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参考人(
植木千可子君) どうもありがとうございます。
御紹介にあずかりました早稲田大学の
植木千可子と申します。本日はこのような機会を与えていただきましたことを大変光栄に思っております。どうもありがとうございます。
私の専門は
国際政治と
安全保障ですので、そして
地域としては
日米中の
関係を見ておりますので、今日は特にそこを
中心に
お話しさせていただければというふうに思っています。
それで、まず、この話をするときの問題意識ですけれども、そこだけ
最初に申し上げておきたいと思います。
大きな問いかけとしては、卓上にレジュメを御用意いただいていて、
一つは四角がかいてある方で、もう
一つは、私が昨年、
委員として策定にかかわりました、
安全保障と防衛力の懇談会の特に策定に深くかかわった部分の序章と一章の分を御
参考までに置いてありますので、見ていただければというふうに思います。
問題意識ですけれども、
アジアにおいて安全、安定というのを一体どういうふうにして確保していったらいいのかというのが大きないわゆるビッグクエスチョンです。
具体的な問題としては、
中国が
世界の安定、そしてまた、
地域の安定に寄与するような
行動を自ら選択するように促すにはどうしたらいいのかということです。二つ目の問いとしては、
アメリカのプレゼンスを安定的に
維持するためにはどのようにしていったらばよいかということです。三番目には、一番目と似ておりますけれども、
中国の台頭というものを
地域そして
日本の利益に結び付けるには一体どうしたらいいのか。こういったことを念頭に置いて考えてみたいと思います。
最初に、もう結論の方から先に言ってしまうと
三つございます。
一つは、非
協調的な
行動を取ること、これが要するに割に合わないという
世界をいかにつくっていくかということです。よく一般的な人間
関係でも、あの人はもう失うものがないから強いよねとかということを言いますけれども、それであっては
国家は困るので、プラスもマイナスも、失うことがいかに大きいかということをつくっていくことが大事だと思います。
具体的には
三つあって、
一つは抑止力、これはマイナスの意味での
コストですけれども。もう
一つは
経済的な
相互依存関係。これは、
協調的にしていれば手にすることができたかもしれない恩恵を非
協調的にしたことによって失うというところです。貿易もそうですし、
経済だけでなく技術移転、
感染症の対策の問題あるいは
環境の問題、そういうような大きな恩恵を
協調的な
関係から得るというところ。三番目として、これは余り言われておりませんけれども、
安全保障上の
相互依存関係をいかに
構築するか、これが恐らくこれからの非常に肝心なところかなというふうに私自身は思っています。二つ目としては、
地域安全保障ネットワークの
構築。
三つ目は、ちょっと意外かもしれませんが民主主義の成熟、そして
政権交代によって進化し続けるということが実は
安全保障、外交にとっても非常にこの
地域にとって重要だというのが結論で、これはもう少し後で詳しく述べます。
まず
最初に、この
日本を取り巻く
安全保障環境について、基本的な趨勢、簡単におさらいしておきたいと思いますが、少し重複になるところは避けますけれども。
まず、大国間の戦争の蓋然性というのは非常に低くなっているということです。この
アジア地域の
安全保障環境、非常に厳しいというふうによくいろんなところで言われますけれども、しかし、とは言っても大国間の戦争、本格的な戦争の蓋然性というのは過去に比べてはるかに低くなっているというのが、まず押さえておくべき
状況かなと思います。しかし、一方で、国境をまたぐような問題、これは
国際テロのような問題、あるいは
大量破壊兵器の
拡散の問題、あるいは一国の国内の治安
状態が悪くなって、それが波及するような破綻
国家のような問題、こういったようなものが増加している。で、
中国、
インドの台頭。そして四番目としては、
アメリカの力自体は落ちていませんけれども、問題解決
能力が低下していて内向きになっているというところかなと思います。
これを
