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国務大臣(
赤松広隆君)
食料・
農業・
農村基本計画につきまして御
説明申し上げます。
食料・
農業・
農村基本法第十五条の規定に基づき政府が策定する
食料・
農業・
農村基本計画につきましては、三月三十日に閣議決定を行いました。
以下、その内容につきまして御
説明申し上げます。
今後の世界的な
食料需給の逼迫等にかんがみ、
国民に対する国家の最も基本的な責務として、
食料の安定
供給を将来にわたって確保していかなければなりません。このため、まず、「まえがき」におきまして、
食料・
農業・
農村政策を日本の国家戦略の
一つとして位置
付けるべきこと、また、
農業農村の多面的機能の恩恵は、すべての
国民が広く享受していること、さらに、
農業農村をめぐる厳しい
状況は、個々の
農業者の努力のみでは克服し難いものであることを述べております。
その上で、こうしたお金で買うことができない固有の価値を有する
農業農村を将来の世代に継承すべく、消費者と
国民が豊かな食と環境の恩恵を受け、また、
農業者や食品産業事業者が誇りと希望を持って
生産活動にいそしむことができる
国民全体で
農業・
農村を支える社会の創造を目指すことが必要である旨定めております。
次に、第一の
食料、
農業及び
農村に関する施策についての基本的な方針におきましては、
食料、
農業、
農村の
状況を踏まえ、
政策の実効を期す上でどのような課題があるのかといった点を明らかにするとともに、今後取り組むべき施策の基本的な方針を整理しております。
具体的には、
農業所得の
減少、後継者の不足、耕作放棄地の増大、
農村の
疲弊等、
食料、
農業、
農村をめぐる
状況や、地球環境問題、人々の価値観、ライフスタイルの多様化など国内外を取り巻く新たな潮流を分析し、各々の
状況に応じた
政策の
対応方向を示しております。
以上のような
政策的な
対応方向を踏まえ、
農政を大
転換するに当たり、
農業農村を再生させ、これを我が国全体の繁栄に結び
付けることができるよう、戸別
所得補償
制度の導入、品質、安全、安心といった消費者ニーズにかなった
生産体制への
転換及び六次
産業化による活力ある
農山漁村の再生の三つの
政策を基本に、各般の施策を一体的に推進し、我が国の
食料自給率の
向上を目指していくこととしております。
次に、第二といたしまして、
食料自給率の目標を定めております。
世界人口の増加や地球温暖化等による水資源の不足や砂漠化の進行等により、農産物につきましては需給両面での懸念が生じており、我が国にとって中長期的な
食料の確保に不安を抱かざるを得ない
状況をもたらしております。
このため、
平成三十二年度の総合
食料自給率目標につきましては、
供給熱量ベースで五〇%、
生産額ベースで七〇%まで引き上げることを明記しております。
また、この
食料自給率の
向上に向けて、水田を始めとした
生産資源の最大限の活用や消費者等に国産農産物が選択されるような環境の形成など、
生産、消費両面からの
取組を進める必要がある旨を定めております。
次に、第三といたしまして、
食料、
農業、
農村に関して総合的かつ計画的に講ずべき施策を定めております。
一つ目は、
食料の安定
供給の確保に関する施策であります。
このうち、食の安全と消費者の信頼の確保につきましては、後始末より未然防止の考え方を基本とし、
生産から消費までの各段階におけるGAP、HACCP等の
取組を通じた国産
農林水産物・食品の安全性の
向上はもとより、米穀等以外の飲
食料品に関するトレーサビリティー
制度、加工食品における原料原産地表示の義務
付けの着実な拡大、リスク管理機関を一元化した食品安全庁等につきましても検討することとしております。
また、
国民への
食料の安定
供給に重要な役割を果たしている食品産業の持続的な発展と新たな展開を図るべく、その将来への
対応方向を明らかにする食品産業の将来
方向を
平成二十二年度に策定することとしております。
総合的な
食料安全保障の確立につきましては、不測時のみならず、平素から
食料の
供給面、
需要面、
食料の物理的な入手可能性を考慮するアクセス面等を総合的に考慮しつつ、
食料の安定
供給に関する不安
要因に
対応することが必要である旨を定めております。
二つ目は、
農業の持続的な発展に関する施策であります。
このうち、戸別
所得補償
制度の創設と
生産・
経営関係施策の再整理につきましては、
