○松岡徹君 非常に抽象的な話なので、そういう答弁しかできないというのは私もよく分かった上でなんですね。
ただ、そういうふうに混乱している
状況、それは国
自身が、例えば人権
行政を進めていくに当たっても、一体人権とは何かという定義もやっぱりしっかりとしていく必要があると思うんですね。私は、
日本国憲法で保障されている人権の定義が
我が国の今のスタイル、それにプラス
我が国が批准した人権条約、国際人権条約の中に定義されているものが私は人権の定義だと思うんですよね。それが差別という
行為によって侵害されていくということが人権侵害のことだと思うんです。
人権侵害を起こしてしまう人たちをどうするのかということだけではなくて、人権侵害を受けたことによってどんな人権が侵害された
状況になっているのか、どんな権利が奪われているのかということをやっぱりしっかり見ていくべきだというふうに思うんですよね。そこにやっぱりしっかりとした法の網を掛けていかなかったら私は絶対駄目だというふうに
思います。人権政策の中身を豊富化していくということは、
一つ一つの個別課題の現状というものをしっかりと把握していただいて、その上で課題、
方向などをやっぱり明らかにしていくということが大事だと
思います。
是非とも、九六年の地対協意見具申が部落問題の
政府にとっての方針だというならば、それから十四年たっているわけですから、今の現状はどうなっているのかという把握をする努力をしていただきたい。そして、この混乱
状況になっている同和問題を解決するための
政府の定義といいますか、部落問題の定義というものを明確にしていくような努力をしていただきたい。
先ほど、
千葉大臣は
政府全体でとおっしゃいましたけれども、だから最初に私は、なぜこの問題の窓口がないんですかと聞いたんですよ。どこに言ったらいいんだ。
政府全体のどこに言ったらいいんですか。やっぱり、それはまずは
法務省だと私は今は
思いますから、
是非とも、
千葉大臣の先ほどの
決意を形にしていただきたいというふうに思っています。そのことを
是非とも
千葉大臣にお願いを申し上げたい、そのために私たちも努力をしていきたいというふうに思っています。
ただ、国際的な場で
日本の
政府代表が非常にちんぷんかんぷんな、あいまいなことを各国の
質問に対して答えているという
状況は直ちに是正すべきだというふうに思っています。したがって、少なくともこの問題についてどう解決をしていくのかという
政府の方針だけはしっかりと打ち立てられるように努力をお願いを申し上げたいと
思います。
時間がなくなってまいりましたので、私は、人権侵害を受けた人たちが、あるいは人権侵害の結果、どんな被害が生まれているのかということをしっかりと見ていく、そこに
視点を置くということが効果的な方策、施策が生まれてくるというふうに
思います。
すべてを批判するつもりはありませんが、人権侵犯処理規程によって処理されてきた人権侵害
事案の
内容について我々は逐一
報告を受けたことはありませんが、先日も
千葉大臣から、昨日、
法務省の人権作文の表彰式の冊子をいただきました。その中でも、あの御巣鷹山に登った経験のある女の子の作文がありました。結婚を間近にした女の人があの犠牲者の一人でございました。その人が実は被差別部落出身だった。それを知っただれか分かりませんが、匿名で、おまえが乗っていたからこの飛行機は落ちたんだと、部落の人間はテロリストだというようなことを、二十五年前の日航ジャンボ機が落ちたときの犠牲者の中に部落の人、出身がいたからあの飛行機は落ちたんだというようなことを聞いて、彼女は非常に残念がって作文に書いていました。
要するに、そういった理不尽なといいますか、そういうようなことはたくさんあるんですよね。あるんですけれども、それによってどういうことが生まれているかということをしっかりと見ていく必要があるんではないかと
思います。
私は、冤罪事件のときに免田栄さんが来られて、年金を受けていないということの相談があって、年金を
是非とも受けたいと。もう八十五歳です。もうここにおられる
先生方、免田事件というのは、もう一九八三年に冤罪で死刑囚から無罪になった人ですけれども、その人が来て、年金受けられない、厚生労働省の窓口に相談に行ったら、年金をくれないと。いや、掛金払ってないから払えない。いやいや、掛金を払おうと思っても刑務所に入っていたんですと。そうしたら、なぜ刑務所に入っているときに掛金の免除
申請をしなかったんだと言われたと。あした死刑になるかもしれない人が三十年後の年金の掛金の免除
申請をするかと。しかし、その後に、一九八三年に免田さんは晴れて無実になったんですね。死刑台から戻ってきたんです。彼はまさにこの犠牲の中に、こういった結果、今なお年金を受けられないで八十五歳で暮らしている。
これを救うのは何ですか。政治しかないんですよ。今の法律の枠内で考えれば、彼に年金を支給することはできないんです。やっぱりそういうことだと私は
思います。被害がどんなところで生まれているかということを、被害の実態が何であるかということをしっかりと見ていただきたいということであります。そのことを申し上げて、時間が来ましたので終わりたいと
思います。
ありがとうございました。