○
参考人(
樋口恵子君)
樋口でございます。
本日はこのような機会を与えていただき、誠にありがとうございました。
私は何といっても後期高齢者で、大のアナログ
人間でございますので、パワーポイントは持ってまいりませんでした。二十分、口先ポイントでやらせていただきたいと思っております。
自己紹介がてらということで、お
手元にNHKの昨年三か月ほどずっと連載というか放送しておりましたが、「人生百年 女と男の花ごよみ」というのがございます。これが私、このごろ何を話しますにもサブタイトルというか、に付けておりますのが人生百年でございまして、今日も申し上げたかったことは、
社会保障の基本を
国民の人生を百年という標準単位に取り直して、
社会保障の設計も、雇用を始め就労も、あるいは家族関係の在り方もすべて人生百年、何よりも私は就労を人生百年型に転換して、そして、これは時間は掛かると思いますけれど、例えば私は今七十七歳でこうして働かせていただいておりますけれど、周りを見ればもうみんな定年退職いたしております。まだまだ元気な人はいて、働ければ働きたいと言っている人がたくさんおります。そういう人材がたくさんいるのに、その
人たちに年金を与えて、年金があっぷあっぷしてきて、そして財政が足りないというのは誠にもったいないことでございまして、時間は掛かると思いますが、是非政治家の皆様方のお力で人生百年のできるだけ長い間、今の雇用と思わないでください。いろんな条件を皆様方で御勘案いただきまして、人生百年のかなり終わりの方まで働いて、できればささやかなりとも税金を納める立場に立つことができる、この人生百年、自立の政治ということを是非お願いいたしたいと思っております。
〔
会長退席、理事
吉田博美君着席〕
何でも人生百年を私は頭に付けておりますけれど、
御存じのとおり、
平均寿命、
女性はもう八十六・〇五、男子ももうほとんど八十歳に近い七十九・〇二ということでございまして、百歳を超える
方々が全国にもう四万人を超えていらっしゃいます。
社会のシステムはもう百年でつくっておいた方が、都市計画も住宅計画も、昔、耐用年数、木造は三十年という時代に私は四十代で家を建てましたら、つい二、三年前、大雨でもう雨漏りがどうしようもなくなりまして、莫大なお金を掛けて家を直しました。これなどは、人生五十年、六十年時代に木造耐用年数三十、四十で本格的な家を持つ、それでその家が耐用年数が尽きるころは七十、八十になっていて、まずは生きていないだろうという発想だったわけでございまして、私は建築も都市計画も、今や国家百年の計が人生百年の計になりましたので百年型に是非構造を変えていただきたいと思っております。
〔理事
吉田博美君退席、
会長着席〕
高齢者は、私などはもう人生終わりの方でございますけれど、やはり長い人生を生きてきた高齢者が、高齢者こそ見果てぬ夢を見る特権があると思っております。そして、このような夢の特権をどうぞ若い世代の特に政治家の
方々に受け継いでいただきたいと心から願っている次第でございます。
今回のこの
調査会のテーマでございますが、お手紙の中に、日本を、
幸福度を上げるというようなことがございました。日本はもちろんこれからも
経済大国である道を歩まねばならないと信じておりますけれど、と同時に日本を、もうGDPですれすれラインを競い合うことも一方では大事なんですけれど、それと同時に、日本が今まで少し見落としてきたのは生きがい大国、幸福
社会、幸福大国、生きがい大国になることではないだろうかと思っております。それが本
調査会の、税金高くても何かやる気を出している国があるようだけれどという御発想だと思いまして、そういうことを考えることに私も大賛成でございます。
それで、私は、夢物語ではございますけれど、これを考える上で私なりに幾つかのキーワードを持っておりますので、それを
お話ししたいと思っております。
第一番目は、既に申し上げましたように、あらゆる発想の基礎を人生百年
社会へのパラダイム転換、システム転換ということに基礎を置いていただきたいと存じます。そうしますと、さっきも申しましたように、就労ということはもうできれば、年齢差別禁止法をここで作るのがいいかどうかということはちょっと私も判断できかねますけれど、しかし働く能力があり、意欲のある人にとっては、その
人たちが、居場所と出番と言われますけれど、働く場所はまさに出番の部分だと思いまして、
社会的に接触する場所、いろんなことを考えておりますけれど、結局、一番その人にとっていい出番になるのはやっぱり就労だと思っております。原村の村長さんからも、また前の
参考人の方からも健康の
お話がたくさんございましたけれど、私の実感では最大の介護予防は人中での就労の場をつくること、ささやかなりとも自己実現の場をつくること、これが私はもう最大の介護予防であり、保険の
一つではないかと思っております。
