運営者 Bitlet 姉妹サービス
使い方 FAQ このサイトについて | login

2010-04-14 第174回国会 参議院 国際・地球温暖化問題に関する調査会 第5号 公式Web版

  1. 会議録情報

    平成二十二年四月十四日(水曜日)    午後一時開会     ─────────────   出席者は左のとおり。     会 長         石井  一君     理 事                 主濱  了君             ツルネン マルテイ君                 藤田 幸久君                 有村 治子君                 牧野たかお君                 加藤 修一君     委 員                 相原久美子君                 犬塚 直史君                 大石 正光君                 大久保潔重君                 大島九州男君                 風間 直樹君                 室井 邦彦君                 森 ゆうこ君                 浅野 勝人君                 加納 時男君                 川口 順子君                 小池 正勝君                 佐藤 正久君                 丸山 和也君                 山下 栄一君                 山内 徳信君    事務局側        第一特別調査室        長        杉本 勝則君    参考人        拓殖大学海外事        情研究所教授   川上 高司君        日本経済新聞社        編集局国際部編        集委員      春原  剛君        早稲田大学大学        院アジア太平洋        研究科教授    植木千可子君        青山学院大学国        際政治経済学部        教授       高木誠一郎君     ─────────────   本日の会議に付した案件 ○国際問題及び地球温暖化問題に関する調査  (「日本国際社会における役割リーダーシ  ップの発揮」のうち、アジア安全保障及び我  が国の軍縮外交アジア安全保障への我が国  の取組)について)     ─────────────
  2. 石井一

    会長石井一君) ただいまから国際・地球温暖化問題に関する調査会を開会いたします。  国際問題及び地球温暖化問題に関する調査を議題といたします。  本日は、「日本国際社会における役割リーダーシップの発揮」のうち、アジア安全保障及び我が国軍縮外交に関し、アジア安全保障への我が国取組について参考人から御意見をお伺いした後、質疑を行います。  本日は、拓殖大学海外事情研究所教授川上高司参考人日本経済新聞社編集局国際部編集委員春原剛参考人早稲田大学大学院アジア太平洋研究科教授植木千可参考人及び青山学院大学国際政治経済学部教授高木誠一郎参考人に御出席をいただいております。  この際、一言ごあいさつ申し上げます。  各参考人におかれましては、御多忙のところを本調査会に御出席いただきまして、誠にありがとうございます。  本日は、各参考人から忌憚のない御意見を賜りまして今後の調査参考にいたしたいと存じますので、何とぞよろしくお願い申し上げます。  本日の議事の進め方でございますが、まず川上参考人春原参考人植木参考人高木参考人の順でお一人二十分程度御意見をお述べいただいた後、午後四時ごろまでをめどに質疑を行いますので、御協力のほどよろしくお願いいたします。  なお、御発言は着席のままで結構でございます。  それでは、川上参考人から御意見をお述べいただきます。川上参考人
  3. 川上高司

    参考人川上高司君) ありがとうございます。  拓殖大学川上でございます。本日はよろしくお願いいたします。  本日は、アジア安全保障への我が国取組に関し、参考人として招致され、個人的な所見を述べる機会をちょうだいいたしましたことを、石井一会長並びに各理事、各委員の皆様にまず感謝を申し上げます。  冷戦後の二十世紀末から今日まで二十年余りがたった現在、長引くテロとの戦い、それから百年に一度と言われる世界経済金融危機などでアメリカの一極体制が終わり、アメリカ外交問題評議会リチャードハス会長によりますれば、世界は無極化時代が到来するという具合に言われているわけであります。  無極化時代特徴は、アメリカそれからEU、日本などの旧来の先進国相対的パワーが低下する一方で、ブラジル、ロシアインド中国、BRICsですね、それに代表される新興国が台頭してきているところにあるわけであります。その結果、国際社会には新旧のパワーセンターが群雄割拠することになり、その新たな世界秩序パワーの集中ではなく分散にその特徴があるということで、無極化システムが形成される過程においては、アメリカ相対的パワーが失速する中、ロシア中国などのパワーセンターが台頭し、一層世界システム混沌としたものになると考えられます。この体制の下では、経済的繁栄政治的安定が求められ、パワーセンターの間での協調コンサートオブパワーと申しますが、その協調がなされるため大規模紛争は起こりにくいとされております。  そういった中、アジア地域政治経済安全保障のすべての分野で過去と比べるとはるかに大きなウエート国際社会の中で占めるようになってきています。特に、その経済力世界成長センターと称され、ASEANプラス6が世界のGDPの二三%、APECが五三%を占めます。特に、未曾有の経済危機の後に、アジア成長センター中心とした景気回復世界経済を牽引する役割も果たしてきているわけであります。  安全保障面でいいますと、中国及びインド軍事力は著しく増強されています。  中国は、毎年二けたで軍事費を増加させ、装備近代化を行っていますが、その意図はいまだ不透明であります。また、中国空母保有を目指し、対衛星兵器サイバー攻撃能力強化しています。さらに、海南島の海軍基地強化するなど、核戦力の量的、質的向上を図っているわけであります。  また、インドは、二〇〇九年で見るならば、国防費を前年度比で三五%増加させ、空母も二隻体制を目指し、核戦力も着々と増強しているわけであります。  一方、北朝鮮に目を向けてみますと、核に向けての路線を着々と進み、弾道ミサイルの技術も高めているわけであります。  このように、アジア地域では経済的のみならず軍事的な相対的ウエートが増しているという事実があり、国際社会の一員としての日本安全保障政策の動向が着目されるゆえんであるわけであります。  アジア安全保障といいますと、大国同士による紛争の蓋然性が低下する一方、グローバルで普遍性特徴とする次元、グローバルな次元、それから地域的な特性の次元地域的次元との複合的な性格を有しております。  グローバルな次元では、環境気候変動自然災害新型インフルエンザ貧困や飢饉、それから経済金融危機などの非伝統的脅威に対する課題が顕在化するようになっています。  地域的な次元では、大量破壊兵器ミサイル拡散国際テロ、海賊や、二〇〇九年の北朝鮮によるミサイル発射核実験に見られるような朝鮮半島情勢を始めとする伝統的な脅威に対する課題があるわけであります。  地域的な次元で見ますと、日本から見ますならば、日本近郊アジア、これをサブリージョンと呼ぶならば、アジア太平洋リージョン、それらを超えた広い領域エクストラリージョン、その三層から成り、この三つの層から成る舞台を統合した地球規模安全保障全体を視野に入れて戦略を立てて政策を遂行すると、その必要性があるわけであります。  すなわち、日本本土防衛中心として考えるのであればサブリージョン中心に考え、アジア共同体視野に入れるのであればリージョンを注視し、また、アフガニスタンやソマリアなどを考慮するのであればエクストラリージョンを視座に置かなければならなくなります。  しかしながら、日本安全保障を考えた場合には、グローバルな次元よりも地域的な次元、また地域的次元の中では日本近郊アジアであるサブリージョンが最優先され、それにリージョンエクストラリージョンの順で優先順位が置かれるというのは当然でありましょう。  そう考えてくるならば、日本アジアの諸問題に対処する際に中国位置付けが極めて重要になってくるわけであります。  冷戦期にはソ連及び中国日米両国安全保障上の敵国でありましたけれども、現在では中国位置付けが非常に難しくなっているわけであります。現在、中国日本にとり経済的に相互依存深化する一方であり、必要不可欠な友好国となっているわけであります。しかしながら、中国艦船領域侵害資源獲得のための強硬策日本死活的国益へつながる問題であります。また、政治外交面でも、中国日本国連安全保障理事会常任理事国入りを阻止するなど、日中間で摩擦が生じる場面も少なくありません。つまり、日本にとって中国とは経済面ではなくてはならない友好国であり、軍事面では潜在的敵国として位置付けられます。  この点、アメリカはどうかといいますならば、増強する中国軍事力に対してアジアでの軍事プレゼンス維持することでヘッジする一方、中国に関与、エンゲージメントをしております。