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内閣総理大臣(
鳩山由紀夫君)
民主党の輿石
参議院会長の激励を込めた大所高所からの様々な御
質問に対してお答えをさせていただきます。
まず、文化立国、そして人間性のある科学、さらには人格を養う
教育についての
お尋ねがございました。
私が申し上げた文化というのは、狭く芸術その他の文化
活動だけを指すのではありません。むしろ、
国民の生活あるいは行動様式や経済の
在り方、さらには
価値観を含む概念として申し上げたところでございます。
日本は、御案内のとおり、古来より海外から多様な文化や技術を吸収をして、そして
日本独自の文化と融合させて豊かな文化をはぐくんでまいりました歴史がございます。今、食料や環境、エネルギーの危機、さらには世界でも類のない少子高齢化に
日本は直面をしています。こういうときに、この危機をむしろばねに、世界に誇れる新しい
時代の生活行動様式、さらには企業や労働の
在り方というものを提示をして、多くの国の方々から
日本を訪ねたいあるいは暮らしたいなと、そのように思われるような
日本、また国際社会から信頼をされて、
国民が
日本に生まれたことに誇りを感ずるような国をつくること、それが私が申し上げる文化立国でございます。
そのような新しい
時代を切り開いていくときに基本となるのは、まさに人を育てる
教育でございまして、人間の
可能性を創造する科学だと、そのように思っております。
人間性ある科学というのは、人間の英知を結集をして、食料、環境、エネルギー、こういった人類の生存にかかわる深刻な問題の
解決や、あるいは人間のための経済に大きく貢献をする科学を意味するのでございます。
また、人格を養う
教育とは何かと申し上げれば、一人一人が
地域という共同体、
日本という
国家、地球という生命体の一員としてより大きなものに貢献する、そんな人格を養う
教育でございまして、こういうものをベースにしながら、
政府として
運営をしてまいりたいと
考えております。
景気、
雇用、そして、医療・介護
対策についての御
質問がございました。
まさに輿石会長がお話しされている、
子供を元気に、
地方を元気に、地球を元気に、この三つの元気を取り戻すために、
景気、
雇用、あるいは医療・介護、こういった
対策が必要だというのはまさに的を射た御指摘でございまして、まさに
政府としても同じ問題意識から、昨年の十二月に、
雇用、
景気、あるいは環境といったものを主な柱として、さらには医療など生活の安心確保などにも強力に取り組むための緊急経済
対策を取りまとめたところでございまして、これから迅速に
執行してまいりたいと思っております。また、昨年の十二月に
成長戦略を新しく取りまとめたところでございまして、その基本
方針にのっとりまして具体的な目標を定めたところでございます。
新
成長戦略と旧
政権下の
成長戦略との違いについての
お尋ねがございました。
一言で申し上げれば、見る視点が違うということでございます。今まで人間を歯車のように
考えていたと、経済のための人間だと、そういう発想ではなくて、これからはまさに人間のための経済だと。もっと別の言い方をすると、供給サイドに傾いていた、そういった
成長戦略ではない、これからはむしろ需要というところに視点を合わせた
成長戦略を
考えていきたいというところでございます。
もう一つ申し上げれば、なぜそのような旧
政権の
成長戦略がうまくいかなかったか、それは縦割り
行政の中で埋没してしまったということでございまして、私
どもとすれば、強いリーダーシップ、決意の下で縦割り
行政を排除していくと、そして
政治主導で行ってまいります。
内閣一丸となって取り組む所存でありますので、どうぞ御指導いただければと思います。
日本経済の
現状認識と
国民生活を守るための
総理の決意についての
お尋ねがございました。
これも何度も申し上げておりますが、
景気はやや持ち直してきているというところではございますが、自律性はいまだに乏しいと、そして
失業率などまだ高水準にあるわけでありまして、非常に依然として厳しいという
認識を持たなければならないと思っております。
したがいまして、こういった厳しい
景気・
雇用情勢に対処するために、昨年の十二月、緊急経済
対策を取りまとめたわけでございまして、その一日も早い
効果の実現のために、先般成立をいたしました、おかげさまで成立をいたしました第二次の
補正予算をできる限り迅速に実行していくという、これが一番求められているところだと思っております。
