いただきました。  以上で公述人の御意見の陳述は終わりました。  それでは、これより公述人に対する質疑に入ります。  質疑のある方は順次御発言願います。
  7. 大島九州男

    大島九州男君 どうも、榊原先生小川先生、今日はお忙しいところに、我々参議院の予算委員会においでいただきまして、ありがとうございました。  それでは、時間も限られておりますので質問をさせていただきますが、簡潔にお答えをいただければというふうに思っております。  まず最初に、小川先生にお伺いをしたいと思いますけれども、やはり物づくりのグローバル化という、まさに今日いろいろ教えていただいた中で、我々日本の特に中小企業日本経済を支える中小企業がこの国際的な競争に勝っていく、そういった部分でいったときに、いろんな国際分業が進んでいって工場がとにかく外国へ出ていくと日本雇用というのは守れない。まさにそういった危機を迎えている部分でありますけれども、国際的分業がどんどん進んでいき、いろんなグローバル化になったときに、この中小企業雇用を守り、また日本経済の発展を守るにはどういう理念を持って進めばいいかという部分について御示唆をいただければと思います。
  8. 小川紘一

    公述人小川紘一君) お答え申し上げます。  今までの中小企業は、例えばある大手の自動車とかあるいは電機会社とか、そういうようなものの下請的な存在でずっと育ってきたと思うんですね。ですから、いい物を作ると、完成品メーカーですか、これがそれを使ってくれて海外に持っていってくれたと。ところが、現在はその完成品メーカーが非常に弱体化しているわけですね、それはオープン化とかモジュール化して。そういうことになりますので、今度は部品メーカーもなかなか、親会社というんですか、を頼れなくなってきているということになります。したがって、やっぱり自立していかなきゃいけないわけですね。  ですから、こういうふうに、分業化するんだとかオープン化するんだとかということを前提に、やっぱり自分で自立するようなことをしなきゃいけないと。やっぱりそのためにはいろんな教育をしなきゃならないですよね、世の中こうなっているんだとか、こういうふうにしてやらないと勝てないんだとか。やっぱり部品単体で調達されたんじゃ、もう価格競争ばっかりやらされまして勝てませんので、そういうことをちゃんと認識していただくような仕組みをつくらないと駄目じゃないかなと思います。
  9. 大島九州男

    大島九州男君 ありがとうございます。  まさに、やはり中小企業の独自な努力というのは当然必要でございます。そういった部分で、我々政府また国もきっちりとそういった指導をさせていただきながら中小企業の発展に努めていきたいというふうに思います。  それでは、榊原先生に御質問をさせていただきますけれども、まず、今日ちょうどバランスシートという、先生お話しいただきました。国債を買っているのは、実質国民の資産が機関投資家から流れているので、国債に対して憶病になることはないんだというふうな御意見だというふうに思います。  国民の理解なんですけれども、私も中小企業をやっておりまして、バランスシートというと、自分たちの資産と、その流動資産とバランスを見たときに、分かりやすく言うと、人件費の払うようなために借金をするというのは何か将来が見込めないなというような思いがあり、そして設備投資借金をするというようなことであるならば、ああ、ここからまたお金が生まれてくるのでその借金は有効だという、そういった感覚があるんですね。  そうすると、例えば国が借金をするという部分において、今言う、人件費的に何か消えていくような部分で流れていくようなお金には中小企業の社長や一般の人は何かマイナスなイメージがあって、生産を生んでくれるような、資産になるようなとかいうようなところに対する借金は少し、ああ、これは何か希望が持てるんだというようなイメージがあると思うんですが、先生、そこら辺どのようにお考えになりますか。
  10. 榊原英資

    公述人榊原英資君) 今おっしゃったことは、このごろは余りそういう言葉は使いませんけれども、赤字国債と建設国債の差だと思いますね。  ですから、おっしゃったように、給与その他に消えていくものは赤字国債であり、道路その他の建設に使うものは建設国債であるというようなことで、財政法には区別はしてあるわけでございますけれども、同じ国債でございますから、このごろ余り区別はしていないんですけれども、おっしゃるように、国民の資産になっていくものであればこれは借金をしてもいいということでございますけれども、逆に言いますと、やっぱり道路やダムやそういうものは造り過ぎたんじゃないか、建設国債を余りに安易に出し過ぎたんじゃないかというところもありますから、やっぱり全体として国債を管理していくという方向の方がいいんではないかと。過去の経験から見ますと、むしろ逆に、建設国債だからということで少し公共事業をやり過ぎたんじゃないかという部分はあるんではないかというふうに思っております。お答えになったかどうか。
  11. 大島九州男

    大島九州男君 ここが民主党がコンクリートから人へというような部分で、国民に理解をしていただかなきゃならないのは、やはりダムだとか目に見えるものに対する借金という部分、これで日本経済成長を支えた部分も当然あったと思う。しかし、時代が変化をして、まさにその福祉的な分野、そういったところ、言うならば普通の一般の経営者からすると人件費とかに消えていくものであると。しかし、その人件費に消えていく福祉に出すものが実はお金を生むんだ、それが経済を発展させるんだということの理解を国民の皆さんがされたときには、その今まで赤字国債と言われた国債でも、これは経済が発展し国民が豊かになるんだというイメージを持てるように我々は説明する必要があるんだと思うんですが、そこら辺を先生のお言葉で言うとどういう形でお話をしていただけるんでしょうか。
  12. 榊原英資

    公述人榊原英資君) 今おっしゃったことですけれども、まさにこれフランスがやったことでございますけれども、最大の成長戦略というのは人口を増やすことでございますよね。今人口がどんどん減少しているわけでございますけれども、実は、今政府がやっている子ども手当に類するものがフランスには十から十一ございます。いろんな形での育児手当があるわけでございます。そういう育児手当を充実することによってフランスは、出生率が一・四だったのが、この十五年から二十年ぐらいで出生率が二・一まで上がっております。    〔委員長退席、理事平野達男君着席〕  ですから、そういう意味で、おっしゃるように、特に育児とか雇用とかそういうところに政府のお金を流すということは、これは大きな政府にはなりますけれども、逆にそのことによって人口が増えれば経済成長を達成することができるということでございますから、私はやっぱりフランスというのは一つのモデルになるんじゃないかというふうに思っておりまして、日本子ども手当その他の育児手当はもっと充実して、女性が働きながら育児をできるようにするという形であれば子供が増えるということでございますし、あるいはフランスなんかの例を取りますと、子供が三人以上いるといろんな優遇策があるわけですね。  例えば、子供三人以上持っている家庭は電車賃が安くなるということまであるわけでございまして、ありとあらゆるところで優遇措置があるということでございますから、やっぱりそういう方向に持っていくというのは一つの政策であろうと思いますし、民主党の政策もそういう方向にもう少し強くシフトしていくということが私は望ましいことじゃないかというふうに思っております。日本の出生率が二・〇とか二・一になれば、日本経済にとってこんなうれしいことはないわけでございますから。
  13. 大島九州男

    大島九州男君 よく民主党の中でも、子ども手当高校無償化、こういうものについてはそれは経済対策ではないんだと、そういう議論があるんですけど、やはりその子ども手当が将来及ぼすその効果、十年後、二十年後、そういった部分に目を国民の皆さんが向けたときに、やはりそういった効果を感じていただけるのではないかと。  だから、将来的にずっと伸びていく部分投資をするお金であるんだという認識を国民の皆さんが持ったとき、例えば物を作ると維持費が掛かっていく、例えば箱物を造りましたと、その場では例えば十億のお金を投じて、そこに公共工事で十億を使いましたけれどもと、これをずっと維持費を掛けていって、老朽化して最後はつぶれてしまっていって、無駄になってお金が掛かったと。  ところが、この子ども手当高校無償化というのは、人を育てる、人口を増やすということによって将来的に、当然十年、二十年後に、子供が大きくなって働いて、年金も支えるし税金も払っていくんだというような部分のイメージがある程度の人は分かっているんだと思うんですけれども、そこら辺の言及が余りなくて、これはもう子ども手当経済とかそういう対策じゃないんだということだけよく耳に残ってしまって、そうすると、じゃ、ばらまきかというふうに、選挙目当てかと言われちゃうんですけれども、やはり長い将来を見たときにはそういった認識を私は持っているんですけれども、先生の御意見はどうでしょうか。
  14. 榊原英資

    公述人榊原英資君) 私もまさにそういう意識を持っておりまして、高校の例えば授業料無償化ということでございますけれども、これもフランスの例ですけれども、これは三歳からの、これは幼稚園と日本でいうと保育園の合体したようなものでございますけれども、そこに入れるところから事実上公立はただでございますよね。それから、大学に入るまでこれは授業料ほとんど公立はただということでございますから、やっぱりばらまきじゃなくて社会保障というのを育児とかあるいは教育とかそういうところに拡大するという発想が必要なんじゃないでしょうか。    〔理事平野達男君退席、委員長着席〕  私も六十五超えましたけれども、日本社会保障というのは老人優遇なんですよね。私なんか年金要らないんですけれどもね。相当年金をいただいているということでございまして、日本社会保障というのは年金と医療なんですよね。これはむしろ老人を対象とした社会保障ですから、やっぱり若い人たちを対象にした社会保障ということで、育児とか教育とか、そういうところに社会保障の枠を広げていくというのが非常に重要なことでございます。  両方やるということになると確かに大きな政府になりますけれども、やっぱり今は格差が非常に拡大しているわけでございますから、OECD諸国の中で格差が一番大きいのがアメリカ、その次が日本というようなことになっているわけでございますが、やっぱり格差縮小のために、むしろ若い世代に社会福祉ということで、社会保障ということで、そういうネットワークを拡大していくというのが非常に重要ではないかというふうに思っております。  特に教育について、高校無償化というのは大賛成ですし、それから大学のレベルでも、無償化がもし無理なら、返済しなくてもいい奨学金をつくっていただくとか、今返済しなきゃいけないんですね、返済しなくてもいいような奨学金をつくっていただくとか、ともかく、貧しくても大学教育まですべて公的な資金でできるという社会にしていただきたいというふうに思っております。
  15. 大島九州男

    大島九州男君 今先生のお話を聞かせていただくと、欧州型の福祉社会を目指して、そして財政によって福祉を充実をさせて格差を縮小して、貧困を一掃して、子育てとかそういうものに徹底的に力を入れていくと。そのためには財政出動もやむを得ないけれども、景気回復するまでは消費税とか増税はすべきではないという先生のお考えだというふうに私は認識をしているんですが。  今後、民主党も四年間消費税を上げないと言っておりますが、消費税を上げないでも財政を整えていく、企業が発展していくように国も発展していくんだというイメージを持っていく、その五年、十年先に、じゃ、今何をやるべきかという部分においては、医療だとか教育の分野でこういう規制を改革した方がいいんではないかというような部分のお考えがあると思うんですが、そこのところをお聞かせいただきたいのと、小川先生にも、我々民主党の政策、いろいろ御意見があると思いますが、そういった子育て、子ども手当に対してのお考えと、それと、今後、やはり中小企業日本産業世界と競争していくために規制を緩和するという、そういう一つの部分ではどういうところを緩和したら日本の中小企業は発展するぞというようなことの御示唆をいただければと思います。続けてお願いいたします。
  16. 榊原英資

    公述人榊原英資君) 今医療と教育について言及がありましたけれども、私は医療と教育については規制の緩和が非常に重要ではないかと思っております。医療と教育というのは完全な社会主義体制になっているわけでございますね。診療報酬も薬価も国が決めているということでございますけれども、やっぱり日本の医療がある意味で崩壊した一つの原因は、診療報酬を継続的に下げてきたことだと思うんですね。やっと診療報酬がちょっと上がるようになりましたけれども。そういうことでございますので、医療に関する規制、厚生労働省の規制をかなり緩めていくことが私は必要ではないかと。  例えば、混合医療の導入というのは非常に重要だと思っております。すべて健康保険でカバーできるか、あるいは完全な自由診療かという、今二本立てになっちゃっているわけでございますが、健康保険を使いつつ、ある程度以上のところは自費でやると、そういうことであれば健康保険の赤字解消の対策にもなりますので、混合診療の導入等によって医療を自由化するということが非常に必要ではないかと。  それから、教育についても私は自由化支持でございまして、塾を学校にしろと言っているんですけれども。要するに、学校の設立基準が相当厳しいわけですね。むしろ、設立基準は緩めて、あるいはもう届出制にして、できた後で監督するということをやったらどうかと。  実は、一九九〇年代に私、大蔵省、今の財務省にいたときに金融の自由化をやりまして、そのとき証券会社を許認可制から届出制に変えたんですね。変えた後で、もちろん金融庁が監督していますから不祥事は起こっておりません、基本的に起こっておりませんけれども、許認可制から届出制に変えることによってインターネット証券会社が出てきたというようなことで、相当のイノベーションが可能になったということでございますから、やっぱり学校についてももう少し自由に学校が設立できると。  例えば、インターナショナルスクールが学校になってもいいんじゃないかと。あるいは、いろんな塾が学校になってもいいんじゃないかと。私も慶応にいたことがございますが、慶応は元々塾でございますから、そういうことで、いろんな形の塾がもう少し自由に教育を展開できるということが必要じゃないかと。文科省の規制が非常に強過ぎるというふうに思っておりまして、明治時代はそれが必要だったと思うんですね。明治時代はそれが必要だったんですけど、やっぱり教育というのはこれから分権していく、規制の緩和をしていくということが重要ではないかというふうに思っております。
  17. 小川紘一

    公述人小川紘一君) 子育てに関しては先ほどの榊原公述人と全く同じ意見でございますので省略させていただきますが、中小企業、先ほどの御質問にありましたように、グローバルあるいはアジアの世界日本からそっちへ出ていくためにいろんな施策を政府はやらなきゃいけないと思うんですが、サポートをですね。ただ、私どもが年に何回もアジアへ行っていて見ることは二つございます。  一つは、インドへ行っても、中国へ行っても、ベトナムへ行っても、フィリピンでも、日本の製造文化というんですか、物づくり文化に対するすごい尊敬の念ですね。これは、日本が恐らく戦後最も普及させた日本の文化じゃないかと思われますね。どこへ行ってもカイゼンとか5Sとか、どこにもございます、ローマ字でもちろん書いてありますね。これはすごいことだなと。そういう文化と中小企業の方がちゃんとリンクするような仕組みをやっぱりいろいろ産官学で一体となって進めることが非常に重要じゃないかなと。つまり、日本の中小企業の方が持っている製造文化、これがそのまま向こうで通用する、むしろ尊敬の念を持って迎えられる場がいっぱいございます。これが一点ですね。  二点目は、いろんな方の相談を受けてお聞きして分かったことですけれども、そういう方が、日本企業が例えばインドとかに行きますね。そうすると、いろんな規制がございますよね、国の。それは、よく見るとやっぱりヨーロッパが作った規制とか、中国なんかへ行きましてもEUの人たちのルールなんですね。そういうルールが国際的な標準の形で実は事前にもう規制ができていると。そういう規制に従わないと物が売れない、売れないといいますか、あるいは一緒のアライアンスを組めないと、こういうことが実は至るところにございます。これはいろんな方にインタビューすればお分かりになると思います。  そういうことを、それを、従うのをサポートするのも重要ですけれども、やっぱり中小企業の方はなかなかそういうことが御自分でできませんので、サポートする、政府の機関でやるか、あるいはやっぱり一番いいのは日本の製造文化を一つのルールにして、そしてその上でスムーズに中小企業の人が市場に出ていけるような、こういうような仕組みをつくったらベストだなというふうに思います。
  18. 大島九州男

    大島九州男君 小川先生に今おっしゃっていただいた、うちの父は鉄工所をやっていまして、製缶業という、本当、職人技なんですが、やはりそれでしかできない部分というのがあるんですね。そういった外国にその職人さんが行って指導をする、そしてまたそういった交流をすることによって日本の物づくりの伝統文化を広めていくというのも一つですし、そういう部分での国際交流をしていくということは非常に僕は大切なことだなというふうに思っておりますので、我々もそこら辺もっと研究していろいろ頑張っていきたいというふうに思っておりますので、是非御協力をいただければと思います。  榊原先生がおっしゃっていただきました、我々、実は鳩山政権統合医療を推進するというようなことで明確に方針を打ち出しておりますが、やはり診療報酬の改善をする、医療費を下げるといったときには、混合医療や予防と未病という部分で今までの西洋医学に頼らない日本の伝統医学、そういったものを活用していくということがまさに必要だというふうに思っておりまして、そういったことを進めていく中でしっかりと今後の日本を支えていくということが大切なんだなということを改めて感じさせていただきましたし、教育の分野においては、やはり塾が学校をつくれるようにするというのは大変塾人にとっても有り難いことでございまして、私個人は塾の先生でございまして、そういった部分でいきますと、教育の部分にそういう民間活力を使うと。まさに昔で言うならば、昔は寺子屋から始まったわけですから、寺子屋が発展をしていくという部分での教育の姿勢というもののまさに原点に返れればというふうに感じております。  本当は私、もうちょっと時間があるんですけれども、全部の都合上でこの五分で終わりますので。今日は大変いろいろいいお勉強をさせていただきました。実はもっともっとお聞きしたいことはたくさんあるんですけれども、委員会の都合上、ここで質問を終わらせていただきます。  ありがとうございました。
  19. 荒井広幸

    ○荒井広幸君 自由民主党・改革クラブの荒井でございます。今日はありがとうございます。大変勉強になって聞いておりました。  榊原参考人には、ちょっと国債のことで、私は提案をしておるものですから、小川参考人に聞いている間お考えいただきたいんですが。  これは、国債、四、五年はもったとしても、今後やっぱり非常に不安がある。これは二〇一二年の大量退職という、こういうこともありますと、預貯金を取り崩しながら今食べているというのが現状でもございますし、預金が先ほどのように減っております。そうすると、国債に、一・三なんですが、先生、二%まで大丈夫だと。アメリカは今三パーでございますけれども。私は、志ある方に国債をもっと開放したら、買ってもらったらいいだろうと、こう思っているんです。利回りが低くても目的を付けることによって、ある目的のために賛同する人は利回りが低くても買ってもらう。これで三つの類型を言っておりまして、後日の予算委員会でもまた財務省とやり取りするんですが、私、五年間言って一顧だにされていない問題なんです。  一つは、目的を立てて、例えば環境や福祉、こういったところに対して買う場合に三つ考えているんです。無利子・相続非課税です、無利子・相続非課税。それからもう一つは、低利国債です、目的に対して低利国債、利回りは低いけれども。次は自立国債というやつなんですが、これなかなか新しい概念でございまして、償還財源をつくるというものでございます。これは東大の小宮山先生が言っておられて、ESCO事業みたいなものです、小川先生。後でもうかったら返せるというやつで、まず日本が、政府が二兆円ぐらい金つくれと、それは環境目的に使うんだと。環境で、前倒しして環境対策やって、例えば電器をLEDにしたら電気料金下がりますから、下がった分確実に家庭から回収して、二兆円は返せるという償還確実なものを言っている考えなんです。これ、産業界でいうとESCOというやり方などで非常に近いんです。  こういうような無利子・相続非課税、低利国債、自立国債、こうした目的国債というものを私は国債革命として、赤字とそれから建設国債とそしてもう一つこうしたものを立てていくということによって財政健全化に寄与していくし、志のある方が資金を提供していただけるようになると、こういうことを考えているんです。  これが私が、郵政民営化ではできない、いわゆる民営化に反対した話でございまして、脱民営化の思想と言ってもいいんですが、そういう回転に郵政というのは、いわゆるユヌス博士ではありませんが、グラミン銀行的な思想も入れながら、そういった国債を売っていく機関でもいい、機関的投資家として買うというやり方でもいい、こういったことを提案しているんで、榊原先生に後ほどお聞かせいただきたいと思うんです。  小川参考人にですけれども、私は、先ほどお話があったように、ODAをもっと活用しながら、トータルとして日本がやはり世界に理解され、また進出できる機会をつくっていけと、こういうことでございました。  インドに昨今参りましたら、非常に韓国の方も中国の方も頑張っていらっしゃいます。どうしてだといったら、日本が、インドが国境紛争やったときに、全部引き揚げちゃって、そのときに残った企業が韓国を含めてあって、そのときに白物取られてしまったんだというようなこともあったんです。  私は、こういうところは外交戦略上二枚舌があっていいんだろうというふうに思いますけれども、何か国際競争、国際紛争やら国連で決めますと、守らなければならないんですけれども、脈々と築き上げてきたものを一時モラトリアムするというかやめてしまって、その間隙を縫って進出されるというようなことが製造業に非常に多いと思っているんです。  こういう弊害も、外交として日本はどのような、先ほどのオープンであり標準化ということでございますけれども、どういう外交の在り方がいいのかというところを御指摘いただければと思います。
  20. 小川紘一

    公述人小川紘一君) ちょっと私そっちの方の専門じゃない、外交が専門じゃないんで私が感じたことを申しますと、今おっしゃったように、インドの例でございますけれども、確かに一九八〇年代に日本の家電メーカーは一緒になって参入いたしました。しかし、なかなか市場ができないうちに今おっしゃった理由で帰ってまいりましたですね。九一年にもう一回インドが自由化して、九二年ごろから韓国がどんどん入っていったわけですが、そのとき日本が入れなかった。先ほど榊原公述人とそんな話をしていたんですが、そういう経緯がございました。  ただ、いや、それは表に出てきた現象でございますが、インドにいる日本企業を、電機メーカーをずっと訪問して、韓国も訪問して分かることは、日本はインドを低コスト製造拠点として位置付けていると。したがって、インドの日本企業の、例えばパナソニックでもソニーでもいいんですけれども、トップは工場長なんですね。例えばこの間までブラジルの工場の長だった人、そういう人ばっかりでございます。つまり、インドを、先ほどおっしゃったような、何かアライアンスを組んで一緒に市場をつくっていくような、そういう人が行っていないということですね。  じゃ、韓国はどうかといいますと、これはマーケティングの専門家、販売の人がトップになって行っています。この差は強烈でございますね。もう一つは、やっぱりそういう人たちを韓国なら韓国は、あるいは企業企業を長期にわたって育成している。最初から海外に市場をつくるということを前提でビジネスしているというせいもあるかもしれませんけれども、この違いは明快でございまして、先ほど来申しましたけれども、やっぱり自分たちが分業型のどの部分を担ってどの部分をパートナーと組むかとか、こういうことを前提のビジネスを当たり前のようにやっていると、この差が非常に大きいような気がいたします。  これがお答えになっているかどうか分かりませんけれども、この違いは変えていかないといけないということですね。
  21. 荒井広幸

    ○荒井広幸君 大変得心がいくんですが。  そういう意味で、日本外交というのは相変わらず大使という方々は職業大使が多いんです。この辺の時代感覚、どうでございましょうか、あるいは国際感覚は。
  22. 小川紘一

    公述人小川紘一君) 先ほど来申しましたように、私は外交のことはほとんど勉強したことがございませんので、川口委員の方が、お聞きになったら。  ただ、一般論として、でも今の外交官はかなり変わってきたというふうに聞いております。日本産業をサポートしていくような態度にかなり変わったというふうに間接的に聞いております。  その程度でございますので、御勘弁いただけないでしょうか。
  23. 荒井広幸

    ○荒井広幸君 ちなみに、日本の外交官は認証官なんですね。特命全権は認証官になります。これは陛下の認証といいますか、国家代表と、こういうことをいただくんですけれども、国会同意人事ではありません、これ。私は、国会同意人事にして、少なくとも、好き嫌いではなくて、どのように我が国の国民益の紐帯としての国益を守っていくかという、その基本的な姿勢ぐらいは聞かないと、国家代表になっているんですよ、これを私は、公聴会で少なくとも見識ぐらいは聞くべきだと、こういう法改正も提案したことがございました。  そういうふうなことになってきますと、どうやら日本全体としての取組が弱いということが御指摘の中にあったんだろうというふうに思います。  じゃ、私はどういう形で再構築していくかというと、環境を考えております。  これはどなたも言われることなんですが、実は環境の場合でございますと、私は、一つは公害に対する技術、これはベトナムで原子力発電失敗しましたけれども、二期目頑張っているようですけれども、二つ公害というのはあると。一つは、実は産業による、日本の水俣含めて。それから二つ目は何だと。戦争です。枯れ葉剤で今も五百万人の方々に医療給付しているんです。これが大変重いんです、ベトナムというのは。だからもう、四日市にも水俣にも行ったと。だから技術で価値が、値段が多少高くても公害出さないものを我々は選びたいんだという気持ちがありながら、やっぱり手が届かない、当面はやっぱり貧困格差からの脱却なんですね。  そういうところに私は先ほどの先生のODAの活用、戦略的活用というのは非常にぴんとくるんですけれども、そういう意味で私は、環境という視点から価値観を世界に変えさせる。一つは公害です。二つ目は省資源ですから、いわゆるリデュースといいますか、いかにマテリアルフロー的なものを、コスト会計なんか今ISOに日本が提案しているわけですけれども、資源を大切にしていくかという、そのプラントだけじゃなくて、運用管理能力まで全部売っちゃうと。そして職場に入ってもらい、それを勉強してもらい、そしてそれが地元の雇用につながり、日本の製品をまた買っていただく中国、インドのボリュームゾーンになってくると、こういう私は循環なんだろうというふうに思っています。  そして最後は、三番目は、CO2をいかに低減していくか、こういうことだと思うんですが、今までいろんな分野で御研究されていると思うんですが、この環境というものをもし一つの先ほどの問題意識の中に組み込むとすると、どういう環境で展望が開けるのか、あるいはどのように環境を組み込んでいったらいいのかを小川参考人に聞きたいと思います。
  24. 小川紘一

    公述人小川紘一君) 余り詳しい調査をしたことはないんですが、私が身近な調査と、あるいは私どもの仲間が調査した結果の話をお話し申しますと、二つあると思うんですね。  例えば、今ベトナムの例をお話ししました。先ほどはインドの例をお話ししました。余りいい表現ではないかもしれませんが、いわゆる先進技術の蓄積が非常に少ない国はなかなかトータルの技術の体系を持っておりませんので、それを一からやることは大変でございますね。ですから、要するにそういう基礎、人材育成とか長期の技術育成をしなくても技術導入ができるような、こういう仕組みをつくらなきゃいけないということですね。このためには、いわゆる日本の得意なものを、ターンキーソリューションと我々言いますけれども、自動車にかぎ置いてぱっとやると自動車がエンジン掛かりますね。ターンキーですね。要するに、何も中を知らなくてもそれ自身でその国が産業を興せるような、こういう仕組みをつくるということが極めて重要ですね。  こういうものでやったのは、実は先ほど言った携帯電話の例も全く同じでございまして、詳しいことを中も知らなくたって携帯電話を作れるような仕組みをやっぱりいろいろ提供するわけですね。アメリカのいろんなエレクトロニクス産業も全く同じ構造でございます。これによって技術蓄積がない、あるいは人材教育しなくてもすぐに産業を興せる。ヨーロッパアメリカが同時にハッピーになっていくわけですね。  こういうことをODAの力を使ってターンキーソリューションのような形で提供していると。これは、一つは、要するに部品材料技術日本が得意とする部品とか材料とか、こういうもので一つありましょう。もう一つは、今御指摘のように、電力と環境エネルギーの問題がございますね。例えば日本の電力システムというのは世界に冠たる安全、安心オペレーションですね。今スマートグリッドでどこの国もそういうことをやらないと産業を誘致できません。  例えば、この間インドへ行きますと、二時間置きぐらいにぱっぱっと電気が止まるんですね。そうしますと、要するにいろんな半導体装置が全く使えないわけでして、自前の発電機を持たなきゃいけないですね。ところが、日本はその安全、安心のための強烈なオペレーションのノウハウがあります。これがすべて電力制御システムのコントローラーというソフトウエアにみんなノウハウが入っているんですね。このノウハウをベトナムの人、中国の人、インドの人は知る必要はありませんけれども、こうやれば電力が安定するんだというターンキーでやりますと、それを使ってインフラが整われていくと。そうして普及していくと、実は日本の電力のそういうシステムの人もハッピーになっていくと、こういう構造ですね。こういう構造を仕組みとしてやる、その中の一部としてはODAを使うことは十分可能性があるんではないかというふうに思います。
  25. 荒井広幸

    ○荒井広幸君 ありがとうございました。  それでは、榊原先生、いかがでございましょう。その国債に、先ほどの子育て支援に十ものバリエーションがあるように、もう国債革命という感じですよ。財務省、本当に頭固くて、五年間やっておりますが、どうぞお願いいたします。
  26. 榊原英資