その結果、中国が責任ある利害共有国、レスポンシブルステークホルダーとして振る舞う限り、中国影響力増大を歓迎する姿勢を示しているわけです。つまり、アメリカはグローバルな問題と地域の問題を解決する上で中国協力をより必要としているわけであります。  アメリカの対中政策は、オバマ政権発足時、米中共同覇権G2時代の到来かとまで言われるほどまで接近するかに見えた時期もあったわけなんですが、しかしながらオバマ政権は今年になり、二月終わりに出された四年ごとの国防戦略、QDR二〇一〇、それから四月初めに出されました核態勢の見直し、NPR二〇一〇で中国とのG2体制共同覇権体制にシフトせず、これまでどおり中国を軍事的にヘッジするということを明確化したわけであります。  中国日本潜在的脅威として存在する限り、日本安全保障にとり日米同盟は不可欠であります。また、アメリカにとって日米同盟アジア地域への影響力を確保する礎となっています。さらに、中国アジアにおいてアメリカ覇権に挑戦する国家として台頭してくることを考えてみれば、アメリカ日本にとってなくてはならない同盟国と言えましょう。また同時に、日米同盟は東アジアの平和と安定のための国際公共財として機能し、日本及びその他のアジア太平洋諸国にとって安全保障繁栄の基礎となっていると言えましょう。このような日米同盟必要性は、日米両国とも十分に理解しているのは言うまでもありません。  それでは、アジア太平洋を越えたより広い領域エクストラリージョンの諸課題への日本対処とその日米関係への影響を考えると、そこでの日本の積極的な貢献日本国際的影響力増大に資し、日米関係深化にもつながり、ひいては二十一世紀日本国家戦略において重要な位置を占めることになりましょう。  しかしながら、エクストラリージョン日米間において問題となるのが、日米間で対処すべき脅威発生源たる地域的な優先順位をめぐる認識の相違であります。アメリカにとりまして優先順位が高いイシューは、対テロ作戦の遂行、それからWMD拡散防止など、特定の地域的な焦点を持たない地球規模エクストラリージョン課題への対応であります。  一方、日本にとっての優先課題近隣諸国からの伝統的な脅威対処になります。アフガニスタン政策に代表される地球規模エクストラリージョン課題中国北朝鮮政策に代表される日本近郊アジア、つまりサブリージョン課題について、日米間の優先順位脅威認識のギャップはある程度避けられない問題であります。したがいまして、その温度差が全体としての安全保障に関する日米間の信頼関係を著しく傷つけることのないように、日米間で十分な政策的コミュニケーションが必要となり、そしてそれができれば日米同盟深化となるわけであります。  次、日米同盟深化なんですが、日米同盟深化には水平的深化、それから垂直的深化があります。  水平的深化というのはソフトパワー面での深化でありまして、テロリズム、地球温暖化問題、資源・エネルギー問題、感染症貧困国への支援、金融安定化問題、大量破壊兵器管理廃止等のいわゆるグローバルイシューにおける日本貢献であります。これらは日本の得意とするソフトパワーをより生かせる分野であり、日本が独自に、あるいは米国協力して果たすことの簡単な、容易な分野であり、日本の果たすべき役割は多々存在するわけであります。  一方の垂直的深化とはハードパワー面での深化であり、この分野では日米共同作戦計画及び相互協力計画の検討、日米共同演習訓練強化調整メカニズム構築日本への武力攻撃に対しての共同対処行動弾道ミサイル防衛などでの日米協力であり、このほか情報の共有相互運用向上在日米軍基地自衛隊基地共同使用などを通じて自衛隊米軍統合化へ向かう密度の高い深化のこと、これが垂直的統合だと考えられます。  この垂直的深化水平的深化は、米国戦略的ニーズ日本戦略的ニーズを照らし合わせることによりバランスよく行われる必要があると考えられます。  近年になり、アジアには政治的ダイナミズムが起こっておるわけです。韓国では李明博政権米国との結び付きを強め、北朝鮮では金正日朝鮮労働党書記長健康状態が悪化し、政権不安定化の兆しがあるわけです。また、中国経済成長日本を抜きつつあり、そのパワーの興隆には著しいものがあります。また、台湾馬英政権中国への接近が顕著となっています。さらに、日本では、長期間に与党でありました自民党が下野し、民主党政権が誕生しているというわけであります。  このような中、将来にわたる中国軍事力増強はどのように日米同盟影響を及ぼすのかというのが問題になるわけですが、この点に関しまして、少々古くなりますが、第二次アーミテージ・ナイ・レポートは、中国の台頭で将来的にアメリカ一極覇権維持は難しい、日米同盟をいかに維持するかが課題となり、その変化必要性を説いております。その上で、同レポートはアジア地域三つシナリオを提示しています。  第一は、日米対中の現状維持シナリオであります。これは日本にとって好ましい状態であるわけですが、今後アメリカが対中ヘッジを行い、アセットが欠如する場合には、アメリカ日本に対して応分の負担を求めるため、日本防衛予算の増加若しくは憲法改正視野に入れた行動を取る必要性に迫られると考えられます。  さらに第二は、米中による共同覇権であります。米国が軍事的にも対中融和政策を取り、ヘッジ戦略を放棄した場合でありますので、米中両国によるコンサートオブパワーが行われ、米中共同覇権体制に移行する場合であります。この場合、日本は何もせずアメリカ政策に従属するか、若しくは中国に対して従属するか、若しくは日本独自で中国との軍事的脅威対処するか、こういう選択肢になるでありましょう。  第三は、アメリカ主導性維持しながら、その下で日本、オーストラリア、インド、シンガポールといった諸国秩序維持や形成に参画するアメリカ主導のリージョナル・パックス・コンソルティス、地域的覇権体制、この三つが考えられるわけであります。  この中で日本が取るべき政策は、第一の現状維持シナリオが最も好ましいと考えられるわけであります。もし米軍戦力が低下するのであれば、日本としては自国資源でそのパワー真空部分を穴埋めせねば中国に対して戦略的に劣勢に立たされることになりましょう。また、在日米軍再編協議で合意されました役割、任務、能力、RMCの分野での日本役割増大させることにより、日本日米同盟強化する形での独自の防衛力強化が可能となり、米国日本戦略にビルトインさせることができる可能性が高まり、日本国益は追求しやすくなると考えられます。  このように考えるならば、日本にとってはいかに米国中国に対してヘッジさせ、中国を責任あるステークホルダーにするかということが政策となるのではないかと考えられます。  沖縄普天間基地をベースとする三一海兵遠征隊、三一MEU役割は、朝鮮半島有事台湾海峡有事尖閣列島、宮古列島など先島諸島への有事への対処だとされております。韓国外交安保研究院尹徳敏教授が、朝鮮半島有事では沖縄海兵隊最初に投入される、もし普天間移設先がグアムになった場合、韓国安全保障に深刻な影響が出ると述べるように、在沖海兵隊朝鮮半島有事の際には重要な役割を果たし、この問題は我が国だけの問題ではなく、朝鮮半島全体の問題にもなっているわけであります。  それと同様、台湾海峡有事を考えた場合には、やはり海兵隊三一MEU中国人民解放軍PLAよりも先に台湾に投入されれば、PLA米軍との紛争を覚悟せねばならず、紛争のエスカレーションは回避されると考えられます。  したがいまして、三一MEUの持つ対中抑止効果は極めて高いと。また、中国尖閣列島や宮古などへの先島諸島に上陸を試みる場合には自衛隊と共同して対処することになりますが、自衛隊には単独で対処する能力装備もまだ十分でないため、三一MEUとの共同対処は不可欠であるという状況にあります。  このように考えますならば、海兵隊の三一MEUは対中抑止力として不可欠であり、活用すべきであることが理解できるわけであります。  日本は、中国との戦略的互恵関係構築に努力しているわけですが、いまだに成果が上がっていません。そのためには、日米推進力となって地域の安定を確保する信頼醸成メカニズム構築して、その中に中国を組み込んでいく必要も十分に考えなくちゃいけないことだと考えられます。  この信頼醸成メカニズムでまず取り上げるべきことは、日本安全保障観点からは、東シナ海のエネルギー問題及び尖閣列島の問題であります。東シナ海におけるガス田白樺開発などに見られるような中国海洋活動が今後も活発化した場合、この問題をめぐる日中間政治的緊張軍事的衝突にまでエスカレートするおそれがあります。このような紛争軍事的衝突に拡大しないためにも、日米中を構成メンバーとする信頼醸成メカニズム構築も急務であると考えるわけであります。  現在、日本は、日本独自で国益を守る能力を持ちません。その能力を持つ持たないかは、今後の日本を取り巻く戦略環境変化日本政府の判断にゆだねられていると考えられます。ここで問題は、日本に対してますます厳しくなると予測される戦略環境の中で、これまでのような日本は盾、アメリカは矛とする日米安全保障体制でやっていけるのか、もしやるとするならば日本はどうやれば自国安全保障体制を確保するのかといった日米安全保障体制同盟管理の問題となると考えられます。  どうも御清聴ありがとうございました。
  4. 石井一