また、いのちの
予算と銘打ちました
平成二十二
年度予算、これ今御審議をいただいているところでございますが、この
予算案の成立及び着実な
執行と、あるいは
成長戦略の推進によって
国民の
皆さんのお暮らしを守る、
日本経済を確かな回復軌道に乗せる、これが非常に重要だと思っておりまして、このことによって持続的かつ安定した
経済成長を目指してまいりたいと思っております。
日本型の企業や資本主義の
在り方についての高い見地からの御指摘がございました。
私が提唱しておりますのは、いわゆる行き過ぎた
市場主義、金
融資本主義みたいなものも含まれているわけでありますから、そういったものから人間のための経済への大きな方向転換、これを何としても行わなければならない、そのように
考えております。企業は、株式のみならず、従業員あるいは消費者、さらには
地域社会といった
関係者の密接な協力があってこそ初めてこの持続的な
活動が可能となると、私はそういう社会的存在が企業だと、これが
日本の企業の今日までの
在り方ではなかったかと、そのように思っております。
すなわち、人や
地域社会というものをとことん大切にしてきたのが
日本型経営の良さであったと思います。それがやや様々な思想によって失われつつあるというところを、これを回復させることが大変大事だと思っております。
厳しい国際環境などにも柔軟に対応していかなければなりませんが、多様な
関係者の利益を経営に反映するような
日本型の、今申し上げました企業モデル、そして、そういった企業が広く
地域において貢献をする、働く人々がまさに居場所や出番というものを見出していけるような新しい形の
日本型資本主義、これを提案してまいりたいと思っておりまして、是非その豊富化に向けて御指導願えればと思います。
二十二
年度の
予算に関する御
質問がございました。
この二十二
年度の
予算は、御協力によって
予算の全面的な組替えに取り組んで、
公共事業の
関係費、これが一八・三%減と、一方では社会保障
関係費が九・八%増えました。また、文教及び科学振興費も五・二%増と、いわゆるいのちを守る
予算としてめり張りが付いた
予算案ができたと、そのように
考えております。
また一方では、税収が大変に大幅に落ち込んでいるという厳しい
財政事情の中で、
子ども手当などいわゆる
民主党が
マニフェストなどでうたった関連の
政策には、必要な
財源三兆円、これは
国債の発行によらないで、歳出の削減とあるいは公益法人などの基金の返納など
予算の組替えによって確保ができたと思っておりまして、このような大胆な見直しが皆様方の御協力の下でできた、まさにそれは
国民の
皆さんが選んでいただいた
政権交代のたまものであると、そのように感じているところでございます。
予算編成過程、
政策形成過程における
政治主導とは何かという
お尋ねがございました。
平成二十二
年度の
予算の編成におきましては、
国家戦略室がトップダウンで
予算編成の基本
方針というものを策定いたしました。この
方針に基づいて、各役所も政務三役が
中心となって
政治の
責任において
予算編成を行ってまいりました。その過程において、いわゆる
お尋ねがありました
事業仕分という手法の
導入によりまして、
国民の目線による
予算編成というものができたな、そのように思っておりまして、これはまさに画期的なことではなかったかと思っております。
税制についても、
鳩山政権の下では、かつて
政府と
与党に二元化していた従来の税調というものを一元化をいたしまして、
政治家のみをメンバーとする新しい税制調査会を設置をしたところでございます。
このように、いわゆる
政治主導というものは、
国民の審判を受けた
政治家が
政府の
運営に
名実共に
責任を持つ新たな体制を構築をすることでございまして、その構築のスタートがなされたと、そのように
考えているところでございます。
雇用不安、生活不安への取組についての
お尋ねがございました。
昨年の十月、緊急
雇用対策を策定し、十二月に緊急経済
対策、さらには新
成長戦略というものを、基本
方針を取りまとめたところでございまして、当面は、いわゆる
雇用調整助成金の積極的な活用、あるいは貧困・困窮者の支援の
強化、新卒者の支援の
強化、さらには新たな
雇用の創出といったことなど、可能な
政策を総動員をして緊急対応に取り組んできているところでございます。
したがいまして、先ほ
ども申し上げましたが、先般成立をいたしました第二次の
補正予算の迅速な
執行、そして来
年度予算、この一日も早い成立と着実な実施というものが