    公述人榊原英資君) 相続税非課税あるいは環境というものの特定目的を持った国債発行ということでございますけれども、非常に面白い考え方だと思いますけれども、恐らく財務省が興味を示さない理由は国債消化に全く今のところ問題がないと。先ほども言いましたけれども、一・三%、一・四%で機関投資家が幾らでも買ってくれるという状況ですから、何か特別な国債を作るということに対するメリットを今のところは全く感じていないということが一つですね。  それからもう一つは、特に財務省は特定財源を嫌いますから、特定財源というと大体各省が勝手に使うというイメージがありまして、空港整備特別会計なんてその典型でございますけれども、どんどんどんどん空港を造っちゃったというようなことがありましたんで、特定財源化するということ、特に国債について特定財源化するということに対して拒否反応があるんだと思うんですね。  その二つで今までは興味を示されなかったんだと思いますけれども、国債消化が困難になってきたとき、これがいつ来るのかは分かりませんけれども、五年先、十年先に国債消化が困難になってきたとき、そういうときは荒井先生のアイデアが生きてくるんじゃないかというふうに思っております。
  27. 荒井広幸

    ○荒井広幸君 大変うれしく有り難く思っております。  先生と初めてお会いしたのはもう十何年前ですけれども、竹村健一先生と勉強会で安倍先生やらと御指導いただいたんですが、その後の御活躍も拝見しておるわけですが、私も、なるほど社会保障企業型でやっておったけれども、家庭でもなかなか少子化で親を面倒見れない、そういう事情もあると。国がシフトする、これは自民党時代もかなりやってきたところであります。  それで、意外にこの委員会でも余り出ないんですが、少子化社会対策基本法というのをこれは超党派で作りました、民主党も入って、二百五十人の皆さんが入っていらっしゃって。それで、その少子化社会対策基本法というのには革命的なことが一つありまして、法律には夢というものが今までございませんでした。ところが、これ、夢という言葉を入れた初めての法律というんで、これも革命的だなというふうに思いましたけれども。  そういう中で、子育て支援ということも必要なんですが、子育ちという分野を忘れて子育てをすると非常に有為な人材は育たないのではないかと、こういう話があったんです。  これはどういうことかというと、子育てというのは親に対するというものが専らの概念になります、この場合。子育ちというのは子供の立場を考えるということでございます。これは少子化あるいは子育ての世界では当たり前に言われている言葉でございまして、子育ちに対してどう我々社会が全員で協力するかというと、何か今、お金目でどんどんどんどん話が出てきておりますが、結果的に本当にその子供は幸せなのかねと。三つ子の魂百までもの議論もこれはいっぱいありました。保育というのが本当に要るのか、育児休業で三歳から五歳までずっとどちらかがいたらいいんじゃないか、いろんなことがありました。まあこれも個人の価値観に基づくものもたくさんありますから難しいんですが。  そこで、長くなりましたけれども、子育ちという考え方でいきますと、私は、アメリカの五二九プランというのがあるようでございます。これは、親プラスだれでも、例えば荒井という人間に投資を預金するんです。その預金、非課税なんです。そのお金をもらいまして子供は大学に行って卒業していくという仕掛けなんです。  こういう発想が我々非常に少ないなというような感じがするんです。昔は企業では、みんな集団就職で福島から我々の先輩が行ったらば、学校に通わせてもらった。もし国が企業に代わってというか、できなくなった分を福祉の方に、榊原先生、行くとするならば、もう少し子供の立場、自分の選択、そういうものを反映して、与えられたお金を自分が、この場合は大学ということなんですけれども、使っていける、そういうものを残してやるということに、国が環境をつくって、周辺の人たちがそれに税の優遇を受けながら協力してやると。こういう作りというのは必要じゃないかというふうに思うんですが、御感想なり御意見なりいただければと思います。
  28. 榊原英資

    公述人榊原英資君) 教育に対する国の支援というのは基本的に私非常に重要だと思っておりまして、先ほども申し上げましたように、大学まで国がサポートするということ、高校の無料化だけじゃなくて、必要だと思っております。  その一つのやり方が税の優遇だというふうに思っておりますので、歳出でやるか税の優遇でやるかというのはいろいろなパターンがあるかと思いますけれども、税を優遇して民間の資金を活用して、それで教育ということに力を入れていくというのも一つのやり方だと思いますので、いずれにせよ、お金がなくても子供を大学まで送れるというような社会にしていくということが極めて重要なことだというふうに思っております。  今、日本が格差社会になって、しかも格差が再生産されるということが今起こっているわけでございますね。格差の再生産というのは、親が貧しい子供たちがきちっとした教育を受けられないということでございますから、それだけは絶対になくしていかなきゃいけない。教育は基本的に無償だということ、民間資金を使っても公的な資金を使ってもいいんですけれども、そういうシステムをつくることが極めて重要だというふうに思っております。
  29. 荒井広幸

    ○荒井広幸君 同感でございますが、そういう観点で、今は企業の人材育成、小川公述人、どういう現状で、またどのような、環境づくりとして国がするところ、あるいは社会がするところ、企業に対してもという意味ではどんな現状でございましょうか、またどんなことができるんでしょうか、我々が。
  30. 小川紘一

    公述人小川紘一君) 私は、先ほど来の話で物づくりという視点からちょっとお話し申し上げたいんですが。  今までは、日本企業、人材育成、私も会社に三十年近くおりまして経験することは、やっぱりいわゆる物づくりというんですか、そういう要するにいわゆる我々が言う物づくりでございますね、例えば品質管理とか、それからいかにして歩留りを上げるかとか、製造業だったからそういうのもあるんですけれども。一番私の経験でも欠けているのは、やっぱりグローバル社会でどうやって自分たちはビジネスをするんだろうかという、こういうような視点の教育というのはほとんど受けてないんですね。私は、五、六年前に会社を辞めたせいもありますけれども、少なくとも我々の時代はそうでございました。  現在は、さすがにアジアがどんどん成長しまして、韓国のサムソンなんかに日本がみんな負けてしまう、これは何かおかしいと言い始めてようやく始めたのではないかと思いますが、そういう意味で、自分たちのビジネスをグローバルの視点でもう一度思い返して、そしてその中で人材を育成していくと、言葉ではなく、具体的にですね。そういうことを我々は意外と少ないように思いました。韓国企業、台湾企業は当たり前のようにそういうことをやりますし、それから外国人のスタッフが相当多いですね。そういうのがなかなかまだできていないというのが現状でございますね。  ですから、やっぱりそういうことを、まあ政府でやるというのは問題だと思いますけれども、そういうような環境をやっぱり外部からつくっていくようなことをしないと、やっぱり知らないうちに負けてしまうということになるんじゃないかなというふうに思います。
  31. 荒井広幸

    ○荒井広幸君 そういうグローバルな視野、そういったものを企業も協力してやっているんだと思いますし、また税などを含めて支援するところはいっぱいあると思うんです。  そういう意味では、私は、国連大学というのはウ・タント事務総長のころに誘致して、国連の拠出金プラス独自に出しているんですかね。ウ・タントじゃなかったかな、ちょっとこれ正確を欠くかもしれませんが。国連大学というのはこれはシンクタンクでありますけれども、もう少し、せっかく本部が日本にあるんで、企業との交流、それから学生を含めた交流、こういうものをどんどん活性化したらいいなというふうに思っておるものでございますが。  結びになりますけれども、人材というのが先ほどのお話の中でもやっぱり極めて重要だということを考えれば、人材に対する投資、それは親の側からの人材育成ではなくて、子供本人が目覚めて、そして自分の子育ちといいますか、自分の志をつくっていくというところにも力を注いでいきたいと、このように考えている次第でございます。  というふうに考えておるんですが、人材のつくり方みたいな話はちょっとこちらに置きまして。  今、ちょっと小川参考人にもお聞かせいただきたいんですが、日本の地デジの方式が特に南米でこれは官民を挙げてやっていまして成功しておりますが、仕組みは結果的にはワンセグが見れるというところが一つのポイントなんですよ。ところが、端末は先ほどおっしゃったようにもう外国勢に一挙にやられようとしているんですね。こういうことになりますと、先ほどのコアな部分、基地局は握ったという、そういうEUのやり方。ただ、日本も方式を取って、方式を取ったその中で何を取るのか、もっと極端に言えば、そういう明確な戦略がないといけないな、こんな感じもいたしましたけれども。  改めて、日本が分業で、国際化の中でもう一回こういったところにちょっと視点を置けというところを御指摘いただきたいと思います。
  32. 小川紘一

    公述人小川紘一君) 先ほどの続きでございますけれども、社内教育という意味は、今のお話に続きますと、やはり丸ごと自分でやるんだという今までの伝統的なやり方では企業はもうとてもやっていけない、これをまずみんな認識しなきゃ駄目なんですね。やっぱり分業化して、やっぱり相手もハッピーになって自分もハッピーになる、共存共栄であるということをやっぱり一丸、みんながそう思わないとなかなかこうはいかないと。ところが、言葉では言うんですけれども、なかなか会社の組織が変わらないんですね。ここが最大の問題でして、やっぱりそういうような世論喚起をどんどんしていかないといけないんではないかな、社内教育にそういうことをどんどん取り入れなきゃいけないんじゃないかというふうに思います。
  33. 荒井広幸

    ○荒井広幸君 最後に、榊原先生、今二十兆円からどんどん、国債の利払いというんですかね、償還財源必要になってきているんです。私は財務省が言うようにそんなに驚いてはいないんですが、しかし、そろそろ、先ほど御激励もいただきましたけれども、やっぱり財政法四条は建設国債は公共事業と出資に充てると書いてあるんですから、これ立派な目的なんですよ。ですから私は、先ほど言ったような目的を出せないはずがない。それは何に使うかを明確にしてそれを明示することによれば、これはもうまさに政治家に再分配、変なことされるよりはよっぽどましだと、利回り安くても買ってやると、こういう感じになると思いますが、最後に一言、目的国債について御感想があればお願いしたいと思います。
  34. 榊原英資

    公述人榊原英資君) 先ほどの繰り返しになりますけれども、国債消化が恐らく困難になる時期というのはいずれ来ますから、そのときにそういうものを発行するというアイデアが生きてくるんではないかというふうに思っております。
  35. 荒井広幸

    ○荒井広幸君 ありがとうございました。
  36. 加藤修一

    加藤修一君 公明党の加藤修一でございます。  今日は、お二人の公述人、合わせて四十分間のお話、大変有益な話をいただきまして本当にありがとうございます。  まず最初に、小川紘一公述人にお願いしたいわけでありますけれども、知らないうちに負けている、あるいはそこには構造的な問題があるということで、一つは市場拡大のオープン化戦略、こういう戦略が必要であろうと、あるいは利益確保のためのクローズド戦略、この二つの戦略が必要な中、製品のアーキテクチャー、この変化をいかに予測するかということで、両者をリンクをいかにさせるかという、非常にそういった意味では大事なわけでありますけれども、この辺が日本の敗因だと、そういう指摘だと思いますけれども。  世界は確かに標準化をビジネス戦略に取り入れていると、そういった中で、グローバル市場において共通インフラにするというのがそういうことだと思いますけれども、これ、日本にとって有利に展開できる分野はどこかということになると思うんですね、一つは。例えば新幹線技術あるいは電気自動車、原発も最近そう言われております。あるいは先ほどお話がありました電力網の関係、高圧伝送システムの関係もそうだと思いますし、あるいは水技術の関係についてもあるように私は思っているわけなんですけれども、この辺についてはどのようにお考えかというのが第一点ですね。  二点目は、建築基準とか土木技術の関係、これにかかわる基準というのは当然あるわけでありますけれども、これは世界基準という形で考えられる分野なのかどうなのかということ。  三点目は、世界標準化になじまないというか、そういうふうにやるべきではないと、そういう分野はどこになるのかなという。  取りあえず、以上三点、よろしくお願いしたいと思います。
  37. 小川紘一

    公述人小川紘一君) 非常に難しいといいますか、現在、企業人が最も今真剣に考えている問題をずばりと御指摘いただいたわけですが、最初の御質問、新幹線、電気自動車、それから高速電力網、水といろいろ御指摘いただきましたけれども、まず水の問題ですけれども、確かに強いかもしれませんが、水はやっぱり、数え方にもよりますけど、十兆円以上のビジネスになっていますね。しかし、日本が発明、発見、開発した逆浸透膜というのがございます。これは東レだったかな、やったと思うんですが、実はそれは市場規模数百億でしかありません。つまり、日本はその部品、材料では強いんですね。圧倒的なイノベーションを起こすんです。しかし、それをベースにして十兆円、二十兆円の市場をつくっていくのは日本じゃないんですね、残念ながら。ここが問題なんですね。  ですから、先ほど電池の話もしましたけれども、電池で強いというのが、ごく一部、全体のシステムの部品、材料に近いところ、ある意味ではブラックボックスにしやすいようなところ、技術が伝播しにくいようなもの、こういうところは確かに強いんです。しかしながら、それを組み合わせてシステムインテグレーションをしていくところになりますと途端に負けてしまう、これが現実です。  ですから、高速電力網も、これは世界中で何百社もあるいは何百という標準化団体がありまして、私はここでビジネスやります、私はここだと、こうやっているわけですね。ですから、必ず分業構造になります。  一番最初の御質問で、アーキテクチャーを事前に予測するとありますけれども、やっぱりこういう標準化したときに、どの部分をオープン化すると大量普及する、しかしそのときに、私は、日本はここで勝つんだとか、ここでやっぱり雇用を守るんだとか、こういうことを事前に設計することが重要であると。丸ごとブラックボックス、すり合わせの技術体系のときにはこれは切り分けできませんので、なかなかできないんですけれども、こういう組合せ、モジュール構造になったときにはやっぱりトップラン的にこれはやれるんですね、事前設計というのは。  ただ、先ほどの御質問で社内教育の話もありましたけれども、こういう教育が実は我々はまだなじんでいないと。これは日本人だからと、そういう話じゃなくて、そういうような経験をしてこなかった、する必要がなかったということじゃないかと思うんですね。ですから、最初のアーキテクチャーの話になるとそういうようなお答えになろうかと思います。  それから、電気自動車も本当に強いだろうかと。恐らく強いのはインバーターの、半導体の交流を直流に直す、直流から今度はパルスに直すインバーター、こういうところは確かに強いです。それから電動モーターも強いでしょうとかですね。  ところが、電気自動車になると、そういうようなお互いにすり合わせ領域というのは極めて少なくなりまして、組合せ型でどんどんできる可能性があるんですね。自動車産業そのものは今までのように強くはないと。必ず、部品は強いと、しかし自動車産業そのものは今までのとおりではとても考えられない、ここが我々の最大の懸念です。日本の自動車産業というのは雇用を、一番雇用を守っていますよね。ところが、それが電気自動車になるとかなり劇的に変わる可能性があるんですね。そういうことを事前に予想して対策を打たなきゃいけないということをちょっと申し上げたいですね。  それから、新幹線の場合も、これは日本の新幹線は世界で見て、ある本当の特殊なスペックでございまして、新幹線の部品をやっている日立さんとか川崎重工やいろんなところで伺いますと、やっぱり現地の仕様に合わせてもう一回仕様をカスタマイズしなきゃいけないと。そのときにどうカスタマイズするかというと、中国へ行きますと、これはヨーロッパが決めた規制がございますね。そっちの方に安全基準にカスタマイズするとか、こういうことをもうどんどんやるんだそうですね。ですから、トータルシステムではなくて、やっぱり部品単体で提供するような、そういう構造にどうしてもならざるを得ないと。  ですから、繰り返しますと、やっぱり強いのは、部品単体、あるいはテクノロジーのモジュール、個別のモジュールでは確かに強いと。ところが、インテグレーションになるとなかなか勝てないというのが現実でございます。ですから、そういうことを前提に、くどいようですけれども、オープン化というのは、国際標準にすると必ずそういう分業構造になるんだと。したがって、日本は、どこで雇用を守る、どこで勝つということを事前設計をやっぱりやらないと、あるいはそういうことを当たり前のように考えないとなかなか勝てないということが第一番目の御質問に対する答えでございます。  二番目、建築土木の中で標準化とありますけれども、人間の感性に関係するようなものというのはなかなか標準化できないと思うんですね。私はこういうのが好きだと。フランス人の好きなのと日本人の好きなのと違いますね。標準化できない。標準化というのは、実は共通の部品で流通させて、だれでも低コストでみんなつくれると。だから、みんなが低コストの社会をつくるための仕掛けが標準化なわけですね。ところが、やっぱりライフスタイルに絡んできますとやっぱり国によって全部違いますので、そういうような視点で、できないことはないと思うんですけれども、ちょっとなかなか難しいかなという気が個人的にはいたします。  三番目は、こういう標準になじまないものですね。これは、今申し上げたように、やっぱり個人の嗜好に絡むようなもの、これはなかなかなじまない。  もう一つは、最初の最も重要なことは、例えば携帯電話にしろパソコンにしろ、それからインターネットですらみんなオープン、オープンと言いますね。グーグルもみんなオープン、オープンと言いますね。ところが、彼らは絶対に標準化していないところが必ずあるんですね。  グーグルはオープン標準が世のため人のためとみんな言います。ホームページにみんなそう書いていますね。ところが、自分のテクノロジーは絶対にオープンしないですね。インテルもそうです。中身は絶対にオープンしません。それから、先ほど言ったヨーロッパ携帯電話も、やっぱりベースステーション、基地局を全くオープンにしませんね。  つまり、なじまないものというと答えに直接ならないんですが、やっぱりどこで日本雇用を守るんだとか、あるいはその企業はどこで勝つんだという、これは決して標準にしてはいけないということですね。自分の周りだけを標準化する、そうするとみんな大量普及していきますんで、そういうメカニズムを事前設計するということが極めて重要だと思います。
  38. 加藤修一

    加藤修一君 システムインテグレーションの話が出てまいりましたけれども、確かに私もそう思います。  ただ、日本はイノベーションと言ったときに、どうも、先ほど部品の話が出てきましたけれども、技術イノベーションだけに頭がいってしまっているような感じがするんですね。やはり社会の仕組み、システムをどう変えるか、そういうビジネスモデルも含めた形でイノベーションというのは考えていく必要が私はあるんではないかなと思いますけれども、この辺についてはどのようにお考えですか。
  39. 小川紘一

    公述人小川紘一君) 全く御異存はありませんで、むしろ、そういうことをやらないと、いつまでたっても何か知らないうちに負けてしまうということを再度強調させていただきたいと思います。  以上でございます。
  40. 加藤修一

    加藤修一君 次に、榊原公述人にお願いします、ミスター円にお待たせいたしましたけれども。  はしょって話をしたいと思っていますが、今のGDPに対する考え方ですよね。かつてはグリーンGDPという話もあったり、あるいはGDP信仰ということがあって、GDPが大きくなればそれで豊かになるという話でありますけれども、必ずしもそうではない。ハリケーンが起こって大変な災害が起こって、それでそれを復旧工事すると、それはもう当然GDPに換算されるわけで、反映される。津波もそうなわけですよね。ですから、現実社会は悲惨なことが多く起これば起こるほど場合によってはGDPが大きくなるケースもあり得ると。だから、そういうGDPに依存しながら経済の運営をやるというのは、非常にシンプルな言い方ですけれども、どうかなという感じがします。  それで、一九九八年のリオ・サミットの中でアジェンダ21というのがあって、その中では、要するに経済勘定にいわゆる自然資本の関係とか環境の関係を含めてどうやって反映させるかというふうに、もう十数年たっているわけでありますけれども、ようやっと最近そういう話も出てきている。それは、生物多様性ということでCOP10がありますが、その関係でTEEB、要するに環境とか生物多様性に関する経済学というのが出てきている。それで経済評価を自然資本についてもしようという話になっているわけですよね。  だから、過去あったグリーンGDP、それを更にモデファイするという話だと私は理解しておりますけれども、今後、生活の豊かさ、本来の豊かさとか、そういうものを考えていく。あるいは、新しい成長分野として、そういった福祉の関係とか健康の関係、安全の関係、環境の関係含めて先生はおっしゃっておるわけでありますけれども、そういうことを絡めて、人間が豊かな生活を享受できるという意味では、GDPの考え方もやっぱり変える必要があるだろうと、そう思っておりますが、その辺のことについてどのような御見解をお持ちでしょうか。
  41. 榊原英資

    公述人榊原英資君) おっしゃるとおりでございまして、今特に先進国成長経済から成熟経済に入ってきたと思うんですね。ですから、おっしゃるように生活の質をどう向上するかということ。物という意味では、もう日本アメリカも物はあふれているわけでございますから、これ以上どんどん物を買って豊かになるということではなくて、生活の質をどう上げていくかということが非常に重要だと思います。ですから、私が二十一世紀のキーワードというのは環境と安全と健康だというふうに言っているんですけれども、そういう中で生活のクオリティーをどう上げていくかと。  ただ、GDPに代わる指標を作るというのはこれなかなか難しいことでございますけれども、日本の場合には、やっぱり非常にある意味では、森と水の国ですから、環境が非常にすばらしいわけですね、ほかの国に比べると。そういうところをやっぱり非常に大切にしていくということ。あるいは健康という意味でも、日本は、健康年齢というんですか、そういう意味では先進国で最も高いわけでございますから、そういう意味で、GDPだけではなくて、日本の持っている良さを含めて成熟社会というものをどういうふうに育てていくか、あるいは維持していくかということが大変大切だというふうに思っております。
  42. 加藤修一

    加藤修一君 確かに今のGDPに代わるものというのはなかなか私も難しいと思います。  ただ、環境と経済統合した勘定を考えるというのは、補完的にしてもそういう方式はやっぱり今後取り入れていく必要があるんではないかなと。そういうことが数字としてなるべく出せるような試みというのは大事だと私は思っておりますけれども、その辺について改めてお尋ねします。
  43. 榊原英資

    公述人榊原英資君) おっしゃるように、そういう試算を日本の側でしてみるというのも面白いと思うんですね。要するに、GDPだけではなくて、環境とか安全とか健康とか、そういうことで指標を作ると恐らく日本は相当上の方に来ると思うんですね。ですから、こういうことを考えると、日本はいい国なんだよというようなことを宣伝する意味でも、おっしゃるように何か指標を作って、それで国別に並べてみるみたいなことを政府に要請して、そういうものを試験的に作ってもらうというのも決して悪いことじゃないというふうに考えますけれども。
  44. 加藤修一

    加藤修一君 今、政府に要請してということですので、榊原先生の助けも借りて政府に要請したいと思いますけれども。  それはそれなんですけれども、現在、一九九二年のそれがあって以降、日本はこの分野で私は非常に優れていると思います。進んでいると思います。環境・経済統合勘定、SEEAというやつがありますので、これを補完的にどうこれから改良して使っていくかというのが非常に重要だと思っております。今後、様々な点で勉強したいと思っておりますので、よろしくお願いします。  ありがとうございます。
  45. 山下芳生

    山下芳生君 日本共産党の山下芳生です。お二人の参考人、ありがとうございました。  まず、榊原参考人に日本経済の構造問題について質問をさせていただきます。  一九九〇年からG7のGDP名目伸び率を見ますと、ほかの六か国がおおむね一・九倍から二・五倍に伸びている中で、日本だけが全く横ばいで取り残されております。成長が止まった国になっていると思います。一人当たりのGDPで見ましても、九六年には日本が七か国中トップだったんですけれども、次々と抜かれて、〇七年にはイタリアにも抜かれて最下位となっております。まさに日本経済にとって失われた二十年。  したがって、私は、当面の景気対策にとどまらずに、成長しない経済の構造を変える必要があると思っておりますけれども、榊原参考人、いかがでございましょうか。
  46. 榊原英資

    公述人榊原英資君) 御指摘の数字はそのとおりだと思いますけれども、一つだけ御指摘しておきたいのは、為替レートの影響が相当あると思うんですね。それは恐らくドル換算でやっていますから、九六年というと相当な円高ですよね、ですから、相当の円高ですから、それに比べると、今ちょっと円高になっていますけれども、円安にずっと振れましたから、そういう部分があるんだとは思います。  ただ、おっしゃったように、失われた二十年という部分はあると思いますので、どうやって日本成長というのを回復していくんだと。もう人口も減り始めているわけですから、人口が減るということは成長にとって最もマイナスということでございますから、どういう形で成長戦略を組んでいくのかということはこれから非常に重要なことだと思います。  私の考え方は、先ほど言いましたように、ヨーロッパ型福祉社会をつくって、むしろ人口を増やすという方向子ども手当なり育児手当なりを充実すると。あるいは雇用ということに関しては、もう少し社会福祉の枠を広げて、失業ということが大きな社会問題にならないようにすると。これ、大きな政府になりますけれども、そういう方向日本経済の構造を転換するということが必要なんじゃないかと。  アメリカ型からヨーロッパ型へということが言えるかと思いますけれども、どちらかというと今までアメリカ型を目指していたんですね。特に小泉・竹中ラインのときはそれを目指していたわけでございますけれども、どちらかというとこれからはヨーロッパ型を目指すという方向で、福祉の、若者というか、雇用育児への充実ということで考えていったらいいんじゃないかと。そのことによる構造改革というか構造変化というようなことが望ましいというふうに私は思っております。
  47. 山下芳生

    山下芳生君 構造といいますと、日本経済全体の成長が止まっている下でも大企業の利益と内部留保が増え続けるという状態が続いております。特に二〇〇〇年代に入りまして、大企業は利益を拡大し続けて、〇三年から〇七年にかけて史上最高益を五年連続で更新をいたしました。内部留保は九七年から〇七年の間に百四十二兆円から二百二十九兆円と積み上がりました。その一方で、雇用者報酬は大きく減少をしております。九七年の二百七十九兆円から〇九年の二百五十三兆円に一割減りました。先進国雇用者報酬が減少したのは日本だけであります。  私は、大企業が利益を増やしたことが問題ではないと思っております。大企業の利益や内部留保を減らすことが政策目的であってはならないと思っております。大企業だけに富が集中し、それが企業の中にとどまって、実体経済、すなわち国民の暮らしや設備投資に回っていかない、この仕組みを改革することが今求められているのではないかと感じております。  例えば、安上がりで使い捨て雇用を拡大してきたこの間の、それこそ小泉・竹中構造改革による労働法制の規制緩和を転換することですとか、大企業と中小企業の公正な取引を実現するルールを作り実行体制を確立することなどが必要ではないかと感じておりますが、この点、榊原参考人、いかがでしょうか。
  48. 榊原英資

    公述人榊原英資君) 確かに、日本経済、特に高度成長期を含めて日本経済を支えてきたのは中小企業でございますね。つまり、大企業の系列などに組み込まれたり組み込まれなかったりしているわけですけれども、日本の中小企業が持っている技術力というのが非常に高くて、企業の大部分というのは中小企業でございますから、そういう意味で、おっしゃるように中小企業というものに対してもっと目を向けて、それを支援する仕組みというのをつくっていくと。  特に、今グローバリゼーションですから、いろんな形で大企業なり企業が外へ出ると。中小企業はなかなか単独で外へ出るというのは非常に難しいですよね。ですから、ジェトロなりなんなりの機関が、中小企業が外へ出ていかれるようなそういう仕組みというものをつくっていく必要があるというふうに思っておりまして、その意味で中小企業を積極的に政府なりあるいは公的な団体が支援するというのは極めて大切なことだというふうに思っております。  それから、雇用者報酬が減少しているということでございますけれども、これは先ほどの最初の陳述でも申し上げましたけれども、物価賃金日本は下がっているわけでございますね。実は、これは何で下がっているかという原因を追っかけていきますと、結局グローバルな競争、特に中国を含んだ東アジア経済統合とグローバルな競争、こういう中でデフレ賃金の減少が起こっていると。  つまり、日本国内で生産するのはペイしなくなる、そうなると中国へ出ていく、そうすると中国へ出ていったときの生産コストと比べると日本は高過ぎると、そういう構造で日本賃金が下がっていくというような構造が実はあったわけでございますけれども、おっしゃるように、国民福祉ということからいうとこれは決して望ましいことじゃないわけでございまして、労働法制をどうするかということも一つ大きな課題だと思いますけれども、ただ、グローバリゼーションによってそういうことが起こってきているんだという認識がないと、法律的にただ強制をするということだけでは必ずしもうまくいかないわけでございますから、その辺のところをどう考えていくかと。  最終的に日本企業の利益が日本国民一人一人に均てんされるようにしていくということが大変大切だというふうに思っておりますけれども、東アジアとの経済統合そしてグローバリゼーション、そういうものの中で企業が非常にある意味ではシビアになってきたわけですね。かつては企業福祉というのは相当充実していたんですけれども、そこがどんどんどんどん減ってきているということでございますから、私の考え方を申し述べさせていただきますと、企業にそれを強制するというのはかなり難しいだろうということで、むしろ国の福祉、国の雇用とか育児に対する福祉を充実するというヨーロッパ型に持っていくという方が望ましいんではないかというふうに思っております。
  49. 山下芳生

