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参考人(高田創君) みずほ証券の高田でございます。
本日は
財政金融委員会に参加させていただきまして、誠にありがとうございます。
私自身は、今回の場合は市場参加者ということで、私自身も四半世紀ばかり国債の市場に従事してきたということもございますので、そういう
観点からお話をさせていただこうかと思います。
また、今回のこのペーパーでございますけれ
ども、昨年十一月十三日、財政に対する信認の確保に関する
検討会というものがございまして、そちらでも使わせていただいたものを少し発展させていただいたものということでございます。
私も
先ほど申しましたように二十五年近くこの業務に携わっておりますけれ
ども、ちょうど昨今で申しますと非常に国債に関する話題が強くなってきているなと感じております。特に最近、いろんな雑誌それから新聞等でも国債が本当に大丈夫なのかというような
議論が行われているわけでございまして、ただ、私自身もこの仕事をやっておりまして、こうした
状況は約十年近く前もこのような
状況がございました。特にそのころも国債が本当に暴落するのではないかというようなこともございまして、私自身も「国債暴落」という本を書かせていただきながら対応した時期もございましたが、ただ私は、今回の
状況の違いということになってまいりますと、今回は特にグローバルな
状況で
日本だけの
状況ではないという点が大きいのではないかと感じている次第でございます。
今回の私の
資料でございますが、まず一ページ目をちょっと御覧いただければと思います。
こちらに各国の国債の不安
状況を表わすものといたしまして、最近はクレジット・デフォルト・スワップと言われるものがございますけれ
ども、こうしたものが非常に最近ビビッドに変動するようになってきたということでございます。
ここにはPIIGSと、何かこれは最近はピッグスという言葉らしくて、ちょっと前までだれも聞いたことがなかったような言葉でございますけれ
ども、ここにございます、右側のところにあるような国の頭文字を取ったものがPIIGSというふうに言われておりますけれ
ども、ちょっと前まで私も全くこんな言葉は知りませんでしたが、こうした国々の不安というようなものが言われ出してまいりまして、最近はそれに加えて、ここにはございませんが、STUPIDなんという、そういう頭文字までも言われるような
状況にもなってきていると。
特に、今年になってからはギリシャの問題というものが大変話題になっておりまして、今日の新聞を御覧いただきましても非常に多いということでございまして、そうなってまいりますと、次は
日本かと言われるくらいの
状況も各国で言われていることでございまして、私も実は今月ヨーロッパを回ってまいりましたけれ
ども、こうした
日本に対しても不安というような声を述べる外国人投資家も非常に増えてきたなということを感じる次第でございます。
こういう
状況の中で、
日本国債の
状況でございますけれ
ども、二ページ目のところでございますが、これは
日本の国債の金利がどういうことによって成り立っているのかというようなものをちょっと簡単な試算をしたものでございまして、ここでは黒い色になっておりますのをリスクプレミアムと申しましょうか、特に財政に関してこういう不安をという一つのインジケーターとして表したものでございますけれ
ども、これは必ずしも財政というふうに結論付けるわけではございません。
しかしながら、ここに表れております四半期ごとので見てまいりますと、右から四つの棒が出ておりまして、特に右から四番目、昨年の一—三、それからこの二つでございますけれ
ども、昨年の七—九、十—十二と、よりこういうようなものが上に伸びていると。こうしたものは、やはり財政に関する不安というものを市場がだんだんと意識したというふうに
考えることもできるのではないかと思います。
次の三ページ目のところでございますが、こうした要因は、
日本の国債の金利自体は現在のところ一・三%台ということで、
数字づらから見ますと非常に安定しているように見えるわけでございます。ただ、この三ページ目のところでございますけれ
ども、非常に日米の金利が連動しているということを
考えてまいりますと、ここにもございますように、昨年の三月から四月、また昨年の十月以降十一月にかけてアメリカの動きとは別に
日本の金利が急に上がり出したといったこと、この辺は、
先ほど前のページと同様に、やはり財政に関する動向を市場がビビッドに表し出したと。
そういう
意味で申しますと、私も実は参加いたしましたけれ
ども、事業仕分を機に下がってきたというのは、ある程度こうしたものに対する一つの安心みたいなものもあったのではないかと思いますが、しかしながら、それ以降依然として、小康状態を続けているとはいいながら、まだ不安定な動きがあるというのも市場参加者の一致した見方ということでございます。