雇用のあるいは生活不安というものを取り除く
最大のものだと、そのように思っておりますので、是非審議を十分にしていただきながら
予算の早期の成立をお願い申し上げたいと思います。
民主党の
マニフェストの実現に向けた今後のスケジュールについての
お尋ねでございますが、
マニフェストは、これは御案内のとおり、
政権四年間に達成をする
政策を掲げた、
民主党にとりましてのでありますが、
国民の皆様方との約束でございます。この二十二
年度の
予算におきましては、
子ども手当あるいは高校の無償化、戸別所得補償、さらには高速の無料化など、これは多くのものを盛り込んでまいりました。一部はスタートをさせることができると、そのように
考えております。
二十三
年度以降も、歳出歳入両面にわたってこれは徹底して
予算の見直しを行う必要があると、そのように思っております。必要な
財源を何としても確保しなければならないと思っておりまして、そのためには
国民の皆様方と真摯に向き合いながら
議論をしながら、そして
マニフェストに掲げた
政策を一つ一つ実現をしたい、そのために全力を挙げてまいりたいと思っておりまして、是非とも御協力を願いたいと存じます。
それから、
子ども手当の給食費などへの充当についての
お尋ねがございました。
つい先般、山梨にお邪魔をいたしまして、そこの現地で、給食費を払っていないお父さん、お母さんがおられると、また修学旅行の積立金などの問題があるということを
伺いました。そのことによって結果として
子供さんたちが傷ついておられる現実、これを深刻に私たちは
考えなければならない、そのように思っております。
したがいまして、一番大事なことは、
子供の幸せという観点から、
子供の幸せをどのようにして保障することができるかという観点で
関係大臣とよく協議をしてまいりたいと思っております。既に長妻大臣には、そのようにまずは周知徹底をするなど運用面での取組について検討を指示したところでございます。
それから、将来の社会保障
制度の構築についての基本的な
考え方についての
お尋ねがございました。
新
政権、これは毎度申し上げておりますように、何よりも人のいのちを大切にする、すなわち
国民の暮らしを守る
政策、
政権でなければならないと、そのように思っておりまして、その
政治を実施してまいりたい。その意味では、年金あるいは医療、介護といった分野における生活の安心、将来への安心が現在大変揺らいでおりますので、これを早急に立て直していかなければならない、そのようにも
考えております。
したがいまして、急速な今少子高齢化が進んでいるわけでありますが、年金、医療、介護といった社会保障
制度をより信頼できる持続可能なものにしていかなければなりません。そのためにまず
国民的な
議論を尽くしていくということが大切でありますし、連立
政権で合意をしたもの、あるいは
マニフェストでうたったものもございます。こういったものを実施をしていきながら、
制度の全般に対して大きく見直していくことに対して、
国民の
皆さんとともに大いに
議論をして進めてまいらなければならないと思っております。
地域主権についての
お尋ねがございました。
地域主権の実現は、まさにこの
内閣の一丁目一番地と
考えております。そして、まず行いたいことは、
地方に対する不必要な
義務付け、枠付け、これを一切
廃止をするということでございます。そして、権限を
地方に移転をさせる。さらに、ひも付き補助金の一括交付金などを行って、
地域主権を支える
財源というものを確保することが大事だと思っております。
そのようなことを行っていくために、まず国としては新たに設置をいたしました
地域主権戦略
会議において、こういった措置を実現する法案あるいは大綱の検討を進めていきたいと思っておりますし、国と
地方が対等の立場で協議を行う、今まではややもすると上下
関係になっていた、そうではない、これからはまさに対等の立場で協議を行う、そういった体制を整備をしていくことが必要で、こういったものの法制化も含めて
地域主権改革を率先して進めてまいりたいと思っております。
農林水産
政策についての
お尋ねがございました。
我が国の農業あるいは林業はまさに
地域においての核となる産業でありますし、その営まれる農山漁村は、炭酸ガスの吸収源でもあり、また、バイオマスを利用する新エネルギーの供給源としての機能を果たしているところでございます。
国民全体の安全、安心に大変大事な役割を今日までも果たしてまいりましたし、これからは更に果たしていかせなければならないと思っております。すなわち、こういった農山漁村の豊富に存在する未利用資源というものを積極的に活用した新たな産業、