    会長石井一君) ありがとうございました。  次に、春原参考人から御意見をお述べいただきます。春原参考人
  5. 春原剛

    参考人春原剛君) ありがとうございます。ただいま御紹介にあずかりました日本経済新聞国際部編集委員というのをやっています春原と申します。  日経新聞に入って二十五年ぐらいになりますが、そのうちの約半数、十二年ぐらいをアメリカ、しかもワシントンDCで過ごしまして、アメリカに多数の現オバマ政権高官を始め知り合いがいるということもあって、本日こういう場に呼ばれたのではないかというふうに思っております。  今日、ほかの三人の参考人方々はそれぞれもう専門家でいらっしゃるので、全体的な構造とか日米同盟あるいはアジア安全保障環境に関しては皆さんのお言葉をお聞きすれば十分ではないかと思いますので、私は今、川上先生の方からちょっと最後に話がありました日米同盟管理というか、これからの課題点についてある程度絞ってお話をさせていただきたいと思います。  鳩山政権が誕生して最初に掲げたスローガン、緊密で対等な日米関係、これがやはりオバマ政権の幹部の人間には、一体何を意味するのかということが、非常に、去年末から今年、現時点においてもいまだ恐らく、アメリカ側はまだ混沌としているのではないかと。二月にも私は訪米して何人かのオバマ政権高官とも話をしてきたんですが、彼らと議論をしていても、やはりそこが依然として釈然としないと。  私は、彼らに言ったのは、いずれにしても、アメリカ日本同盟関係というのが安保改定を経て五十年たっていて、ある種のやっぱり一つの節目を迎えているのではないかと。鳩山政権がたまたま誕生してそういうスローガンを掲げたわけなんですが、仮にこれが民主党政権が誕生しなくても、あるいは鳩山由紀夫という人が総理大臣にならなかったとしても、この時期に恐らく日米同盟というのはやはりもう一回体質改善をしなきゃならないという時期に来ているんじゃないかと。そういった観点是非オバマ政権側鳩山政権との話合い、協議意見のすり合わせをしてほしいというふうに私は傍観者の一人として申し上げました。  今日、お手元に配った紙に沿ってお話をさせていただくと、なぜ私が日米同盟がある種の過渡期というか変革期にあるかというふうに思うかというと、やはり一つは、これも川上先生の方からもお話がありました盾と矛というのがよく言われますが、長島防衛政務官言葉を借りれば、基地コスト日本が提供し、アメリカがいざとなったら有事のときに米軍の兵隊の命を差し出すと、つまり基地コストと命の交換なんだと。日米安保条約の五条と六条にそう書いてありますが、それはやはり、日米同盟の片務性とよく言われますが、片務的な同盟であって、普通は同盟関係というのは、お互いが血を流したときにお互いが助け合うというのが同盟の基本的な関係でありまして、この日米同盟関係というのは非常にそういう意味で特殊であると。これまで冷戦期を通じ、あるいはポスト冷戦期を通じ、それが今までは何とか維持できてきたわけなんですが、安全保障環境アジアで非常に劇的に変わりつつあるということを考えると、そうした片務的構造がこれからも通用するのかということがまず挙げられると。  第二に、人的なパイプ、これは今日御列席の委員方々にも直接関係するんですが、例えば日米議員交流というのがこれまでずっとあったんですが、最近では相当細っております。特にアメリカ側から日本に来られる議員の数というのは、もう毎年、年に一けた台、ややもすると五人以下という状況が続いているんではないかと。アメリカ側の、これは民主党、共和党問わず、有識者から私はジャーナリストとして相談を受けるんですが、何とかしたいという声があるんですが、残念ながらなかなかそれがうまく進んでいないと。日本側とすれば、これも対等な日米関係に少し関連するんですが、なぜこちらからばかり行かなければならないのかということだと思うんですが、例えばアメリカ下院議員、五百人近くいますが、ほとんど海外に行ったことがないという人が増えているわけですね。そうした方々をいきなり日本に招くということを考えるよりも、やはりこちらからある程度は定期的に足を向けてお話をするということが必要なんじゃないかと。  今般のオバマ政権鳩山政権のぎくしゃくした空気も、簡単に申し上げれば、やはり双方がお互い何を考えているのか全く分からないという状況が今続いているからだと思うわけです。それを解消するにはやはり地道な、これからますます政治主導の名の下に責任が問われるであろう議員方々の率直な意見交換というのが非常に大事になるんじゃないかと。  これは政界だけにとどまらず、例えば日米財界人交流というのもあるんですが、当初、発足当時はアメリカの名立たる企業と日本の名立たる企業のCEO、社長、会長が出ていたんですが、昨今はもうアメリカは本社の社長、CEO、会長は一切出ていないそうです。お聞き及びの方も多いと思いますが、日本の支店長あるいはアジアの責任者、そうした格下の人が出ているにもかかわらず、日本からは相変わらずCEO、社長、会長が出ていると。アメリカ側の財界の目はますます中国市場に向いて、やはりここでも日米経済交流というのが広い、高い視野意見交換をするということがますますなくなっていると。  この一つ、二つの例が示すように、人的なパイプ、意見交換の場というのが非常に少なくなっていると。これは日米同盟体制を支えるインフラストラクチャーが非常に脆弱化している一つのあかしではないかと思います。  第三に、では、その政策を今までどういう人たちがやってきたかといいますと、ジャパン・ハンドとよくアメリカ人は言いますが、日本専門家の人々が日本との関係を注視していて、ワシントンにおりますとよく分かるんですが、ほとんどアメリカの中枢の人たちは、九〇%は日本のことを知らない、日本に関心を持っていないというのが実態であります。残る一〇%の人たちが、ジャパン・ハンドという枠でくくれるかどうか分かりませんが、ある程度、アジア太平洋日本に関心を持って何とかしなきゃいけないと考えていると。  代表的なのが、皆さんもよく御存じの共和党の前の国務副長官だったリチャード・アーミテージ、前のブッシュ大統領の補佐官だったマイケル・グリーン、共和党系の人だけではなく、現在のオバマ政権アジア担当のキャンベル国務次官補、あるいはそのキャンベルさんのお師匠筋に当たるハーバード大学のジョセフ・ナイ教授、あるいはウィリアム・ペリー、現在スタンフォード大学の教授、元国防長官ですが、そうした人たちが今まで日本との同盟関係というのを注視していたわけなんですが、なかなか、今申し上げたように九割が日本に関心のない中でどういうふうに育てていくかというのを見ていますと、突然変異で誕生するケースが多いと、簡単に言ってしまうとですね。定期的に組織的に日本をケアする人が生まれているわけでもない、あるいは生み出そうという意思がアメリカにあるわけでもないということです。  ここに三系譜と書きましたが、国務省の伝統的な、菊クラブとよく言いますけれども、日本語を専門として日本の実情を学ぶ国務省の外交官キャリア、あるいは在日米軍を経験した米軍関係者、あるいはライシャワー元駐日大使に代表される学界の人々、この三系譜があると思うんですが、これがそれぞれかなり細くなっていると。  そんなことは関係のないことだということを言われる方もあるかもしれませんが、やはり日本との関係をどうしようかといったときに、ホワイトハウスあるいはペンタゴン、国務省で大統領、国防長官、国務長官を前に意見交換をしたときに、いや待ってくれと、日本でこういう意見があると、日本でこういうことを言うやつがいるんだと、そういうことを言ってくれる人間がいるかいないかというのが極めてアメリカ政策決定プロセスにおいて重要であるということは歴史が証明しております。  古くは一九七〇年代のニクソン訪中、その前のキッシンジャー極秘訪中等々を考えてみましても、やはりその当時の生き証人に聞くと、日本に事前に知らせなくていいのかという声を上げた人はごくごく小数で、ほとんど抹殺されたそうです。ですから、やはり日本の外交を考えたときに、アメリカにそうした人脈を脈々と築いて日本の心情をきちんとアメリカのトップ、中枢に伝えるような人がいなければいけないということだと思いますが、なかなかその現状には至っていないと。  最後に、広がる日米認識ギャップと書きましたが、英語でビッグブラザー、スモールブラザーと彼らはよく最近言っていますが、アメリカが長兄のように振る舞って日本が末弟のようにただ唯々諾々と従うと。そうした関係が、これは一番最初に申し上げた片務性ともちろん直結するんですが、そうした関係でいいのかというのが日本側でここ数年随分議員の先生方を始め我々マスメディアの間でも議論があるとは思いますが、一方で、アメリカでは最近新しいフリーライダー論、責任逃れの日本という言葉も聞かれます。  かつて貿易戦争時代日本は貿易、経済立国に全精力を集中し、安全保障の負担をアメリカにおっかぶせている、ゆえにフリーライダーだという言い方がされましたが、現在のフリーライダーはより深刻に、安全保障の負担を意図的に逃げていると。例えば防衛費のGNPパーセンテージのことも含め、それでいいのかというアメリカ側の実は不満が少しずつ少しずつ高まってきているわけです。この両者を御覧になれば分かるように、一向に歩み寄る気配はないわけでありまして、こんな状態のまま日米同盟が長く続くのかと言われれば、恐らくそれは非常に難しいであろうというふうに私は非常に悲観的にならざるを得ません。  第二のパラグラフで同盟管理の制度疲労というところに移りますが、これまでの日米同盟というのは、やはり良くも悪くも自民党の重鎮の方々と外務省を中心としたチームが、アメリカのペンタゴン、国防総省のアジア戦略を受け持つ人間とのやり取りによって管理してきたと。X関係と書きましたが、これはねじれ現象ということなんですが、本来であるならば、アメリカの国務省と日本の外務省、アメリカの国防総省と現在は省に昇格しました日本の防衛省、自衛隊が、それぞれの立場からつかさつかさに応じて意見交換をし、それぞれの考えをすり合わせてより具体的、理想的な協力体制を築くのが本来のあるべき姿だと思うんですが、実際にはそうではないわけです。このやり方が果たしてこれまでも通じてきたのだからこれからもいいのかと。恐らく私が推測するに、鳩山総理がおっしゃられている対等で緊密な日米関係という言葉の中にはこうした問題意識もあるんだろうというふうに思います。  それに関連して言うと、やはり政治の側の、これは特定の政党を批判するわけではありませんが、政治の側の意識としても、外交は票にならないと、外務大臣は総理大臣になるためのステップであるというような意識がこれまで私は傍観者として見ていて非常に強く感じました。そうしたことでいいのだろうかと。やはり外交安全保障というものをより政治がこれまで以上に真剣に取り組んでいただかないと、日米同盟体制管理というのはなかなかままならないものになるんじゃないかと。  