こうした
状況の中で、財政に対する不安というものは、次の四ページ目のところにもございますように、ここにございます、要は税収と支出に対するアンバランスと申しましょうか、税が下がる一方で支出が拡大する、当然その結果として
公債発行額が増加していくと、それに対する際限ない不安というものを市場参加者が持ち出しているというふうに
考えることもできるのではないかと思います。
また、こうした
状況は、次の五ページ目のところにございますように、
日本だけではございません。しかしながら、財政といったものを意識し出すなら、各国では財政の出口戦略というものを意識し出していると。そういう
状況の中で、グローバルな投資家も含めて
日本はどうなんだというような点に関心を持ち出してきているというのも実際の
状況ではないかと思います。
こうした
状況の中、
日本の国債の
状況でございますけれ
ども、
先ほどPIIGSと同じかという
議論がございました。私は、そういう
状況の中で
日本の特徴というものは、ある面でいいますと、私は何年か前から申し上げているんですけれ
ども、例えて申しますとお父さんとお母さんのやり取りみたいなものではないかと申し上げてまいりました。
これは、ある面で申しますと、
日本は財政赤字が非常に大きいわけでありますが、
日本の国内で完結している
状況でございます。そういう
意味では、この十年間も含めまして、国債を活用しながらある面でいえば調整を対応してきた。これは悪く言えば先送りの道具でございますけれ
ども、よく言えば時間を確保できる特権を持った状態というようなことと言えるわけでございます。
しかしながら、昨今の
状況を
考えますと、同じ家だからといってそこに安住していいのかというような意識というものも出てきている。そうなってまいりますと、同じ家だからこそ必要な信認を市場の中でどう確保できるのかという
部分が問われているというふうに
考えることもできるのではないかと思います。
また、こうした
状況は、同じく例えて申しますと、
日本の場合は赤字企業のようなものだというふうに
考えることもできるのかもしれません。
私も、
金融界に身を置く
立場といたしまして、よく企業さんへの融資を担当しておりましたけれ
ども、企業というようなものは別に赤字で倒産に至るわけではございません。要は資金繰りというふうに
考えることができるわけであります。
その例えで例えて
考えますと、
日本の場合は、今、
先ほど申し上げました収入と支出の
関係から見れば明らかに赤字でございます。これが続く中で、場合によっては債務超過状態にあると言えるのかもしれません。しかしながら、そういう
状況の中でも、投資家、国内の
金融機関は、ある面でいえば国に対して融資を、それはある面でいえば国債への投資を続ける
状況というふうに
考えることができるわけであります。
しかしながら、その背景にあるのは、ある面でいえば国に対する、国の返済意思とそれに対する期待というふうに
考えることができるわけでございまして、当然、企業でも同様でございますが、そうした赤字企業への融資というものには再建
計画というものも必要になってまいります。ある面でいえば、市場というものは、そういう再建というものを意識しながら若しくは期待しながら投資を続けている
状況というふうに
考えることができるわけでございます。
先ほど、次はPIIGSかと、PIIGSの次は
日本かと言われておるわけでございますけれ
ども、次の八ページ目のところにございますように、確かにそのPIIGSのところに表れておりますような国々と同様に
日本の場合の債務残高は非常に大きいわけでございまして、こうしたものが
日本の国債に対する海外からも不安につながっていると見ることができるわけであります。
ただ同時に、このPIIGSとの違いということを
考えてまいりますと、次の九ページ目のところにもございますように、これは各国の経常収支の
状況でございます。これを見ていただきますと、PIIGSの問題は明らかにこの右側、要は経常収支の赤字にあるわけでございまして、
日本の場合はそれと対比いたしまして左側、黒字状態にあるわけであります。
しかも、
日本の場合は、次の十ページ目のところにもございますように、こうした黒字状態というものが一九七〇年代からと申しましょうか、非常に恒常的に続いているわけでございまして、こうした点が、
先ほど申しました赤字企業であっても資金繰りが、またお父さんとお母さんの
状況、家のような
状況になっていると。
しかしながら、こうした
状況ではあるわけでございますけれ
ども、今後を
考えてまいりますと、
高齢化等の問題で黒字状態というものも本当にこれが続くのだろうかと。また、こうした
状況の中で、
日本の国内の投資家というものが
日本にキャピタルフライト、資本投資を行わないで信認を保つことができるのかというような点が問われているわけでございます。
そうした
状況を、