    山下芳生君 ありがとうございました。
  50. 近藤正道

    近藤正道君 社民党・護憲連合の近藤正道でございます。  今日は、榊原先生小川先生、大変貴重な御意見をいただきまして、ありがとうございました。  技術革新の中で大変厳しい現実と背中合わせ、そして、もう一部にはそういう大変厳しい現実が訪れているという小川先生の話を聞いて、ある意味では非常にショックを受けている一人でございますし、また榊原先生のお話の中で、社会保障の概念を拡大をして、子供をやっぱり育てる、教育、子育て、こういうところに社会保障の概念を拡大して、やっぱり人を増やすという、人口を増やすということを長期的に目指していくということは非常にやっぱり大事なんだと。そのために、政府が当面大丈夫だから頑張るべきだと、こういう話を聞いて、なるほどなというふうに思っておるんですが。  実は私、その中で働き方、今ほど山下議員の方からお話がございましたけれども、このことについて私もどうなんだろうかと。とにかく、最近の国際競争の中で非正規の労働者が増えて、いわゆる人材の劣化が進んでいると。これは、仮に雇用をこの国に残したとしても、例えば数年前、キヤノンの工場で非正規の人たちのいろんな問題が起こりまして、この働かせ方あるいは就労形態をやっぱり何とかしなければならないなと、こういうふうに思っておりまして、そこのところを冒頭お二人の先生からお聞かせをいただきたいと、こういうふうに思っておりました。  今ほど、一部、榊原先生の方からお話がございましたけれども、最後はやっぱり人ということでありまして、ここにやっぱり価値を置くということであれば、日本の国の働かせ方、私は、直接雇用で、できれば期間の定めのない働かせ方にもう一回、活力を維持しながらどうやってやっぱりその方向に持っていったらいいのか、日本全体での雇用を守ると同時に、働き方を本当に真剣に考えていく、どうしたらいいのかということをお二人の先生からまず一言ずつ、先ほどとちょっと重なるかもしれませんけれども、お聞かせいただければ有り難いと思っています。
  51. 榊原英資

    公述人榊原英資君) 実は、非正規雇用というようなものにどう対応するかというのは大変な社会問題、政治問題であるわけでございますけれども、私の考え方は、余りひどいものに対しては法律的に対応して企業に強制するということは必要だと思いますけれども、むしろ企業に強制するということよりも、政府が公的に雇用を支援するという方向に持っていかなきゃいけないんじゃないかと。  先ほどから雇用と子育てにもっと国の資金を入れるべきだというふうに申し上げておりますけれども、雇用に対してもう少し歳出を増やして、フランスなんかはそういう形になっておるわけでございますけれども、そういうことで、企業が厳しい競争の中で生き残っていくということが一方であるわけでございますから、それにもかかわらず雇用条件が悪くないようにするということは、どうしても政府の支援が必要でございますから、政府がそこに対して歳出を増やすことによって雇用を支援するという、それで企業との併存を図るということが非常に重要ではないかというふうに思っております。
  52. 小川紘一

    公述人小川紘一君) ほぼ同じ意見でございますけれども、やっぱり日本雇用、これはアジア全体の経済圏の中に置かれた日本の今の立場、この中でやっぱり考えなきゃ解がないということでございますね。  先ほどから申しましたように、やっぱりこれだけ、円高のせいもありますけれども、グローバリゼーションの中で日本の工場がどんどんどんどん海外に行くわけですね。あれだけ亀山ブランドであったシャープですらやっぱり工場を丸ごと中国に持っていかざるを得ないと。それは中国のシャープ工場じゃないんですね。やっぱり中国に売らざるを得ないわけですね。  それから、名前は言えませんけれども、自動車メーカーでも今はやっぱりそういうことをやらざるを得ないような状況に追い込まれておりますね。大中小、企業の規模にこだわらずです、関係なくですね。  それから、DVDですら、今申し上げたのは日本がかつて強かったというものだけを申し上げているわけですけれども、これも、この間ある会社が相談に参りましたけれども、今の日本の制度の中ではどうしてもやっぱり海外に行かざるを得ないと、そういうことが現実なんですね。ですから、企業の中でそれをすべて吸収しろというのは極めて無理といいますか、やるとやっぱりどうしても勝てなくなっちゃって、全体が今度共倒れになる可能性がございます。  したがって、この問題は、榊原公述人と同じように、やっぱり政府といいますか、公的な支援をしていかなきゃいけないだろうと思います。ただ、それ以上にやっぱり国内に工場をいっぱい造ることですよね、別な意見の人がおるかもしれませんけれども。そのためには、日本に工場を造ったら負けるのが現実ですので、やっぱり経済特区のようなものをつくらないとこれどうしようもない。あるいは、かなりほかに絶対追い付かれないような製品に産業構造を変えていかなきゃならないですね。やっぱりどっちかやらないと、この問題、解決しないんじゃないかと思います。
  53. 近藤正道

    近藤正道君 分かりました。  もう一つ、これは榊原先生の方にむしろお聞きをしたいと思うんですが。  当面のデフレの克服策がこの予算委員会でもかなり議論になりました。デフレですから金融上の問題でありますけれども、今日のお話を聞いておりますと、そういうことよりもやっぱり日本を含むアジア全体が一つの工場となって一体感を持っていろいろと動いている、そういうやっぱり構造的な問題が大きな要因としてあるんだと、単なる金融上の問題ではないと、こういう話ですが、それを押さえた上で、なおかつ日銀は当面どうあるべきなのか、今の日銀の政策等について見解をいただきたいというふうに思います。
  54. 榊原英資

    公述人榊原英資君) 白川総裁は、私は結構よくやっていると思うんですね。日銀は事実上ゼロ金利ですし、流動性も潤沢に提供していますから、日銀が更に、もちろん更に緩和すると言っているわけですね。更に緩和してデフレが収まるかというと、これは収まらないんですね。白川さん、それをよく知っていると思います、デフレが構造的だと。つまり、中国で物を作って中国から物が入ってくるから安くなるんだということですから、これは一国の金融政策じゃどうにもならないんですね。  ただ、彼も真剣に、いろんな御意見があるのでそれにこたえようとしていますけれども、やっぱりこの構造的なデフレというのをどう考えるかということ、非常に重要だと思いますね。恐らくそう簡単にデフレは止まらないというのが現状ですから、むしろそれを前提に何をするかということを考えるべきではないかと、デフレを止めるということじゃなくて。デフレといっても、どんどんどんどん不動産価格が落ちるとか株が落ちるという状況じゃありませんから、緩やかに物価が下がっているということですから、それを前提に、それじゃ一体政府として何ができるかということを考える方が建設的ではないかと思っていますけれども。
  55. 近藤正道

    近藤正道君 ありがとうございました。
  56. 簗瀬進

    委員長簗瀬進君) 以上で公述人に対する質疑は終了いたしました。  この際、公述人方々に一言御礼を申し上げます。  本日は、大変有益な御意見をお述べいただきまして、誠にありがとうございました。委員会を代表いたしまして厚く御礼申し上げます。  また、冒頭七分間ほど開会が遅れたことについてはおわびを申し上げます。  午後一時に再開することとし、休憩いたします。    午後零時四分休憩      ─────・─────    午後一時開会
  57. 簗瀬進

    委員長簗瀬進君) ただいまから予算委員会公聴会を再開いたします。  休憩前に引き続き、平成二十二年度総予算三案につきまして、公述人方々から御意見を伺います。  この際、公述人方々に一言ごあいさつ申し上げます。  本日は、御多忙中のところ本委員会に御出席いただきまして、誠にありがとうございます。委員会を代表して厚く御礼申し上げます。ありがとうございました。  本日は、平成二十二年度総予算三案につきましてお二方から忌憚のない御意見を拝聴し、今後の審査の参考にいたしたいと存じますので、どうかよろしくお願いいたします。  次に、会議の進め方について申し上げます。  まず、お一人二十分程度で御意見をお述べいただいた後、委員の質疑にお答え願いたいと存じます。  それでは、外交・安全保障について、公述人内閣総合科学技術会議議員白石隆君及び帝京大学法学部教授志方俊之君から順次御意見を伺います。  まず、白石公述人にお願いいたします。白石公述人
  58. 白石隆

    公述人(白石隆君) 白石でございます。
  59. 簗瀬進

    委員長簗瀬進君) どうぞ御着席ください。
  60. 白石隆

    公述人(白石隆君) どうもありがとうございます。  それでは、早速私の考えを述べさせていただきます。  基本的に、私が持っております問題意識というのは、これから二〇三〇年、つまりこれから二十年ぐらい先まで見たときに、日本を取り巻く国際環境というのはどういうふうに変わっていくだろうかと。そういう中で、日本の外交戦略、安全保障戦略というのはどういうものとして構想されるべきであるかということについて今日は述べさせていただきたいと思います。  それで、まず最初に、長期的な趨勢というものがどうなっているかということをごくかいつまんで三点申し上げたいと思います。  一つは、これは、申し訳ありません、表の一じゃなくてテーブルの一となっておりますけれども、世界経済長期予測というものでございます。これは日本経済研究センターが二〇〇七年の一月に出したものでございますが、現在の危機にもかかわらず、それほど、この予測のベースになっております考え方はこれでも妥当すると考えております。  ポイントは極めて単純でございまして、日本を単位としたときに、これは二〇〇〇年の購買力平価、ドルベースで見た場合ですが、中国経済規模というのは一九九四年に購買力平価ベースでは日本よりも大きくなっておりますが、二〇二〇年には中国日本の四倍、二〇三〇年には五倍、二〇四〇年には六倍、二〇五〇年には七倍近い経済の規模になるだろうと。  それからもう一つは、中国は二〇二〇年から二〇四〇年にかけてはアメリカをも凌駕する、そういう経済規模の国になると。それから、二〇三〇年になりますと、日本は、中国アメリカだけではなくて、ASEANあるいはインド、それからもちろんEU、そういう国に比べても小さい経済になるということでございます。  もちろん、購買力平価で考えた経済の規模というのがその国の富、国の力を図る上でどのくらい有用であるかということについてはいろんな議論があるかと思いますし、私自身、例えば国力ということから考えますと、科学技術の力であるとか、人間の、人々の教育水準であるとか、様々の、産業力であるとか、そういうことがありますので、別に二〇三〇年になって中国の購買力平価で見た日本に対する経済の規模が四倍になった、五倍になったからといって、それだけの力の差ができるとは考えておりません。  ただ、それにしましても、中国が恐らく日本よりも豊かで、経済の規模として大きくて力のある国になるだろうことは覚悟しておいた方がいいでしょうし、そのとき、二〇三〇年ぐらいになりますと、中国だけではなくてインドもそういう国として台頭しているし、恐らくASEANの国々も日本とひょっとしたら同じくらいの経済規模の地域になっているかもしれない。そのくらいのことは考えておいた方がいいでしょうということでございます。  そうしますと、当然のことながら、富の分布、力の分布が変わりますと国際秩序というのは変わらざるを得ません。問題は、そういう変化というのが突然革命的に変わるというのは、これは日本にとっても、それ以外の国にとっても非常に都合が悪いことなんで、どうやって、秩序が変わるのはしようがないけれども、進化する形で、つまり大きな混乱なしに、徐々にすべての国にとって適応可能な形で変えていくかということが実は一つ重要な問題になるだろうと。  第二番目の大きいトレンドは、アジアにおける都市化、中産階級の拡大、それから格差の拡大ということでございます。これはちょっと、表の二というのを付けておりませんが、二番目の東アジア都市人口予測というものを見ていただければと思います。ここで示されておりますことは、二〇三〇年というところで東アジアの人口がどういうふうに分布しているかということを見ますと、この場合の東アジアというのは日本は入っておりませんが、日本を除く東アジアの人口の六二%が都市に住むようになると。  つまり、農村のアジアではなくて都市のアジアになるというのが、これが非常に重要なポイントでございまして、特に中国、インドネシアのような人口大国で、中国の場合には都市化率が六一%、インドネシアの場合には六八%になると。まして、フィリピン、韓国、マレーシアのような小さな国、韓国を小さい国と言うとちょっと申し訳ない、結構大きい国ですけれども、こういう国では都市化率というのが八〇%近くになると。ベトナム、タイのような大陸部の国ですら五〇%近い都市化率になると。  こういうふうになりますと、当然のことながら、その三分の一ないし四分の一というのは非常に豊かな都市の中間層あるいは富裕層と言われる人たちになりまして、この人口が二〇三〇年になりますと恐らく四億人から五億人、つまり日本の現在の人口の四倍からひょっとしたら五倍ぐらいの人口の非常に豊かな中産階級の世界というのがアジアに現れるということが、これが一つ重要なポイントでありますが、同時に、日本あるいは台湾、韓国、それからシンガポール、このくらいの国を除きますと、ほかの国は、二〇三〇年になってもいわゆるほとんどの人たちが中産階級の人たちである、そういう中産階級社会には恐らくならない、つまり、相当の数の貧しい人がずっとまだ居続ける、そういう社会であることも間違いございません。  ということで、現在は、この貧富の格差というのは、多くの場合、都市と農村の格差ということになっておりまして、それは、例えば中国の場合に、三農問題という表現の仕方によく表れているところですけれども、二〇三〇年になりますと、この貧富の格差というのは都市の中の中産階級と貧しい人の格差ということになってきて、ますます政治的に重要な問題になるであろうというのが、これが二番目のポイントでございます。  ということは、どういうことかと申しますと、これから、二〇三〇年ぐらい、それぞれの国でやはり経済成長、それによって雇用をどうやって生んでいくかというのが非常に重要な政治の目的になり続けるというのが、これが都市化、中産階級の拡大、格差の拡大の持つ意味でございまして、現在ではもう一国で経済成長をやるという時代は終わっておりますので、当然のことながら、経済成長をそれぞれの国で促進するために東アジア経済共同体の推進ということが非常に大きな課題になってくるだろうと、これが二番目のトレンドの意味するところでございます。  三番目に、ここでは特に資料は挙げておりませんけれども、科学技術の進歩と資本コストの拡大というのは、これは非常に、ほとんど想像を絶するものがございます。  我々、現在インターネットあるいはEメールというのはもう本当に日常生活に欠かせないものですけれども、二十年前にはまだ我々はEメールというのはほとんど使っておりませんでした。これからの二十年というのはそれ以上に大きな変化が出てくる、そういう社会だと思いますが、決して日本にとってはこれは楽観できることではない。  例えば、私が現在本務としております科学技術の分野について申しますと、中堅の科学者になるような人たち、つまり年齢で申しますと二十五歳から四十五歳くらいの非常に働き盛りの人たち、これ男女両方合わせた日本の人口というのは現在から四分の一減ります。それから、仮に科学技術についての投資が、現在は三%ですけれども、これが政府、民間合わせてGDPの四%になったとしても、現在、世界研究開発投資に占める日本の割合というのは一八%ですけれども、これが一六%に下がります。ということで、一方で、科学技術の研究というのはますます資本コストが掛かるようになる。ところが、一方で、日本はその余裕が二十年後、よっぽど頑張ってもやっぱり相対的には落ちていくというのが、これが三番目の大きな趨勢であります。  そういうことになって、それじゃ、こういうことにどういう意味があるんだろうかと。一番重要なことは、東アジアヨーロッパの政治、経済の仕組みの違いでございます。  御承知のとおり、ヨーロッパでは、一九八九年から九〇年の冷戦の終えんのときにソ連が崩壊しまして、東欧の社会主義国というのはすべて民主化いたしました。その結果、ヨーロッパでは社会主義圏というのは見事になくなりまして、そのなくなった後にNATOが東に拡大し、このNATOが東に拡大した中でEUも拡大してきたと。つまりヨーロッパにおいては、地域的な安全保障のシステムと地域的な経済、政治の協力のシステムの間には緊張がございません。  それに対して、東アジアの場合には、実は社会主義国というのは冷戦の終わりで一つも崩壊しておりません。中国は社会主義国から社会主義市場経済国家に変貌しました。ベトナムも社会主義国から社会主義市場経済国家に変貌しました。北朝鮮とミャンマーは社会主義国家ではなくなって、こういうことを言うと怒られるかもしれませんけれども、英語で申しますとローグステーツ、無頼国家になってしまった。だけれども、民主化はしておりませんし、アメリカ中心に日米同盟を基軸とした安全保障のシステムは全くこういう旧社会主義圏には入っておりません。  その結果、ヨーロッパで安全保障のシステムと政治、経済のシステム、特に貿易のシステムの間に全く緊張がないのに対して、東アジアの場合には安全保障のシステムと経済のシステムの間に緊張がございます。中国を抜きにして東アジア経済というのはもう考えられません。だけれども、安全保障の方では、中国は、アメリカ中心とし日米同盟を基軸とした安全保障のシステムに入っておりません。そして、この緊張というのは、中国が台頭し、国力を付ければ付けるほど緊張というのは難しくなってまいる、ますますこの緊張というのは高まることになりますし、当然のことながら、日本の国内でも、これについてどうするかという論争というのはなかなか難しい問題が出てくるだろうと。  もう一つ、EU東アジア統合で非常に重要な違いは、EUの場合には欧州連合と日本では訳されていますけれども、これは事実上は欧州同盟とでも訳した方が正確だと私は思っておりますけれども、極めて高い水準の制度化ということを要求しているのがこのEUという組織であります。例えば、EUに新しくある国が入ろうとしますと、その国の法律というのはすべてEUの法律と整合的な法律に組み替えないとEUのメンバーにはなりません。  ところが、東アジアの場合には、統合といいましても非常に緩い統合でございまして、実際問題として国と国の関係を縛るような国際的な条約、協定というのは、これはASEANを一つの単位として考えますと、ASEANプラス日本だとかASEANプラスチャイナといったようなバイの関係は幾つもつくられておりますけれども、ASEANプラス3だとかASEANプラス6だとか、こういうマルチの枠の非常に縛りの強い協定というのは一切作られておりません。  ということはどういうことかと申しますと、統合というのは、極めて浅い、つまり参入障壁の非常に浅い、ネットワーク型のほとんど介入しないような、そういう統合形式になっているということで、しかも、ここでポイントはネットワーク型ということでして、日本であるいは外国でたまに例えば東アジア共同体のメンバーシップだ何だと、アメリカというのは入るのかどうかというふうな議論がございますが、例えばASEANがアメリカとFTAを結べば、ほかの国が何と言おうとも、アメリカ東アジア共同体構築のプロセスの中に入ってまいります。ですから、その意味で、メンバーシップを議論するというのはほとんど意味のないことだというふうに思います。  じゃ、そういう中で日本というのはどういう対応をすればいいのか。二点だけ、非常に重要な点だけ申します。  一つは、日本にとっては、この秩序、特に安全保障のシステムはこれを堅持することが非常に重要であるということでございます。これは単に日本の安全保障だけではなくて、中国も含めて東アジアの他の国はすべて日米同盟を基軸とした地域的な安全保障のシステムを前提にして、つまり、それを与件にして安全保障政策を立てておりますので、これが将来どうなるか分からないということになると、あらゆる国がそれに対するヘッジを掛けようとします。ヘッジの一番いい掛け方はもちろん防衛費を増やすということでございますが、どこかが増やせばほかの国増やしますということで、これはその地域の不安定性を高めることになると。  だから、日米同盟というのは、この地域のまさに公共財として堅持するということが重要であると。それをどう深化させるかというところでは、先ほども少し申しましたけれども、例えば科学技術の資本コストというのは非常に高くなっておりまして、恐らく二〇三〇年くらいに使われるようになります例えば武器について言いますと、もう一国ではアメリカといえどもなかなか開発できない時代が来ると。それを見据えて、日本としても安全保障政策、そのための基盤を整備していく必要があるだろうと考えます。  もう一つは、経済発展の方、東アジア共同体構築の方ですけれども、これについては、もう私ほとんど時間ございませんので、ともかく日本としてはこれをもっと推進していく方がいいと。ただ、そこでのかぎは、輸出主導型の経済成長モデルから地域内需型の経済成長モデルに転換するというのが一番重要な今課題になっておりますが、実は、中国の内需は東アジアの内需にまだなっておりません。そういうところでどうやって地域の内需というのを増やしていくのかというのが、今、日本に問われている問題だろうと思います。  ちょうどもう時間になりましたので、ここで一応私の報告は終わらせていただきたいと思います。  どうもありがとうございました。
  61. 簗瀬進