それから、後にもう少し詳しく申し上げますが、インテリジェンス、最近ややはやりですが、情報と日本語で書いてしまうとインフォメーションと区別が付きませんが、もうちょっと具体的に言うと諜報というか、よりセンシティブな情報を日本がこれからどういうふうに収集し、それを加工、分析して日本の安全の維持のために使っていくのかということをやはりもっともっと考えなければいけないと。  一九九八年に北朝鮮がテポドンミサイルを我が日本列島の上空に打ち上げたときに、御記憶の方も多いと思いますが、当時の小渕政権日本の情報収集衛星、日本ではそう言っていますが、海外ではスパイ衛星と言われているものを打ち上げました。  そのときにアメリカは相当抵抗したんですが、結果的にそれを受け入れた。当時もキャンベルさんは国防副次官補でありまして、今の国務副長官だったスタインバーグさんはホワイトハウスの安全保障問題の副官でした。彼らが中心となって、結果的に日本のスパイ衛星、独自の国産スパイ衛星導入を是認するんですけれども、そのときに日本側が伝えていたことというのは、日本政治家にCIAやペンタゴンが外務省や防衛省にくれる情報を見せられない、ユア・アイズ・オンリーという英語がありますが、あなただけにこれをお見せするけれども、日本政治家には見せないでくれと、例えばそういうことを言われるんだと。それではしかし、政治主導のこれからの日本の政界でとてももたないと、官僚が決断するわけにはいかないと、政治家の方々に決断していただくためにはその具体的な情報、物をお見せしなければいけない、それには国産のスパイ衛星が必要なんだと、そういう葛藤があったというふうに聞いております。  それも二番目のその政治の意識と連動するんでありますが、そうした情報を、マスメディアの人間の私が言うのはなんですが、マスメディアに安易に流すような体制あるいは意識では、到底日本安全保障は守れないということだろうと思います。  最後に、この項目の締めくくりとして、これは安倍晋三政権が目指したものでありますが、NSC、国家安全保障会議とかCIA、中央情報局、あるいはFBIのような、連邦捜査局のようなそうした組織をもう一回国家体制の見直しの一つのパターンとして考えないといけないのではないかと。  例えば、今の鳩山政権オバマ政権となかなか良好な意思疎通ができない一つの理由も、鳩山官邸に十分なスタッフがそろわず、鳩山総理あるいは鳩山総理側近のお考えがなかなかアメリカ側に縦横無尽に伝わらないという実態があろうかと思います。これなどは、NSCなる組織をつくればもう少しうまくいくのではないかと。  CIAというのは、必ずしも我々がスパイと聞いて想定するジェームズ・ボンドのようなものではなく、CIAのほとんど九割、八割の活動は、オープンな情報を丹念に集めてそこからある種のトレンドを見出していく情報分析作業であります。そうしたものを、特にまだ冷戦構造が残ると言われる東アジア太平洋日本が先導的にやるということは、必ずしも憲法九条とか専守防衛の精神を侵すものではないのではないかと私は思います。  最後に、ややこれも耳の痛い話ではありますが、FBIの主任務の一つとして、アメリカでは国家機密情報に触れる要人のバックグラウンドチェックというのを相当時間を掛けてやります。三か月ぐらいは最低やるそうです、国務長官、国防長官を始めとして。そういう方々のチェック体制というのがあるからこそ、アメリカ国家機密を守れているわけです。  日本で、翻って、じゃ例えば警察庁がそこまでやっているかというと、とてもそこまではやっていないであろうと。なかなか政治家の方々からも、自分の身辺をきれいに調査していいよというのは言い難いとは思いますけれども、やはりこれまでのいろんな、多々事件、事故を見てみますと、日本安全保障にかかわる情報に触れるようなポジションに就かれる場合においては、最低のチェックを通らなければやはりいけないのではないかと。そうでなければ、同盟国であるアメリカから十分な信任を得られないのではないかというふうに常々私は思っております。  三番目の同盟機関化というのは、同盟のインスティチューショナライゼーションといいますが、今まで日米同盟はどっちかというと個人的なものに頼っていました。例えばロン・ヤス、中曽根・レーガンあるいはブッシュ・小泉と。それが果たしていいのかと。より、もっと機関、だれが大統領になろうが、だれが総理であろうが、だれが外務大臣であろうが、だれが外務次官であろうが、もっと信頼度の高い同盟関係にしなきゃいけないんだろうと。  湾岸戦争、イラク戦争のときにロンドン・エコノミストが、アクシス・オブ・グッドという実は記事を書きまして、これはブッシュさんが言ったアクシス・オブ・イーブル、悪の枢軸を皮肉ったやつなんですが、つまりアメリカ、イギリス、日本、善の枢軸だけれども、やはりブレアと小泉は大きく違うと。なぜならば、結果的に間違うわけですが、ブレアさんは一生懸命ブッシュのイラク攻撃を支持するよう欧州各国を説いて回ったと。しかるに、小泉総理は何をやったかと。アジアで何もやっていないではないかということをその当時のエコノミストは書いておりました。必ずしもそのとおりにする必要はないと思いますけれども、やはり個人の関係に頼ってしまうとなかなか底上げができないという実態があると思います。  V字と逆V字というのも、これはキャンベルさんが昔言ったんですが、昔は日米同盟というのは事務方が支えるV字だったわけですが、ブッシュ、小泉で逆V字になったと。一番彼が恐れているのは、ブッシュさんと小泉さんが引退した後に、結局上も離れて日米が何となく疎遠になるんじゃないかと。これは文字どおり、皮肉なことに彼の予言したとおりに今なっているわけです。アーミテージ・ナイ・レポート、さっき川上先生からもお話がありましたが、これも、やはり彼らの真意は同盟をより機関化するということにあったんだろうと私は思っています。その機関化の三要素としてここに書いたのが、戦略、ストラテジーあるいは国家ビジョン、それからインテリジェンス、情報ですね、それから実際の軍事行動における日米協力体制、この三つをやっぱりきちんと共有しているから米英同盟はいまだにアメリカ人もスペシャルな同盟だと言うんであって、それを単に米英同盟日米同盟のモデルにしろといっても、この三つをきちんとやらなければ日米同盟はなかなかその域には達しないということだろうと思います。  最後に、ブッシュさんの末期にバリュー・シェアリング・アライアンス、価値共有同盟ということを彼らは随分言いました。日本日米同盟重視派もそれに随分追従したように思います。これは、共産中国に対して民主国家である日本が、民主主義、言論の自由、市場経済、宗教の自由等々、根源的なバリュー、価値観をアメリカ日本はシェアしているんだから、先ほど川上先生の方からもありましたけれども、日米中のトライアングルを考えたときに、米中共同の覇権体制なんていうのはあり得ないですよねということをアメリカのネオコンサバティブ、新保守主義派の人たちがつくり上げた一つのレトリックなわけです。  しかしながら、皆さんも御案内のように、日本には多くの共通の価値観が中国とあると私は思います。儒教的な教え、漢字、仏教等々あるわけで、これは当時のこれを推奨していたマイケル・グリーンなりアーミテージなりに私は個人的に申し上げたのは、これはもろ刃の剣ですよと、価値共通と言ってしまうと日中の接近ということもあり得るんじゃないですかと。実際、私も何度か日本の大学で教えているんですが、二百人ぐらいの生徒に必ず講義の最後にこのことを質問すると、アメリカと価値を共有していると思いますかというと、少なくとも私が教えた生徒たちは、ほとんどが手を挙げません。それをアメリカ人は聞いてみんな驚きますが、それが実態だろうと思います。  最後に、少し駆け足になりますが、では、鳩山政権が掲げる対等な日米関係のためには何をしたらいいかと。  御案内のように、第一次世界大戦で日英同盟というのを我々は構築したわけなんですが、結局、このときの日英同盟は、当時のロシアあるいはドイツに対するヘッジというか対抗措置として、アジアにおける勢力としての日本をイギリスが利用したということだろうと思います。つまり、日本という地の利を利用したと。  最近、アメリカの太平洋軍の海兵隊司令官であるスタルダーという人が来て、ここで沖縄になぜ海兵隊がいなければいけないかと。ジオグラフィーマターズと英語で彼は言いました。つまり、地の利ですね。しかし、地の利だけに頼った同盟というのは、日英同盟の教訓でも分かるとおり、必ずどこかで解消してしまうわけです。そうではない、中身をやっぱりもっと詰めていかなければいけない。  そのためには、次に書きました政治的、社会的インフラ整備、例えばポリティカルアポインティーと呼ばれる政治任命制度ですね、こうした人たちが先ほど申し上げた日本版のNSCなぞに入り、そのための人材育成の機関というのを例えば各政党さんでシンクタンクとしてつくっていただくとか、そうしたことをしない限りなかなか日本にそうした人材は育たないであろうというふうに思います。  アジアの中の日本というのは、先ほど、これも川上先生がおっしゃいましたが、日米同盟はもはやアジア太平洋の安定公共財であるという認識があるわけなんですが、さらにもう少し、日本の利害だけに絞ってみますと、日本経済がこれから発展していくためには、内需という概念をより広く見て、日本国内だけではなくアジア全域の内需を日本がうまく活用してこれからも活力ある経済をつくっていくと。これは御手洗さんを始め経団連の重鎮の方々が最近よく口にされている言葉です。そのためにも、アジア太平洋の安定と繁栄というのをある程度軍事力でもってヘッジしながら維持していかなければいけないというふうに思います。  その同盟強化の具体的な道筋として私が考えるのは、ここに書きましたとおり、インテリジェンスの強化であり、軍事的な抑止力の堅持であり、一方で、これも鳩山総理がおっしゃっている東アジア共同体のような思想に基づくものだと思いますが、やはりアジアと西洋の懸け橋、通訳としての日本役割というのはこれからますます求められるんであろうというふうに思います。  ここに幾つか書きましたが、例えば満鉄調査部というのがかつて満州鉄道にありましたが、彼らが調べた膨大な中国に関する情報は、第二次世界大戦終了時にロシアアメリカがほとんど持っていったというふうに言われています。そうした情報はやはり日本独自の情報として得られたわけですから、日本に情報収集能力がないわけではないと思います。  懸け橋のところで旧帝国日本の教訓と書きましたのは、昨今の中国の若手学者あるいは中国人民解放軍の若手将校クラスのいろんな文献なり話を総合しますと、どうも戦前の日本の帝国軍人が言っていたようなことを非常に多く言っていると。例えば石原莞爾が言った五族協和であったり、あるいはアメリカとの最終戦争であったり、中国独自のヘゲモニーを確立するんだとか、アメリカには安易にここの地域に足を踏み入れさせないとか、どうもかつての旧帝国陸軍が言っていたようなことが非常に多く聞こえてくると。そういう道は間違いますよということを、やはり我々は隣人として中国に伝えなきゃいけないということも言えるんじゃないかと思います。  以上、時間が少し超過しましたので、ここで終わらせていただきます。  御清聴ありがとうございました。
  6. 石井一