農業生産のコスト割れを防ぎ、
意欲あるすべての
農業者が将来にわたって
農業を継続し、
経営発展に取り組むことができる環境を整備するとの考え方の下、販売農家を対象に戸別
所得補償
制度を導入することを明記しております。あわせて、作目別に講じられてきた
生産関係施策を再整理し、多様な用途、
需要に
対応した
生産拡大の
取組を後押しする
政策への
転換を図ることとしております。
兼業農家や小規模
経営を含む
意欲ある多様な
農業者による
農業経営の推進につきましては、
現場の主体的
判断を尊重した多様な努力、
取組を支援する施策を展開していくこととしております。
優良農地の確保と有効利用の促進につきましては、
平成二十一年度に
改正された農地法等に盛り込まれた転用規制の厳格化等の
措置を適切に
運用することとしております。また、
農業生産を
目的とする土地利用とそれ以外の土地利用とを一体的かつ総合的に行うことができる計画を策定する
制度の検討を進めることとしております。
農業生産力強化に向けた
農業生産基盤整備につきましては、我が国の
農業生産力を支える重要な役割を担うものであり、施策体系や事業の
仕組み等の抜本的な
見直しを進めることとしております。
三つ目は、
農村の振興に関する施策です。
このうち、
農業農村の六次
産業化につきましては、
農山漁村に由来する
農林水産物、バイオマスや
農山漁村の風景、そこに住む人の経験、知恵に至るあらゆる資源と、食品産業、観光産業、IT産業等の産業とを結び
付け、
地域ビジネスの展開と新たな業態の創出を促すこととしております。
また、都市と
農村の交流につきましては、訪問外国人等の新たな交流
需要の創出を進めるとともに、
農村を教育、医療、介護の場として活用するための施策を推進することとしております。
都市及びその周辺の
地域における
農業の振興につきましては、都市
農業の機能、効果への都市住民の理解を促進しつつ、その持続的な振興を図るため、これまでの都市農地の保全や都市
農業の振興に関する
制度の
見直しを検討することとしております。
集落機能の維持と
地域資源・環境の保全につきましては、人口
減少や高齢化の進行等
農村の厳しい現状を踏まえ、政府と
地域が一体となった
農村コミュニティーの維持再生に取り組むとともに、中山間
地域等直接支払
制度や農地・水・環境保全
向上対策等につきましては、
農業生産活動や多面的機能の維持の観点から、今後の在り方を検討することとしております。
さらに、
農山漁村の再生・活性化に向けた
地域の主体的な
取組を促進し、その効果的な展開を期するため、
関係府省の連携の下、
農山漁村活性化ビジョンを新たに策定することとしております。
四つ目は、
食料、
農業、
農村に横断的に
関係する施策であります。
このうち、
技術・環境
政策等の総合的な推進につきましては、農林
水産分野の変革を実現するための包括的な
技術・環境戦略を
平成二十二年中に策定することとしております。
また、農を支える多様な連携軸の構築につきましては、
農業を取り巻く多様な
分野の
関係者が、我が国
農業農村の価値や意義を共有した上で、相互に協力し合い発展する結び付きの構築を促進することとしております。
五つ目は、団体の再編整備に関する施策であります。
食料、
農業、
農村に関する団体につきましては、その機能や役割が効率的、効果的に発揮できるよう、
経営の健全化やコンプライアンスの確保に向けた自主的な
取組の促進や、必要な場合には
法律に基づく
指導監督を適時適切に行いつつ、効率的な再編整備につき所要の施策を講じることとしております。
最後に、第四といたしまして、
食料、
農業、
農村に関する施策を総合的かつ計画的に推進するために必要な事項を定めております。
この中で、国、地方など
関係者の適切な
役割分担の下、十分に連携しつつ施策を推進していくとともに、
国民の行政に対するニーズの変化等、迅速かつ効果的、効率的に
対応できる体制を整備していくこととしております。また、
政策に関する
国民の声や科学的、客観的な分析を踏まえた
政策決定プロセスを実現するとともに、財政
措置の効率的かつ重点的な
運用につきまして定めております。
農林水産省といたしましては、以上のように、本計画にのっとり、所要の施策を果敢に推進していく所存であります。
委員各位におかれましては、
食料・
農業・
農村政策の推進のため、今後とも一層の御支援、御
指導、御協力を賜りますよう、切にお願い申し上げます。