    委員長簗瀬進君) ありがとうございました。  次に、志方公述人にお願いいたします。志方公述人
  62. 志方俊之

    公述人(志方俊之君) 本日は、意見を陳述する機会を与えていただきまして、大変光栄に思います。  時間が限られていますので、二ページ目の、今日申し上げたいのは三つの問題でございます。  一つは、我が国はなるべく軍事という言葉をまず使わないといいますか、しかし、それを考えなければ国際社会の中で判断を間違える、ですから、目的と手段の混交をしているんではないかというのが一つ。  それから二つ目は、日米関係で依存が過大であると言われていますが、役割分担は明確であると。  それから三番目は、私も自衛官として三十五年間勤めましたが、三十五年間、シビリアンコントロール、シビリアンコントロールという言葉を聞いて育ってきましたが、シビリアンコントロールをするには法整備ができていなければ駄目であります。政治家の先生が大きな声でコントロールと言っても、そういうものではコントロールできないのであって、政治家の先生が法律を作って、その法律でコントロールしていただきたいということであります。  その次のページを見ていただきますと、国家戦略遂行の手段と目的なんですが、国力の四要素を政治力、外交力、経済、軍事。政治、経済、外交、軍事とはだれでも言えるんですが、日本ではこの軍事という言葉、ミリタリーという言葉はなるべく使わないようにする。これは、憲法の中にそれ書いてありませんし、そこで軍事力という言葉を使うと何か憲法改正を主張している人じゃないかとか誤解を受けやすいので、マスコミも政治、経済、外交、防衛と言ってしまうんですね。しかし、防衛というのは目的であって手段ではないわけですね。防衛は必ずしも自衛隊だけでやるわけではなくて、経済、外交全部含めて防衛をする。ですから、ここでもう目的と手段が混交されてしまっている。  今日は、ここでありますので、政治、経済、外交、防衛という言葉を使わせていただきますが、本来は政治、経済、外交、軍事。この上の二つをソフトパワー、下の二つをハードパワー、これをスマートに取り組んで国益を追求し、国民の安全と経済の繁栄を図ると、こういうことでございます。我が国は心情的に軍事というものを考えない方がスマートなんだということからくるので、大変な間違いを最初から犯してしまっていると。  その次でございます。  次は、二十世紀は戦争と革命の世紀だったということはもう御承知のとおりですが、二十一世紀は、恐らく格差とそれを是正する闘争の世紀になるのではないか。  まず、格差といっても経済格差のことではなくて、核保有国と非核国との格差がますます増大をすると、したがって小さな国も核を追求しているということになるわけですね。二番目は、資源保有国と資源小国との格差が増大する。これは、資源というものを戦略的に使ってくることになるだろうということですね。それから三番目は、先進技術大国とそれを持たない国の格差が増大する、テクノディバイデッド。  そうすると、核も持たない、資源も大したことないし、先進技術では後れを取ってしまった国は、結局価値観が違うんだということで、それが二極化する。一つは、かなり国粋的に動く、もう一つは、イスラム原理主義の武闘派のようにテロに入るということであります。  その次は、五ページに入っていただきますと、我が国に全く絶対に必要なことは、国際社会から孤立しないということが大きなことであります、資源も核もないわけですから。そうだとすると、一番下の価値観の共有というところはオーケーであります。負担の分担についても、ODAやPKOはしっかりやっていますけれども、リスクを分けるとなると、それはちょっと待ってくれということが結構あるわけですね。ですけれども、人間として総論賛成、各論賛成、実施は嫌よといえば、これは人間としてやっぱり不適切であるとすれば、どの辺のリスクまでならやるかということはちゃんと政治が決めなきゃならないと。  その次であります。  今までは国際貢献という言葉、いわゆる資金提供と汗をかく支援、こういうようなことで、コントリビューションという言葉ですけれども、コントリビューションというのは寄附という意味もあって、本来する必要はないんだけれども、してさしあげましょうというのがコントリビューションですね。しかし、我々は世界の平和によって資源ももらい、守ってもらい、そういうことであれば、やっぱりオブリゲーションなんだと。だから、コントリビューションからオブリゲーションを果たす国に変わらないと日本は孤立してしまう。それならば、危険を伴う人道復興支援を憲法の範囲内でやればいいだろうということであります。  その次は七ページでありますが、我が国はアメリカに依存していることが六つあると、これは安全保障に関してであります。これ私は学生に教えるときはポチの条件と言っているんですが、一から六まであります。  まず、核抑止力についてはすべてお願いであります。  その次、通常戦力でもリーチが長いもの、航空母艦とか二千キロ飛ぶようなミサイルとか、そういうものは米軍に依存している。日本の領域に来たものは守るとか、日本のSLOC、シーレーンを襲ってきたものについては守るということはやりますけれども、相手のところに行くというのはアメリカにお願いしている。  それから、安全保障に関する情報も、アメリカが知っていて日本が知らないことはたくさんあっても、日本が知っていてアメリカが知らないというのは余りないです。これは、私は防衛駐在官をやりましたのではっきり分かります。  その次は、軍事技術も本当に重要なところはまだいまだにブラックボックスであります。ですから、やっぱり兵器で支配されるということがあります。  それから、六千キロに及ぶ中東からのエネルギー輸送路、SLOCですね。これも防護を海上自衛隊がやっているわけではなくて、米軍がそこにいる。それに対して機能的に海上自衛隊が支援するという。  それから六番目は、食料、それから水、これはバーチャルウオーターベースですけれども、食料ではトウモロコシとか大豆とか小麦なんかはほとんどアメリカであります。それから、水も、肉なんかに入っている水、人間の口の中に入っている水分も、ほとんどアメリカの農業に依存している。  この六つの中でどれを対等なパートナーシップに持っていくのか、どれを主体的なやつに持っていくのかということになると、非常に難しいですね。核について主体的になるというのは、核装備をしなければならなくなると。それから、戦略兵器を持つのかということですね、日本も航空母艦を持つのかという話になる。それから三番目でいくと、日本もCIAを持つのかという話になる。それから四番目は、これは武器を売らなければ達成できませんから。五も、海上自衛隊だけでSLOCはできない。食料も水も、それは自給率は少しは上がるかもしれないけど。要するに、このポチの条件は、これを直そうとすると大変だということであります。  その次、ここが一番大事な図でありますが、日米の役割分担を、縦軸では核戦力と通常戦力で取ってあります。  核戦力について、日本アメリカはどういう具合にしているかというと、米国は核抑止力を我々に提供するということですね。我々は、自分が持たない、非核政策を堅持するという、これで成り立っているわけですね。しかし、両国で核抑止力の信頼性を向上する努力はお互いにやらないかぬということであります。  それから、通常戦力になりますと、戦力投影能力、パワープロジェクションですね、航空母艦だとか二千キロ飛ぶようなそういうようなものは日本は持たないと。アメリカは、そういうものは持ってそれを前方展開すると。その代わり、日本は基地・施設の提供をする。  それから、シーレーンについては、シーレーン防衛の主体はアメリカだけれども、海上自衛隊はシーレーン防衛の分担をする。それから、領域防衛ですね、これはもう陸上自衛隊、航空自衛隊、しっかりやる。アメリカは領域防衛の支援であって、在日米軍の主たる目的は戦力投影能力を日本に前方展開するということ、だから陸軍はいないのであります。海兵隊と空軍のようにいつでもモビリティーのあるものがいる。  その次は法制でございまして、この点線のところが我々が欲しいなと思っているものでありまして、これがなかなかできない。要するに、基本法というものがないわけでありますね、いきなり自衛隊法に来ると。そこのところに自衛隊が難しいところがあるわけですね。  それで、十ページに入りますと、防衛の構造改革をしようと思っても、元々、歴史的に見ると陸海空の保安隊、警備隊からできて、防衛省が先にできて、四階が先にできて、その下で法律を作って、そしてやっとついこの間有事法制というのができて、しかし安全保障基本法というのはないわけですね。これをやろうとすると憲法に触らざるを得ないから、ここは避けている。ですから、日本の防衛というのは空中楼閣だと思っています。砂上の楼閣でもそこには砂がありますが、我々には砂もないということであります。  その次のページを見ていただきますと、自然災害については災害対策基本法というしっかりした基本法がございます。国民保護については、日本国憲法からいきなり国民保護法に来るわけですね、基本法というのは欠になっている。  基本法というのをずっと調べてみますと、これインターネットで調べたんですが、現在四十ありますね。もうちょっとあるかもしれません。それで、この中で二十番目、十三ページの一番下、循環型社会形成推進基本法というのをよく学生が質問するんですね、これはどういうものかという。これは、物を作った生産者はそれが廃棄処分になるまで責任を持って面倒を見るんだ、消費者は、そういうものを使ったら、燃えるごみ、燃えないごみ、缶、瓶とか、こうやって分別収集にして資源を節約して環境を守るんだと。そうすると学生は、これはいい法律ですね、絶対必要だ、言ってみればリサイクル基本法だと、すぐ納得するんですね。  しかし、先生、四十もある基本法の中で防衛とか安全保障とか危機管理の基本法はないんですねと、こうなるんですね。一番大事なものがないわけですよ。それで、先生、日本の防衛とごみの分別収集とどっちが大切なんでしょうかと言うから、それは君、決まってるよと、ごみの分別収集の方が大事なんだよと言うと、今の学生というのは、それはやっぱりおかしいのではないかと言いますね。そうだ、防衛基本法という、防衛というのは、もしできたとしてもこれから何年先になるか分からぬ、しかし、もしできたら日本の防衛はごみの分別収集と同じ程度に重要だということになるぞと言ったら、みんな喜ぶんですね。  そういうようなことで、十五ページの四十一番、緊急事態基本法と情報管理基本法、情報がなければ緊急事態には対応できませんから、これは皆様がやっていただかないと、我々が作ることはできません。  その次、脅威を考えるときには相当先を考えにゃいかぬということであります。十六ページですね。今そこにある脅威というのは大規模災害とか大規模テロで、これは我々の今の力で対応する。  それから、中期的な時間軸、二〇一五年から二〇二〇年ごろに考えておくべき脅威と、もうちょっと遠いところ、二、三十年後、二〇三〇年から二〇四〇年ごろ。我が国の地政学的なものを考えますと、この中期的な時間軸で考えておくべき脅威というのは恐らく朝鮮半島情勢だと。恐らく今のリーダーシップが二〇二〇年までの間には変わるのではないか、その変化のときにいろんな危険なことが起こるかもしれないということですね。  それから、一番下は、二十年、三十年後に中国がどういう姿になっているかということによって、それがうまく我々が好む方向に行ってくれればいいんですけれども、そう行くとは限らないということを考える。  その次、これはページ数がなくて十七ページなんですが、私は、技術研究本部にいて七四戦車というのを造ったときの経験をここにしたんですが、構想段階という二年間は、どういう戦車を次造るかというのは一九六一年に考え出して、そしてそれぞれのコンポーネントを三年間掛けて、砲は、キャタピラは、砲塔は、通信装置はということでそれ三年間掛けて、それを一つのものにして戦車という形を造る。それで、第一次試作、第二次試作と、これ六年掛かります。そして、一九七四年にスタンダダイゼーションという、これで大量生産するというのができたのが七四ですから七四戦車と言うわけですね。  それが、それから後いろんなことをやっていくわけですが、現在、既に三十五年たっているわけです。陸上自衛隊はまだ七四戦車を使っていると。一九六一年に考え出したものが現在も使われているということを考えると、防衛力整備というのは三十年、四十年先を見てつくらなきゃ駄目なんだということです。今我々が一〇%防衛費を上げたら、来年日本の防衛力が一〇%上がるという話ではないと。防衛力整備というのはワインを造るようなものである、長い時間を掛けてつくっていくということですね。  それから、その次は大綱でありますが、大綱は現行の大綱が三つ目です。現行大綱、これは十九ページにあります。それぞれ、冷戦時代のものと、それからポスト冷戦時代のものと、九・一一以降と変わってきていますけれども、その基盤的防衛力構想というのは基本的に継承してきている。  今年作る予定の新大綱は、恐らく二十年、三十年後だとすると、対テロ、対不安定化における国際責務を遂行するということと、新興大国の防衛戦略、国家生存への寄与ということになるだろう。そうだとすると、基盤的防衛力構想の今日的な意義というのは変わらないだろう。すべての機能を保持するということ、均衡の取れた態勢の保持、それから独立国として必要最小限の防衛力は保持するという、こういうところが次の大綱のあれになる。  その次は朝鮮半島情勢ですが、これだけ書いておけばどれかになるわけですが、一番上は改革開放、中国主導型ですね、これは一番当たり障りがなくていいんですけれども、中国と北朝鮮が非常に強いものになるだろう。その次は、チャウセスク型の自己崩壊が起こるかもしれない、リーダーシップ交代のときにですね。それから、軍事的な瀬戸際政策はもう二つとも全部やっちゃったと。そうすると、今、この黒線の矢印の下になる可能性が起こったときにやっぱり我々に危険が及ぶ。それは、ミサイルを発射してしまったとか、プエブロ事件のようなものですね、それからトンキン湾事件とか、そうなると、アメリカも軍事的行動、これは海上封鎖から空爆まであって、まあ地上部隊は使えないだろうと。  その次、中国の学生に聞いたところですが、二十一ページです。中国はどこに向かうのかというと、日本を十倍にしたような民主主義国家になりたいと言うんですね。したがって、地域的覇権を追求する軍事的独裁国家になるかもしれない。三十年後の話ですからね。それから、分裂と内戦を繰り返す自己崩壊はあるかもしれない。これは、三十年後の中国を今予言することはできません、三十年前の中国を見ていて今を予言した人はいないわけですからね。  その次、そうすると、これからの脅威は四極化するだろう。冷戦時代のものから変えて、まず世界は中距離核保有による政治外交戦に入っているということですね。それから、情報戦、これはもういつでも行われている。それから、多国籍軍による国際秩序を守る活動というのはこれから多くなる。国連というのがやるけれども、なかなか、大したことないときにはすぐ安全保障理事国の全部の意見が合いますけれども、そうでないようなときはなかなか国連が機能しない。そうすると、それまでの間はやっぱり多国籍軍によってやらないかぬだろう、そういうときに日本はどうするのかということを考えないかぬ。それから、対テロ戦争は説明のしようがない。いずれの脅威に対しても基盤的防衛力の今日的な概念はキープした方がいい。  その次はいいとして、それからその次もまあいいでしょう。  最後のカラーのところを三つ見てください。後ろから三番目ですね。これは主要国の国防費が今どんどん上がっているというところであります。その中で日本だけが聖域はないという話の下にどんどん下げている。これが三十年後にどうなるかということですね。三十年後に我々が気が付いたときにはもう取り返しが付かない。相手の国が強大でこっちが少なかったら、もう相手の言いなりになるような国家になる可能性がある、あるいは、相手にもう追随せざるを得ない国家になる可能性がある。だから、みんなが上げているときに、せめて水平であってもらいたい。こんなに下げていたら自衛隊はもちません。  それから三番目。その次は、これはパーセントで挙げたものですが、日本はむしろ下がっているわけですね。今年の防衛関係費も上がっているように見えているけれども、あれは自衛隊員が平均年齢が若くて子供がたくさんいるから子ども手当が増えた分であります。  それから、最後のページ。これが一番重要なんでありますが、沖縄の位置にコンパスの針を刺して二千キロで円をかきますと、将来日本が直面するかもしれない様々な不安定要素の地域が入っています。日本海も黄海も入っていますし、台湾海峡も、南西諸島、それからバシー海峡とか南沙群島。軍事力というのは余り近かったら駄目なんですね。二千キロのという一つの軍事的な、近過ぎず遠過ぎずというものが必要なんであります。  したがって、普天間基地、これをどうするかという話も、これを見たらはっきり分かります。これがもっと石垣島の方に行ったり鹿児島の方に近づいたら意味がないんですね。あるいは、沖縄という島が三陸沖にあったら米軍は一人もいません。間合いを取るということです。  私は冷戦時代は北部方面総監をしていたんですが、あのときですら、脅威が目の前にありながら米軍は北海道にはいませんでした。余り近づくとアクシデンタルなことが起こるからですね。ですから、近からず遠からず。剣道だって正眼の構えから始めますし、お相撲だって仕切り板でやりますから。  そういうことで、最後にもう一つだけ申し上げますと、自衛官という職業は、自分がやったこと、一生懸命訓練してやったこと、何十年掛けて磨き上げたことが使われないことが国家にとって一番重要なことであるという、これほど矛盾に満ちた職業はございません。そういうものを若い者にやらせているわけですね。自衛隊員にやらせているわけです。  ですから、新聞記者なら一生懸命書いた記事が次の日の朝刊に載ればやったぞと思うし、お医者さんなら人の命を助ければやったぞと思うし、土木屋なら橋を架けたらやったぞと思うけれども、自衛官というのは、一生懸命やったことが日の目を見ないことが一番いいことだとすれば、私は自衛隊に対する政治の接し方、これはやはりもののふに対する接し方をしていただきたいと思います。よく新聞記事に、航空機事故で自衛官三名死ぬとか、やっぱりそれは殉職という言葉があるわけですから、殉職という言葉を使っていただきたい。そうですね、もののふは黄金も玉も何かせむ、命に代えて名こそ惜しけれと、政治家の皆さんは自衛隊と接するときにはそういう気持ちでやっていただきたい、これが最後でございます。  ありがとうございました。
  63. 簗瀬進

    委員長簗瀬進君) ありがとうございました。  以上で公述人の御意見の陳述は終わりました。  それでは、これより公述人に対する質疑に入ります。  質疑のある方は順次御発言願います。
  64. 牧山ひろえ

    牧山ひろえ君 民主党の牧山ひろえです。どうぞよろしくお願いいたします。  本日は、大変興味深いお話、ありがとうございます。  また、日米、アジアにおける安全保障の着眼点について、大いに参考になりました。白石参考人がおっしゃる日米同盟を軸とした東アジア経済圏における日米の役割、また志方参考人がおっしゃる極東平和を構築するための日本の役割については大変勉強になりました。  さて、私は、安全保障について別の観点から御質問させていただきたいと思います。  京都が空襲されなかった理由は、重要文化財がたくさんあるからというのも理由の一つであることを聞いたことがございます。私はこれを聞いて、国の魅力を生み出し伸ばすことによって安全保障が担保されるということも一理あるのかなと思いました。  日本がアジアの中の経済大国と位置付けられた時代もありましたが、今や中国に追い抜かれ、別の形でリーダーシップを発揮することが求められているのではないかと思います。日本の場合、その一つがコンテンツビジネスという意味でのソフトパワーだと思うんです。  例えば、コンテンツビジネスも日本の現在の強みであり、知的財産保護もアジアの中ではリーダーシップを取れる立場にあると思います。科学技術からアニメのコンテンツまで、日本の強みを全面的に出してリーダーシップを取ることが、日本という国の世界の位置付け、重要度を高めることにつながり、やがては安全保障につながる一つの要因でもあるのではないかなと思うんですが、御意見を伺いたいと思います。  日本におけるコンテンツビジネスという意味でのソフトパワーによる安全保障について、白石先生、そして志方先生の両先生に御意見を賜りたいと思いますが、まず白石先生からよろしくお願いいたします。
  65. 白石隆

    公述人(白石隆君) どうもありがとうございます。  実は、安全保障において今起こっております非常に重要な現象というのは、陸海空に加えて、宇宙、それからサイバーにおける安全保障というのが非常に重要になっております。ですから、コンテンツビジネスというよりも、そのベースになっているようなITの産業力、それから科学力というのは、これは安全保障にとっても極めて重要でございます。  今先生が御指摘になりましたコンテンツビジネスというのは、安全保障の方にももちろんですから引っかかりはございますが、実は東アジア共同体構築ということではこれは非常に重要でございまして、先ほど少し私時間がなくてきちっと御説明しませんでしたけれども、これから二十年ぐらいのアジアを考えますと、先ほども申しましたけれども、都市の非常に高い教育を受けたプロフェッショナルの中産階級の人たちというのが、これがこの地域の政治、経済、ましてや安全保障まで含めて、ビジネスも含めて動かしていくことになると思います。そういう人たちが納得するような、そういうコンテンツ、あるいはそういう人たちが本当に欲しいと思うようなライフスタイル、そういうものを我が国が生み出すことが、日本の繁栄にとっても、日本のリーダーシップ、特にソフトパワーにおけるリーダーシップにとっても非常に重要だろうというふうに考えます。
  66. 志方俊之

    公述人(志方俊之君) 先生がおっしゃるとおり、コンテンツビジネスといいますかソフトパワーですね、それによって国家の安全の守る一助にするということは当然あるべきことだと思います。冒頭に私が申し上げましたように、防衛というのは軍事力だけでやるものではなくて、国の安定だとか、そういうこともあります。  ただ、我々が防衛力整備を計画するときには、やっぱり脅威というものをまず設定しないとできません。その脅威を設定するときには、相手の能力、ケーパビリティーですね、それから相手がどういう意図を持っているか、インテンション、それから相手が、国際情勢がどういうサーカムスタンスにあるかという、この三つの掛け合わせで来るものであります。  そのときに、やはり防衛を考えるときには、インテンションというものを仮定してはならないということですね。京都は爆撃しなかったけれども東京を爆撃した米軍も、皇居や明治神宮や靖国神社は爆撃しませんでした。これは、占領した後のことを考えたのだと思うんですね。ですから、相手の意図というものを防衛のときに仮定して、それに我が国の命を懸けるのはまずいんではないかと。もちろん、そういうソフトパワーというのも必要ですね。だけれども、ソフトパワーだけで国家は守れないということもまた事実であります。  したがいまして、私は、防衛というのは、やはり有事にどうするかということを考えることでないと、有事があるのかないのか、ないものになぜ備えるという話になると、それはもう全然混乱してしまうので、もし日本が平和を求めて求めて求めていっても、なおかつ我々が防衛力を使わざるを得ないという状態になったときにはどうするかという話であります。  そういう意味で、例えば相模原の駐屯地だとか、米軍の基地ですね、見たらペンペン草生えています。横田もそうです。だから、嘉手納も、普天間を持っていったらいいんじゃないかと思うぐらい日ごろは静かです。だけれども、有事が近づいたらもう嘉手納も相模原も兵器でいっぱいになるわけですね。そのことを、情勢を考えながらやらないと、普天間の嘉手納移設なんていうことはあり得ないんですね。  そういうことを考えますと、やはり防衛を考えるときはソフトパワーとハードパワー両方考えると。そのハードパワーは、有事におけるハードパワーの運用ということを考えてやっていただくのがいいのかと思います。
  67. 牧山ひろえ

    牧山ひろえ君 大変興味深い御意見、ありがとうございます。  APECがこの秋、横浜で開催されます。今や世界経済のトップスリーであるアメリカ中国日本が同席する良い機会であり、二月二十二日に実務者協議が開催されテーマの選定作業が行われるなど、今、本番へ向けて機運が高まっているところでございます。  私は一時期、企業の法務、特に知的財産関係の職務に就いたことがありますので、アジアにおける知的財産権問題について白石参考人にお伺いしたいと思います。  アジアでは、CDやDVDの海賊版など、知的財産侵害事件に対する対応においてまだまだ不十分な状況でございます。中国やベトナムなどはWTO加盟のために知的財産権関連の法制度を一応整備したように見えますが、特許権などの出願に対する審査や侵害案件に対する執行可能性の点において人材が育っておりません。また、法制度を実施するインフラが不十分であることなどから、知的財産権の権利取得や権利保護がうまくいっておりません。また、インターネットの普及により、知的侵害は特にコンテンツの分野においてボーダーレスとなっております。  例えば、特許の分野では、日米欧の三極の特許庁など所轄官庁が緊密な協議を行い、特許制度の運用や特許権などの保護において協力し合っております。日本がリーダーシップを取ってこういった知的財産保護に関する国際協力の体制を整えることも考えられます。  営業秘密、いわゆるトレードシークレットなどの技術流出も深刻な問題でございます。日本においては、不正競争防止法において営業秘密の保護が図られていますけれども、日系企業の海外進出に伴って日本からの技術流出が増えております。技術流出の形態は、意図的な技術情報の持ち出しや技術者の転職、またMアンドAに伴うなど、幾つかのタイプがございます。技術流出に対する懸念は、日本に限らず、例えば韓国では産業技術の流出防止や保護に関する法律、いわゆる産業技術流出防止法というのがございまして、これを制定して国家が技術流出の防止に積極的に関与する法制度を整えております。  このような状況、また動きについて何か御意見ございましたらお聞かせいただきたいと思うんですが、白石参考人のこれまでの御経験から、特に東アジア中国における知的財産権の問題をいかにして解決していくべきなのか、何かお知恵、御意見などございましたらお聞かせいただきたいと思います。
  68. 白石隆

    公述人(白石隆君) どうもありがとうございます。非常に重要なポイントだと考えます。  おっしゃるとおり、例えば二年ほど前のデータになりますけれども、DVDだとかCDだとかコンピューターゲームだとか、そういうものの中国あるいは東南アジアの一部地域における海賊版の比率というのは八〇%以上だとか九〇%以上、つまり、普通に買うと大体海賊版を買ってしまうという、そういう状況でございます。  ですから、これは非常にビジネスにとっては深刻な問題で、少なくとも二つのことはすぐにもやれますし、それから現に国としてもやっているところがございます。  その一つは、東アジアの例えばASEANプラス3だとかASEANプラス6だとか、そういうマルチの場で、ピアプレッシャーとでもいうんでしょうか、要するにそういうことはしないようにという一種の紳士協定を一つでも多く作って、それを圧力にしてともかく国の中でもそれをやってもらうように仕向ける、余り効力はございませんが、そういうピアプレッシャーは一つございます。  それからもう一つは、先生御指摘のとおり、キャパシティービルディングというのは、これは非常に重要でございまして、実はこういうキャパシティービルディングの協力というのはお金も余り掛かりません。ですから、ODAといったときに、箱物というのは随分お金が掛かりますし、そういうのが必要なところももちろんいまだにあるんですけれども、こういうキャパシティービルディングのようなところに、あるいは教育のようなところというのは、実はこれからの日本のODAの在り方としては非常に重要だろうと思っております。  ただ同時に、実際問題としてやっぱり知財ということが実効的に運用される法律体制ができるには、それぞれの国の中でそれに利益を持つ産業企業が生まれてこないとなかなかそのオーナーシップというのは生まれてこない。だから、その意味で非常に逆説的なんですけれども、例えば日本企業中国に進出し、コンテンツビジネスの企業中国に進出し、向こうでジョイントベンチャーをつくって、そういうものが向こうの中国で重要になってくる、そうすると中国の国、政府もその言うことを聞くようになってくるという、そういう少し長い目で見た知財戦略というのが必要ではないだろうかというふうに考えております。  少し知財とは違うんですが、もう一つ、是非この機会に述べさせていただきたいことは標準化ということでございます。  例えば現在、環境・エネルギーにおいて我が国でもグリーンイノベーションということが言われるようになり、私も総合科学技術会議の議員としてグリーンイノベーションにかかわる科学技術政策ということに取り組んでおりますけれども、これは日本だけではなくて、アメリカEUも韓国もシンガポールも、みんなやっております。  そういうところでどういうスタンダードを作るかと。例えば、電気自動車とそのインフラのためにどういうスタンダードを作っていくかということは、このスタンダードをどこが作るかによって相当その優劣が決まってまいります。EUはこれを法的につくろうとしていますし、一方、アメリカはこれをデファクトにやろうとしていると。日本がどういう戦略を取るかということが極めて重要な局面になっておりますので、この辺りのことなども、先生方、是非考えていただければと思います。
  69. 牧山ひろえ

    牧山ひろえ君 御意見ありがとうございます。  先ほど、コンテンツビジネスにおいてこそ日本がリーダーシップを発揮して安全保障の重要な要因につなげていくべきだというお話をさせていただきました。  日本企業の九割以上を占める中小企業の中には、例えば、国際競争力のある優れた技術を持っているけれども海外に販路の開拓をする人材がいなくて海外展開できない中小企業、あるいは、近い将来世界標準になるであろう優れた技術を持っているけれども特許を取得して事業展開するための人材がいない中小企業など、いわゆる事業拡大を逸している中小企業日本にたくさんあると思います。成長性のある中小企業に対して、金融面、知的財産経営、海外進出において更なる公的な支援を行って、将来の日本経済を背負う企業へと育てることが重要であると考えております。  私としましては、在外公館、例えばアジアには二十一ございますけれども、こうした施設などを活用して日本企業の海外進出を支援するために、コンテンツビジネスを始め、日本の食文化、安全な日本の食材ですとか、日本の伝統工芸品などの地域の名産品、ファッションなどを紹介する取組をするべきだと思います。  白石参考人はメコンデルタを始めとした東アジア圏の諸事情に大変お詳しいと思いますので、是非御意見をお伺いさせていただければと思います。
  70. 白石隆

    公述人(白石隆君) どうもありがとうございます。  今先生が御指摘になった点も非常に重要な点でございまして、実際には、私、実はジェトロ、アジア経済研究所の所長もしておりますけれども、ジェトロの方では、この東アジアの地域におけるコンテンツビジネスの推進、日本企業の活躍の支援ということを現にやっておりまして、私も例えばバンコックなんかではそのジェトロの活動ということを見たことがございますけれども、非常に正直申しまして評判のいい活動をしているというふうに考えております。  これもせっかくの機会ですので是非申し上げさせていただきたいと思いますが、実は、日本のコンテンツビジネスだけではなくて、例えば音楽、ポップミュージック、それから映画、ファッション、それから料理、コンピューターゲーム、こういうものの人気というのは、これは東アジアでは大変なものがございます。それから、それ以外にも、アメリカだとかフランスだとかというところでも非常に大きな影響を持っております。  ところが、私、東南アジアに行きましてよく言われることは、例えば日本のファッションの学校で勉強をしたいんだけどどうしたらいいかと言われると、私はそれは無理だと言うんですね。なぜかといいますと、専門学校に留学したいといっても今ほとんどビザ下りません。まして、例えば日本で料理の勉強をしたいといって高校卒の人が日本の専門学校に受け入れられるかというと、これもビザは恐らく下りないと思います。  その意味で、実はこういう日本の持っているソフトパワーをもっと勉強したい、学びたいという人いっぱいおりますので、こういう人を日本に受け入れると。それで、そういう人たちがまた、そのまま優秀で日本でビジネスするのもいいですけれども、国に帰って、そこで日本のファッションを受け継いだデザイナーになるだとかシェフになるだとかということが、実は日本のコンテンツビジネス、あるいはもう少し広く文化産業というのを広めていく大きな力になるだろうと考えます。  これは先生御存じだと思いますけれども、例えば日本のコンピューターゲームというのは、これはやっぱりいまだに非常に競争力ございまして、実は私の息子の一人がこの分野で仕事をしているんですけれども、MITの卒業生がインターンシップで日本のそういう企業で働いてみたいなんという、そのくらいの影響力を持っている分野もございます。  ですから、この辺は、余り日本が外に売り出すということよりも、少し広めに構えて、人も呼んできて育成しようと、それが、先ほどの防衛力の基盤整備と同じですけれども、二十年後、三十年後に実は日本のアセットになるんだと。そういう形で是非考えていただければと思います。
  71. 牧山ひろえ

    牧山ひろえ君 私も今の御意見に同感です。いろいろ、日本のコンテンツですとかファッションですとか、いろいろ日本に興味を持っている方をどんどん受け入れる体制も考えなくてはいけないなと思っております。  もう一つ白石参考人にお伺いしたいんですが、ちょっと話題を変えまして、例えばベトナムにおいて、日本はODAによる経済援助やJICAによる法整備支援の分野でベトナムにかなり貢献してきておりますけれども、経済的には貢献に見合った成果が必ずしも上がっているとは言い難いと思います。実際、経済的には、アメリカですとかオーストラリア、韓国などが積極的に投資企業進出を行っているのに対して、日本投資後退の傾向が見られます。せっかく日本が国の発展に寄与してきたのに、その果実はほかの国に取られているように思えます。  ベトナムとは昨秋EPAが発効したことでもあり、これを活用し、企業の積極的展開を国としても支援できればと考えておりますが、白石参考人、是非御意見を賜りたいと思います。
  72. 白石隆

    公述人(白石隆君) どうもありがとうございます。  ベトナムに限らず、日本のODAの効果というのをどう測るかというのは、これはなかなか難しいところがございまして、例えば日本は今、実はASEANの中では私の理解ではベトナムというのは非常に重視している国だろうというふうに理解しておりますけれども、それで直ちに日本の例えば民間の企業が直接投資を増やすということでは必ずしもございません。  あるいは現在、日本のODAも含めてベトナム政府がやっているインフラ整備がある程度進んだところで、例えば日本経済状況が良くなれば国際的に競争力のある企業がもう一度進出するとか、そういうことがよくございます。ベトナムの場合も、ですからその意味で、少し効果ということを考えるときには長い目で見た方がいいんではないだろうかと考えます。  ただ、同時に、ベトナムにおける日本の支援ということから考えまして、やはり効果ということを考えますと、直近のところで非常に重要なのは、原子力発電所とそれから新幹線の整備その他のベトナムにおけるインフラ整備に日本企業がどのくらい関与できるのかということでございまして、そのためには、私としては、国としても、例えば原子力発電所の受注というのは、これは国としてかなり広範なパッケージを提供しないと実際問題としてなかなか受注はできないと。ですから、その意味で、国としてやはりかなり戦略的にパッケージをつくって、それでODAもその一部になるという、そういう関与の仕方ということを考えていく必要があるんではないかというふうに思います。
  73. 牧山ひろえ

    牧山ひろえ君 最後に、志方参考人にお伺いしたいと思います。  一九五三年以来、朝鮮戦争は停戦状態にあります。この状態が極東平和を揺るがす事態とならないように注視していかなければなりません。先月、中国胡錦濤国家主席が北朝鮮の高官と会い、中朝関係の更なる深化を表明しましたけれども、このところ中朝関係は冷え込んでいるとの見方が大勢を占めています。  今後も北朝鮮が孤立、暴走しないよう国際社会が注意していく必要があると考えますが、志方参考人の見解をお伺いしたいと思います。
  74. 志方俊之

    公述人(志方俊之君) やはり北朝鮮がソフトランディングするということが北東アジアの安定には非常に重要な要素になると思います。  考えてみますと、中国はやっぱり北朝鮮と国境を接しておりますし、経済的にも今は非常に関係が深い。そういう意味で、今何か起こっても、非常に中国も困る。恐らく、何かあれば難民が結構中国に入ってくるかもしれませんし。韓国は、今はやはりあの体制のまま一緒になるということは、東西ドイツのような、このぐらいで一緒になったのと違って、もうこのぐらいで一緒になるわけですから韓国も大変だと。それからアメリカは、中国にげたを預けたというか、中国やってみなさいと。今向こうの方で大変ですから、この辺はやはり六か国協議の枠の中で話し合っていこうという、かなりみんな時間に余裕を持ったような関係だと思うんですね。  ですから、やっぱり北朝鮮のリーダーシップが変換する、クライシスになるのかかえってきっかけになるのかは知りませんが、そういうときの時間的要素というのがあって、現在は、もう何か揺り動かして何かしてしまおうという国は、ロシアもそうですね、今はもう向こうで精いっぱいですから、こちらの方は安定していたわけで、みんなが安定してもらった方がいいというと、あそこは不安定という名前の安定が今あるという、そういうような感じでありますから、やはり北朝鮮がしっかりとこちらの方を向いてくれるように少し気長にやっていくということですね。余り押さえ付ける必要はないですけれども、彼らが自分で気が付いて少しずつ解けてくるといいますか、そういうのを待った方がいいような気がいたします。
  75. 牧山ひろえ

    牧山ひろえ君 時間となりましたので、終わります。
  76. 佐藤正久

    ○佐藤正久君 自由民主党の佐藤正久です。  本日は、白石先生そして志方先生、どうもありがとうございます。  お二人のお話の中で、やはり安全保障というものを考えるときに、長いスパンで考えないといけない、長期的な趨勢というものを見ないといけないと、まさにそのとおりだなという感じがします。また、志方先生の方からは、軍事という座標軸もやっぱりしっかりと正面から見据えないと間違ってしまう、本質は軍事なんだと。防衛というのは、それは目的であって、また手段とは違うということを言われました。  そういう中において、実は今年、実際は軍事戦略という形の方が多分志方先生にはぴったりするかもしれませんけれども、防衛計画の大綱というのが十二月に政府が作るという非常に大事な年になります。白石先生は新たな安全保障と防衛力に関する懇談会というもののメンバーにもなっているというふうに伺っております。  そういう中において、防衛というのは、私も自衛官として二十七年ほどいたんですけれども、国防というのは国家百年の計である、非常に長いスパンでやっぱり見ないといけない、やっぱり現在から将来にわたって長いこういうスパンの中でどういうふうに対処していくかというのが大事だというふうに言われて、その一つの指針がやはり防衛計画の大綱というふうになると思っています。  そういう観点で、現行の一六大綱と言われるものの評価、あるいは新しく作る大綱、これについての期待する点、現在の大綱に関する評価とこれから作る大綱についての期待する点、これをお二人からお伺いしたいと思います。
  77. 白石隆