    会長石井一君) 次に、植木参考人から御意見をお述べいただきます。植木参考人
  7. 植木千可子

    参考人植木千可子君) どうもありがとうございます。  御紹介にあずかりました早稲田大学の植木千可子と申します。本日はこのような機会を与えていただきましたことを大変光栄に思っております。どうもありがとうございます。  私の専門は国際政治安全保障ですので、そして地域としては日米中の関係を見ておりますので、今日は特にそこを中心お話しさせていただければというふうに思っています。  それで、まず、この話をするときの問題意識ですけれども、そこだけ最初に申し上げておきたいと思います。  大きな問いかけとしては、卓上にレジュメを御用意いただいていて、一つは四角がかいてある方で、もう一つは、私が昨年、委員として策定にかかわりました、安全保障と防衛力の懇談会の特に策定に深くかかわった部分の序章と一章の分を御参考までに置いてありますので、見ていただければというふうに思います。  問題意識ですけれども、アジアにおいて安全、安定というのを一体どういうふうにして確保していったらいいのかというのが大きないわゆるビッグクエスチョンです。  具体的な問題としては、中国世界の安定、そしてまた、地域の安定に寄与するような行動を自ら選択するように促すにはどうしたらいいのかということです。二つ目の問いとしては、アメリカのプレゼンスを安定的に維持するためにはどのようにしていったらばよいかということです。三番目には、一番目と似ておりますけれども、中国の台頭というものを地域そして日本の利益に結び付けるには一体どうしたらいいのか。こういったことを念頭に置いて考えてみたいと思います。  最初に、もう結論の方から先に言ってしまうと三つございます。  一つは、非協調的な行動を取ること、これが要するに割に合わないという世界をいかにつくっていくかということです。よく一般的な人間関係でも、あの人はもう失うものがないから強いよねとかということを言いますけれども、それであっては国家は困るので、プラスもマイナスも、失うことがいかに大きいかということをつくっていくことが大事だと思います。  具体的には三つあって、一つは抑止力、これはマイナスの意味でのコストですけれども。もう一つ経済的な相互依存関係。これは、協調的にしていれば手にすることができたかもしれない恩恵を非協調的にしたことによって失うというところです。貿易もそうですし、経済だけでなく技術移転、感染症の対策の問題あるいは環境の問題、そういうような大きな恩恵を協調的な関係から得るというところ。三番目として、これは余り言われておりませんけれども、安全保障上の相互依存関係をいかに構築するか、これが恐らくこれからの非常に肝心なところかなというふうに私自身は思っています。二つ目としては、地域安全保障ネットワークの構築三つ目は、ちょっと意外かもしれませんが民主主義の成熟、そして政権交代によって進化し続けるということが実は安全保障、外交にとっても非常にこの地域にとって重要だというのが結論で、これはもう少し後で詳しく述べます。  まず最初に、この日本を取り巻く安全保障環境について、基本的な趨勢、簡単におさらいしておきたいと思いますが、少し重複になるところは避けますけれども。  まず、大国間の戦争の蓋然性というのは非常に低くなっているということです。このアジア地域安全保障環境、非常に厳しいというふうによくいろんなところで言われますけれども、しかし、とは言っても大国間の戦争、本格的な戦争の蓋然性というのは過去に比べてはるかに低くなっているというのが、まず押さえておくべき状況かなと思います。しかし、一方で、国境をまたぐような問題、これは国際テロのような問題、あるいは大量破壊兵器拡散の問題、あるいは一国の国内の治安状態が悪くなって、それが波及するような破綻国家のような問題、こういったようなものが増加している。で、中国インドの台頭。そして四番目としては、アメリカの力自体は落ちていませんけれども、問題解決能力が低下していて内向きになっているというところかなと思います。  これをアジアに目を向けてみますと、まず第一にあるのは北朝鮮の核開発問題と、そして内部崩壊の問題かなというふうに思います。ここでは北朝鮮については詳しく述べませんけれども、一つ覚えておかないといけないかなと思うこととしては、北朝鮮の国内が非常に混乱したときに最も重要となってくるのは、核兵器関連物質をいかに速やかに捕捉するかということだと思います。これが、どこに行ってしまったか分からないような状態になるとか、あるいはテロ主体に渡るというようなことになっては大変危険ですので、いかに混乱な状況でそれをそういうことにしないかということ。そのためには米中との協力は非常に重要ですし、日韓との協力も非常に重要だということです。したがって、ここの場においては、中国というのは非常に重要なパートナーになってもらわないと困る相手だということです。  仄聞するところによりますと、アメリカはこういう混乱した内部崩壊のシナリオにおいて、中国側とどういうふうに進めるかという協議を望んでいるというふうに聞きますけれども、中国側の方はそれに応じていないというふうにも聞きますが、今後やはりそういうような状況に備えてきちっとした協議をしていく必要があるのかなと思います。  二つ目の特徴としては、この地域には多国間の安全保障枠組みがないということで、今でもやはりアメリカの二国間同盟、そしてそれ以外の二国間の交渉に頼っているということです。  二ページに参りまして、中国ですけれども、中国というのは、確かにずっと二十年以上二けたの伸びを示しています。それに加えて、防衛上の政策決定が非常に不透明である。だれが政策を決定しているのか、そしてまたどのような仕組みになっているのか。出先の行動というのが本当に中央の指令によるものなのかどうか、そういったことが見えてきません。  また、一般的な国ですと、例えば五年後には軍隊がどういうような姿になるのか。例えば、F15を何機整備するのかとかいうことがある程度どこの国でも見えるんですけれども、中国の場合はそれが見えない。今何を買っていることは分かっても、将来どうなるかということが分かりにくいということです。ただし、安全保障の目標として見てみると、割と私たちがよく言われるよりも防衛的な目標を掲げているのかなというふうに考えます。  もちろん、台湾も自分の国の一部だと見ていて、それが防衛だということは受け入れられない議論だという方もいらっしゃるかもしれませんが、基本的には、整備した軍事力で積極的にどこかに出ていくというよりも、まず自国の利益を守る、特に他国の、具体的に言えばアメリカですけれども、アメリカの軍事介入を阻止する、ここのところが主眼だろうというふうに思います。  ②の中国の軍事能力ですけれども、ロシア関係を改善したことによって、九〇年代から近代的な兵器をずっと買い続けています。しかし、とは言ってもまだまだ低いところから伸びてきているところなので、本当にアメリカが本気になれば全くかなわない相手です。ただし、アメリカが払ってもいいと思うコスト、例えば台湾の問題というのは、中国にとっては死活的な問題ですけれども、アメリカにとっては優先順位が一番という問題ではないわけですね。そうすると、アメリカがこれはちょっと重過ぎるコストだというコストを与えることができれば思いとどまらせるという意味で、そういった意味で非対称ではありますけれども、能力を整備している、そういう段階に来ているのかなというふうに思います。  アメリカへの依存度というのは下がっています。江沢民の時代は特に、もう何でも中国が望むことはすべてアメリカは与えることができるし奪うこともできるというふうに考えられていました。経済発展もそうですし、そしてまた台湾のような問題についてもそうですけれども、そこのところが少し低くなっているのかなと思います。  三月に一週間ぐらい久しぶりに中国に行ってきて、相当、何十人かの人に会ってインタビューして回ってきたんですけれども、そこで非常に驚いたことの一つが、今まで行くたびに私が割とよく会うような安全保障の研究者とか軍の関係者とかはもっと良くなるという非常に自信を持っていたんですけれども、今回行って非常に悲観的な人が多かった。軍の方は非常に自信を持っているんですけれども、一般のインテレクチュアルの人たちは不満を持っていて、その不満というのが、世界第二位の経済大国にいよいよなろうとしている、ところが自分たちの生活を見たらこんなものだと、一体もうそんなのは冗談でお笑いぐさだというふうなところで、結局ずっと上ってきて二位になりつつあるのに自分たちの生活は余り良くないということで、それが不満になっているということですね。そうすると、最近の国内の治安あるいは言論統制の状況を見ると、政権は割と権力掌握に少し自信をなくしているのかなと思われる側面があります。  これが果たして対外的に協調的になるのか、それともそうでなくなるのかというところが大事なところですけれども、まずその経済発展にプラスである場面においては恐らく中国協調的な行動を取る、選択するというふうに思われます。ところが、それにマイナスの場合、例えば温暖化の問題で経済成長に少し歯止めを掛けなきゃいけないような、犠牲にしなくてはいけないような問題については非協調的になるのかなという予測が立つと思います。  軍事的な冒険主義は恐らく控える方向に振れるというふうに思いますけれども、政権が非常に弱くなって国内の不満が強くなった場合というのは弱腰であるという批判が当然強くなることがしばしばありますので、そうなってくると本当は協調的に行動したい場合でもやや非協調に振れるという場面もあるのかなというふうに思います。  三ページ目、アメリカについてはもう詳しく言っていただきましたので簡単に言いますけれども、一つはグローバル・コモンズの支配というのが割とここ何年か言われてきていました。かつて大英帝国が七つの海を支配していたように、今のアメリカというのは七つの海と空を支配している、これがアメリカの力の源泉になっていて、覇権の源泉になっているわけです。  これは何かというと、世界の海と空の安全を確保していることなので、どの国にもそれを使うアクセス権は認める。したがって、アメリカに頼っていれば私たちは貿易もですし自由な航行、そういったようなことの恩恵を受けることができるわけですね。ただ一方で、どこかの国がそこに対して挑戦してきたときはそれを排除する能力がある。ですから、世界中どこにいても比較的低いコストで軍事介入ができるという、そういう状況を担保しているというわけですね。  この能力が下がってくると、一つでは国際公共財と言われる、こういったようなだれもが恩恵を受けている世界国際安全保障のレベルというのが下がってしまう。そうすると、放置しておくとすさんだ世界になってしまう危険がある。  もう一つは、軍事介入のコスト増大する。世界中のある国によってはそれをいいと思う国もあるかもしれませんけれども、同盟国である日本としては、その介入のハードルが高くなってしまうということはその意思に関係なくコミットメントが下がるという、そういう危険があるということですね。  二〇〇一年の九月十日のアフガンというふうに書きましたけれども、今アフガニスタンの情勢というのは世界安全保障にとって非常に重要だというふうに考えられています。ただ、二〇〇一年九月十日の時点で、アフガニスタンがこれほど重要なところだというふうに考えた人は恐らくいなかったと思うんですね。  そうすると、早い段階で予防的にいろいろ介入していって、軍事的だけでなく民生的な支援とか、そういったようなことが非常に重要になってくるわけですけれども、恐らくその状態がそれほどひどくないときというのは更にそこにコミットしていくコストというのは高く感じるものですから、放置される危険があるということです。  一言、日本に対する期待ですけれども、アメリカ側政権の人たちと話していると、やはりアメリカ日本地域のリーダーとしての役割を非常に期待しています。普天間の移設問題自体は、しょせん基地をどこに移転するかという問題であって、主要な問題だというふうな認識はありませんけれども、とはいっても、日々の事務の中、調整の中で非常に困惑していますし、アメリカは今戦時下の国と自分たちを認識していますので、そういったような意味では、本来割かなくてもいいエネルギーを割かなくてはいけないというふうな思いというのはその当事者にはあると思います。