雇用の創出が期待されているところでございまして、そのために、私
どもといたしまして、戸別所得補償
制度あるいは六次産業化の推進などを提示しているところでございまして、農林水産業をまさに
成長産業だと、新たな
成長産業として大きく育ててまいりたいと思います。
生活者を見据えた
予算と
政策に対する思いと決意についての
お尋ねでございますが、これは私
ども施政方針演説でも申し上げたところであります。私たちの
内閣に課せられた使命は、
国民の
皆さんのお一人お一人のいのちを守り、生活に希望と夢と安心を与えることだと、そのように思っております。そういう観点から、いのちを守る
予算というものに思い切って転換をしたということでございまして、三党連立のこの
内閣は、こういった皆様方の、
国民の
皆さんと一緒に旧態依然たる利権の分配
政治を抜本的に変えていかなきゃならない、そのための大きな
責任を担うという思いでございまして、どうぞ御指導をいただきたいと思っております。
外交に対する基本
姿勢でございますが、これは友愛の精神に基づいてということであります。架け橋としての
日本が国際的な役割を果たしていかなきゃならないということでございまして、国連でのあの
演説な
ども行ったところでありますが、新しい価値や文化を生み出す、そして世界に発信する
日本を目指していきたいと思っております。
当然、
日米同盟というものが基軸であることは変わりないのでありますが、その下に東アジアの共同体という構想を推進していくことも大変重要なことだと思っております。同時に、世界のいのちを守るということで、アフリカの問題、あるいは気候変動問題、さらには核拡散問題などに対しても積極的に努力をしてまいりたいと思っております。
日米関係についての
お尋ねでございます。
日米の安保の改定五十周年という今年でございます。
日米同盟を二十一世紀にふさわしい形で深化をさせていくという所存でございまして、今、両国の
政府で共同作業を行っている途中でございますが、安全保障のみならず、輿石会長からお話ありましたように、
政治あるいは経済、文化、こういった幅広い分野での日米の二国間
関係を
強化をする、そのことがアジア太平洋の
地域の平和などにも大変貢献するということでございまして、さらには気候変動、今申し上げましたような核軍縮・不拡散、こういったグローバルな課題に対しても、年内に
国民の
皆さんにその姿をお示しすることができようかと、そのように思っております。
それから、ハイチへの復興協力についての
お尋ねでございます。
我が国は、これは地震による今回ハイチの
皆さんが大変な被害を受けられたということで、まずは国際緊急援助隊で医療
活動などを支援をいたしました。さらに七千万ドル、これはアメリカに次いでということでありますが、緊急・復興支援を約束をいたしました。PKOの自衛隊、間もなく送ることになります。
ただ、同時に、こういったのみならず、
政府として、いわゆる
国民の多くの
皆さん、NGOの
活動な
ども積極的に支えてまいりたいと思っておりまして、多くの民間企業あるいは団体などがハイチの大地震の被災者を支援するために募金
活動などを積極的に行っておられるわけでございまして、こういった取組を新しい
公共という概念の中でうまく支持をし、支援をすることが大変重要だと、そのように思っております。
最後に、新しい
公共についての
お尋ねがございました。
輿石会長がお話ありましたように、阪神・淡路大震災、十五年前でございましたが、被災者の方々や、あるいは
地元の方だけではなくて、全国からボランティアの
皆さんがリュックサックを背負って駆け付けたのでございまして、海外からも支援が多く寄せられたのも御案内のとおりでございます。まさにハイチでも世界中から多くの支援が寄せられてきているということでございます。
このようにいろいろな災難、災害というものが起きたときにみんなで力を合わせて、人のため、社会のために力を結集させていくということによって新しい
公共という概念を大いにこれから支持していく、支援していくことが
政府にとって重要なことだと、そのように思っております。いわゆる
公共性の空間を、ただ官のみならず
地域やNPOの方々とともに担えるような、そういう社会をつくり上げていきたい、これが新
政権の思いだと御理解を願いたいと思います。
残余の
質問については、
関係大臣から
答弁させます。
ありがとうございました。(
拍手)
〔
国務大臣菅直人君
登壇、
拍手〕