アジアに目を向けてみますと、まず第一にあるのは
北朝鮮の核開発問題と、そして内部崩壊の問題かなというふうに思います。ここでは
北朝鮮については詳しく述べませんけれども、
一つ覚えておかないといけないかなと思うこととしては、
北朝鮮の国内が非常に混乱したときに最も重要となってくるのは、核兵器関連物質をいかに速やかに捕捉するかということだと思います。これが、どこに行ってしまったか分からないような
状態になるとか、あるいは
テロ主体に渡るというようなことになっては大変危険ですので、いかに混乱な
状況でそれをそういうことにしないかということ。そのためには米中との
協力は非常に重要ですし、日韓との
協力も非常に重要だということです。したがって、ここの場においては、
中国というのは非常に重要なパートナーになってもらわないと困る相手だということです。
仄聞するところによりますと、
アメリカはこういう混乱した内部崩壊の
シナリオにおいて、
中国側とどういうふうに進めるかという
協議を望んでいるというふうに聞きますけれども、
中国側の方はそれに応じていないというふうにも聞きますが、今後やはりそういうような
状況に備えてきちっとした
協議をしていく必要があるのかなと思います。
二つ目の
特徴としては、この
地域には多国間の
安全保障枠組みがないということで、今でもやはり
アメリカの二国間
同盟、そしてそれ以外の二国間の交渉に頼っているということです。
二ページに参りまして、
中国ですけれども、
中国というのは、確かにずっと二十年以上二けたの伸びを示しています。それに加えて、防衛上の
政策決定が非常に不透明である。だれが
政策を決定しているのか、そしてまたどのような仕組みになっているのか。出先の
行動というのが本当に中央の指令によるものなのかどうか、そういったことが見えてきません。
また、一般的な国ですと、例えば五年後には軍隊がどういうような姿になるのか。例えば、F15を何機整備するのかとかいうことがある程度どこの国でも見えるんですけれども、
中国の場合はそれが見えない。今何を買っていることは分かっても、将来どうなるかということが分かりにくいということです。ただし、
安全保障の目標として見てみると、割と私たちがよく言われるよりも防衛的な目標を掲げているのかなというふうに考えます。
もちろん、
台湾も自分の国の一部だと見ていて、それが防衛だということは受け入れられない議論だという方もいらっしゃるかもしれませんが、基本的には、整備した
軍事力で積極的にどこかに出ていくというよりも、まず
自国の利益を守る、特に他国の、具体的に言えば
アメリカですけれども、
アメリカの軍事介入を阻止する、ここのところが主眼だろうというふうに思います。
②の
中国の軍事
能力ですけれども、
ロシアと
関係を改善したことによって、九〇年代から近代的な兵器をずっと買い続けています。しかし、とは言ってもまだまだ低いところから伸びてきているところなので、本当に
アメリカが本気になれば全くかなわない相手です。ただし、
アメリカが払ってもいいと思う
コスト、例えば
台湾の問題というのは、
中国にとっては死活的な問題ですけれども、
アメリカにとっては
優先順位が一番という問題ではないわけですね。そうすると、
アメリカがこれはちょっと重過ぎる
コストだという
コストを与えることができれば思いとどまらせるという意味で、そういった意味で非対称ではありますけれども、
能力を整備している、そういう段階に来ているのかなというふうに思います。
アメリカへの依存度というのは下がっています。江沢民の
時代は特に、もう何でも
中国が望むことはすべて
アメリカは与えることができるし奪うこともできるというふうに考えられていました。
経済発展もそうですし、そしてまた
台湾のような問題についてもそうですけれども、そこのところが少し低くなっているのかなと思います。
三月に一週間ぐらい久しぶりに
中国に行ってきて、相当、何十人かの人に会ってインタビューして回ってきたんですけれども、そこで非常に驚いたことの
一つが、今まで行くたびに私が割とよく会うような
安全保障の研究者とか軍の
関係者とかはもっと良くなるという非常に自信を持っていたんですけれども、今回行って非常に悲観的な人が多かった。軍の方は非常に自信を持っているんですけれども、一般のインテレクチュアルの人たちは不満を持っていて、その不満というのが、