    公述人(白石隆君) どうもありがとうございます。  御指摘のとおり、私、今、防衛懇のメンバーとして議論を始めたばかりでございます。今から申し上げますことは決して懇談会の総意ということではなくて、あくまで私自身がどう考えておるかということで聞いていただければと思いますけれども。  実際にこれから二〇二〇年、二〇三〇年くらいの長いスパンで日本に対する安全保障上の脅威というものをどういうものとして想定するかということを考えますと、先ほども少し申し上げた点でございますが、陸海空に加えて宇宙とサイバーというのは非常に重要になるだろうという。  ですから、日本としても、あくまで防衛ということを限りに限りましても、例えばインテリジェンスの問題、モニタリングの問題を考えますと、宇宙についてどういうことを考えるかというのは非常に重要でございますし、サイバーについても、自衛隊の中でのサイバーのディフェンスというのはこれはきちっとしっかりしたものがあると私は理解しておりますけれども、日本の例えば金融制度だとか、あるいはその他様々の実は今の日本の社会生活のインフラというのは、これはそういうサイバーの攻撃からは相当に脆弱なところもあるかもしれない。そういうことも含めてやはり考えなければいけないだろうと。だから、その意味で、陸海空、宇宙、サイバー、これをやはり全体として考える必要があるだろう、これが第一点でございます。  それから第二点目は、自衛隊には統合参謀本部というのがございますが、このジョイントというところが果たしてどのくらいジョイントなのか。例えばアメリカの軍隊というのは極めてジョイントになっておりますけれども、じゃ日本はどこまでジョイントなのかということもこれはかなりきちっと考えておく必要がありますし、それをアメリカ軍並みのジョイントにするんであれば、これから十年、二十年何していかなきゃいけないのかということも、これも非常に重要な点だろうと思います。  それから三番目に、これは先ほど私少し触れさせていただきましたけれども、武器、装備の開発、これは防衛基盤の整備ということから申しますと、少なくとも、先ほど志方先生が指摘されたとおり、二十年、三十年のスパンで考えなきゃいけませんが、例えば二十年後、三十年後のこういう科学技術開発の資本コストというのは恐らく大変なものになると思います。そのときに、それを一国でできるとは思いませんし、アメリカだけでできるとも思いません。もっと大きな、言わばアメリカアメリカの同盟国の間で海外の研究をするような、そういう仕組みというのを考えていかなきゃいけない。そのためには、日本の現在の例えば政策についても少し見直していくということがやはり必要になるんではないだろうかというふうに私としては考えております。
  78. 志方俊之

    公述人(志方俊之君) 佐藤先生の質問の防衛計画の大綱、今、十二月までに作るというやつでありますが、過去からのことを考えますと、先ほど示しましたように四つに区分されると。  最初の五一大綱というんですかね、これは冷戦時代ですから、何とかして領域を守る。防衛力を設計し始めたころですから、何というか、最小限抑止といいますか、そういうようなものでやってきたわけであります。  その次に、冷戦が終わった後、ポスト冷戦に入ってどういう具合に世界がなるか分からぬので、取りあえず量から質であるということは変わるだろうということも考えたわけですね。それで、少し量を減らすということをやったわけです。これはどの国もそういうことをやっています。  その次に、九・一一以降は、やっぱり国際的なグループでやらないかぬということと、現に持っているものがすぐ出ていくということを考えますと、実効性という。  今回作るものは、三十年後の戦略環境というものがどうなるかを考えるとすると、私は、三十年後のこの日本を取り巻く環境を見ると、まず北朝鮮、中国、ロシアは核を持っている、そして三十年たっても価値観が我々と同じではないと、そういうような想定を考えますと、我が国が今どんどんどんどん防衛力を減らしていくということは間違っていると思います。少なくとも、そういう不確実な時代、そういう時代には、基盤的防衛力といいますか、国家として当然持っている最小限のもの、こういうものは機能的にはちゃんとフルレンジで持っていにゃいかぬし、陸海空もそれぞれバランスを持って保持していく、どういう状態になってもある程度対応できるような、そういうようなものがこれからの大綱には必要なのだろうと思います。  例えば、陸海空戦力ありますが、陸で戦車というのは、先ほど申しましたように三十五年たってもまだ使っているということを考えます。今のF15、航空自衛隊のF15も三十年ぐらい前からずっとやってきたもの、イージス艦もそうであります。ですから、今我々が三十年後の防衛力整備を考えますと、次の相手というものを考えて、相手が間違った道を歩いたときに我々が全く選択肢がないというのは困るわけでありまして、最低限の共通の対応をできるような防衛力整備を着々とやっていく必要があるだろうと。その中で、装備というのは列国が変えてきますから、こっちも大体それに並行して変えていくのが普通、常識であります。  だけど、人間ですね。人間というのは、自衛官というのは入って二、三年たってもほとんど使い物にならないわけですね。これほど近代装備がありますと、やっぱり十年、十五年、二十年ぐらいたってやっと使い物になるような自衛官ができてくるわけです。そうだとすると、今ここで人を減らせ、人の質はどれだけ下げてもいいと言われたら、それは二十年後の自衛隊がすかすかになるということです。  ですから、私は、防衛に聖域はないといいますけれども、私は費用対効果で防衛を考えていただいては困る。効果がないということが一番いいわけですから、さっき言ったように。そんなものを普通の経済概念で、これだけ戦車造ったからこれだけ何とかという、そういう話ではない。それで、人への投資というのが非常に重要になるということですね。  ある程度の防衛力を自分で少しずつ持っていく、その生産基盤もちゃんと持つ。外国から武器を買ってしまうということがいかに大変なことかということは、私はもう現役のときに物すごい経験しています。防衛駐在官のとき、物すごいアメリカの兵器を高く買わざるを得ないわけですね。  そういうことを考えますと、必要な、エッセンシャルなものは、やっぱり日本にそういう防衛産業の基盤というものも必要です。それでこそ主体的な外交、あるいは対等なパートナーシップというのが実現されるのであるわけですね。そう思います。それがこの次の大綱で絶対に忘れてはならないことだと思います。
  79. 佐藤正久

    ○佐藤正久君 ありがとうございます。  今お二人の方から、防衛力整備という観点とあと防衛力を運用するという観点の、二つの観点でいろいろお話があったと思います。  次に、この大綱を作るときに、私のこれは考えなんですけれども、当然脅威というものもやっぱり認識しないといけない。新たな宇宙とかサイバーの分野もあります。と同時に、やはり軍事力そのもののやっぱり意義という部分はこれは絶対忘れてはいけないと思います。  また、日本がある地政学的な観点も、これは静的に見ないといけないと。例えば、日本は地政学的に四正面あると言われます。太平洋正面、あるいはロシア正面、あるいは西北正面、南西正面と。まあ太平洋正面はアメリカなので考えないとしても、少なくとも静的にやっぱり三正面という部分は考えないといけませんし、あとシーレーンということも多分考えないといけない。地政学的なものも考えないといけないという部分も恐らくあるのだろうなと。  そういう中で、やはり基盤的防衛力という部分は、やっぱり非常に今後とも、今までも私は大事だと思っておりまして、やはり基盤、軍事力の持っている意義という観点からすると、やはり何かあったら脅威に対抗すると、そういう対処の部分、ほかに、やっぱり日ごろからの抑止と、外交とか経済の後ろ支えとしてある程度の力が必要だと思います。  周りの国とのバランスをどうやって維持するんだと、それは平時の話で。そのバランスというものを、地政学的なもの、あるいは軍事力という観点から、それは弱い軍事力はだれも、それは存在しても意味がありませんから、そういう部分考えないといけないでしょうし、あるいは将来に向けての、大きな戦いがあるかどうか分かりませんけれども、まさにあったときにゼロだと困るわけで、そのためにある程度の礎石として、ある程度の基盤というものを持って、それをまたエキスパンドするという部分もあるかもしれません。だから、ある程度は持っておくことも大事です。  と同時に、今まで持っていたものでは対応できない部分というのもあろうかと思います。まさに今、宇宙とかサイバー、あるいはミサイル防衛も、個人的には、今の自衛隊が持っているミサイルだけで本当に周辺国に対してミサイルが対応できるような状況かというと、私はちょっと心もとない感じもしますけれども、まだ基盤にも達していないと、ミサイル防衛については。  あるいは、私が海外の方で派遣されて国際貢献やりましたけれども、あれは基盤的防衛力のその枠の中でただ運用できただけの話であって、基盤的防衛力を超えた分野での運用ではないという認識も持っています。  この基盤的防衛力というものについて、お二人からの、特に今日的な意義、まあ変わらないのかもしれませんけれども、基盤的防衛力、この今日的な意義というものをお聞かせ願いたいと思います。
  80. 白石隆

    公述人(白石隆君) どうもありがとうございます。  基盤的防衛力ということで先生が一番重視されたのは抑止力ということだろうと思いますが、それはまさにおっしゃるとおりで、外交において、あるいは日本がこの地域の国際環境というのを日本にできる限り有利な形で言わばつくっていくためには、この抑止力の考え方、あるいは抑止力というこういう能力なしにできないということは、まさにそのとおりでございます。  そのときに、一つ指摘させていただきますと、脅威につきましては、基本的な脅威の考え方としては、ロシア、北朝鮮、それから中国というのが何らかの危機的な状況のときに紛争の相手国になるというのが今の一般的なシナリオの考え方だと思いますが、私としては、特にその中で中国については、長期的には、台湾の帰趨によって日本の安全保障環境というのはラジカルに変わるんだということを是非考えておいていただければと思います。今は台湾がああいう状態ですから、日本の基盤的防衛力もこの現在のレベルで何とかまだ済んでいるのかもしれない。これ、台湾側の帰趨次第によっては圧倒的に大きな変化がございまして、そこは常に我々頭に置いておく必要があるだろうというのが一つ申し上げておきたいことでございます。  それからもう一つは、狭い意味での軍事の話を超えまして、もう少し広い安全保障政策ということから申しますと、私は、やはり日米同盟ということを堅持する、それで、長期的にほかの国々が、中国も含めて、自分たちの安全保障政策を組み立てるときにこれを与件として組み立ててもらう、そういう形でこの地域の未来の、将来の安全保障というものの予測可能性を上げてやるというのが、実はもう一つ安全保障を考えるときに非常に重要なポイントであろうと思います。  ちょっと基盤的防衛力の話とはずれますけれども、この二点だけ申し上げさせていただきたいと思います。
  81. 志方俊之

    公述人(志方俊之君) 御指摘のように、防衛力を整備するということと運用するということは似て非なる概念でありまして、防衛力整備は三十年後、四十年後の日本を取り巻く環境というものに最適なものを最小限持っていくという、それが基盤的防衛力ということですが、運用となると、今起こったことに対処するわけですから、例えば国際緊急援助隊とか、先生が行かれたイラク人道復興支援とか、それからほかのPKO、これはできて当たり前なんですね、これができなくて国家なんか守れるわけがないわけですから。これは今ある自衛隊を使えばいいだけの話ですね。しかし、今までのこととちょっと違ったことも出てくる。それは離島防衛とか、そういうものは今我々がやってきませんでしたから、ゲリラ・コマンドー対応とか離島防衛なんか、そういうものについてはやらないかぬ。  それから、もう一つ自衛隊の重要な任務は災害派遣でありますが、私は今東京都で災害のこともやっておりますが、直下型地震が来ると恐らく百十兆円ぐらいの財産がなくなって、一万一千名の人間が亡くなる、数万人が負傷すると。こういうときに自衛隊の災害派遣を考えますと、十四万人ぐらい集中しないと駄目です。そうだとすると、今ある自衛隊をこれより少なくしていったら、もう東京の災害派遣すらできないという。国民をこんな不安な状態に置くということは私は駄目だと思うんですね。  それから、三十年後、四十年後を考えますと、ロシアというのは依然としてそこにあるだろうと、そしてそれはすごい核を持っている。今でこそにっこりしているところもありますけれども、ロシアは四十年先を我々は推測できませんし、朝鮮半島はもっと我々は推測できない。中国もそう。南西諸島ですね。  そういうことを考えますと、どういう状況になろうと最低限必要な機能と、それとその量、そういうものは基盤的防衛力として我々は保持していかなきゃならないし、そういうものはさっき言いましたように時間が掛かると。すぐ育てようと思ったってできませんし、すぐ何か新しい装備を造ろうと思ったって、工業基盤というのがなければ駄目ですから、私はそういうものを、軍事力の、戦車が何台とかそういうことも大切ですけれども、国家としてそういうもの、そういういろんな危機が目の前に来たときに慌てふためかないようにした方がいいというような気がします。  そして、もう一つ重要なことは、基盤的防衛力を考えていくといろんなほかの要素が入ってくる。そうすると、本当にこんなのが要るのかなという気持ちが出てくるんですね。しかし、防衛というのは常識が通用しないようなときに役立たなきゃ意味がないわけですね。ですから、例えば友愛の精神というのが私も大好きですが、友愛の精神、相手がそういうものを失ってきたような場合もあるわけですね。そういうときに、こっちが友愛の精神で向かったって駄目ですから、やっぱりこっちはそれなりに最低限のものを持っているということが、それが友愛の精神を貫く一つの方法であるというように思います。
  82. 佐藤正久

    ○佐藤正久君 ありがとうございます。  今、どちらかというと長めの話を今までしてきましたけれども、ただ、他方、目先のやっぱり問題にも対応しないと安全保障は駄目だと。その一つの例が普天間基地移設問題だと思います。  鳩山首相が年内合意を十二月の十五日に先送りして、五月末までにこれは考え方をまとめますと言われました。これは今、半ば国際公約みたいな、対米公約みたいな形になっています。もしも万が一これが守れないとなると、白石先生が言われました日米同盟の本当にこれから先についても物すごく大きな影響が出るというふうに私は危惧している一人であります。  そこで、志方先生のこの新聞記事が配られておりますけれども、全く私も同じ意見で、普天間基地というのはやっぱり軍事基地なんですよね。であれば、それを何かある迷惑施設をどこかに持っていくという議論ではなく、やはり軍事的な観点から、この普天間基地をどういうふうに動かしたときにはどういう影響が出るんだという部分を、やはりそこから入らないと、各政党の今までの主張とか思惑があります。まして、今の連立政権の場合は、社民党は自衛隊を将来的にはなくしたい、アメリカ軍を撤去したい、非武装の国にしたいというのが彼らの思いですから。ただ、三党合意の中でもそこは、自衛隊、防衛は一切触れていないという状況の中でこれはやると。  でも、やはり今回の問題は、軍事基地を移すという観点から、志方先生の方から、今回のいろんな政府のアプローチの仕方等々、今回の軍事的観点からお考えをまた述べていただければというふうに思います。
  83. 志方俊之

    公述人(志方俊之君) 先ほど申しましたように、日米の役割分担で、米軍は日本を基地にして海外にどんどんその勢力を伸ばす、いわゆるパワープロジェクション、戦力投影をする。日本は出ないという原則でしっかりそこを守っている。  ですから、例えば今回のものでも前方展開能力というのは、余り遠くまで下がるといざというときに役に立たない。来るのに時間掛かる。だから、今回は少し沖縄の負担を軽減するために、司令部機能とか後方機能だけはグアムに落として、第一線の部隊はシュワブにちゃんと置いておくという、そういうような体制でアメリカも考えている。本当はアメリカはもう全部持ってきておきたかったんだろうと思いますけれども、日本との外交関係を考えて、大きなそういう、いざとなったときにすぐ役立たなくてもいいようなものは後ろに置くという、こういうことだったと思います。  戦闘部隊というのは、海兵隊の場合は、艦艇とそれから地上部隊とヘリコプター部隊、固定翼も入りますが、それと訓練場というのがないと余り意味がないんですね。これが全然離れておったら話にならぬ、そういうことが一つある。  ですから、かつて下地島というところを官房長官が空中から視察されましたけれども、下地島は台湾海峡に一番近いところで、滑走路はあるんですけれども、滑走路を守る地上部隊を置くことができない。そんなものは一個小隊のコマンド部隊が入ってくればすぐ占拠されてしまうような。  ですから、そういうものは、有事のことを考えると、やっぱり沖縄という陸海空自衛隊がしっかり守っている中にいなきゃならない、しかも余り近くなく。下地島は中国に近過ぎますですよ。中国は怒りますよ。そうだとすればやっぱり遠からず近からずというところ。そういうことで、二、三百キロの間にこの五つの戦闘要素が一緒にいないと余りパワープロジェクションにならない、緊急展開能力を持たない、そういうことを考えます。  それから、私が心配しているのは、普天間基地はやがて解決されるのでしょうけれども、これを端に発して、日米関係、特にアメリカの世論が動き出した場合、そうすると親日派のアメリカのインテリはそれはよく分かっています、日本のことは。しかし、アメリカの市民が、世論が動き出したときには、やはり、何で我々はこんな片務的な協力をしなきゃいけないんだということになってくる可能性がある。  例えば、一九二一年に移民割当て法というのがアメリカでできた。これは特に日本をターゲットにしたものでは、名前ではないんですけれども、排日移民制限法という名前があるくらいに、この太平洋の向こうから台頭してくる日本、そしてアメリカに入ってくる日本の市民がどんどんお金を稼いで朝から晩まで働いた。それに対するアメリカの世論のあれがあって、それができたのが一九二一年ですよ。それから二十年後に日米戦争ですから。アメリカの世論がいったん動き出したら止まらないですね。そうだとすると、今、この普天間という問題で日米の世論が離反し始めたら、これは普通の政治家が幾らやったって止まらない。  そういうことを考えますと、これは、普天間というのは一軍事基地の位置の問題でありますけれども、やはり日米関係の根底を揺るがす可能性も出てくるということでありますので、十分この普天間問題は、結局、沖縄本島に置くしかないのであろうというような気がいたします。
  84. 佐藤正久

    ○佐藤正久君 先生が新聞に書かれておりますように、それぞれの各党の移設先の案の軍事的な優位性、これが提出資料に書いてあったかどうか、今日、別な委員会で確認したんですけれども、防衛大臣も外務大臣も見ていないので分からないと。非常に不安を感じたと。まさにこういう観点が大事だというふうに私も感じております。  以上、時間になりましたので、質疑を終わります。  ありがとうございます。
  85. 草川昭三

    ○草川昭三君 公明党の草川でございます。  両先生には本当に御多忙中ありがとうございました。  まず白石先生に三、四点お伺いをしてから志方先生と、こういう流れでお伺いをしたいと思うんです。  志方先生の方から、少し長期展望を持ちなさいよと、それから雇用ということが非常に重要になるよというような前提のお話がございまして、全く御指摘のとおりだと思うんです。  そこで、先生のこのレジュメを拝見していますと、これからは経済共同体構想というのが大切になりますよ、しかも国境を越えた人の移動ということを考えろと、こういう御指摘がございますが、これをもう少し我々の具体的な問題としてどう受け止めたらいいかということですが、その前には中国の問題が大きく出ておるんで、中国人等も将来は日本に入っておみえになるのかなと。しかも、そういう場合にどういう仕事が、今福祉関係なんかでは大変な期待が多いわけでございますが、どういうことを想定しておみえになっておられるのか、まず最初にお伺いをしたいと思います。    〔委員長退席、理事平野達男君着席〕
  86. 白石隆

    公述人(白石隆君) どうもありがとうございます。  人の移動というのはいろんな形がございまして、例えば、中国の人というのは、もう既に観光客、ツーリストとしては非常に重要な、韓国の人もそうですけれども、重要になっております。ですから、人の移動ということを考えたときには、当然のことながら、中国の人も韓国の人も、それ以外のアジアの人も、これからの中産階級の台頭、この地域における中産階級の台頭ということを考えますと、当然のことながら、やはり気持ちよく来てもらって、それで楽しんでお金を使ってもらって帰ってもらうというのが、これがツーリズムに対しては基本的な考え方になると思います。  同時に、もう一つ非常に重要なことは、先ほど少し科学技術のところの問題に触れて申し上げましたけれども、二〇二〇年ぐらいを考えますと、既に、例えば働き盛りの科学者、技術者の人口というのは恐らく四分の一ぐらい減ります。そのときに日本日本の中にある人材資源だけでやっていってこれで世界の競争に勝てるかというと、実はそれは甚だ不安でございまして、むしろ優秀な人材は、それこそかなりの高給を出しても採りに行く、あるいはそういう人が来ていただけないんだったら日本の研究システムを一部外に持っていくと。そこまでしても、やはり優秀な人材というのは、私はこれから日本として何とかしてリクルートして活用をしていくと。そういう形で日本の活力というものを上げていくということが重要ではないだろうかというふうに考えております。
  87. 草川昭三

    ○草川昭三君 ありがとうございました。  先生が他の、本日のレジュメ以外の雑誌に科学技術のことについて大変いろんな問題提起をされておるのを拝見しまして、非常に勉強させていただいておるところです。  それで、また本当にこのレジュメで恐縮でございますが、二枚目の方に日米同盟の堅持というところの中に不確定要因として朝鮮半島と台湾がありますよと、こうおっしゃっていますが、先ほども御答弁がございましたが、台湾海峡というのは、我々もいろんな議員同士の交流をしておるんですが、これは将来どういう見通しになるのか、非常にうまくいく形で大陸との関係に落ち着くのか、ちょっとそこらをお伺いしたいと思うんです。
  88. 白石隆

    公述人(白石隆君) どうもありがとうございます。  これについては、もちろん未来のことは分かりません。ただ、はっきり申し上げまして、この十年間の台湾の人たちの世論調査の動向を見ますと、現状維持が望ましいと、経済においては台湾と中国の緊密な連携、だけれども政治的には中国とは一緒になりたくないと、だけれども独立ということは宣言しないと、そういう現状維持がほぼ七〇%から八〇%のところで推移しているというふうに私は記憶しております。  ですから、その意味でこういう現状維持を恐らく今の台湾の人は希望していると思いますし、今日の主題でございます日本を取り巻く国際戦略環境ということから申しますと、恐らくそれが日本としても一番ある意味では都合のいい状況ではないかと思います。武力的に台湾が統合されるというのは、これはあってはならないことだと私は思いますし、仮に平和的に統合しても、そのときには日本を取り巻く安全保障環境というのは大きく変わるんだということも、やはり我々としては考えておく必要があるかと思います。
  89. 草川昭三

    ○草川昭三君 その次に、中国内需は地域内需にはなっていない、三角貿易の変容という御指摘がございますが、ここをちょっと御説明願いたいと思います。
  90. 白石隆

    公述人(白石隆君) どうもありがとうございます。  ここのところは時間がございませんでスキップさせていただいた問題ですが、実は二〇〇八年の上半期と二〇〇九年の上半期にどういう貿易になったのかということを参考資料の一番最後のページにまとめております。  これは二〇〇八年と二〇〇九年の一月から七月までの消費財の輸出ですが、アメリカに対するアジアからの消費財輸出は千五十億ドルから七百九十億ドルに減りました。これが大変な影響を及ぼしたわけですが、そのとき日本の消費財輸入、アジアのそれ以外のところからの消費財輸入というのは、実は三百億ドルで変わっておりません。中国は八十億ドルが六十億ドルに減っていると。これは二つの意味がございまして、一つは、中国で内需拡大をやりましたが、その内需の拡大はあくまで中国の中での供給力によって対応されて、アジアのほかの国にとっては需要にならなかったと。むしろ中国の需要は減ったと。  それから二番目に、そもそも中国のマーケットというのは非常に小さいんだと。日本の三分の一以下、アメリカの十五分の一程度のマーケットなんだと。これはもちろんこれから十年ぐらいしますとかなり大きくなるとは思いますけれども、それの意味するところは、東アジア共同体構築、これによる内需の拡大で経済成長モデルを転換するというのは、少なくともやはり十年ぐらいのスパンで考えなきゃいけない話であって、今すぐこれが万能薬になるということではございませんということでございます。
  91. 草川昭三

    ○草川昭三君 ありがとうございました。  では最後に、白石先生には最後でございますが、その次にこのASEANの反発というのがございまして、特にインドネシアにおける反中国というんですか、ということを御指摘なすっておみえになりますが、ASEAN全体としての中国の位置付けというのはどういうことになるのかということも含めて御説明願いたいと思うんですが。
  92. 白石隆

    公述人(白石隆君) どうもありがとうございます。  これも非常に実は重要な点でございまして、実は先ほど申しましたように、中国の内需はアジア内需になっておりません。それどころか、中国で生産された消費財が東南アジアにかなり洪水のように回っております。それで地場の、例えばフィリピンの靴の産業だとか、あるいはインドネシアの、何というんですかね、ガーメントですね、服を作る、こういうのが相当やられておりまして、それに対してインドネシアの工業大臣がASEAN・中国FTAの見直しということを提案しているというのがここでのインドネシアの趣旨でございます。  国によりまして中国の台頭に対する東南アジア諸国の対応というのは随分違いがございます。言い方がいろいろな表現の仕方がありますけれども、中国に近いほどやはり中国の影響下にあると。つまり、ミャンマー、ラオス、カンボジア辺りが非常に中国の影響が強くて、タイ、マレーシア辺りがそれほど脅威を受けずに中国を機会として見ていて、それでフィリピン、ベトナム、インドネシア辺りが少し警戒心を持って中国を見ているというふうな言い方もできますし、別のこれはワシントンのある研究者の表現をしますと、自由な国ほど中国に警戒心を持っているという言い方をする人もございます。ですけれども、国によって相当やっぱり反応というか対応は違うというのが実情でございます。
  93. 草川昭三

    ○草川昭三君 ありがとうございました。  じゃ、志方先生にお願いをするわけでございますが、先生の御説明になった日米の役割分担というところを中心にお伺いしたいと思うんでございますが。  実は、藤末先生、ちょっと今お見えになりませんが、去年一緒にワシントンへ行きまして、それでダニエル・イノウエという上院議員とお会いをしたんです。それで、非常に多忙な中でございましたが、わざわざ国会へいらっしゃいと言って一緒にお伺いをして、第一声が、どうして日本はあんなに評判がいい洋上補給、それを一月にやめるんだねと。あほかとはおっしゃいませんでしたが、もうそれに近い、あんなに期待をされて喜ばれているやり方はないし、日本の負担も非常に少ないし、海上自衛隊も大変努力をしておみえになるようだが、あんないいことをどうしてやめるんだねという実はお話がございまして、話が弾んだと言うと言葉は悪いんでございますが、この役割分担の中で先生の方からは特にこれは触れられておりませんが、どのようにああいう援助活動というんですか、を評価をしておみえになるのか、お伺いをしたいと思うんです。
  94. 志方俊之

    公述人(志方俊之君) 私は、洋上補給を法律を継続しなかった理由は補給量が減ってきたということが理由だと思うんですけれども、私はあれは続けていく方がよかったと思います。それは、行ってみれば分かりますが、あそこでもって八か国の多国籍艦隊がやっているわけですけれども、そうするとアフガニスタンとかパキスタンなんかのテロに関する情報が全部入ってくるわけですね。あれを引いた日からもう一つも入ってきませんから。  そういう情報というものを自分で取るならばいいですけれども、そういう多国籍の中で共有しているということを考えますと、あれは自分たちの運転経費を除けば、あげている油というのは数十億円ぐらいですよ、年に。そして、それを引き揚げたことによってみんながしょぼんとしてしまって、そして今度、それに代わって何をやったかといったら、四千五百億円ぐらい五か年間でアフガニスタンに民生支援のお金をあげる。そして、パキスタンにもあげなきゃなりませんから、結局六千億円ぐらいのお金を五年間で提供するという。そして人は行かないわけですから。  これは非常に醜いことで、情報は何も来なくなって、お金は十倍ぐらい出して、それほどやっぱりリスクを一緒に分かち合わないということがお金で高く付くということですね。イラク戦争のときだって、湾岸戦争のときでもそうですよ。あのときに約一兆三千億円出したわけですけど、領収書も来なければ感謝状も来ませんですよ。お金だけ出すのが当たり前だと思うわけですね。  ですから、やはり私は、今ここにおられる各政党の青年部というのはかなり優秀な方がいらっしゃるので、まず人間が一緒に行ってお金も持っていったらいいと思います。そして、一生懸命向こうの人に奉仕する、その方がいいと思います。いきなり自衛隊を出す必要はないと。  その人たちがどうしても危なくてやっていけないというときには、それは自衛隊が行くこともあり得ますけれども。例えばPRTですね、プロビンシャルの、ああいうサポートチームというのは、リコンストラクション・チームですかね、ああいうものに日本の若者が行ったらいい。少し草食系の男子を自衛隊で教育して、今雇用がないといってその辺を、みんな公園に集まって御飯を食べながらそしてまた解散するということはやめて、まず自衛隊に入れて六か月ぐらいしっかりと訓練して、そして自衛隊に残る者は残ってもいいし、出ていく者はどんどん出ていく。自衛隊で六か月の厳しい訓練に耐えたという証明書を付けて、それでコンテンツも含めて、それで出してさしあげる。  まず私は、各政党が、隗より始めよであります。自衛隊に何でも先に行ってこいじゃないです。ですから、まず自分たちが行く、自分たちの政党の若者が行く、それで駄目なときには自衛隊ということを考えていただきたいと思います。
  95. 草川昭三