ただ、基本的には、日米同盟は安泰ですし、これはそれ以上の問題に仕立てるということは控える必要があるかなというふうに思います。  日本状況は皆さんお話ありましたので飛ばしまして、状況のまとめとして四ページ目御覧いただければと思いますが、この三角形は後で説明いたします。  中国に対する手持ちの札というのは減っているというのが現状です。これからも減り続けるだろうというふうに思います。そうすると何をしなくてはいけないかというと、この手持ちの札を増やすということが必要になってくる。  これまで中国との関係の歴史を見ていくと、中国が割と積極的に協調的な行動を取ったケースというのは、日米に依存していたようなケースが多いということが言えます。したがって、中国日本そしてアメリカに依存している状態というのをいかに人工的に、政策的につくっていくかということが重要になります。これまでは経済的な相互依存同盟による抑止という、ヘッジという政策中国を何とか形成したいというふうなことでやってきましたけれども、これからますます手持ちの札が少なくなっていくことを考えると、これだけでは不十分で、もっといろいろ考えていかなくてはいけないというふうな状況だと思います。  ただし、中国軍事力というのはまだまだ限定的です。ですから、何もずっと伸びているからもう大変だというふうなことを思う必要はなくて、ただ、整備している能力としては、第三者が介入しにくくするということについては非常によく考えた整備を続けていますので、そこのところは押さえておかなくてはいけませんけれども、まだまだ自主的に何かをする能力があるわけではありませんので、この手持ちの札を増やすのであれば、日本とそしてアメリカがまだ優位に立っているときからその種を植えていかなきゃいけないというふうに思います。  アメリカが相対的に内向きになって、国内のいろんな問題を抱えている状況ですので、残念ながら小さな問題というのは放置されるという、そういう危険性があるのは事実です。  アメリカ当局者と話をすると、国務省の人も国防省の人も、あるいは軍の人ともよく会いますけれども、彼らは、もう心配するなと、必ず守るからとよく言ってくれますけれども、ただ、その人たちの意志とは無関係に、この趨勢を見ると、やはりこの地域以外のところの問題、具体的に言えばイラク、イラン、アフガニスタン、パキスタン、こういったところにたくさんの資源を割かれるというのは事実ですので、幾らその気持ちがあっても、やはり優先順位としてなかなかコミットできない場面も出てくるのかなと思います。特に小さな問題ですね、ローカルな問題、あるいは私たちにとっては大事な問題でも小さいと思われるような領土紛争のような問題、こういったようなものが放置される可能性というのはあることはあると思います。  結論ですけれども、五つばかり提言としてお話ししたいと思います。  先ほども申したように、手持ちの札を増やすということですね。最初に言ったように、失うものが大きい状態というのを創出して維持する、これを努力してつくっていかなくてはいけないと思います。  ここに不等式が書いてありますけれども、要するに右側の、非協調、要するに武力行使をしたり何か非協調的な行動を取って得られるというそういうもの、それよりも、その非協調的なことをするコストですね、それとあと、失ってしまうであろう利益、これはもう経済的なこと、社会的なこと、そして黒字にしましたけれども安全保障上の利益、こちらの、要するに不等式の右側をいかに大きくしていくかということが日本の目指すべき戦略なのかなというふうに思います。  抑止の部分については、日本の独自の防衛、それと日米同盟の堅持ということになると思いますけれども、時々、海兵隊沖縄からいなくなったらば、中国がすぐに尖閣にやってくるというふうな議論を耳にすることがありますけれども、恐らく離島の防衛というのは今の体制でも日本が独力対処をすべきようなシナリオだと思いますので、そこのところの能力日本にもありますし、日常的にやっていかなきゃいけないというそういう分野のことなんだろうと思います。ですから、逆に言えば、そこはすぐに中国が出てくるというふうに考えるのは少し安直なのかなと思います。  ただ、最終的にはアメリカを相手にしなくてはならないかもしれない。今ここは近くのところで、ひょっとするとただの簡単な行為でも、最終的にはアメリカと事を構える、しかも核兵器を持った国同士だというようなことを考えるということは非常に抑止効果があるということですね。  日米同盟はもっと本格的な侵攻への備えなのかなというふうに考えられるとも思いますけれども、失うものを明確にすること、そして誤認を減らすということは非協調的な行動を抑制していくためにはとても重要ですので、この役割というのは今後も非常に重要になってくると思います。  経済依存ですけれども、ただ単に抑止力、軍事力だけでは、もうもはや中国を非協調的な行動を取らせずに、そして協調的な行動に促すというのは難しくなっていますので、経済的な関係深化はもちろんですけれども、それを少しでも制度化していく努力が必要だというふうに思います。FTA、二国間のFTAをできるだけマルチのものにして、そして将来的には最終的には東アジア共同体のような形にするということが大事なのかなと思います。  よく経済的な相互依存が進めば紛争は心配ないよというふうなことを言うと、逆に、しかし第一次世界大戦前のイギリスとドイツというのは世界でも一番の同盟国であったではないか、だからいかに幾ら貿易をしていても、それは抑止あるいは紛争の予防にはならないよというふうなことを言う人がいるんですけれども、ここで決定的に違うところというのは、この時代というのは制度化が進んでいませんでした。WTOもありませんし、あるいは二国間の制度もなかった。ですから、今貿易の恩恵があるとしても五年後、十年後ひょっとしたら消えているかもしれない。であれば、今何か争っているものを取ってしまってもいいのではないかというふうなインセンティブに走る可能性がある。それがその五年後も十年後もずっとこの経済的な利益があるんだという保証があれば、当然この右側の数式が重くなるわけですね。ですから、制度化、地域的な制度化、二国間、そして数国間、よくミニラテラルとかいいますけれども、それと地域規模、そしてWTOのような世界的な規模、これをいかに連動させていくかが大事かなと思います。  三番目としては、安全保障上の相互依存構築です。  これはなかなかうまく、そんなに簡単に進むものではないというのは自覚していますけれども、実際に日本自衛隊、防衛省の方々、あるいは人民解放軍の人たちと話していると、どんなに企業間の交流が深くなっても、そこのところが別世界のように存在している部分がありますので、やはり安全保障上の交流、依存関係というのを構築するのが重要かなと思います。八〇年代に日中米の関係があれだけ良かったのは、やはりソ連という共通の敵に向けて戦略安全保障上の共通利益を持っていたからで、もちろん今ソ連はありませんけれども、人工的に、政策的にできるだけ中国が自分の安全が少しでも日米に頼っているのだというような状況をつくっていくことが大事かなと思います。  具体的に言えば、災害復興支援のようなことを一緒にやっていくこと、あるいは海洋の安全のための協力をしていくというようなことが大事かなというふうに思います。  二番目には、単なる事故が紛争にエスカレートしないような仕組みを早くつくっていくということが必要かなと思います。  一つは、例えば海洋協議協定、米中間には存在しますけれども、日中間にはありません。こういったようなものをつくっていくことも重要かなと思います。日中間ではホットラインはもう既にありますけれども、それがいかに実効的に使っていけるようにするかということが大事です。二〇〇一年四月に中国の戦闘機とアメリカの情報収集のEP3が衝突した事故がありましたけれども、そのときは、アメリカ側のホットラインを中国側が全然電話を取らなかったということがあったわけですけれども、それ以降、この協議を通じてカウンターパートがだれかということを非常に分かって、それで少し関係深化したのかなと思いますので、日本中国とこれをする必要があると思います。  そしてまた、自衛隊と人民解放軍が共に、例えば国連のマンデートの決議の下に、共通の目標に向かって一緒に活動する、こういうふうな場面を増やしていくということが大事かなというふうに思います。  今、どうもこの地域を見ていると、非常に古典的な国際関係がまだまだ横行していますけれども、世界全体を見ると、このR2Pと書きましたけれども、一国の国民に対して保護する能力がないような国、破綻していてですね、あるいは国家自体が加害者になっているような場合は国際社会全体でこれを保護していく責任があるんだというふうに、国際社会はそこまで進んできていますので、もっとこういう場面において日中が活動することによって安定化させる、その脅威のレベルを低くしていくということが大事かなと思います。  あとは、尖閣のような離島のところはパトロールを日常的に強化する努力、そしてまた、感情的なナショナリズムの応酬にならないように外交的な努力の強化というのは言うまでもないというふうに思います。  日米同盟の成熟ですけれども、まずどのようなビジョンを描くのかというのを大きく世界中に、そしてまた日米間で広めていくことが大事かなと思います。  鳩山総理とオバマ大統領は目指す世界としては非常に親和性が高いと思いますので、そこに向けてもっと進めていけないことに若干残念だなと私個人的に考えていますけれども、そういう大きな世界の絵を描くこと、そして、具体的には、先ほどもお話があったように、役割分担の明確化。私も安全保障専門家というふうに言っていますが、実は、米軍の活動がどういうふうになっているのか、有事の際に一体どのくらい米軍が兵力を日本に持ってくるのかということはオープンになっていません、先ほどのような理由が一つの原因ですけれども。こういったようなことをもっと可視化していく必要があるのかなと思います。  共に中国に対しては悪者になりたくないという状況なので、できればアメリカとしては、プレゼンスをここに残して中国とはいい関係でありたい、日本としては、尖閣は大事だけれども、できれば、そこに何か自衛隊を置いて対立を、摩擦を高めるんではなくて、海兵隊が守ってくれるよというふうなことにしたいと。お互いに矢面に立ちたくないという心理が働いているんですけれども、その結果、日米間に若干、対中戦略についての不信感あるいは不透明感があるので、そこのところのコミュニケーションが大事かなと思います。  四番目、ネットワーク化ですけれども、どちらかではなくて、もう幾重にも幾重にもネットワーク化していくことが大事だと思います。これは先ほども言ったとおりです。  最後ですけれども、この地域、長期的に見ると、やはり中国が民主化をしなくてもこれだけ成功しているんではないかというふうな議論が広まっています。先ほど、国内では不満が出てきているということは言いましたけれども、地域を見ると、ちょうど冷戦が終わった九〇年代というのは世界の歴史の終えんと言われて、民主主義が勝ったのだと、このやり方が一番個人の幸せのためにも、国家の発展のためにもいいのだということで民主化が広まるというふうな、それがよいのだということになりましたけれども、今、日本もこれだけ停滞していますし、また、アメリカ、ずっと好調だったアメリカもああいうふうな状態になっていて、これは民主化しても、民主主義国家でも決して幸せにならないということになってしまっています。  ここで大事なのは、日本、せっかく政権交代しましたから、そしてまた、政権交代、これからも行ったり来たりすることが考えられますけれども、その都度日本が良くなっているねと、政権交代を通じて進化しているんだということを世界中に示すということが実はこの地域、そして中国に対して物すごく強いメッセージになっているということですね。せっかく政権交代しても、何だ、そんなに大したことないじゃないということを中国人が思うということは実は大変危険なことで、そういうふうなことにならないように、そしてこの民主主義のシステムというものの健全さというのを世界にアピールするというのはとても実は安全保障、外交上も大事だなというふうに思っております。  以上です。済みません。ちょっと長くなって申し訳ありません。
  8. 石井一