二番目。これは実は出所がございまして、一九九四年に国連がカイロにおきまして人口・開発会議を行いました。非常にいろんな成果のあった会議でございまして、私はこの年、初めて民間から国の一行の中に、代表団の中に加えていただきまして参加することができたんですけれど、高齢者の部分、かなり力を入れた書き方をしております。この文書はいつでも御覧になれると思いますけれど、その高齢者のところにありました文章で私はいたく心を引かれまして、以来よく引用しております。人口の高齢化というのは、早い遅いは別として、地球上の国々がいずれはたどる構造的変化である。ここでチェンジという言葉を使っておりました。しかし、このチェンジは、嫌なことでも悪いことでもなく、地球が正常に運行していればということであるから、これは実は人類がより良く変わることのできる絶好のチャンスである。チャンスをオポチュニティーという言葉で言っていたと思いますけれど、日本語仮訳は絶好のチャンスと訳しております。それから、だから我々はみんなで力を合わせてこの高齢化という問題にチャレンジしようではないか、挑戦しようではないか、この
課題を受け止めていこうではないか。
私はすっかり気に入っちゃいまして、チェンジ、チャンス、チャレンジ、これはくしくも頭文字がCHAでありますので三CHA主義と呼んでおりますけれど、私たちは今、人類が始まって以来、こんな高齢化したというか長寿に恵まれたのは先進国の中でもたかだか、たった五十年。日本は高齢化
社会に突入したのが一九七〇年でございますから、高齢化歴まだ一世代でございます。私たちは、人類がこんなに長生きするようになったのも先進国含めてもやっとそのぐらいでございまして、特に日本は後から来て、追い抜いて、今や、バンクーバーでオリンピックがありますけれど、ここに高齢化という種目があれば日本は絶対金メダルなんです。もう
平均寿命で一位、スピードの速度で
一つ、それから高齢化比率二二・七%は今や世界一でございます。だから高齢化、オリンピックがあれば三冠王、金メダルというところにあって、そしてまた、他の先進国を含めて、アジアの国々を含めてどんどん高齢化していく。
実は、日本だけの問題ではなくて、人類が出会った初めての急激な長寿化、高齢化、少子化ということに日本が先鞭を着けて金メダルのところにいるので、ある意味で諸外国も日本のこれからの行方を実はかたずをのんで見守っているということで、北欧などをモデルにする、もちろんたくさんモデルにしていきたいと思っておりますけれど、しかし実行するのは私たちが一番初めでございまして、世界初めての人生百年丸という船に日
本人は全員乗っかって、人生百年
社会、幸福な人生百年
社会追求の海図のない旅に今出航したところだと思っております。
その意味で、私、政府も政治も、国会も含めて、リーダーの
方々にまだまだちょっと危機感が足りないんじゃないか。世界中で二二・七%なんて高齢化している国は日本が
一つしかありません。
あとはみんな一〇%の終わりの方で、もっと低いです。にもかかわらず、対GDP比の
社会保障費の比率は日本は大変低い方でございます。
私は、先ほど原村の村長さんからも
お話がありまして、子育て支援というのは本当に一番力を入れなければならないことの
一つだと思っております。と同時に、高齢者のケアをするというのは、実は今、日本を始めとして私たち人類の中での高齢
社会が初めて、こんなに大量に長期間向かうのは実は人類の中で初めてでございます。でありますから、これからケアというものを、ケアというのは私は子育てを含めて言っておりますから、必ずしも介護ではございません。病気、それから子供を育てる、もしかしたら義務教育までの教育は一種のケアの中に入れていいかもしれない。そして、その時々の病気、それから高齢期において最大の介護予防である就労をしたりいろんな努力をしても、
人間が最後に一定のケアを
人間の尊厳を持って受けることの
社会ということをつくっていくのが私は
社会保障の
一つ重要な役割ではないかと思っております。
その
社会保障費が、これだけ高齢者が多い国でありながら、日本はアメリカの次に対GDP比低いです。これは、前政権の福田政権のときの
社会保障国民会議に私も加えていただきまして、これは本当に中立の立場で様々な
社会保障の国際関係の
資料など、これは国会議員の
先生方はもう百も御承知のことでございますけれど、いろいろ見せていただきまして、例えば対GDP比、北欧諸国が
社会保障費ほぼ四〇%を超えている。フランス、ドイツがほぼ四割であると。イギリスもサッチャー政権でぐっと切られましたけれど、もう日本を抜いて今三割になっているというとき、日本は当時の数字で二五、六%でございました。今度、子
ども手当などで二七、八%まで上がったのではないかと言われております。でありますから、人生百年
社会、大変な高齢者、長生きができることになった、この国で生きるということは、やはり
社会保障費を増やしていくのは当たり前のことだと存じます。
そして、その図表をいろいろ見ながら考えましたことは、考えたといいますか、身にしみて感じましたことは、なぜ日本だけがあっという間に高齢者の比率二割を超えて二二・七%、もうじき三〇%、二〇五〇年には四〇%だなんて言われるようになったかといいますと、