先ほど申しましたように、再建というものに対する信頼と申し上げました。
先ほど融資と同じと申し上げましたけれ
ども、もう企業と同じように
考えますと、要はバランスシートをどう見ながらファイナンスを続けるかという
議論になってまいります。その点で、次の十一ページ目のところで
日本のバランスシートを
考えてまいりますと、どうも赤字状態にあるわけでございます。
そうした
状況にあるにもかかわらず、ある程度国に対するファイナンスが続くということをある面で解釈して
考えるとすれば、次の十二ページ目のところにございますように、国民
負担率、租税に対する国民
負担率が海外と比べても非常に低いと。こういうような
状況の中、仮に例えば、次の十三ページ目のところにもございますように、例えば欧米並み、ここでは二三%を三五%に例えば仮に引き上げるという一つの試算を行ってまいりますと、毎期毎期の税収というようなものがここでは二十二兆円生まれるとしております。
こうしたものを現在価値に倒すと申しましょうか、例えば資産価値がこういうようなものにあるんだというような計算をいたしますと、ここにございます試算のように、債務超過というものが埋まり、場合によっては今後の国債の
発行余力というようなものもある程度あると。逆に言えば、こうしたような解釈をしない限りはなかなか今の状態を正当化することができない
状況にあるというふうに
考えることもできるわけであります。ある面でいえば、こうしたものは一つの再建
計画に対する
状況、要は今後の経済成長とそれに対しての税
負担というようなものを
日本国が行い得ると。
当然、そうなってまいります中で市場というものが見てまいりますのは、この十四ページ目のところにあります、国債版マニフェストとさせていただきましたけれ
ども、短期、中期、長期にわたる、ある面でいえば再建
計画というようなものを暗黙のうちに市場というものが織り込みながら
考えていると。ここの十四ページのところにあります
計画というものは、あくまでも我々が一つの案として提案したものでございますけれ
ども、逆に言えば、このような対応というものを市場はある面でいえば暗黙のうちに織り込みながらの
状況というふうに
考えることもできるのではないかと思います。
また同時に、こういうプロセスというようなものは、次の十五ページ目のところにありますように、市場、国債管理政策というふうに
考えることもできるかと思いますが、こうしたものは単に
発行体だけにとどまらず、市場参加者、また場合によっては
金融当局、
日本銀行といった、こういうようなものの総合的な対応の中で何とか信認を保つことができ得るような
状況というふうに
考えることもできるわけであります。
現在の
状況、国債暴落に言われながらなっていないというものは、ある面でいいますと、この十六ページ目のところにございますように、現在は運用難という
環境の中、
金融機関というものが国債に資金を向ける。しかしながら、ここの中での不安というものは国民が海外に資金を持っていく、資本逃避と申しましょうか、また市場というものが不安を抱くということになりますと、こういう状態というものが維持できない。
要は、今の
状況というものは、次の十七ページ目のところにありますように、貸出しがマイナスになるような需給
関係、若しくは何とか市場の信認というものがつなぎ止められている中での
状況と
考えることもできるわけであります。
そうなってまいりますと、
日本国内、国内の中で対応できると申しましても、この十八ページ目のところにございますように、国債を通じてある面でいえば
日本の意思というものが問われている
状況、国債に対して何とか信認をまだ寄せている
状況でございますが、そこにはあくまでも
先ほど申しました成長期待と国の意思と、また場合によっては市場の中での対応というようなもの、こうしたものの信頼
関係というものが問われているというふうに
考えることもできるのではないかと思います。
また、最後のページになってまいりますけれ
ども、
先ほど申しましたように、今回の
状況は
日本国内だけではございません。グローバルで国債というものを通じながら、何とかどの国も再生を願おうとしている
状況でございます。
しかしながら、
先ほど挙げましたPIIGSの場合は、調達力が乏しい国は資金繰りがもてないと。そういう
状況の中で、
日本は何とかこの安定した調達力というものを一つの競争力と申しましょうか、として有しているわけでございます。
そういうような調達力というようなものを、国際競争力と申しましょうか、しかしながら、それはあくまでもそれを生かすための国の意思というものが求められているわけでもございまして、そういう
状況の中で、私も、たまたま先々週海外の投資家と
議論した中での意識というものは、あくまでもこうした
状況の中で、時間を確保しながらも、
日本が本当にできるのかというものが問われている
状況ではないかと感じた次第でございます。
以上でございます。