    ○草川昭三君 ありがとうございました。終わります。
  96. 山下芳生

    山下芳生君 日本共産党の山下芳生でございます。  志方参考人に伺いたいと思います。  今年は日米安保条約改定五十周年でありますけれども、この半世紀で軍事同盟をめぐる世界の情勢がどう変わったか、少しいろいろ意見交換したいと思います。  半世紀前、一九六〇年当時、米ソを中心とした軍事同盟の下にあった国の数は五十二か国、当時の国連加盟国の五三%でありました。その軍事同盟の下にある国の人口は、植民地を含めて世界人口の六七%を占めておりました。  しかし、この半世紀の間に多くの軍事同盟が解体あるいは機能不全、弱体化に陥りまして、旧ソ連を中心とした軍事同盟は、ソ連崩壊とともに基本的に解体、解消をいたしました。また、アメリカ中心とした軍事同盟も、東南アジア条約機構、SEATOの解散、中東地域の中央条約機構、CENTOの解散、それからオーストラリア、ニュージーランド、アメリカ合衆国安全保障条約、ANZUSの機能停止、米州相互援助条約、いわゆるリオ条約の機能停止と、全体として解散、機能停止が続いております。  現在、アメリカ中心とした軍事同盟で実態的に機能しているのは北大西洋条約機構、NATO、そして日米、米韓、米豪の四つしかありません。この四つの軍事同盟の下にある国は三十一か国で、国連加盟国の一六%。人口にしますと十億八千万人で、世界人口の一六%にすぎません。  そこで志方参考人に伺いますが、人口の六七%から一六%に、半世紀前には軍事同盟に覆われていた世界は大きく変わったと思います。この事実を踏まえて日本の安全保障政策を考える必要が私はあると思いますが、御意見いかがでしょうか。
  97. 志方俊之

    公述人(志方俊之君) 御指摘の数字はそのとおりだと思います。この集団防衛といいますか集団安全保障といいますか、それは、やはり今一国で自分の国を守れるという国はアメリカですらない、どこかの国と一緒になってやらざるを得ないと思います。特に日本のように、核は持たないと決めている、攻撃的なものを持たないと決めている、そして海外に年間九億トンの資源を頼っている、そして一億トンのプロダクトをまた買ってもらっているという、こういう世界の平和というものに支えられている国家としては、自分の国の防衛を自分の国だけでやるとなれば、今の自衛隊の何倍も要るし、核装備すらしなけりゃならない。  したがいまして、今おっしゃられた四つの残っている同盟、その中でも日米同盟というのはNATOに匹敵するぐらいの私は価値があるんだろうと思うんですね。そのカバーする人間が六七%から一六%に減っても、我が国の周りの脅威が変わるわけではないと。北朝鮮が心を入れ替えてにこにこしてくれれば別ですが、ロシアだっていまだに半分は物が言えないような状態もある。中国にしてはましてそうだ。そういうそばにあって、なかなか日米同盟を解散するということはできません。    〔理事平野達男君退席、委員長着席〕  NATOは、例えばイギリスを見てください。イギリスも島国でありますけれども、イギリスのドーバー海峡の向こうには、フランスがありポルトガルがありドイツがあるわけですよ。自分たちと価値観を共有する者がいて、しかも軍事的に結ばれている、そういうような島国と大陸との関係ではないです。日本と北東アジアの大陸との関係というのは全く価値観が違うわけですね。価値観が同じでといえば話は別ですけど、私は同じとは思えませんですね。  そうだとすると、やはり日米同盟というものがあって、それが日本の核装備を止めている、そして日本が攻撃的兵器を持つことも止めているという、そういう私にとってみれば非常にすばらしいものがあるわけですね。ですから、ここのところは、日米安保と友愛の精神というのは全然矛盾いたしません。
  98. 山下芳生

    山下芳生君 日米安保条約、軍事同盟についての立場は全く違うんですけれども、ただ、この四つのアメリカ中心とした軍事同盟の中で、日米安保というのはほかに類のない異常な特質があると思っております。  例えば、海外に駐留する米軍の総数というのは、世界的規模で見ますと、ソ連崩壊後に六十一万人から二十八万人へと半減しているのに、在日駐留米兵数は四万人前後とほとんど変わっていない。それから、海兵隊が配備されているのは世界日本だけです。それから、空母の母港が置かれているのも世界日本だけであります。イラク、アフガンなど、海外侵略の最前線基地とされております。それから、女性暴行事件や未成年者へのわいせつ行為など、米兵が裁かれた性犯罪が米軍基地のある他の国々と比べて突出して高いのも日本です。犯罪を犯した米兵が日米地位協定の治外法権的な特権に守られているという屈辱的な事態が繰り返されているにもかかわらず、この半世紀、地位協定の改定は一切ありませんでした。志方参考人は先ほどポチの条件と言われましたけど、私はこれらこそポチの条件だというふうに感じます。  日米安保条約の是非について立場は違うとしても、世界でも突出したこうした従属的、屈辱的な事態は改めるべきではないかと思うんですが、いかがでしょうか。
  99. 志方俊之

    公述人(志方俊之君) 改める必要があると思います。改めるためには、自分もいろんなことをやらにゃいかぬですね。これほど片務的な条約の中でにっこりしている日本はないわけであります。  例えば、海兵隊、さっき言いましたように、軍事力というのはある程度の間合いというのが要ると。そうすると、在韓米軍をどれだけ大きくすれば、もう非常に危ない状態ですね。台湾には駐留できない。豪州は遠過ぎる。となると、日本列島という、特に沖縄、こういうところが軍事力がそこにとどまる一番重要な地政学的な条件がある。したがって、空母もそこにおるし、海兵隊もいる。沖縄の海兵隊は沖縄を守るためにいるんではないですよ。あそこから出ていくわけですから、そしてにらみを利かせているわけですから。そして我々も安泰に台湾海峡を通っているわけですから。そうだとすると、相身互いであるということですね。  それから、日本は集団的自衛権というものを持っているけれども使わないという国です。韓国はそうではありません。豪州もそうではありません。だとすれば、どちらがいいかということですね。米軍をもっと減らしてもらって、そして集団的自衛権を我々が持つのかという、そこのところを考えていただかないと。  それから、米兵がいろんな事故を起こして、そして地位協定上余り芳しくないと、こういうことはやっぱり改善した方がいいと思いますですね。
  100. 山下芳生

    山下芳生君 終わります。
  101. 近藤正道

    近藤正道君 社民党・護憲連合の近藤正道でございます。今日は、お二人の先生から大変勉強させていただきました。ありがとうございました。  志方先生の方から国力の四要素、その一つとしての軍事力、非常にリアルにこの持つ意味ということについてお話をいただきまして、ありがとうございました。  そこで、いろいろこの話をする中で、やっぱり軍事力に聖域はないということとか、あるいは今の日本の国の軍事力、まあ防衛力でしょうか、近隣が増えている中で漸減傾向にあるということについて大変心配のお話がございましたけれども、今日どなたもおっしゃらなかったんで、私、そもそもの質問を一つさせていただきたいと思っておりますが、とりわけ憲法の九条が、国の言わば権力、とりわけその権力の中の権力である軍事力について、あるいは軍事について制約の一つの原理をきちっと働かせているわけでございますが、この九条の軍事力を制約する原理、仕組みについて基本的にどういうお考えをお持ちなのかということと、今現在、この九条によって何か具体的な支障があるのかどうか、お聞かせをいただきたいというふうに思っています。
  102. 志方俊之

    公述人(志方俊之君) 憲法については、私も一言あります。私は今法学部におりますから憲法を教えるんですけれども、今の学力を持った学生ではあの憲法は難解過ぎて分かりません。陸海空、戦力はこれを持たないと、だったら自衛隊は何だという、そこからくるわけでありますから。やはり日本の義務教育、中学以下ぐらいの教育を受けた人が読んだら百人中九十人までが同じ解釈ができるような憲法にしていただきたい。  したがって、内容は同じでも結構ですから、国学者とかそういう人を全部集めて、それから例のリテラシーのコンテンツも入れて、そして日本国憲法をもう少し学生が読んでも分かるようにしていただかないと、今はもうそういうことができないために、解釈改憲といいますか、そういうようなことでどんどんどんどんいっているという、そういうことがかえって私は文民統制に反すると思いますので、是非政治家の皆さんが憲法というものをもう少し読みやすくしていただく。  したがって、大体、有識者懇談会というと、偉い人ばっかり集まるんですね。ですから、中学の国語の先生とか、そういう人も入れたような憲法調査会かそういう審査会をつくってやっていただかないと、この憲法でこの陸海空自衛隊を持つということを外国から見たら物すごい不思議ですよ。すごいですから、自衛隊というのは、これでも。そういうものを持たないと書いてある憲法の下で持っているということは、日本人全体が信用されていないんではないかなと思うんですね。  そういうことで、私は、先生のおっしゃるように、今の九条の解釈からいくと、今の自衛隊がPKOをやったり国際緊急援助で行ったり、そういうようなことぐらいまでがぎりぎりではないかなと思いますですね。これ以上やるならば、今言ったように憲法のところに、大体憲法の中に自衛隊という文言がないじゃありませんか。それで学生がそれを聞くんですね、何でないんですかと。憲法が先にできているんだ、自衛隊は後にできたんだ、だから憲法の中に自衛隊という文言があるわけないだろうと言うと、あら、本当だとなる。だから、自衛隊は憲法を違反しようにもできないですね、憲法に載っていないわけですから。  以上でございます。
  103. 近藤正道

    近藤正道君 白石先生にお尋ねをしますが、先ほど志方先生のお話の中で主要国国防費の推移というお話がありまして、近隣諸国が国防費を増やしている中で日本だけがこのところずっと減らしていると。それは旧政権から含めてずっと減らしてきているというお話がありました。これはいかがなものかという、こういう立場からのお話でございました。  このことについて白石先生はどういうふうにお考えなのか。つまり、志方先生と同じような立場なのか、それとも、これこれこういうことで、これはそれなりにちゃんと合理性があるんだというふうにお考えなのか、お聞かせをいただきたいというふうに思います。
  104. 白石隆

    公述人(白石隆君) どうもありがとうございます。  なかなか微妙な質問でございますが、実際に東南アジアの国々の防衛費を見ておりますと、減ってはおりませんが、中国ほどには増えておりません。どうしてかと申しますと、これまで先ほど私何度か申し上げましたが、やはり日米同盟があって、それを与件として安全保障政策を立てますと、例えばインドネシアという国は、海軍というのはありますけれども、日本でいうと海上保安庁程度の海軍でいいという、そういうことになります。なぜかというと、米軍がこの地域の制海権を掌握しているからでございます。  ですから、軍事力というのは、これは必ずしも日本は、私は減っているとまずいと思います。やはり、この日米同盟がこの地域の言わば安全保障上の公共財であるということから考えまして、最低やっぱり現状は維持した方がいいと。それから、二十年、三十年先の基盤的防衛力ということを考えますと、残念ながらコストは高くなるに決まっております。ですから、それに見合うだけの予算というのはこれは措置していかないと、やはり長期的に日本は頼りにならない、日米同盟は頼りにならないということになりかねない。  だから、その意味で、私は何%かというのは、これは先生方がお決めになることでございますが、是非、この基盤的防衛力というのは現在の安全保障環境の下でもこれ以上はやはり減らせないものだというくらいの感じで考えていただけるとよろしいんではないかと思います。
  105. 近藤正道

    近藤正道君 時間ですので、終わります。
  106. 簗瀬進

    委員長簗瀬進君) ありがとうございました。  以上で公述人に対する質疑は終了いたしました。  この際、公述人方々に一言御礼を申し上げます。  本日は、有益な御意見をお述べいただきまして、誠にありがとうございました。委員会を代表いたしまして厚く御礼申し上げます。どうもありがとうございました。(拍手)  速記を止めてください。    〔速記中止〕
  107. 簗瀬進

    委員長簗瀬進君) 速記を起こしてください。     ─────────────
  108. 簗瀬進

    委員長簗瀬進君) それでは、引き続き公述人方々から御意見を伺います。  この際、公述人方々に一言ごあいさつ申し上げます。  本日は、御多忙中のところ本委員会に御出席いただきまして、本当にありがとうございました。委員会を代表して厚く御礼申し上げます。  本日は、平成二十二年度総予算三案につきましてお二方から忌憚のない御意見を拝聴し、今後の審査の参考にいたしたいと存じますので、どうかよろしくお願い申し上げます。  次に、会議の進め方について申し上げます。  まず、お一人二十分程度で御意見をお述べいただいた後、委員の質疑にお答え願いたいと存じます。  それでは、社会保障国民生活について、公述人中央大学教授山田昌弘君及びJA東京青壮年組織協議会顧問加藤篤司君から順次御意見を伺います。  まず、山田公述人にお願いいたします。山田公述人
  109. 山田昌弘

    公述人(山田昌弘君) 中央大学の山田昌弘でございます。今日はお招きいただきまして、どうもありがとうございます。
  110. 簗瀬進

    委員長簗瀬進君) どうぞ御着席のまま。
  111. 山田昌弘

    公述人(山田昌弘君) じゃ、着席のまま意見を述べさせていただきたいと思います。  私は家族社会学を専門としていまして、定量的というよりも定性的な面から、主に子ども手当中心とした社会保障の充実についてお願いしたいと思いましてレジュメを作ってまいりました。  まず、今、生活不安が非常に増大しております。生活不安があるから消費がなかなかできなくなる。今の特に若者は、将来の老後のためにお金を使わず貯金をするというような学生まで現れてきている現状があります。  社会保障の目的というのは、人々をリスク、病気や失業や家族の喪失などから守ることにあります。そして、リスクに陥った人間を貧困状態から救い出すシステムをつくり出すことにあります。  しかし、現在の日本状況というのは、格差社会、貧困などが拡大し、うまく社会保障福祉制度が機能していない状態にあると私は判断しております。その理由は、仕事や家族の在り方がここ二十年の間に根本的に変化しているのにもかかわらず、制度が対応できてないからだと判断しております。  今までの日本社会保障福祉制度のよって立つ前提というものは二つあります。  一つは、大人がフルタイムで働けば家族が人並みの生活をするのに十分な収入が得られる、フルタイムで働いているのに収入が低い人はいない、家族にだれか一人でもフルタイムで働いていれば、その人に家計を依存して生活できる、このような条件がありました。つまり、ワーキングプア、朝から晩まで週五日働いて低収入の人はいないはずだというようなことを前提としておりました。  二番目は、ライフコースが予測可能だったということです。つまり、全員が望めば自営業かサラリーマン・主婦、どちらかのコースをたどることができる。自営業は、夫婦共に家業に従事して、息子夫婦に後を譲って引退できる、サラリーマン・主婦であれば、夫は正社員で定年まで働いて、妻は主婦でいられる。それはもちろん、全員が結婚できて離婚しない、自営業は続く、失業しないし倒産しないというような前提の下につくられておりました。それに従って現行の社会保障福祉制度というものが構築されていたわけです。  時間がありませんのでこの点は省略させていただきますが、とにかく、フルタイムで働けば人並みの生活がもらえる仕事にすぐ就けることが前提となって社会保障が構築されていて、この条件というのは一九九〇年ごろまでは当てはまっていたわけです。  しかし、一九九〇年代後半から社会保障の前提が失われてきました。レジュメですと二ページ目に入ります。それは、非正規労働が増え、規制緩和によって自営業の見通しが立たなくなり、さらに正社員であっても低収入の者が増大したからです。つまり、安定した収入のフルタイムの職の絶対数が減少し、望んでも正社員になれない男性が増えてきたわけです、もちろん女性も。女性は元々なかなか望んでもなれなかったわけですが。  二番目には、望んでも標準的ライフコースを取れないような人が増えているわけです。未婚確率、今年国勢調査ですけれども、二〇〇五年の段階で三十代前半の男性の未婚率は四八%、女性の未婚率は三二%でございますし、今の若い人は結婚した人の二人に一人は離婚するという勘定です。つまり、今の二十代の若い人にとって、結婚して離婚しないで一生を送る人は二人に一人ということでございます。  そういうときに、今までどおりの社会保障の在り方で今の若者が安心して将来を設計できるわけではありません。さらに、その中で正社員になれる人といえば更に少数になってくるわけです。できちゃった婚等も増大しており、今は五組に一組ができちゃった婚でございます。特にこれも経済が大きく影響しておりまして、若年失業率が高い県にできちゃった婚が多いという傾向があります。つまり、収入があれば結婚して出産ということができたのに、そうではないということから生じているものだと思われます。もちろん、この非正規化というのは、収入が低いから結婚できない。また、離婚の増えた部分かなり部分が、夫の収入が少なくなったために妻が離婚して実家に帰るという形の離婚が、今の若い人の離婚の私の調査ですと三分の一ぐらいを占めております。  その結果、標準的ライフコースと最低生活の中間に落ち込む人が増えている、そのため、そういう不安を持つ人が増えているということが今の社会保障に対する不安、生活に対する不安の源であります。そして、ワーキングプア、いわゆる働ける、若しくは家族にフルタイムで働ける人がいるのにもかかわらず、人並みの生活ができないという形での貧困が広がっております。  じゃ、どのようにリスクに対応できないかというのを三つの例からお話ししていきたいと思います。それはなぜかというと、必ず家族の中には正社員がいるということを前提に社会保障が構築されていたために、そうでない場合には対応できなくなってしまっているわけです。  一番目に、夫が非正規雇用だと妻が専業主婦でも年金保険料を納付しなければならないということがあります。  私の卒業生で専業主婦の学生が私のところにどなり込んできまして、夫が正社員からフリーランスに替わった途端に専業主婦で無収入の私に年金保険料を払えと言ってきた、これは趣旨から違うんじゃないかということを言われたわけです。私は、厚生労働省は、夫がフリーランス、妻が専業主婦という家族は日本には存在しないことになっているというふうに答えざるを得なかったわけですけれども。フリーランスならいいんですけれども、夫が正社員で妻が専業主婦だったら保険料が免除なのに、夫が非正規雇用だった場合は妻も一号保険者になりますので、踏んだりけったりということになっております。  さらに、二番目、三番目には、育児休業についても同様ですけれども、これも私の知り合いのフリーランスの記者が育児休業を取材したときに、雲の上の話だというふうに言っていたわけです。つまり、大企業の正社員でしたら特に育児休業は充実しているかもしれませんけれども、フリーランスでは、収入が少なくて不安定なのにもかかわらず育児休業等がない。ちなみに、イタリアなどヨーロッパ諸国では自営業やフリーランスにも育児休業があって、所得保障がなされております。  さらに、男性の育児休業、先日、文京区長が育児休業取得ということで話題になりましたが、そういう場合は、よほどの高収入の人か、若しくは妻が正社員の人でなければ、育児給付が五割だととてもやっていけない。妻が専業主婦だったりパートタイマーだった場合に、自分が育児休業を取って収入が五割になって、子供を抱えて生活できるわけはないわけです。つまり、欧米、アメリカはないですが、ヨーロッパの先進福祉国では、当然、育児休業給付は八割、十割でございます。だから、男性も安心して育児休業を取れるということでございます。  つまり、こういうのを見てきますと、弱い立場の非正規雇用者の方が社会保障で冷遇されているという現実が今あるわけです。  さらに、よく知られているように、非正規雇用化、低収入化の波というのは若年、若い人を襲っております。つまり、フルタイムで働いてもまともに収入が得られない状況の最大の被害者が若者であるわけです。その結果、今の子供を育てている家庭の家計状況は非常に厳しくなっております。  もしよろしければ、三ページ、四ページの表を見ていただきますと、これは私らのグループが総務省統計研究所において、一九八四年から二〇〇四年まで未就学児、つまり学校に通っていない子供がいる家庭の状況を全国消費生活実態調査の票から分析したものです。これは二〇〇五年を基準として物価水準を調整してありますが、どの家族類型の世帯も一九八四年から九四年までは収入を増やしておりますが、九四年以降、子育て、未就学児を持つ世帯の収入は大きく低下しております。例えば、一九八四年は五百九万円、八九年は五百五十三万円、九四年は五百九十五万円だったのが、九九年には五百八十万、二〇〇四年には五百五十三万、全未就学児世帯の平均でございます。  それで、いわゆる父母がそろって核家族である、夫婦家族である世帯収入を見ていきますと、これは平均値ですけれども、世帯年収はやはり九四年をピークになっております。特に父親年収が四十万円下がっている。共働きによって母親年収は多少上がりましたけれども、一九九四年と二〇〇四年を比べると、父親年収は五百五十四万円から五百十二万円と四十二万円減っています。じゃ、共働きをすればいいやというふうに言えそうなんですけれども、母親年収は五十一万からたった六十三万、十二万円しか増えておりません。つまり、女性も非正規雇用化が進んでいるので、男性の、父親の収入低下というものを女性の働きではなかなか取り返すことができなかったということが述べられております。  時間がありませんので、次のページをめくりますと、母子家庭の状況を述べさせていただきます。  特に母子家庭においては年収の低下が非常に著しく、二〇〇四年では、物価水準でいいますと、もう一九八四年の水準さえも下回った水準に低下しています。なぜかというと、夫婦家族であれば共働きによって収入低下を補えるのに対し、母子家庭の場合は収入低下を、一人であるために一人の収入の低下を補えなかったからでございます。  表五を見ていただくと分かるように、就労率は九四年は低かったんですけれども、二〇〇四年は相当高くなっているのにもかかわらず、年収分布で見ますと低収入の母子家庭が非常に増えている。ただ、母子家庭は二極化が進んでいまして、確かに収入が高い母子家庭も十五年前に比べれば増えてはきたんですが、それでも低収入化が進んでいる。これも一九九〇年代に進んだ非正規労働者化、つまり、フルタイムで働いてもまともな収入が得られない状況が、若い人の間、特に女性で広がっているということの反映でございます。  さらに、表七と表八は、三世代の中で子供を育てる人の二〇〇四年の状況です。つまり、三世代の家族というのは核家族に比べて両親の収入が低いという特徴があります。特に母子世帯、つまり、おじいさん、おばあさん、母親、子供といった母子世帯においては母親の収入が低く、自立したくても自立できない三世代世帯の中での子育てという様子が見えてくるわけです。  そして最後に、レジュメに戻りまして、抜本的な社会保障制度の組替えが必要になっている時期だと思っております。  まず、正規雇用、非正規社員、フリーランス、自営業、そういった働き方によって今は細かく社会保障制度が区別されていて、正社員に有利になっていますが、それを撤廃していく必要があると思います。今回の予算等で失業保険や育児休業の範囲を広げる、給付の仕方を広げるということは実現しております。でも、単に広げるだけではなく、それはもちろん一歩前進だとは思いますが、根本的な改善が望まれます。  子育て期の不安解消のためには、子ども手当のような現金給付が必要だと思いまして、今回の子ども手当は第一歩のものとして非常に評価しております。年四十万平均給付しますと、二〇〇四年と比べて、一九九四年、つまり十五年前の水準にやっと戻るという計算でございます。つまり、子育て家庭を優遇しているんではなくて、収入が低下している子育て家庭をサポートするということでは評価しております。  そして、最後に、希望が持てる職に再チャレンジできる仕組みに予算を使っていただきたいというふうに要望しておきます。  時間が来ましたので、これで陳述を終わらせていただきます。  どうもありがとうございました。
  112. 簗瀬進