世界第二位の
経済大国にいよいよなろうとしている、ところが自分たちの生活を見たらこんなものだと、一体もうそんなのは冗談でお笑いぐさだというふうなところで、結局ずっと上ってきて二位になりつつあるのに自分たちの生活は余り良くないということで、それが不満になっているということですね。そうすると、最近の国内の治安あるいは言論統制の
状況を見ると、
政権は割と権力掌握に少し自信をなくしているのかなと思われる側面があります。
これが果たして対外的に
協調的になるのか、それともそうでなくなるのかというところが大事なところですけれども、まずその
経済発展にプラスである場面においては恐らく
中国は
協調的な
行動を取る、選択するというふうに思われます。ところが、それにマイナスの場合、例えば温暖化の問題で
経済成長に少し歯止めを掛けなきゃいけないような、犠牲にしなくてはいけないような問題については非
協調的になるのかなという予測が立つと思います。
軍事的な冒険主義は恐らく控える方向に振れるというふうに思いますけれども、
政権が非常に弱くなって国内の不満が強くなった場合というのは弱腰であるという批判が当然強くなることがしばしばありますので、そうなってくると本当は
協調的に
行動したい場合でもやや非
協調に振れるという場面もあるのかなというふうに思います。
三ページ目、
アメリカについてはもう詳しく言っていただきましたので簡単に言いますけれども、
一つはグローバル・コモンズの支配というのが割とここ何年か言われてきていました。かつて大英帝国が七つの海を支配していたように、今の
アメリカというのは七つの海と空を支配している、これが
アメリカの力の源泉になっていて、
覇権の源泉になっているわけです。
これは何かというと、
世界の海と空の安全を確保していることなので、どの国にもそれを使うアクセス権は認める。したがって、
アメリカに頼っていれば私たちは貿易もですし自由な航行、そういったようなことの恩恵を受けることができるわけですね。ただ一方で、どこかの国がそこに対して挑戦してきたときはそれを排除する
能力がある。ですから、
世界中どこにいても比較的低い
コストで軍事介入ができるという、そういう
状況を担保しているというわけですね。
この
能力が下がってくると、
一つでは
国際公共財と言われる、こういったようなだれもが恩恵を受けている
世界の
国際安全保障のレベルというのが下がってしまう。そうすると、放置しておくとすさんだ
世界になってしまう危険がある。
もう
一つは、軍事介入の
コストが
増大する。
世界中のある国によってはそれをいいと思う国もあるかもしれませんけれども、
同盟国である
日本としては、その介入のハードルが高くなってしまうということはその意思に
関係なくコミットメントが下がるという、そういう危険があるということですね。
二〇〇一年の九月十日のアフガンというふうに書きましたけれども、今
アフガニスタンの情勢というのは
世界の
安全保障にとって非常に重要だというふうに考えられています。ただ、二〇〇一年九月十日の時点で、
アフガニスタンがこれほど重要なところだというふうに考えた人は恐らくいなかったと思うんですね。
そうすると、早い段階で予防的にいろいろ介入していって、軍事的だけでなく民生的な支援とか、そういったようなことが非常に重要になってくるわけですけれども、恐らくその
状態がそれほどひどくないときというのは更にそこにコミットしていく
コストというのは高く感じるものですから、放置される危険があるということです。
一言、
日本に対する期待ですけれども、
アメリカ側の
政権の人たちと話していると、やはり
アメリカは
日本に
地域のリーダーとしての
役割を非常に期待しています。
普天間の移設問題自体は、しょせん
基地をどこに移転するかという問題であって、主要な問題だというふうな
認識はありませんけれども、とはいっても、日々の事務の中、調整の中で非常に困惑していますし、
アメリカは今戦時下の国と自分たちを
認識していますので、そういったような意味では、本来割かなくてもいいエネルギーを割かなくてはいけないというふうな思いというのはその当事者にはあると思います。ただ、基本的には、