    会長石井一君) ありがとうございました。  それでは、最後に高木参考人から御意見をお述べいただきたいと存じます。
  9. 高木誠一郎

    参考人高木誠一郎君) ありがとうございます。  この度は、このような貴重な機会をちょうだいしまして、大変光栄に存じております。  事務局側から事前に知らせていただいた予定によりますと、私の発言が終わるのは十四時二十分ということで、そのとおりですとあと五分しかないのですが、どうか十五分ぐらいはお時間をちょうだいしたいと思います。  幸か不幸か、最後に発言させていただいておりますので、私の申し上げたかったことはかなり既に三人の方がおっしゃっております。そして、私が事務局からいただきました課題は、米中関係の現状を踏まえて日本としてどのようにアジア安全保障に寄与すべきかということを中心に論じてほしいということでありますので、なるべく重複を避けながら手短にお話ししてまいりたいと思います。  なお、私も悪い癖がありまして、準備するときにレジュメ等にいろんなものを詰め込み過ぎる癖がございます。今回もそういう癖に陥ってしまって、これ全部きちんとお話しするととても二十分では間に合いませんので、ところどころ飛ばしながらのお話になることをお許ししていただきたいと思います。    〔会長退席、理事藤田幸久君着席〕  まず、アメリカ中国関係ですが、既に何人かの先生もお話しになりましたけれども、現在の状況というのは非常に複雑であります。  これは、考えてみますと、冷戦時代の米中関係というのは非常に分かりやすかったわけです。つまり、一九五〇年代、六〇年代は、明らかに冷戦的対立の構造の中で別々の陣営に属しておりましたから明確に敵対しておりました。これが六〇年代の末から七〇年代の初めにかけて、中国側、あるいは中ソ関係、それからアメリカのベトナム戦争遂行等の問題があって、七一年にキッシンジャーの秘密訪中、七二年にニクソン大統領の訪中ということが行われて、以後、米中はソ連の拡張主義に共同で対抗する言わば疑似同盟関係になったと。  これは非常にまた明確な良好な関係でありまして、冷戦が終わるまでは、敵対であれ疑似同盟であれ、非常にその関係は分かりやすかったわけですが、八〇年代の末から九〇年代の初めにかけて世界冷戦構造が崩壊してきますと、アメリカ中国との関係というのは非常に分かりにくいものになりました。それは、敵のような側面もあれば、同盟とまではいかなくても味方のような側面もある。敵でもない、味方でもないということになったからであります。  そして、この米中関係はかなり変化が激しいですね。ある時点では非常に良好だと思うとかなり激しい対立に陥る、対立したかと思うとまた良好になるといったことを繰り返しております。いずれにしても、関係が悪化しても決定的な対立には至らない、そして関係が改善しても非常に友好的な関係にはいかないということで、変化は激しいけれども振幅は小さいというパターンを冷戦後は繰り返してきたと思います。  そして、どうしてそういうことになるかということなんですが、極めて単純化して申しますと、それは米中間協調をもたらす要因も、対立、紛争をもたらす要因も複数あって、そしてその間の、どの要因が一番決定的であるかというこの優位の関係が安定しないということであろうかと思います。  それからもう一つ冷戦後、特に九〇年代以降、米中関係を左右する要因として重要な役割を果たすようになってきたものに国内政治あるいは国内世論の役割があります。これは九〇年代は専らアメリカの側でありましたが、今世紀に入って中国の側でも国内世論、国内政治の作用が大きくなってきております。そういうことで非常に変化が激しいのが米中関係であろうと私は思っております。  そして、この米中関係に左右する要因は、冷戦が終わって以降、あるいは終わる直前から、それ以降起きた幾つかの節目によって新しい要因を付け加えつつあるというふうに考えております。  まず、大きなものは一九八九年六月の天安門事件であります。この時点でまだ冷戦は終わったというふうに思われておりませんでしたけれども、いろいろな意味でこの天安門事件というのは、八九年十二月のマルタにおけるブッシュ、ゴルバチョフの冷戦終えん宣言につながる前奏曲のような機能を果たしたわけであります。  そして、この天安門事件によって米中関係では人権問題というのが急速に顕在化してまいりました。  中国の人権問題というのは、言うまでもなく五〇年代、六〇年代、七〇年代、八〇年代、常にあったわけですが、アメリカはその時点ではそのことを一切問題にすることはなかったんですが、天安門事件以降、これを非常に大きな問題として取り上げるようになってきております。  そして、この人権問題をめぐって米中がぎくしゃくしている間に、一九九二年のトウ小平の南巡講話を契機に中国は急速な経済発展を遂げるようになってきておりまして、この中国の高度経済成長の持続ということが米中関係に新しい要因をもたらしております。特に、アメリカの輸出市場としての中国の重要性というのが大変高まってきているわけで、そこに略字で書いてありますBEMというのは、これはビッグエマージングマーケットの略でありまして、日本語で言えば巨大新興市場ということになろうかと思います。そして、この高度経済成長を背景に中国軍事力近代化が急速に進んでいるということから、アメリカ中国軍事的脅威に対する警戒感が高まってきたということであります。  さらに、この高度経済成長、それから米中の関係深化ということで相互依存関係が非常に大きな作用を果たすようになってきたと。そして、この相互依存関係が米中関係にどういう結果をもたらしているかということについては、必ずしも友好関係だけではなくて紛争もあるということは、先ほど、植木先生のお話からも類推できることであろうかと思います。  このような展開を経て現代の米中関係というのは形成されてきたわけですが、現代の米中関係を規定する紛争要因、協調要因にどういうものがあるかということはローマ数字のⅡのところに列挙してありますが、ここのところは一々お話ししている余裕はないと思いますので省略させていただきます。ざっと御覧になってもし疑問をお感じになる点がありましたら、質疑応答のときに御質問いただければ詳しく御説明させていただきたいと思います。  ただ、一点だけ付け加えますと、その紛争要因、協調要因、それから国内政治要因に加えて、米中関係を観察する上でもう一つ考えておかなきゃいけないのは長期的な趨勢でありまして、御案内のように、中国は一九九〇年以降、極めて安定的に高度経済成長を実現しているわけで、この勢いがどこまで続くのかということはなかなか判然としないわけでありますが、もしこの傾向が続くとすると、今年、中国は国内総生産において日本を抜くということが言われておりますが、数十年にしてアメリカも抜くであろうと。そうなったときに米中の力関係が逆転するのかどうかという問題であります。  この力関係の逆転ということが起きれば、それに伴って様々な摩擦、紛争が懸念されるわけなんですが、現在のところはいわゆる力の推移、権力の推移と言われるほどの逆転にはなっておりませんけれども、明らかに米中のパワーバランスが変化しているということ。そして、このことについて中国は、自分たちの発展はあくまでも平和的に実現されていくのだということを様々な議論でもって世界を説得しようとしておりますけれども、果たして中国のその説明にどれだけの説得力があるのかというのが、今後、米中関係を見ていく上での一つの重要な視点になると思います。  最近の米中関係の展開に絞って、以後、残された時間で御説明させていただきたいと思います。  まず、両国の基本的な姿勢なんですが、アメリカは、アメリカにとって中国というのは極めて重要ではありますけれども、最も重要であるとか唯一の重要な国であるというところまでは行っていないということが一つでありまして、これは中国の側からアメリカを見たときの場合と基本的に違うことであります。つまり、中国も相対的に対米関係の重要性は下がってきているとはいえ、ほかの国際関係、二国間関係に比べればアメリカとの関係は圧倒的に重要であると、そして、これを何とか相対化したいという願望が中国にあるんだろうと私は考えております。  その重要な中国との関係について、アメリカのアプローチというのは基本的に二つだろうと思います。  先ほど来出ていた言葉の繰り返しですが、一つは関与、この中国をかつてのソ連を封じ込めたような、孤立化させて弱体化を招くというようなアプローチは今は完全に不可能であると。そうなってくると、アメリカとしては中国を現在のシステムの中に取り込んで、そのシステムの中の利害共有者に位置付けることによって中国に責任ある行動を求めるというのが一つのアプローチであると思います。  しかし、このアプローチは、言うまでもないことでありますが、常に成功するとは限りません。それがうまくいかなかった場合に備えて、アメリカはやはりいわゆるリスクヘッジ、つまりリスクが顕在化したときの備えというのを様々に考えているわけでありまして、それは同盟体制強化、それから多国間枠組みへの積極的な関与であろうと思います。  他方、中国から見ますと、対米関係の重要性ということは既に申しましたけれども、基本的に二つのアプローチがあります。一つは十六字方針と言われるもので、これは一九九二年に江沢民がアメリカ議員団に提示したものなんですが、十六字というのは、御案内のように中国の人は四文字熟語が好きなわけですが、四文字熟語を四つつなげると四、四、十六ということで十六字になります。その内容は、信頼を増加しトラブルを減らし協力を発展させ対抗しない、つまり低姿勢ということなんですね。  しかし、中国のアプローチはそれだけかというと、どうもそうではないようでありまして、それを補完するものとして、アメリカとの決定的な対立に至らない段階で何とかアメリカ影響力を減殺するため、あるいはそれに対抗するためのアプローチを取るということで、具体的にはロシアを始めとする主要国との戦略的なパートナーシップの構築により世界の多極化を推進するということ、それから多国間の枠組みを積極的に活用してアメリカをその中に封じ込めていくということだろうと思います。  これが米中双方の相手に対する基本的な姿勢だというふうに考えた上で、最近のオバマ政権発足以降の米中関係の展開を大ざっぱに振り返ってみますと、まずオバマ政権というのは、明らかにその発足当初から中国との関係構築ということを非常に重視しておりました。  そこに幾つか具体的な例を書いてありますけれども、それを一々申し上げる時間はないんですが、クリントン国務長官の訪中が二〇〇九年の二月に行われて、中国は死活的に重要な行為主体であるというようなことを言ってみたり、それから四月のオバマ・胡錦濤会談においては、両国の関係を積極的、協力的、総合的な関係にするということを言ってみたりということで、中国との関係構築というのを非常に表面に出しておりました。このようなアメリカのアプローチは中国に一種の安心感と自信をもたらしたようであります。  一つには、アメリカの大統領選挙というのは、しばしば現職に対抗する側がその対中政策を激しく非難するという形で進行したことが多いわけなんですが、この二〇〇八年の大統領選挙においてはそういうことがありませんでした。つまり、ブッシュ政権の後期に遂行された中国との友好的な関係というのをそのままオバマ政権が引き継いだということ。そして、引き継いだ上で、さっき申し上げましたように中国重視の姿勢を明らかに示していたということです。  それから、それだけならある意味ではそれほど問題にすることもないんですが、ただ、それと併せてちょうどリーマン・ショックからの回復に中国は成功したということと、それからアメリカの国債の保有高で世界一になったということもあって、単に安堵しただけではなくて自信が生じてきたんですね。この自信は残念ながらいささか時期尚早であったということが最近の事態によって分かるわけですが。  米中の関係を詳しく見てみますと、既にオバマ政権発足当初から、アメリカの側には特に国防省を中心中国軍事力に対する深刻な警戒感というのが存在しておりました。このことは議会によって義務付けられている国防省の中国軍事力報告を見れば明らかでありますし、先ほどちらっと言及されました四年ごとの防衛計画の見直しにおいても、そこで強調されているのは、アクセス拒否という環境の中でアメリカがどのようにして侵略を抑止し、それを打ち負かすことができるかということなんですが、このアクセス拒否という能力構築において中国が極めて積極的であるということがこの中国軍事力報告に書いてあるわけでありまして、要するに、これは特にアジア太平洋地域においては中国のアクセス拒否能力の拡大をアメリカが深刻に懸念しているということを示しているわけであります。  そういうことが底流にありながら、オバマ政権中国との関係構築に力を尽くしてきたわけですが、その言わば頂点として行われた十一月のオバマ大統領の訪中は、米中双方に相手方の望むような態度表明があったんですが、余り具体的な成果はなくて、そしてアメリカの国内では、人権問題においてオバマ大統領が非常に弱腰であったということで、かなり批判的な意見があったわけです。そして、このころから米中間には様々な摩擦が表面化し始めます。  経済摩擦は九月ぐらいから具体的なケースとして幾つかあったわけですが、それから新疆暴動の弾圧についてはアメリカの中で非常に批判的な意見がありました。それから、十二月のコペンハーゲンのCOP15の会議においては、中国が非常に非協力的であったということでアメリカに失望をもたらしておりますし、今年になってからは、中国のインターネット規制、グーグルの中国の撤退の問題、それからアメリカ台湾向け兵器輸出、それからオバマ大統領のダライ・ラマとの会見、こういったことで両国の摩擦が非常に顕在化してきております。  そして、こういうアメリカの、特に中国に対しての批判的な姿勢に対しては中国は様々な形で反発を示しておりますが、ごく最近になってこの関係をまた修復するというふうに振り子は振れておりまして、一時は疑問視された胡錦濤国家主席の訪米が現在進行中であるというふうにこの関係は展開してきていると思います。  この米中関係の現状を踏まえて、アジア地域安全保障日本はどういうふうに貢献していったらいいかということを最後に少し申し上げたいのですが、この問題については既に三人の参考人から詳細なお話がありましたので、多少重複になるかもしれませんが、ごく簡単に申し上げたいと思います。  まず、極めて単純化して申しますと、この地域安全保障上の課題というのは、短中期的には朝鮮半島の問題、北朝鮮の核兵器開発、それから北朝鮮の国内情勢の不安定化、それから、ひいては南北の統一の問題という形で展開していくでありましょう朝鮮半島情勢の問題があります。それから、中長期的にはやはり中国の発展、台頭の問題ですが、これは既に指摘されましたように、単に中国軍事力強化してそれが脅威をもたらすという問題だけではなくて、中国の最大の問題は私はその将来の不確実性にあると思います。中国がこれからどういうふうに変化していくのか。このまま一直線に経済を発展させ、軍事力強化させて強大な国家になっていくのか。あるいは、国内にある様々な矛盾、格差の問題が引き金になって政治情勢が不安定化するというような事態に陥るのか、いろんな可能性があるわけです。  翻って考えてみますと、例えば一九八九年の五月に天安門事件のようなことが起こると予想した人はどの程度いたかということを考えますと、中国の将来予測というのは極めて難しいということが分かると思います。こういう不確実性の非常に高い、中期的あるいは長期的な問題がある中でこの地域安全保障を確実にしていく上で最も重要なのは、私は、既に三人の参考人お話しになったような日米同盟体制維持深化であると思います。この日米同盟体制というのは、やはりこの地域安定の基盤であり、そういう意味での公共財と言っていいと思います。  そして、この日米同盟の機能として極めて重要なのは、先ほど来申し上げましたアメリカの対中姿勢にあるそのリスクヘッジということだろうと思います。つまり、リスクが顕在化したときの対応が取れる状態維持していくということであります。そして、このリスクヘッジというのは、特に中国の側から見ると、要するに中国脅威論であって、中国は必ず脅威になるからこれを封じ込めるのだという考え方であるというふうに取られがちなんですが、そこの違いを何とか明確にしておく必要があるというのが私の考えであります。  中国脅威論というのは、これはいわゆる自己充足的予言のわなに陥る危険をはらんでおるわけでありまして、中国が必ず脅威になるということで様々な準備をすれば中国はそれに対抗して様々な措置を取り、それが実際中国脅威として立ち現れてくるという事態を招くことになるわけで、そういう事態を防ぎながら、なおかつリスクヘッジをどう行うかということが日米同盟の今後の重要な役割であろうと思います。    〔理事藤田幸久君退席、会長着席〕  そして、そのリスクヘッジする上で重要なのは、先ほど植木参考人お話にもありましたけれども、中国が望ましい行動を取ったときには、それに対してこちらも積極的に応じると。中国が望ましくない行動を取ったときにのみ強烈な反応をするというのではなくて、言わば是々非々で、善いことをしたときにはよく対応するということをしっかりと確保する。そして、中国に対する関与政策は、単にその中国の現状を受け入れて中国に批判的な言動をしないという意味ではなくて、関係強化することによって望ましい行動を誘発し、そして望ましくない行動に対して明確な拒否反応を示すということであろうと思います。  もちろん、日米同盟体制がいかに重要であるからといってそれだけですべてが尽くされるわけではないのも明らかでありまして、その次に地域安全保障協力の枠組みの形成ということを書いておきましたが、これは先ほど植木参考人がおっしゃったネットワーク形成ということとほとんど同じでありますのでこれ以上申し上げないことにして、私の発言を終わりにさせていただきたいと思います。  どうも御清聴ありがとうございました。
  10. 石井一