    委員長簗瀬進君) ありがとうございました。  次に、加藤公述人にお願いいたします。加藤公述人
  113. 加藤篤司

    公述人加藤篤司君) 本日は、このような場で発言の機会を与えていただいたこと、とても感謝しております。心よりお礼申し上げます。  私は、昨年度まで東京都の農業後継者の集まりでありますJA東京青壮年組織協議会の委員長をしておりました加藤篤司と申します。私は、現在、東京都三鷹市で切り花生産をし、農協の直売所やスーパーで売場をお借りして直売をしております。  本日は、危機的な状況にある都市農業の現状とその問題点、また都市農業が果たしてきた役割と今後の可能性についてお話しさせていただきたいと思います。  我々都市農業者は、親の働く後ろ姿を見て育ってまいりました。先祖が苦労して農地を開墾し、農業を営んできた思いをたたき込まれてきました。そして、いざ就農すれば、近年の農産物価格の下落、また暑さ寒さの中で大変厳しい仕事だとまさに実感するのですが、命をはぐくむ喜びを知り、また消費者の笑顔に励まされて、世の中の役に立っているんだから頑張るぞという農家としての気構えが育っていきます。そんな我々ですから、何とか農業を盛り上げて農地を残していこうという気持ちは大勢の仲間が持っております。しかし、相続だけはどうにもなりません。  昭和四十三年に都市計画法が施行されました。最初の都市計画策定時点での都市農地は三十万ヘクタールでした。経済が発展していく中で宅地等への利用転換が進み、平成二十年には何と三分の一の九万ヘクタールに激減いたしました。なお、年々四千五百ヘクタール減り続けています。東京都では、毎年、皇居の面積に相当する百二十ヘクタールもの農地が減っています。そのほとんどが相続によるものと思われます。相続をまたいでいかに次世代につなげていくかということが最大の課題なのですが、余りに厳しい現行制度のため、農地はどんどん減り、都市農業は危機的な状況です。もはや待ったなしの状態になりました。  私の住む三鷹市のような市街化区域においては、農地はおおむね十年以内に優先的かつ計画的に宅地化を図るべき区域とされており、経過的な農地保全制度として生産緑地制度があります。生産緑地の基本的な仕組みは、一、五百平米以上のまとまった農地であること、二、三十年間の営農を義務付けられていること、三、相続等で農業経営を廃止する場合、市町村に買入れ申出をすることができます。しかし、市町村の財政制約でほとんど実行されていませんので、現実的には減るばかりです。  生産緑地の指定を受けるメリットは主に二つあります。一つは、農地の固定資産税の農地価格評価が適用されることであり、もう一つは、農地の相続税納税猶予制度に乗ることができるということです。  農地の相続税納税猶予制度は昭和五十年に制定され、平成四年に改正されました。この制度でどれほど我々が救われてきたか分かりません。しかし、対象を自作農と農地に狭く限定した制度であり、賃貸借や法人化を認めない、農業経営上必要不可欠な農業生産施設用地は宅地として扱われてしまいます。甚だしい例としては、基礎のある温室や畜舎も農地扱いされません。そのため、食味で有名なTOKYO—X豚の生産農家も相続を迎えるたびに減っていきます。また、農の風景を形づくり、落ち葉などで堆肥を作っていた屋敷林等も認められません。  そして、農業相続人は終生営農義務を負います。途中の経営中止などの義務違反は二・二%の利子税加算で、相続時点に遡及して相続税を徴収するという過酷な制度であります。これは余りにも過酷で、バブル崩壊後の地価は二分の一から三分の一に暴落している状況にある今、減額調整すら認めないという厳しい制度です。まじめに営農を続ければ続けるほど家が破産してしまうリスクをため込むことになります。  死亡するその日まで農業ができれば何の問題もありませんが、それはだれが考えても不可能です。高齢化や健康不安はだれにでもあることです。また、必ずしも後継者に恵まれるとは限りません。昨年、農地法の改正で利用と所有の分離ということで、農地の貸借が認められることになりました。市街化区域の生産緑地に関しても、全面的ではありませんが、将来にわたって営農継続が困難になった場合、緊急避難的に貸借が認められることとなりました。しかし、その条件は大変厳しく、何と介護度五です。介護度五というのはとてつもなく高いハードルです。  私の父は現在七十五歳です。六十歳の時にくも膜下出血を患い、奇跡的に回復いたしましたが、自分のことをするのが精いっぱいで、それ以来、仕事なんかできませんでした。昨年、胃がんを患い、髄膜炎を併発し、今は寝たきりになってしまいましたが、それでも介護度四です。我が家は私がいなければどうなっていたかと思うと、ぞっといたします。  そんな現実の中、多くの農業後継者はこの制度の適用に困惑しており、以前からその改善を強く求めています。一昨年は、相続を終えた後、心労で仲間が自殺してしまったという悲しい事件も起きました。  宅地化すべき農地と位置付けられた中で、私どもは、都市部に農地、農業を残していくためには、都市住民と共存、共栄し、都市住民の理解を得ることが最も重要と考えました。我々青壮年部は、発足の五十年以上前から学校農園や市民農園などの農業体験に協力し、学校給食への食材提供や地域住民への直売など、地産地消を実施してまいりました。学校へ出向いての教育活動への協力など、様々な活動を精力的に今も継続しています。もちろん、消防団やPTA、地元町会運営の中心的な役割も含め、地域コミュニティーをつくり上げてきたという自負もあります。そのような活動の成果でしょうか、都政モニターのアンケートでは、八割以上の方が都市農業、都市農地を残すべきだと回答していただけるまでになりました。  平成十八年には神奈川県が神奈川県都市農業推進条例を施行し、平成二十年には大阪府が大阪府都市農業の推進及び農空間の保全と活用に関する条例を施行しました。東京都議会では平成十九年三月、都市農地の保全に関する意見書を全会一致で決議し、また平成二十年十月、都内の三十四区市町は、都市農地を保全するための連携組織である都市農地保全推進自治体協議会を設立しました。地域住民の理解と期待が非常に大きくなってきたとともに、このように自治体レベルにも都市農業の制度確立を目指す動きが活発になってきています。  都市農業は、国民生活に大きな役割を果たしています。まず、いつ起こるか分からない災害時の緊急避難場所や緩衝地帯として、公園面積が少ない中、大事な環境資源として、食育など教育の中の重要な要素として、地産地消など新しい産業の価値観を生み出しています。農地のある自治体では、学校給食への食材供給が盛んに行われています。私の地元の三鷹市では公立の小中学校すべてで行われていますし、そこでの食品残渣は堆肥化され、また畑に戻すというリサイクル事業も軌道に乗ってきました。農地のない二十三区内の学校には多摩地域の農産物を運ぶという東京都の事業も始まっています。そして、定年退職後の雇用の受皿にもなっています。もちろん、有り難いことに、近年、援農ボランティアの方も着々と増えています。  また、それだけではなく、都市農業は農業生産機能に関しても大きな力を持っております。何よりも技術力の高い農家が多く、東京都の野菜生産は年間九十万人分、大阪府は八十一万人分の消費量を賄っており、都市農業の食料供給能力は決して小さくはありません。いわゆる都市的地域と呼ばれる地域も含めれば、日本の農業生産額の三分の一を占めます。  日本の農業には二つの限界地帯があると言われています。一つは中山間地。これは、過疎による生産要素の離脱でどうしようもないと言われています。もう一つは都市農業です。これは、今まで述べてきたように制度によって追い込まれています。しかし、都市農業と言われる地域には大勢の人が居住しています。それこそ都市農業は、良き制度に恵まれれば多様な人によって更なる有効活用をすることができ、新たな可能性を生み出すことができると確信しております。我々は、安心して農業が営める環境が与えていただけるなら、今まで以上に地域住民の期待にこたえていきます。もちろん自信もありますし、これが我々後継者の社会的責任だと思っております。  我々の抱える最大の問題は、先ほどもお話ししましたように、いかに相続をまたいで次の世代につなげられるかということです。  東京から、戦後、九割の農地がなくなったと言われております。今残っている我々は、決して大地主であったわけではありません。戦後の農地解放でみんな平等になった中で、多少の幸運にも恵まれたとは思いますけれども、ぜいたくもせず勘違いもしないで必死に残してきたんです。まあとんでもない頑固者の集まりと言っても差し支えないと思います。確かに、今の生産緑地制度と相続税納税猶予制度がなければ、もはや我々ですら残り得なかったでしょう。  今年は租税特別措置法が根本から見直されると聞いております。相続税の納税猶予制度は租税特別措置法です。これがなくなると都市農業はあっという間に消滅してしまうでしょう。多面的機能の代名詞とも言われる都市農業、なくなっては困ると大変不安になっています。しかし、しつこいようですが、現行法は懲罰的であり非常に硬直した制度であり、我々でさえこの制度に乗って都市農業、都市農地を残そうという気持ちが折れかねないくらいハードルが高いというのも事実です。  我々は今まで何度もお願いをしてきました。そのたびにぶつかってきたのが財務省、農水省、国交省、総務省という省庁の縄張の壁です。農水省は農地と農業振興、都市農業は都市計画区域だから管轄外、国交省は緑地が管轄で、農地や農業はどう扱ってよいのか分からない、両省が理解を示してくれても財務省がうんと言わない、固定資産税関係は総務省、もうぐちゃぐちゃです。  あるとき、相続税は物納で納めて、その農地は売却しないで、やる気のある農家に貸し出したり市民農園などに使わせてはくれませんかと提案したことがあります。もうこの貴重な緑地空間でもある農地を減らさないためにはそれしかないという思いでの言葉だったんですけれども、国税と地方税が複雑に絡み合っていて不可能に近いと言われました。本音で言わせてもらえば、この貴重な農地を守りたいのか守りたくないのか、もうそろそろはっきりしてくれと言いたいくらいでした。  私の願いは、都市農業振興法や基本法を制定して都市農業の役割と価値をはっきりさせていただき、それを根拠に様々な施策を打っていただきたいということです。今回の食料・農業・農村基本計画の素案では、初めて都市農業が柱立てされました。ようやくここまで来たかととてもうれしかったのですが、何といってもよりどころとなる法律がありませんから、都市農業はいつまでたっても宙ぶらりんなんだと本当に思い知ったからです。  今年は更に都市計画法も改正されると聞いています。明日来るかもしれない大地震の場合、高層マンションなどに住む人々はどこに避難するんでしょう。もはや農地は貴重なセーフティーゾーンです。まさに都市農地は都市住民の命を守る防波堤です。そして、農耕民族としての文化を培ってきたこの日本、身近にある農業は心を守り育てるための重要な手段でもあります。都市農業、都市農地はしょせん個人的なものだというのではなく、都市政策、環境政策のレベルで考えていくことはできないのでしょうか。  都市部の農地といえば、あのバブル期のころは地価の値上がりを待っているだけだと言われたこともあります。それに踊った人も確かにいました。でも、今、その人たちは既に消えてなくなりました。今は時代が違います。取り巻く環境も大きく変わりました。現在の農政は都市農業について余りに無策です。都市の農地ほど有効活用できる可能性のある農地はありません。しかも、公園は管理費が掛かりますが、農地は少ないながらも固定資産税すら生み出します。食料供給や都市環境において、都市農業、都市農地はなくてはならないものになったと思っております。  我々は、今後もしっかりと都市農業、都市農地を守り、さらには発展させていくつもりです。そんな我々から見ても、今の制度はおかしい。これでは守れません。我々は頑張ります。今ならまだ頑張ります。頑張れます。毎年、全国で四千五百ヘクタール、都内で百二十ヘクタール減っていく都市部の農地の減少は、政治決断がなければ絶対に防げません。是非とも私どもの力を最大限に引き出せる法整備をお願いいたします。  著書もない、論文もない、立場もありませんが、ただただ地域で頑張っている市井の農業者の声を聞いていただきまして、今日は本当にありがとうございました。
  114. 簗瀬進

    委員長簗瀬進君) ありがとうございました。  以上で公述人の御意見の陳述は終わりました。  それでは、これより公述人に対する質疑に入ります。  質疑のある方は順次御発言願います。
  115. 下田敦子

    ○下田敦子君 当委員を仰せ付かっております下田敦子と申します。  お忙しい中お出ましを賜りまして、誠にありがとうございました。  私の本業は、昭和四十年から私学を経営させていただいておりまして、現在、医療福祉大学の仕事をさせていただいております。本当に今日はありがとうございました。  それでは、まず、本旨に外れるかもしれませんけれども、山田公述人、山田教授から御質問をさせていただきたいと思います。  社会保障国民生活ということで、ただいまの御説明にもございます、非常に不安の時代、誠に、生活そのもの、家庭環境から社会生活から地域社会等々、いろいろと変わってきている、激変を感じるこのごろでございます。先生の、教授のおっしゃっておられることとは少し外れるかもしれませんけれども、お許しをいただきたいと存じます。  実は、政権が替わりましてから様々な政策がここで繰り広げられているわけなんですけれども、こういうことを掲げています。今、新成長戦略というのが基本方針にございまして、サブタイトルが輝きのある日本へということなんですが、新しい需要創造計画を持って新しいフロンティア開拓をしようという、一つの政府の方針がございます。  その中で、日本の強みを発揮する成長ということがあります。二〇二〇年までに需要に見合った産業育成と雇用の創出を図ろうと。具体的には、新規市場約四十五兆円、新規の雇用が約二百八十万人ということを掲げまして、一番、医療・介護・健康関連産業という成長産業化を、これは主に民間事業者等の参入促進でもってやろうということを掲げて、鳩山政権は今これに一生懸命でございます。  実は、私なりにちょっと関心を持っているといいましょうか、一生懸命やらなきゃいけないなと思っておりますことが、子育て、介護、環境対策、あるいは地域活性化の社会的な課題をどういう形で、これをビジネス手法を活用して解決していくのかという、いわゆるソーシャルビジネスのことについて主にお伺いさせていただきたいと思っております。  ソーシャルビジネスということは、昨今非常に流行してきて、私どもの近辺にささやかれる単語なんですけれども、非常にまだまだよく理解されていないものがある。アメリカ型とあるいはまたイギリス型とのソーシャルビジネスのとらえ方というのは大変違うものがございます。特に、先生の御研究されておられます学域の中で、いわゆる今年予算が少し付きました病児保育とか、いわゆる働く家庭環境の中で大変今まで傍らに置かれていた、あるいは働く側の女性からすると大変困っていた部分、こういうことにも少し観点を置いていく。  それからあと、後ほどまた農業の問題で加藤顧問にもお話しをさせていただきたいと思いますけれども、農業法人の地域資源活用型の都市型の農業ということで、いろいろ難問を今お抱えになっていらっしゃることがあるんですが、これはちょっと後ほどに譲らせていただきますけれども。  いわゆるそういう観点からいきますと、どうもまだ日本のこの社会の中に、利益追求をしてはならない、哲学が必要だという意味のソーシャルビジネスというもののとらえ方がいま一つ定着していないし、理解されていない。ましてや医療、福祉関連にまいりますと、介護という問題に関しては、それを仕事にしている企業体がいわゆる会社法人なんですね、八六%が。社会福祉法人とか医療法人とか、その他のいわゆるソーシャルビジネスとしての、アメリカ型等々のとらえ方とは格段の差があって、非常に介護が売り物になって、先ほどのお父上のお話にもありましたけれども、介護五であっていても、そこから利益を得なければならないという一つの大変な、必要悪とは申しませんけれども、ギャップがある時代に入りました。  このことについて、山田教授はどのようにおとらえになっていらっしゃいますか、そのお考えと御研究のほど、もしございましたらいただきたいと思います。
  116. 山田昌弘

    公述人(山田昌弘君) 私、なかなか、余りアドリブが得意な方ではないので、ちょっと頭の中整理しております。  もちろんソーシャルビジネスというものを促進していくことが日本社会の成長のかぎであると私も思っております。そういうときに、私の個人的な意見としましては、最低限のサービスは公的に保障する、それに加えて上乗せのサービスというものを市場化する、私はそういう方式が今の社会に合っているんだと思います。  つまり、とにかく一律最低限のことさえ保障していればいいんだというのでは今の社会の欲求にはこたえられない、だけれども、余り収入がない人もいる、そういう中でせめぎ合っているんだと思います。ですから、私は、最低限の部分を公的なもので完全に保障した上で、プラスアルファの部分をビジネスとして市場化する、その仕分をきちんとするということが今後の在り方だと思います。すべてを一律、効率化してサービスするというふうになると、これは成長にはなりません。しかし、最低限のものを保障しながら、残りの部分を公的なものがサポートしながら市場化していくということが今後の望ましい在り方、いわゆる第三の道というものですけれども、在り方だと思っております。  ちょっとお答えになったかどうか分かりませんが、また話がありましたらお願いいたします。
  117. 下田敦子

    ○下田敦子君 大変ありがとうございます。突然に何の通告も予告もなしにお尋ねをして大変恐縮でございました。  今、歴史の浅いこういう部分なんですけれども、例えばコンクリートから人づくりへということを民主党はテーマに掲げて今予算配分もすべて大幅に変えようということをやっておるわけですけれども、京都大学の副学長西村先生の、古くからのこういう医療・福祉経済をやっておられた第一番目の成果として発表されましたことは大変非常に印象的なんですが。  結局は、経済への波及効果という比較をした場合には、福祉部門とあるいは公共部門とでは一次波及、二次波及、三次波及、全くこれは何ら差があるものではないと。結局、雇用誘発も介護の場合は多うございますし、それからまた、経済への波及効果からいいますと、百人入所している方の施設があったとすると、百人の雇用の場と同時に、百人の生活のため、医療の場としての出入りの業者さんが出てまいります。  そういうことの意味から、例えば公共事業は建物を建て終わりますと、そこの段階で雇用の契約は終わりになってしまいます、一年ないし二年で。ですから、そういうことからいうと、かなり研究をしながら進めていかなければならない部分日本が非常に遅れているというか、そういう部分ではあるだろうなと多くの質問を伺ってそう思います。  大変ありがとうございました。また後ほど何かございましたらお願いいたしたいと思います。  さて、農業のことで、私の私見でございますが、大変、今都市においての農地法の問題から様々御苦労されておられますことをるる承りまして本当にありがとうございました。税法もあるいは地方自治法も農地法もこれに全然手が届いていない。でも、ずっとお話を伺って、この背景には何があるんだろうと。WTOなんだろうか。様々な今までの日本経済の外需拡大の意味が、あるいは自給率を落としながらこういう結果まであえてしたのではないかということを今、私ふと思ってしまいました。お許しをいただきたいと思います。  それから、私の願いを込めてのお話なんですが、私も農業大学校とか、あるいは青森県の出身ですのでリンゴ農家の基幹青年の教育に長いことお手伝いをさせていただいた経験があります。その中で思うことは、どうしても農業技術とか農業科学、サイエンスですね、そういうものに主力が、主流が置かれていまして、どうしてもそういう農業経済であるとか、あるいは地方自治から来る法律の問題とか、一番問題なのは、やっぱり経営学が、ビジネスという意味からいう経営学が全く若い後継者たちに伝えられていない。だから、一個何百円というリンゴを作って、芸術作品を作ってまさに売らんとしている状況が毎年毎年見られます。  そういう背景を私思って申し上げます。一つお尋ねしたいんですが、例えば、日本の車社会あるいは家電製品の会社、これは作って工業生産物として海外に売らなければなりません。売って、そしてまた、そこから逆に内需拡大のためという意味もあるでしょうけれども、向こうから、じゃ、あなたの国の車、家電製品をこれぐらい買うから、手前どもの余っている農産物を是非買うようにと、いわゆるそういう国際的なWTO、時にはガットまで出てきて論争も起きているものもあります。  このことから考えたときに、この結果どうなったかというと、私は、アメリカの小麦組合の会長さんが、日本でいえば勲一等です、の勲章をもらって、ここへ付けて、もう優にアメリカの小麦拡大、消費拡大計画は三十年計画ということで大成功したと。もう日本は朝から夜までアメリカの小麦なくしては暮らせない民族になった、大成功だと。この成功を今、中国に持っていっていると。確かに一人っ子政策で、人口が爆発的で、北京はマクドナルド、ケンタッキーフライドチキンでいっぱいです。  ですから、そういう何とも言えないアメリカ的な市場拡大の内容があるようでありまして、要するに、ファストフードもすべて世界のこういう経済のたまもので日本へ来ているということを感じます。これを一回、アメリカの大使館の大使に申し上げたら、それは別に北京だの東京に限らない、ニューヨークだってファストフードでいっぱいだという答弁が返ってきたことあるんですけれども。  この点について、私は、後先になりましたけれども、農業を勉強する場合に、もう少しこういう意味での経済、外交、それからいわゆる地方自治の地方に至るまでお勉強することがこれからはもっと必要じゃないのかなと思いますけれども、いかがでございましょうか、お尋ねします。
  118. 加藤篤司

    公述人加藤篤司君) 私は、今後、農業というのは一人でやるものではないと思っております。技術力が高い人間、それから売ることがうまい人間、それから将来を見通すことがうまい人間、さらには、会計にもかなり精通していませんとできませんので、そういうところで農業に対する教育も幅広く総合的にしていくべきだと思っております。  私も、東京の委員長として地方の農家の青年部の長と交流してまいりました。なかなか地方はひどいような状況が続いております。鳥取の委員長が言っておりましたけれども、二十世紀のナシが一個五十円で売れればいいんだろうけどなと言うんです。二十世紀のナシが一番おいしいのは九月なんだけれども、お盆の贈答時期に合わせてどんどん出荷しろと言われると。そういうところで、本当においしいものを出せない悔しさもあるし、自分の作った農産物が高く評価されないという悔しさもある。私は、そういう思いを込めまして、一番の消費者の固まりであるこの都市部の人たちにいかに農業を理解していただけるか。高く買ってくれる人も必ずおりますので、そういうところでやっていかなきゃしようがないなと思っております。  農業技術、それから売り方というよりも、また消費者へのアピールとか、そういう部分でもかなり注目しながら今後農業政策を進めていくべきではないかと思っております。
  119. 下田敦子

    ○下田敦子君 あと五分ございますので、(発言する者あり)九分でしたか、恐れ入ります。ありがとうございます。  一つ、大変私は大事にしている視察の結果を今思い出しているんですけれども、福井県のあるコンニャク屋さんのあるじの方です。この方、法学部を終わっていながら、要するに家の後を継いだということなんですけれども、夏場は非常に休業状態になってしまうと、冬はおでんとかいろいろあるから、コンニャクはおでんのものとして売れるけれどもと。  そこで、次のことを始めた。ということは、近隣の農家の方々の、いわゆる市場に出すというと市場の規定があって、例えばキュウリは曲がってちゃいけないとか、あるいはこういう箱に入る寸法でなきゃいけないとか、非常に奇妙な日本の流通規定がございます。ですから、そのことからをして品物の保証は、ちゃんと味もいいんだけれども、涙をのんで除外してしまわなきゃいけないと。そのことに気付いて、その社長さんは、その農産物の余剰になった部分を買って歩いた。それは一人じゃなくて、ただいまおっしゃったように一人では農業はやれないと。もちろんそのグループの方とか、それから県の職員、農林水産部の、その職員の方と一緒になって、その余剰農産物とされる規定外の品物を買って歩いて、それをたくさんいろんな形に使いながら、実はあそこの県はサークルKの発祥の地だそうで、サークルKと連携して全国の販路を広げていった。私はすごいことだなと思って、その方は法学部御出身の社長様だそうで、やはり御自分のそういう情熱というか研さんというか、大変功を奏したのではないかなと思って、いつも思い出す話であります。  ですから、何よりもやっぱりそういう農業に今必要なのは、一つの情報であるとか意識改革とか、やっぱり一人でやるものではないと。我が県にも農協を全然経由しない米の販売をずっと十何年も続けている集団がございます。大変私は、ある意味で教えられる部分が多くて、大変重要だと思っております。  今日は大変お忙しい両先生に恐縮でございますが、実は今日のこのお話の中で、山田教授にも是非そういう意味からの、福祉はお年寄りがいてお金が掛かる、消費専らだというそういう意味ではなく、また子供が多いから大変で、子ども手当が今、先般からいろいろ議論されているわけですが、そういうことではなくて、何か一つの、こういう社会が、ある集団が営利を目的でない一つの社会の部分として組織されるような、そういう御指導を私は期待してやみません。どうも、おっしゃるように、確かに先ほど、最低限の社会的な保障の上に上乗せしたサービスということが市場化するということが私は本当にこれから大事だなと思って、今ちょうだいしたお話でございます。  何か総括してございましたら最後に御指導いただいて、これで終わりたいと思います。両先生にお願いいたします。
  120. 山田昌弘

    公述人(山田昌弘君) 私が指導というほどおこがましいことは言えないと思いますが、私、先般「幸福の方程式」という本を出しまして、これからは幸福をつくり出すのはつながりにあるというふうに思っております。そして、そのつながりをサポートするところに成長があるのではないかと思っています。  近年、今学生の海外旅行はすごく減っているんですけれども、唯一伸びているのがボランティア旅行なんですね。海外の孤児院に行って孤児と一緒に遊ぶ、遊ぶというか手伝うということで遊ぶんですけれども、それにお金を払ってまで行きたいという学生がいると。これは旅行会社の非常に大きなターゲットになっております。  そういうつながりをつくり出すことが幸福であり、それに対してお金を払う人が結構出てきている。それが私が考える一つの成長の在り方だと思いますし、下田議員がおっしゃるように、まさに営利を目的としない集団がそういう形で、営利を目的としない集団が利益を生み出すというのもすごい変な話なんですけれども、人の幸福をつくり出すことに対して人はお金を払おうとするわけですから、私は営利自体が悪いことだとは思いません。搾取するのはいけないわけであって、人の幸福をつくり出すという意味での営利をそういう形で広げていけばいいと思っております。  以上でございます。
  121. 加藤篤司

    公述人加藤篤司君) 私は、努力が、一生懸命やってきた努力が必ず報われるようなそういう制度、世の中、そういうところを目指していただきたいと思っております。  都市農業もそうなんですけれども、詳しくは知りませんけれども、北海道の方で和牛とそれから外国産の牛を掛け合わせたと。なぜかというと、昨年の穀物の高騰で、草を食べて何とか太るような乳牛、肉牛を開発してきたと。その結果、交雑種ということで、大変おいしい肉だそうですけれども、等級が、交雑種の等級はかなり低いです。そうすると、競りでの価格もかなり下がってきてしまう。今までは大変おいしい牛ということで高い評価を市場で受けていたんですけれども、その制度が始まってからは低い等級にしか出れなくなった、これじゃ生活できないと、そういう方もおられます。  みんな一生懸命頑張っております。福井の方でも、耕畜連携といって百ヘクタール目指して、お米も一万円時代が来るかもしれないと、そのときに一生懸命対応できるように頑張ろうと努力している方もいらっしゃいます。でも、なかなか努力が報われないというのも現実でありまして、正直者がばかを見るような、そういうところでは困りますので、何とか我々も頑張っていきますので、是非ともそういう制度、下々の声をそれこそ聞いていただいて、しっかりとした制度をつくっていただければと心より望んでおります。  以上です。
  122. 下田敦子

    ○下田敦子君 お忙しい中御指導賜りまして、大変ありがとうございました。どうぞよろしくお願いいたします。
  123. 木村仁

    ○木村仁君 自由民主党の木村仁でございます。  山田、加藤公述人には、大変奥深いお話をいただきまして、心から感銘をいたしました。お二方の公述の内容がかなり違っておりますので、便宜上、山田公述人の方に先に御質問をし、その後、加藤公述人にお願いをいたしたいと思います。  山田公述人は、社会保障制度、福祉制度そのものというよりは、その背景にある人間の生活、家庭、そういうものについて大変造詣の深い方だと思っております。したがって、配付されました資料をよく読ませていただきました。大変感動いたしましたが、パラサイトシングル、派遣切り、雇い止め、老後格差、希望格差、フリーター、ニート、ワーキングプア、いろいろな言葉が出てまいりまして、そしてこれが今の私どもの生活の実態であるということは分かります。そのときに思いますことは、その非常に重要な部分雇用の問題が横たわっていて、その雇用の問題というのは多分にこの現在のデフレ状況経済の中にあるんではないかと、そういうふうに思います。  そこでお尋ねしたいことは、今ずっと言いましたようなこの社会的現象、これが日本人という国民に取っ付いた悪霊であって、恐らく二十一世紀ずっと続くものなのか、我々がある努力をすることによってデフレを克服することができれば、その非常に多くの部分がなくなっていってまた健全な社会になるというふうに考えてよいのか、そこのところの御所見をお聞かせいただきたいと思います。
  124. 山田昌弘

    公述人(山田昌弘君) 済みません、慣れておりませんで、どうも申し訳ございません。  デフレということ自体、私は経済学者ではありませんので、それについては、なぜ起こったかということに関しては私は分からないんですが、やはり消費をしなくなっているというところが一つの、経済学者ではないんですが、原因だと思っております。やはりその最大の問題は、特に若い人たちが将来に不安を持っていて、かつ収入を抑えられているというところにあるんだと思います。  今若い人たちは非常に守りに入っております。とにかく大きな企業に就職しなければいけない。日航問題が起きたときは、大きな企業に就職すれば政府が助けてくれるんでしょう、だから安心というふうに答えた若者も大きいわけです。つまり、リスクを取らないで萎縮する若者がどんどん増えているということが社会を活発ではなくならせ、そしてそれがまたデフレをもたらすというような悪いサイクルに入っているのではないかと非常に懸念いたします。  そのためにも、まず雇用制度を改革して、新卒一括採用でそこから漏れたらもうおしまいだというような意識、いったんフリーターになってしまったらもう二度とはい上がれないんだというような意識というものを変えるために、若い人にとって、とにかく安定した雇用に就ければいいというのではなくて、私としましては、リスクを取っていろんなことに挑戦して失敗しても更にいろんな仕事や職にチャレンジできるようなシステムというのをつくり出す、そのためには社会保障が下支えしていかなくてはいけないというふうに考えております。  ですから、二十一世紀続く、私は続いてほしくないというふうに強く思っておりますが、今の時点で、とにかく若者がリスクを取って様々な仕事にチャレンジできるような仕組みというものをつくらなければいけないと思っております。  以上でございます。
  125. 木村仁

    ○木村仁君 デフレとこの全国的な傾向との関係はそれとして、今リスクを取って、それに失敗した場合のセーフティーネットと申しますか社会保障をきちっとつくらなければいけないと。この御指摘は、恐らくデフレとかそういうものとは一切関係ない、日本の社会が今後目指さなければいけない命題だと私も御理解をいたします。  日本の今の状態でいえば、勝ち組と負け組とそして中間の先が見えない不安層というものがあるというふうな御指摘のようでございます。そして、その中間層のところに今の子ども手当が入る、そういう施策がいいのだという御指摘でございました。民主党は、それプラス例えば給付金付き税額控除とか所得控除とか、そういうものも考えてこの部分を埋めなければいけないという方針のようで、そのこと自体に私どもは反対ではありません。  しかし、この子ども手当には、三つばかり考えた方がいいというところがあります。第一は、金額が腰だめであります。民主党の政策は多分に腰だめ的なものが多く、例えば二五%のCO2カットの問題もほとんど腰だめであります。それから、アフガニスタンに五十億ドル支援するという五十億ドルも全く積算のない腰だめであります。二万六千円もそうではないかと深く疑っております。そして最後に、総額が余りにも巨大であって、恐らく日本の現在の財政状況には耐え得ないであろうということ、そしてその財源を事業仕分等によって生み出すことは恐らく不可能であろうと、私はそう認識いたしております。  したがって、政策そのものに反対するわけではありませんが、そういう非常に危惧を持っております。その点について、公述人は恐らく反論をなさると思いますけれども、お願いをいたします。
  126. 山田昌弘

    公述人(山田昌弘君) 特に反論することはないのですが、金額に関しましては、先ほど私が図表で示したとおり、一九九四年に比べて二〇〇四年が子育て家庭の年収が平均四、五十万減っていますので、子供二人だとちょうど一九九四年の水準に戻るという意味では、私としてはまあ妥当な金額ではないかと思っております。つまり、その間日本経済はほとんど成長しなかった中で、子育て世帯だけが年収が、子育て世帯だけではないですけれども、が減っているということだと思います。  財源に関しましては、私は政治家ではないので述べさせていただきますと、私は消費税論者でございまして、ヨーロッパでは一五%、二〇%の消費税は当たり前でございまして、別にそれで文句を言っている人は、まあ多少はいるかもしれませんけれども、余りいません。  それはなぜかというと、私が昨年オランダを調査しましたところ、オランダの人は政府を信頼していますというふうに、私がインタビューをしましたら、私は政府を信頼しています、つまり、高い消費税が取られてもそのお金はちゃんと必要なところに使われるはずだというふうに、信頼しているというふうに答えたのは非常に印象的です。政府国民の間の信頼関係さえつくりさえすれば、消費税をたくさん払ってもよいという国民が増えると私は信じております。
  127. 木村仁