日米同盟は安泰ですし、これはそれ以上の問題に仕立てるということは控える必要があるかなというふうに思います。
日本の
状況は皆さん
お話ありましたので飛ばしまして、
状況のまとめとして四ページ目御覧いただければと思いますが、この三角形は後で説明いたします。
中国に対する手持ちの札というのは減っているというのが現状です。これからも減り続けるだろうというふうに思います。そうすると何をしなくてはいけないかというと、この手持ちの札を増やすということが必要になってくる。
これまで
中国との
関係の歴史を見ていくと、
中国が割と積極的に
協調的な
行動を取ったケースというのは、
日米に依存していたようなケースが多いということが言えます。したがって、
中国が
日本そして
アメリカに依存している
状態というのをいかに人工的に、
政策的につくっていくかということが重要になります。これまでは
経済的な
相互依存と
同盟による抑止という、ヘッジという
政策に
中国を何とか形成したいというふうなことでやってきましたけれども、これからますます手持ちの札が少なくなっていくことを考えると、これだけでは不十分で、もっといろいろ考えていかなくてはいけないというふうな
状況だと思います。
ただし、
中国の
軍事力というのはまだまだ限定的です。ですから、何もずっと伸びているからもう大変だというふうなことを思う必要はなくて、ただ、整備している
能力としては、第三者が介入しにくくするということについては非常によく考えた整備を続けていますので、そこのところは押さえておかなくてはいけませんけれども、まだまだ自主的に何かをする
能力があるわけではありませんので、この手持ちの札を増やすのであれば、
日本とそして
アメリカがまだ優位に立っているときからその種を植えていかなきゃいけないというふうに思います。
アメリカが相対的に内向きになって、国内のいろんな問題を抱えている
状況ですので、残念ながら小さな問題というのは放置されるという、そういう危険性があるのは事実です。
アメリカ当局者と話をすると、国務省の人も国防省の人も、あるいは軍の人ともよく会いますけれども、彼らは、もう心配するなと、必ず守るからとよく言ってくれますけれども、ただ、その人たちの意志とは無
関係に、この趨勢を見ると、やはりこの
地域以外のところの問題、具体的に言えばイラク、イラン、
アフガニスタン、パキスタン、こういったところにたくさんの
資源を割かれるというのは事実ですので、幾らその気持ちがあっても、やはり
優先順位としてなかなかコミットできない場面も出てくるのかなと思います。特に小さな問題ですね、ローカルな問題、あるいは私たちにとっては大事な問題でも小さいと思われるような領土
紛争のような問題、こういったようなものが放置される
可能性というのはあることはあると思います。
結論ですけれども、五つばかり提言として
お話ししたいと思います。
先ほども申したように、手持ちの札を増やすということですね。
最初に言ったように、失うものが大きい
状態というのを創出して
維持する、これを努力してつくっていかなくてはいけないと思います。
ここに不等式が書いてありますけれども、要するに右側の、非
協調、要するに武力行使をしたり何か非
協調的な
行動を取って得られるというそういうもの、それよりも、その非
協調的なことをする
コストですね、それとあと、失ってしまうであろう利益、これはもう
経済的なこと、社会的なこと、そして黒字にしましたけれども
安全保障上の利益、こちらの、要するに不等式の右側をいかに大きくしていくかということが
日本の目指すべき
戦略なのかなというふうに思います。
抑止の部分については、
日本の独自の防衛、それと
日米同盟の堅持ということになると思いますけれども、時々、
海兵隊が
沖縄からいなくなったらば、
中国がすぐに尖閣にやってくるというふうな議論を耳にすることがありますけれども、恐らく離島の防衛というのは今の
体制でも
日本が独力
対処をすべきような
シナリオだと思いますので、そこのところの
能力は
日本にもありますし、日常的にやっていかなきゃいけないというそういう
分野のことなんだろうと思います。ですから、逆に言えば、そこはすぐに