一つはおめでたいことで、長生きになったことで、実は他の先進国も長生きになったことは大体似ているんです。ただ、他の北欧諸国やイギリスやフランスと何が違うかというと、日本だけが出生率が上がっていないからなんです。
ですから、ここで私は、高齢化の問題、絶対政治の世界で、高齢者に金を掛けるべきか、子供に金を掛けるべきかという奪い合いにしないでいただきたい。これはもう絶対、両方は完結しているのでありまして、日本の場合、高齢者がこんな多い国でありながら、高齢者に掛ける
社会保障も含めて世界最低に近いわけです。OECDの中では最も低いグループの
一つでございます。それは、実は子育てに掛けている費用ももっと低い。ここも低い。ですから、言ってみればその両方を増やしていく。
両方が、なぜ日本の子育ては、日本の少子化は歯止めが掛からないか。つまり、これも
先生方は百も御承知のことだと思いますけれど、北欧諸国にせよ、イギリスにせよ、どこにせよ、日本のようにおなかが大きくなったお母さん、まだお母さんになっていません、おなかが大きくなった働く
女性が出生前に七割も職場を辞めていく国は日本だけでございます。これはもうだれが何と言おうとそうなのでございまして、他の国々は育児休業の普及、父親の育児参加、それやこれやでもっと、言ってみれば、ダイバーシティーとこのごろ言われますけれど、あるいはワーク・ライフ・バランス、私はもうワーク・ライフ・ケア・バランス、三位一体の未来
社会をと思っておりますけれど、とにかく日本は今一番子供が産みにくい
社会になってしまった。
ですから、個々の村では、原村さんのようにいろんなことをして出生率を上げていらっしゃる地域もございます。しかし、日本全体が一・二九まで下がって、やっと一・三、四ぐらいまで戻っておりますけれど、これが急激に回復するか。民主党さんには申し訳ありません、私、子
ども手当に
反対しているんじゃないんです。ただ、子
ども手当は恐らく出生率向上にはほとんど影響を与えないだろうと。そういう意味での政策効果じゃなくて、子供を大事にしていますよという、その言ってみればメッセージの効果だというふうにおっしゃるなら私何にも申し上げません。だけど、とにかく日本の場合は子供を持ちながら働き続けるということが最も難しい国になりました。
一番最後の
資料に、私は、これは麻生政権のときに百人ぐらいの人から
意見を聞いたときに私が持っていった、作っていったポンチ絵でございますけれど、女の人生、滑り台三度がさとタイトルが付いております。第一回の滑り台が子供を持ったとき、ここで七割が辞めます。二回目、離別その他でいろいろと
経済的困難に立ち向かいます。三度目、これも是非
先生方に御配慮いただきたいと思うんですけれど、女の人は言ってみれば安定的、継続的な就労の機会に恵まれません。まず、子育てで辞め、夫の転勤で辞め、そして次に、今度は
自分の親のみならず、しゅうと、しゅうとめなどの、介護保険が始まってもこれは助けぐらいにしかなっておりません、やはり介護で辞めてまいります。三度の滑り台というのは湯浅誠さんから少し借用させていただいたんですけれど、その三度の滑り台、このキーワードの中にもございますけれど、
社会保障というのは、そういう滑り台になりそうなときにそこを支えるかさをつくっておくことが
社会保障なのではあるまいかなどと思ってそんなことを書いたわけでございまして、結論を申し上げますと、子供にも
社会保障を行い、そして高齢者が倒れたとき、さあ、嫁なり娘なり、あるいはこのごろは息子が辞めるところが増えてきております。
この間、ある大企業へ行きましたら、これから何に力を尽くしたいですかと言ったら、その大企業のトップが、当社は育児休業とかその他は十分にしておりますので、これからは男性の申請が増えてくると思うから、介護休業をもっと男の人も取りやすいようなやり方に変えたいと、社内でしていきたい。これはもう有数の日本企業の、しかしダイバーシティーの進んでいる大企業で言われて、私はこの
会社の発展を信じて帰ってまいりました。
どうぞ、この日本の
社会におきまして、子育てと、それからそうした対策を取ることを通して日本の出生率が、産めよ増やせよではなくて、産みたいと思う人が産めればいいんです。
その
会社で、私は今、これで終わりますけれど、課長になっている
女性、三十二、三歳、おととし結婚したという管理職に、私は実はキャリアアップの方の
調査で行ったんですよ、とってもやる気満々でしたので、あなた今課長さんだけれど、どこまで行きたいですか、部長になりたいですか、その上まで行く気って質問したら、行けるところまで行きたいですね、うちは副社長まで出たことのある
会社ですからって言って、私がやる気満々ですねって答えたら、はい、そして産む気満々ですと言いました。やる気満々という言葉は聞いたことあるけれど、当事者から、結婚二年目の人から、しかも課長さんから産む気満々という言葉を聞いて、そういう企業もできてきたんだということを私は大変うれしく思うと申し上げました。
このような産む気満々の人が
仕事を辞めなくて済むような
社会風土を是非形成していただきたいと申し上げて、終わります。
ありがとうございました。