    ○木村仁君 大体理解をいたしました。納得したかどうかは別として、理解をいたしました。  そして、特に消費税を上げなければ駄目であろうというお考えのことについては私も大賛成でありまして、そのことを避けて通ろうとする民主党を私どもは批判しているわけでございます。よろしくお願いをいたします。  まあそれはそれとして、先ほど公述人のお言葉の中に、新卒一括採用を克服したいというお言葉がありました。お書きになった論文の中にもそれが鮮明に出されております。私も、なるほど、それはおっしゃられるとおりだと思いますが、じゃ、どういうふうにしてその一括採用というものを打破できるかということになるとその方法がなかなか私には考え付かないわけでありますが、何かアイデアがございましたらお教えをいただきたいと思います。
  128. 山田昌弘

    公述人(山田昌弘君) 調べていただきまして、どうもありがとうございます。  私も日経新聞等に書かせていただきましたが、経済界の方々ともお話をする機会があるんですけれども、個別的にはやはりこれは矛盾しているんだろうと各企業の経営者の方もおっしゃるんですけれども、自分のところだけやめると必ず自分のところだけが損をしてしまうだろうということもおっしゃるわけです。  私は、ここは制度を変えるために規制をして、例えば二十五歳まで大企業、大規模企業や国家公務員の幹部職は正社員採用を禁止する、それまでは中小企業に行くなり非正規で働くなりして自分の適職を見付ける。つまり、二十五から三十ぐらいに達するまでに自分の適職を見付けて能力が発揮できるところに収まっていくというように、大胆に政府で規制を掛けたらいかがかというふうに提案はしておるのですが、さすがに私的なことを規制するのかと逆に言われてしまいますので、なかなか広がらないことでございます。
  129. 木村仁

    ○木村仁君 二十五歳まではいろいろ模索をしろということであれば、あるいは大変いいことで、その間に自衛隊に体験入隊をしろとかあるいは消防学校に行って訓練を受けろとか、いろいろそういう、いわゆる若い人々の精神面の教育もその中でやる、それから職業訓練もある時期やると、そういうことになれば大変いいのかなという気がいたします。これは単なる感想でございます。  それから、もう一つお尋ねしておきたいことは、婚活の問題でございますが、やはり何としても早く結婚してもらわなければいけないというのは少子化問題でありまして、子供がたくさんできれば日本経済もまた元気づいていくだろうということであります。  先ほど、つながりとおっしゃいましたか、コミュニティー的な紐帯というものを大事にしたいという話でありました。昔は巡航船夫人というのがいまして、もう若い人は知りませんけれども、仲を取り持つ巡航船といって、大体そういう方がいて結婚を世話をしておりました。私の家内なんかも非常にお世話好きでありますが、絶対成功しないですね、最近は。それから、以前は市町村長がパーティーを開いて、そして一生懸命引き合わせをしたけれども、その日だけは楽しくやるけれども、絶対裏が返らないというか、二度と会おうとしないということで、みんな嫌になって投げ出してしまいました。で、職業的な結婚相談所等ができているわけでありますが。  何かこの地域社会の中に、そういう人々のつながりの中で結婚をお世話するというあれがないものかなと。私どもは、大きな船に一緒に乗ると非常に仲よくなりますので、そういうことを全国的にやってみてはどうかなんて考えたこともございますが、何かお知恵がございましたらお教えいただきたいと思います。
  130. 山田昌弘

    公述人(山田昌弘君) 済みません、婚活まで引用していただき、どうもありがとうございます。  御存じない方もいらっしゃると思いますが、未婚者の九割は結婚したがっているけれども、なかなか結婚できないというのが現状でございます。私も地方等に呼ばれまして、そういう活動に対するサポートというところに取り組んでいるところもあります。  そこで一つネックになるのは、やはり男性が主に生活を支える収入を得ていなければいけないというのがやはり大きなネックになっておりまして、女性が期待する年収と未婚男性が稼いでいる年収が大きなギャップがある、ここが一番大きい点だと思います。  もちろん男性の、男性だけの収入だけでもしようがないんですが、男性の収入を安定させるというのもあるんですけれども、やはり共働きをしやすい、別に専業主婦がいけないと言っているわけではなくて、無理な人が多くなっているわけですので、共働きをできる環境を整えながら、そういう地方でもって様々なイベントをしていく、つながりをつくっていく。それも、ただ単に結婚を目的とするということだけではなくて、加藤さんのような農業をやっていらっしゃる方もいらっしゃいまして、そこで一緒に農作業をしながら婚活、婚活というか結婚活動をするというのもあります。是非そういうところにもサポートをしていただければと思っております。  以上でございます。
  131. 木村仁

    ○木村仁君 どうも、ぎらぎらして結婚、結婚といって、勝負、勝負みたいな会わせ方をしても絶対に駄目だということのようでございます。  それでは、加藤公述人に入らせていただきます。  昭和四十年代に都市計画法ができて、今の制度ができたときに問題が生じていると、こういう御指摘でございます。私もそのことには賛成です。あの時代に都市計画法が改正され、そして農業振興法が、農振法ができ、それから自然環境保全の法律ができて、日本の国土は完全に三分割されたわけです。そして、当時の建設省が都市計画地域を、農水省が農業振興地域を、そして環境庁、今の環境省が自然区域を受け持って、そして、その三者間の共通の政策なんてほとんどなくなってしまったと。私は、これは日本にとって極めて不幸なことだったと思っております。  五十年ぐらいのときに、五十年ですか、市街化農地の租税の特例ができました。これは、建設省的な考え方というよりは、どうしても農地で農業をまじめにやっている方々の税金、税負担が重いということから発想されてでき上がった制度でありまして、したがって、市街化地域内の農地というのは、緑地保全地域として保全されているところは、これは三大都市圏の特定市でありますけれども、一万五千ヘクタールぐらいでほとんど変わっていませんですね。それに対して、それ以外の農地は三万ヘクタールから一万五千ヘクタールに半分になっていると。  そして、今国土交通省の方々がどういうふうな認識を持っているかというと、やっぱり大都市の中の、特定市の中にも農地は必要だという観念にだんだんなってきているように私は思うんです。そして、実は今、ちょっと資料がすぐ出てまいりませんが、社会資本審議会ですか、整備の審議会、これで都市計画法の改正を検討しておりますけれども、その中では今、加藤公述人がおっしゃられたような流れができつつあるということです。  ところが、今民主党政権になって、社会資本と書いてあるからいけないんですかね、その研究会が止まっているようであります。そこのところはどういうふうにお考えですか。
  132. 加藤篤司

    公述人加藤篤司君) 先生のおっしゃるとおり、大変いい流れになってきたなと喜んでいたんですけれども、昨年の選挙からぴたっと止まっておりまして、今後どういうような話合いが持たれるのかなと非常に期待しております。  一言付け加えさせていただけるならば、省庁間で様々な事業をしておりまして、私も何だこれはと思ったんですけれども、ここのところで国交省は緑景観三法改正ということで、屋上、壁面、立体緑化の制度化、二分の一の補助事業などで、自治体も助成事業を実施しておりまして、これまで二百六十六ヘクタールの緑地造成、それから中には壁面緑化などの造成もしておりました。  二百六十六ヘクタールの緑地が都市部にできたと言われておりますけれども、その間農地どれだけ減ったのかなと計算してみましたら、一万三千八百ヘクタール減ってしまったと。これは、二百六十六ヘクタール国交省で一生懸命やっていただいている間に、逆に農地は一万三千八百ヘクタール減ってしまったと。何とか連携を取って何が一番効果的なのか考えていただけないかなと私は常々思っております。
  133. 木村仁

    ○木村仁君 恐らく新しい都市計画法の中では、都市農地というのもしっかり都市計画の中に位置付けをして、そしてそれは永久に守っていくという、それだけの選定も必要かもしれませんけれども、そういう制度をつくり上げなければいけないと。  そして今、営農の方が亡くなられた場合、あるいは三十年たった場合には、土地を市町村が買い上げるシステムがあります。買い上げて、あとは農地で持つわけにはいかないというのが今の制度でありますから、公園や何かにしてしまうと。それは、公述人がおっしゃられたように利用価値の少ない土地と言ってはいけませんけれども、そうなってしまうんだから、やはりそこのところも制度化をして、市町村が農地を持つことができるようにして、その農地を安くなっている固定資産税相当の借地として新しい営農者に貸し付けるというような制度はどうだろうかなと。農地というのは、むしろ都市計画の中で都市の市民が一緒に経営をすると、ちょうど農村でそうであるようにですね、というふうな姿に持っていくべきではないかと私は思っておりますけれども、そういう考え方でよろしいでしょうか。
  134. 加藤篤司

    公述人加藤篤司君) まさにそのとおりでありまして、今一番自治体が悩んでいるのは、生産緑地の買取り申請が出たときに買うお金がないということで、どんどんどんどん宅地化されております。  本当に困ったところで、また例えば、ここのところで外環道の計画がありまして、外環道の中の農地はやはり物納で取っていただくんですけれども、どうせ道路にするんですから道路にするまでに貸しておいてくれよと、そういうふうにお願いもしたんですけれども、財務省の方は、それはお金に換えて国庫に入れなければいけないからと、わざわざ道路計画区域内のその物納された農地を売ってしまって建て売りが建ってしまった。今度道路にするときは更に高いお金でその住宅を買収しなきゃならない。そういうところで、もうちょっと全体的に見て一番いい方法というのは何とかうまく考えられないものなんでしょうかと常々思っておりますけれども、今先生がお話しされたようなそういう制度ができたならば、いろいろな使い方もできますし、実際に今体験農園や市民農園などの募集というのは三倍、四倍、下手すれば場所によっては九倍を超えるようなところもあります。  そういうところであぶれた人は、僕もやりたいから援農ボランティアでちょっとやらせてもらえないかと、そういう人もどんどん増えております。ニーズの多様さとか、そういうところでこれからいろんなことができるんではないかと思っております。  この市街化区域の中に農地が散らばっているというのは日本独自のものでありまして、日本は城郭都市じゃありませんから混在しております。私はこの状態が一番いいと思っております。この状態を肯定しながら、なおかつ日本の都市農業の特徴を出していくような政策を取っていただけたら私は最高にうれしいです。
  135. 木村仁

    ○木村仁君 そういう考え方を実現していくためには、やはり各省庁の壁というのをきれいに取り払って都市として考えていかなければいけないと。そして、大都市の中には農業のDNAを持った人がたくさんいるんですよね。だから、そういう方々の力も借りて、そして農地をしっかり守っていくようにすべきであると。そういう制度を今後とも我々も努力しなければいけないと考えておりますということを申し上げまして、あと一分ありますから、何か御感想がありましたらお聞きして終わりたいと思います。
  136. 簗瀬進

    委員長簗瀬進君) 加藤公述人でよろしいでしょうか。
  137. 木村仁

    ○木村仁君 はい。
  138. 加藤篤司

    公述人加藤篤司君) 生まれて初めてこういう場所に出たんですけれども、温かいお言葉を聞いて大変感動いたしました。私も一生懸命今後農業を頑張ってまいりますので、是非、先生方、都市農業そして日本の農業を応援していただきたいと思っております。どうぞよろしくお願いします。  ありがとうございました。
  139. 澤雄二

    ○澤雄二君 公明党の澤雄二でございます。今日は、お二人の公述人、お忙しい中貴重な意見を賜りまして、本当にありがとうございます。感謝を申し上げます。  私は、二年から三年前にかけまして農水政務官をさせていただきました。都市農業の改革については随分取り組んできたつもりでございます。  加藤公述人にお伺いしますけれども、先ほど、公述の中にもありましたけれども、都市農家を守っている唯一の制度が相続税納税猶予だと思っています。お話の中にもありましたが、しかし、この相続税納税猶予制度って終生営農が義務付けられていますよね。ですから、今、都市農家の方も大変高齢化をしている、足腰が弱くなってもう畑には行けないと。行けないけど、行って営農しないと納税猶予を打ち切られるよと。しかも、相続したときにさかのぼって、毎年、去年までは年利六・六%というとんでもない利子税が付いていましたから、働けなくなってそこで打ち切られると、もう何十年間にわたって六・六%金利払うと、もう家屋敷全部売っても何にも残らない、だからはってでも農地に行かなきゃいけないと、こういう状況に置かれていました。  おととしの税制調査会のときに財務省と随分議論をしまして、いつまでこんな過酷な制度を残すんだというので、結局、身体障害等やむを得ない事情があるときには農地を貸し付けても納税猶予は継続しますよということにしてくれて、去年からそれ実行されていると思うんですが、それは何か随分皆さん助かっているんでしょうか、どうなっていますか。実態について聞かせていただけますか。
  140. 加藤篤司

    公述人加藤篤司君) 確かにこれで随分この制度に乗る不安が解消されると、納税猶予制度を受ける農地が増えると大変喜びました。何といっても、相続税の納税猶予制度に乗らなければ農地は残りませんから。  しかし、ふたを開けてみますと、基準が厳し過ぎて、先ほども述べましたように、どうにもなりません。基準は、精神障害等一級、身体障害等一級及び二級、そして先ほど述べましたように要介護基準では五です。中小企業の事業承継税制との釣合いを取ってこの基準になったと言われておりますけれども、失礼ですけれども、農業はデスクワークではございません。また、基準を一や二に下げると、農業相続人であるべき配偶者や子供が万が一その基準にあるような場合、元々農業ができないと判断されるべき人が農業相続人にはなれるわけがないと、そういう解釈になりますよと。そうなれば、農業をするということで相続税、支払うべき相続税を猶予するという制度なんですから、乗ることはできませんよとの説明がありました。  確かにそのとおりかもしれませんが、ちょっと違うんではないかと憤慨いたしました。相続税は確かに人に掛かってくるというのは百も承知しておりますけれども、農業は一人じゃできません。今、家族労働で一生懸命家族で支え合わなければなかなかできません。たとえ家族で頑張ったとしても、農業相続人はもちろんのこと、家族全体でも力の弱ることが必ずあると思っております。そのときに手助けが欲しいという思いで賃貸借をお願いいたしました。何も賃料を取って貸してもうけようなんていうレベルの話ではございません。ましてや、農業ですから、貸したとしてもそんなに取れるわけがございません。  営農ができなくなって、そうすれば義務違反となって利子税を含め相続税を支払うはめになります。地価の高いときに相続していたとしたら一体どうなるのかというのが物すごい問題になってきます。人を雇って畑を維持すればいいんですけれども、そんなお金はなかなか用意できません。それに、農業でそこまでなかなか今の状況では稼げません。医療費はかさむし、人件費は掛かる。その赤字に耐え切れず、思い切って農業をやめようとすれば、利子税と相続税の追い打ちです。畑が多ければ多いほど、長い年月まじめに農業をすればするほど破産の危機が高まるという、そういうことです。これが終生営農の実態なんです。  よくこんな制度をつくったなとあきれるばかりなんですけれども、この制度に乗れなければ残せないからこんな制度でも我々は乗るしかないんで、何とか頑張って乗ろうということで乗っているんです。本当に困ったときに破産ではなくお互いを助け合える制度をお願いしているだけなんですけれども、そんないけないことなんでしょうかと、そういうのが我々都市農業者の思いであります。  また、最近、別の問題があることも分かりました。なぜかというと、この介護度五の基準を満たして相続税納税猶予の適用された農地を貸すことができたとしても、当然介護度五ですから、更に相続が起こって相続税支払のためにその農地をやむなく売却する場合がございます。そのときに、そこは当然生産緑地ですから生産緑地の買取り申請を自治体に出すんですけれども、農地を貸している場合、生産緑地でいう、その大事な要件なんですけれども、主たる従事者というのがありまして、そうではないというんですね。なくなってしまいますので、買取り申請すらできないということを言われました。結局、これでは自宅を売るしかなくなり、だれも利用できません。自宅だって売れればいいんですけれども、抵当権が付いていたり、それじゃ足りなかったり、そんな簡単なものじゃないというのが現実問題です。やっと税制で許されても、今度は法律によって阻まれている状況ということになっております。  都市農業は複雑な制度の上に成り立っているんだなというのを本当に痛感いたしました。是非実効性のある制度をつくっていただければと思っておりますので、よろしくお願いいたします。
  141. 澤雄二

    ○澤雄二君 まだまだ政治がやらなきゃいけないことはたくさんあるということが改めて分かりました。  去年、農地法が改正をされまして、一般の農地については賃貸借が認められるようになりました。つまり、利用と所有を分けたわけでございますけれども、今話があったように、生産緑地については賃貸借は身体障害等やむを得ない場合しか貸すことができません。加藤さんたちもかねてから賃貸借を認めてほしいと、今日もおっしゃっていました。我々も賃貸借を認めるべきだと、特別な例ではなくて通常認めるべきだというふうに思っていますが、賃貸借をすることができればどういうメリットが都市農家の皆さんにあるのかということを教えていただけますか。
  142. 加藤篤司

    公述人加藤篤司君) いろいろな可能性がありますけれども、まずは法人化が可能になって先進的な経営をする人が確実に増えると思います。  今法人化したいと思っている人は多いんですけれども、今度は個人から法人に農地を移すわけですから、それこそ莫大な譲渡税が発生することもあってなかなか実現できません。相続も発生していないのに、何も法人をつくることで譲渡税を発生することはないわけですから。当然そうなれば雇用もしやすくなるでしょうし、法人というのは様々な特典があります。これは私の願いでもあります。自分の能力を発揮して行けるところまで行ってみたいと思うのは、仕事に打ち込む人間として当然なことだと思います。  また、最近うれしい話がありまして、私の地元で中学生が農業が好きだと言うんです。今度、農業が好きだから、どうしても農業高校に行きたいから農業高校を受けるんだと、受かったら一緒にやらせてくれないかと言うんです。我々の活動のせいかどうか知りませんけれども、こんな子が出てきたんだと本当に涙が出るほどうれしくてうれしくて、何とか力になってやろうと思っていますし、もしその子が望むんなら、それこそパートナーとして一緒にこれから農業をやっていってもいいなと、そのぐらい私は思っております。  また、先ほども申しましたように、健康を害したり、親の介護であったり、子供の養育で手が足りなくなったり、人生ではいろいろな場面がございます。そのようなとき、全部でなくても、たとえ三分の一でも一時的にやる気のある人に貸すことができたらとても助かります。  何といっても、納税猶予を受けると、三年に一回税務署に営農計画やらその報告を出さなければなりません。これは別に税務署から通知が来るわけではありませんで、それが出すのを忘れてしまうとそこで納税猶予はアウト、つまり停止になりまして相続税を払うことになります。これは大変なプレッシャーでして、何とかそのプレッシャーも緩和できればと思っております。  また、もう一つ、例えばおやじが亡くなったとして、息子が勤めに出ていてそれなりに責任のある仕事をしていた場合、仕事を辞めて農業をやるか、農地を売却してしまうか、二者択一を迫られるわけです。もちろん生活面での選択ということもあり得るとは思いますけれども、好きなやりがいのある仕事を捨てるか、それとも代々培ってきた農家としての歴史を捨てるか、本当につらい選択になってしまいます。貸し借りができるようになれば、仕事を辞めずに農地を農地として保全していくことが可能です。市民農園や体験農園に貸すこともできます。土に触れたい、作物を育てたいという住民の要求は非常に高くなってきたと今肌で感じております。  農地が残れば、食料の生産だけでなく災害時の避難場所にもなる、緑の少ない都会での大事な緑地資源にもなります。食育などの教育の場所、そして様々な役割を担うことができて地域社会に貢献することができます。それには、まず農地を残す。農地を残すには、まず農家に農地を残す気にさせるということが一番大事であります。  この賃貸借を可能にすることによって、農家が何とか農地を残そうという思いが、そういうことが大きく前進すると私は確信しております。
  143. 澤雄二

    ○澤雄二君 一般の農地、農家につきましては、一兆二千億円を超える国からのいろんな様々な補助、助成があると思います。  公明党では、都市農業については都市農業基本法、都市農業振興基本法というような法律を制定して、都市農地をきちっと法律の中で定めて位置付けをして、それに基づいて都市農地、都市農家についてもそういう補助や助成の制度を整備していくべきだというふうに考えているわけですけれども、今、国からの補助、助成というのは具体的にどういうものがあるんでしょうか。
  144. 加藤篤司

    公述人加藤篤司君) まずは生きるか死ぬか、残るか残らないか、そういう都市農業にとって農業振興のために国の予算をお願いする余裕はございませんでした。都市農業にとって農政運動とは、地方と違って生き残りをするための税制をお願いする運動でした。  何といっても、私が農業をしている市街化区域では、経過的に農業をすることが認められているにすぎません。開発されることを前提にした農地には、国からの補助金はほとんどございませんでした。短期的な施策ということで、直売所の設置や市民農園の開設などの補助金がある程度です。今や都市農業は、日本の中でも補助金をもらっていないという珍しいジャンルの農業形態になったと思っております。  確かに、地方にいろんな意味で視察に行きます。勉強に行きます。そのときに見るのは、巨大な基盤整備事業、そして巨大なガラス温室、それもフル自動です。もう何とうらやましいなと思ったこともございません。今日のように、春先、かあっと天気が良くなって温度が上がりますと、我が家では花を作っていますので一斉に咲いてしまいますので、ハウスを開けたり閉めたりする人間が必要になってきます。それが全自動でできればどれだけいいだろうと、次の仕事ができるだろうと思いますけれども、なかなか自己資金では厳しいです。  設備投資するには、本当に、今言った自己資金か農協からの融資しかありません。幸い、私の地元の農協は、無担保、低利で農業支援資金を貸してくれる制度をつくってくれました。それでも千五百万円までです。私も目いっぱい借りまして、ある程度返したらまたその枠で借りていくのを繰り返しております。今にも崩れそうなと言ったら失礼なんですけれども、そんな畜舎を改修しながら東京で牛や豚を飼っている仲間もおります。  のどから手が出るほど補助金は欲しいです。私の経験からいっても、次のステップに踏み出そうとすれば必ず新たな設備投資が必要となってきます。補助金もそうですが、安心して、そして希望を持って農業ができる、また次世代につなげることができる仕組みづくりが何よりの援助だと思っております。  やはり都市農業を振興するためのよりどころとなる法律や政策がないために、国の補助金どころか仕組みもできないのが実情だと痛感しております。是非とも、よりどころとなる都市農業振興法など、設置をよろしくお願い申し上げます。
  145. 澤雄二

    ○澤雄二君 これで質問を終わりますが、都市農業がどれだけ危機的状況にあるかということを今日、各会派の議員の先生すべていらっしゃいますから知っていただいたというふうに思います。党派を超えて都市農業を守る、日本の食料供給を守るという立場でこれからも頑張らせていただきたいというふうに思っています。  山田公述人には、済みません、子ども手当についてお聞きする予定でございましたが、時間がなくなってしまいまして申し訳ありません。  以上で終わります。
  146. 大門実紀史

    大門実紀史君 日本共産党の大門でございます。  まず、加藤さんにお聞きいたします。  実は、この間、私も都市農業問題、特に税制問題調べておりまして、来週の委員会で税法、財政金融委員会なものですからちょうど質問をしようと思ったときによくおいでいただいたなと思っているところでございます。幾つかもう質問されて、ダブらない程度にお聞きしたいことがございます。  もうとにかく、全体でいえば、この都市農業がなぜここまでひどいことになったのか、なぜここまで放置されてきたのかというのをつくづく思うわけでございます。私もこの問題では、この前もJAの埼玉の幹部の方とお話をいたしました。何というか、放置されてきたような問題だということでございます。  ちょっと際どい話でございますけど、JAというのは、率直に申し上げて、今まで自民党一辺倒でずっとやってきたところでございますよね。この間は全方位でやるという方向に今変えられたということでございます。それはいいことだと思うんですね。今度の振興法を求められる上で、もうやっぱり超党派でやらなきゃいけないと思うんですけど、しかし、それにしても今までの自民党農政というのは、なぜここまで都市農業を放置してきたのかと、その辺にちょっと一言言いたいことあれば言ってもらいたいと思いますが。
  147. 加藤篤司

    公述人加藤篤司君) びしっと言わせていただきますと、今までの経済状況のたまものだと思っております。なぜかというと、今まで市街化区域の土地は右肩上がりに上昇を続けてまいりました。先ほどひどいと言った相続税の納税猶予制度も、右肩上がりで二十年、三十年たって土地の価格が二倍、三倍になっていれば何とか払えるわけです。そういうところで、今までの政権の方も、周りの住民の反感を買ってはいけないとか公平感を損ねてはいけないということで大変気を遣っていたところで、我々はこういう状態になってしまったと思っております。  よく、地方の仲間からも、終わっちゃったら売ればいいじゃないかと、そう言われますけれども、この終生営農というような制度に乗ってしまった今、そしてデフレで地価が右肩下がりの今、売ってしまったらどうなるのか。破産だという話も、多々、現実に本当にあります。非常に厳しい状況なんで、そういうところも分かっていただきたい。  要するに、先ほども述べましたが、時代は変わったと、取り巻く環境も変わったと、年齢構成も変わったと、その中でどういう日本をつくっていくのか。私たちもこの日本が大好きです。地域が大好きです。これ以上人と人とのつながりがなくなるような地域というのにはしたくない、お国のために何とか頑張っていこうという思いでみんな頑張っておりますので、その状況は理解していただきたいと思います。
  148. 大門実紀史

    大門実紀史君 はい、分かりました。  私は、ただ十数年前に、仮におっしゃるとおりとしても、時代の責任ではない、時代というならば十数年前に考えるべきであったと思います。  その点で、まだ質問されてない点だけしますと、固定資産税なんですけど、具体的な実態をせっかく国会ですからお話しをいただきたいんですけど、もう今の固定資産税だと、何といいますか、農地、そのところから得られる所得よりも固定資産税の方が高いという実態がいろいろ広がっておりますですよね。その辺の実態をちょっと説明してもらえますか。
  149. 加藤篤司

    公述人加藤篤司君) 私の地元の三鷹市では、一反、千平米、三百坪ぐらいですけれども、大体三十万から四十万ぐらい年間掛かってまいります。農業収入は、頑張れば百万円ぐらいまでは上がりますけれども、なかなか全部はそこまでは行っておりません。そういうことで、宅地並み課税になると到底やっていけないという状況になります。
  150. 大門実紀史

    大門実紀史君 もう一つ簡潔に。平地林、屋敷林という言い方されましたけれども、平地林、屋敷林、ここは猶予制度から除外されておりますから、東京近郊ではそこが切り売りになっちゃって、産廃施設ができちゃったりして大変な事態になっていますよね。その平地林とか屋敷林の果たしている役割と、どういうふうにしてもらいたいかという要望を、ちょっと簡潔に。
  151. 加藤篤司

    公述人加藤篤司君) 平地林は、保全樹木とかという制度もあるらしいですけれども、特に宅地並み課税になりまして、うちも三反、約九百坪の平地林を、昭和六十年の祖父の相続のときに切り倒して今畑にしております。これを生産緑地とかに組み入れていただければ、そのまま納税猶予として何とかできる。本当に落ち葉の、広葉樹の堆肥というのは非常に使いやすくて柔らかくていいものでありまして、また、国木田独歩の「武蔵野」にもありますように、武蔵野の風景を残す一番の見どころではないかと思っております。  残念ながら、三鷹市ではもう本当のわずかになってしまいましたけれども、でもわずかでもまだ残っているので、何とかそういうところに手当てをしていただきたい。特に、埼玉県やその周辺地域では、トトロの森と言われるぐらいまだ残っております。そういう大事なところは、もう切ったら戻らない、そうではないんですけれども、前は切ってまきにして、それが吹いてきて、それが株立ちになってまた雑木林になってきたという、そういう人間の生活としての雑木林が関東の平地林、都市部の平地林なんで、そういう文化も含めた上で考えていただければ大変うれしいです。  以上です。
  152. 大門実紀史

    大門実紀史君 山田先生にはもう、ちょっと質問する時間ないんで、先生の本はちゃんと読んでおりますので、引き続き頑張ってもらいたいと思います。  終わります。
  153. 簗瀬進

    委員長簗瀬進君) 以上で公述人に対する質疑は終了いたしました。  この際、公述人方々に一言御礼を申し上げます。  本日は、有益な御意見をお述べいただきまして、誠にありがとうございました。委員会を代表いたしまして厚く御礼申し上げます。ありがとうございました。(拍手)  明日は午後一時から委員会を開会することとし、これをもって公聴会を散会いたします。    午後四時五十五分散会