中国が出てくるというふうに考えるのは少し安直なのかなと思います。
ただ、最終的には
アメリカを相手にしなくてはならないかもしれない。今ここは近くのところで、ひょっとするとただの簡単な行為でも、最終的には
アメリカと事を構える、しかも核兵器を持った国同士だというようなことを考えるということは非常に抑止効果があるということですね。
日米同盟はもっと本格的な侵攻への備えなのかなというふうに考えられるとも思いますけれども、失うものを明確にすること、そして誤認を減らすということは非
協調的な
行動を抑制していくためにはとても重要ですので、この
役割というのは今後も非常に重要になってくると思います。
経済依存ですけれども、ただ単に抑止力、
軍事力だけでは、もうもはや
中国を非
協調的な
行動を取らせずに、そして
協調的な
行動に促すというのは難しくなっていますので、
経済的な
関係の
深化はもちろんですけれども、それを少しでも制度化していく努力が必要だというふうに思います。FTA、二国間のFTAをできるだけマルチのものにして、そして将来的には最終的には東
アジア共同体のような形にするということが大事なのかなと思います。
よく
経済的な
相互依存が進めば
紛争は心配ないよというふうなことを言うと、逆に、しかし第一次
世界大戦前のイギリスとドイツというのは
世界でも一番の
同盟国であったではないか、だからいかに幾ら貿易をしていても、それは抑止あるいは
紛争の予防にはならないよというふうなことを言う人がいるんですけれども、ここで決定的に違うところというのは、この
時代というのは制度化が進んでいませんでした。WTOもありませんし、あるいは二国間の制度もなかった。ですから、今貿易の恩恵があるとしても五年後、十年後ひょっとしたら消えているかもしれない。であれば、今何か争っているものを取ってしまってもいいのではないかというふうなインセンティブに走る
可能性がある。それがその五年後も十年後もずっとこの
経済的な利益があるんだという保証があれば、当然この右側の数式が重くなるわけですね。ですから、制度化、
地域的な制度化、二国間、そして数国間、よくミニラテラルとかいいますけれども、それと
地域規模、そしてWTOのような
世界的な
規模、これをいかに連動させていくかが大事かなと思います。
三番目としては、
安全保障上の
相互依存の
構築です。
これはなかなかうまく、そんなに簡単に進むものではないというのは自覚していますけれども、実際に
日本の
自衛隊、防衛省の
方々、あるいは人民解放軍の人たちと話していると、どんなに企業間の交流が深くなっても、そこのところが別
世界のように存在している部分がありますので、やはり
安全保障上の交流、依存
関係というのを
構築するのが重要かなと思います。八〇年代に日中米の
関係があれだけ良かったのは、やはりソ連という共通の敵に向けて
戦略的
安全保障上の共通利益を持っていたからで、もちろん今ソ連はありませんけれども、人工的に、
政策的にできるだけ
中国が自分の安全が少しでも
日米に頼っているのだというような
状況をつくっていくことが大事かなと思います。
具体的に言えば、災害復興支援のようなことを一緒にやっていくこと、あるいは海洋の安全のための
協力をしていくというようなことが大事かなというふうに思います。
二番目には、単なる事故が
紛争にエスカレートしないような仕組みを早くつくっていくということが必要かなと思います。
一つは、例えば海洋
協議協定、米
中間には存在しますけれども、
日中間にはありません。こういったようなものをつくっていくことも重要かなと思います。
日中間ではホットラインはもう既にありますけれども、それがいかに実効的に使っていけるようにするかということが大事です。二〇〇一年四月に
中国の戦闘機と
アメリカの情報収集のEP3が衝突した事故がありましたけれども、そのときは、
アメリカ側のホットラインを
中国側が全然電話を取らなかったということがあったわけですけれども、それ以降、この
協議を通じてカウンターパートがだれかということを非常に分かって、それで少し
関係は
深化したのかなと思いますので、
日本も
中国とこれをする必要があると思います。
そしてまた、
自衛隊と人民解放軍が共に、例えば国連のマンデートの決議の下に、共通の目標に向かって一緒に活動する、こういうふうな場面を増やしていくということが大事かなというふうに思います。
今、どうもこの
地域を見ていると、非常に古典的な
国際関係がまだまだ横行していますけれども、
世界全体を見ると、このR2Pと書きましたけれども、一国の国民に対して保護する
能力がないような国、破綻していてですね、あるいは
国家自体が加害者になっているような場合は
国際社会全体でこれを保護していく責任があるんだというふうに、
国際社会はそこまで進んできていますので、もっとこういう場面において日中が活動することによって安定化させる、その
脅威のレベルを低くしていくということが大事かなと思います。
あとは、尖閣のような離島のところはパトロールを日常的に
強化する努力、そしてまた、感情的なナショナリズムの応酬にならないように外交的な努力の
強化というのは言うまでもないというふうに思います。
日米同盟の成熟ですけれども、まずどのようなビジョンを描くのかというのを大きく
世界中に、そしてまた
日米間で広めていくことが大事かなと思います。
鳩山総理とオバマ大統領は目指す
世界としては非常に親和性が高いと思いますので、そこに向けてもっと進めていけないことに若干残念だなと私個人的に考えていますけれども、そういう大きな
世界の絵を描くこと、そして、具体的には、先ほども
お話があったように、
役割分担の明確化。私も
安全保障の
専門家というふうに言っていますが、実は、
米軍の活動がどういうふうになっているのか、
有事の際に一体どのくらい
米軍が兵力を
日本に持ってくるのかということはオープンになっていません、先ほどのような理由が
一つの原因ですけれども。こういったようなことをもっと可視化していく必要があるのかなと思います。
共に
中国に対しては悪者になりたくないという
状況なので、できれば
アメリカとしては、プレゼンスをここに残して
中国とはいい
関係でありたい、
日本としては、尖閣は大事だけれども、できれば、そこに何か
自衛隊を置いて対立を、摩擦を高めるんではなくて、
海兵隊が守ってくれるよというふうなことにしたいと。
お互いに矢面に立ちたくないという心理が働いているんですけれども、その結果、
日米間に若干、対中
戦略についての不信感あるいは不透明感があるので、そこのところのコミュニケーションが大事かなと思います。
四番目、ネットワーク化ですけれども、どちらかではなくて、もう幾重にも幾重にもネットワーク化していくことが大事だと思います。これは先ほども言ったとおりです。
最後ですけれども、この
地域、長期的に見ると、やはり
中国が民主化をしなくてもこれだけ成功しているんではないかというふうな議論が広まっています。先ほど、国内では不満が出てきているということは言いましたけれども、
地域を見ると、ちょうど
冷戦が終わった九〇年代というのは
世界の歴史の終えんと言われて、民主主義が勝ったのだと、このやり方が一番個人の幸せのためにも、
国家の発展のためにもいいのだということで民主化が広まるというふうな、それがよいのだということになりましたけれども、今、
日本もこれだけ停滞していますし、また、
アメリカ、ずっと好調だった
アメリカもああいうふうな
状態になっていて、これは民主化しても、民主主義
国家でも決して幸せにならないということになってしまっています。
ここで大事なのは、
日本、せっかく
政権交代しましたから、そしてまた、
政権交代、これからも行ったり来たりすることが考えられますけれども、その都度
日本が良くなっているねと、
政権交代を通じて進化しているんだということを
世界中に示すということが実はこの
地域、そして
中国に対して物すごく強いメッセージになっているということですね。せっかく
政権交代しても、何だ、そんなに大したことないじゃないということを
中国人が思うということは実は大変危険なことで、そういうふうなことにならないように、そしてこの民主主義のシステムというものの健全さというのを
世界にアピールするというのはとても実は
安全保障、外交上も大事だなというふうに思っております。
以上です。済みません。ちょっと長くなって申し訳ありません。