    会長石井一君) どうもありがとうございました。  これより質疑を行います。  本日の質疑はあらかじめ質疑者を定めずに行いますので、質疑を希望される方は、挙手の上、会長の指名を待って御発言くださいますようお願い申し上げます。  なお、質疑の時間が限られておりますので、委員の一回の発言は三分程度となるよう、またその都度答弁者を明示していただきますよう御協力をお願いしたいと存じます。  それでは、質疑のある方は挙手を願います。  大石正光君。
  11. 大石正光

    ○大石正光君 大石正光でございます。  今日は四人の先生方、大変御苦労さまでございました。いろいろと御意見を賜りまして、それぞれ皆様の御意見はそれなりにきちっとした形で大変すばらしいと思いましたが、四方に一つだけ同じ質問を実はしたいと思います。  この中でどなたがおっしゃったかちょっと忘れましたが、日本政権交代が国民の意識を変えていくという一つの話がどこかでされたような気がしたわけでありますが、それはなぜそういう話をするかというと、かつてアメリカとソ連の冷戦時代には防衛の中で日本位置付けが大変重要だった。ところが、ソ連邦がなくなってロシアになり、今度は中国がもめてきたことによってどんどん大きく変わってまいりました。中国は、私は天安門事件のときに北京にいましたけれども、あの天安門事件の前と後ではまるっきり中国側の姿勢と政治が変わり、それから結局は経済的に大きく転換をした時代に変わりました。ということは、共通することは、要するに政治という、外交や防衛というものは、国内の世論や事情によって大きく政策ややり方が変わっているということにある程度共通するんじゃないかと思うわけであります。  私どもは、私は昔自民党におって、二大政党をつくりたくて新進党にあって、結果的に、十六年たってようやく民主党、自民党という一つの二大政党が何となく定着し始めたかなと思ったわけでありますけれども、日本の場合は、どちらかというと自民党独裁で五十年以上やってきた。それが、要するに国民の意識というか、政治や外交に対するやっぱり、何というのか、もまれ方が非常に少なくて、純粋というか幼稚だというのか、ヨーロッパや外国から比べれば私は幼稚じゃないかと率直に思うんです。  特に、外交は、国内の意見がある程度大きく外交政策に寄与されるというか影響を受けられるわけでありますから、外交をするためには国民の意識が理解されなければ外交手段は変わっていけない。中国がそれが大きくはっきり分かっているのは、あの天安門時代の胡耀邦や李鵬のあの時代から、大きく今、胡錦濤さんの時代に変わったとき、あの時代にはまるっきり考えられなかった転換になった。それは、やっぱり国民の意識が政治経済や外交を大きく動かしたということにつながる。ですから、国民の意識がすべてそういう面で外交や防衛に一番大きな影響を及ぼしてきているんじゃないかと思うんですね。  そう考えたときに、日本の場合は、二大政党がようやくここまで来ました。これからこの二大政党が、政権がある程度移行しながら、政策や様々な意見を国民に提案し、マスコミにも意見言いながら、機能しながら少しずつ成熟をしていくような時代になっていく。私は、二大政党の良さというのはそこにあると思うんです。  だから、いつまでも日本は、戦前のいろんな軍事とか、いろんないきさつとか、何か軍事力が強くなると戦前のことがまたマスコミに出されて、要するに、憲法擁護論なのか、それとも憲法を改正する方なのか、何かそういういつも二つの枠にはめられて、マスコミに振り回されて、まともな外交や防衛の問題って議論がなかなかできないままに色を付けられてしまっているような、そういう国民の意識やマスコミがあるような気がしてならないんですね。  ですから、これからも日本が伸びるためには、政党政治がどんどんどんどん、民主党から今度自民党に行くかもしれない、いや、自民党が駄目だから、まだ育ってないけど、みんなの党みたいなのが新しい政治ができるかもしれない、そうやってしょっちゅう政党を替えながら、防衛論や外交論や国内問題を議論しながらもまれていって初めて日本が成熟するんじゃないかなと、私はそう思うんですけれども、そういう政治の動きが、私は日本を、今皆さんが防衛とか外交とか様々に言った議論の中で一番大きな要素になるんじゃないかと、私はそう感じているんですが、そのことについてお四方がどのようにお感じになるか、御意見を賜りたいんでございます。  以上でございます。
  12. 川上高司

    参考人川上高司君) ありがとうございます。  今の大石先生からの御質問に関しまして、私はもっともだと思うわけでございます。やはり、国内、国民の政治の意識の変化、これは非常に大きなものがあって、これが冷戦崩壊につながる過程、それから冷戦崩壊後のやはりこの地域、それから世界中の地域の大きな変革につながり、新たな時代に入っているというふうなことであると思います。  また、それと同時に、ただ、冷戦崩壊等々を考えますと、日本を取り囲む戦略環境変化、それから今民主党政権がおやりになっていますシステムの変化、それから鳩山総理という指導者の資質、これ、学者っぽく申し上げますと、ローゼナウの政策決定理論で、そういう要するに五つのファクターがあって、そこでそういうようなものがじょうごみたいにろ過されながらその政策がインプットされアウトプットされると、まさにその中で大きな役割を果たすのが、今御指摘にありましたように、国民意識の変化というぐあいに私は考えるわけでございます。  簡単でございますが、以上です。
  13. 春原剛

    参考人春原剛君) 私も川上参考人と基本的に同意見で、大石議員のおっしゃられたとおり、できますれば二大政党制を通じた政権交代を重ねることによって日本の国民全体の意識が変わって、そうしたことが日本の安全を高めるし、恐らく現時点で最も現実的な選択肢であるアメリカとの同盟関係強化にもつながるんじゃないかというふうに思います。  一九九四年、当時のクリントン政権が当時の自民党橋本政権日米安保共同宣言というのをやったんですが、そのときにアメリカのペンタゴンで主導的な役割を果たした一人にジョセフ・ナイさん、さっき申し上げましたが、ハーバード大学の教授ですが、そのときは国防次官補、局長級の国防総省の人でしたが、彼がさんざん私に、当時ワシントン特派員だった私に言ったのは、日本にパブリックエデュケーションをしてくださいと。日本の国民、社会に、安全保障というものに関して、何もアメリカとずっと仲良くしろと言うわけじゃない、安全保障というものに関して公の教育をするのを一緒にやってくれと。その結果として日本がどういう選択を選ぶかというのは我々はいろいろ言えないけれども、恐らく我々から見てアメリカとこれからも仲良くしようという選択を日本の国民がしてくれるんじゃないかということを言っていたのをいまだに私は強く記憶しているんですが。  今般、民主党政権下で、いわゆる核の持込みに関する解明がある程度なされて、岡田外務大臣がああいう形で発表をされたというのも、やはり二大政党制というか、民主党政権の誕生に伴ってああいうことがなされたんだろうと。  じゃ、かといって、これまで自民党政権が全く何もしなかったか、あるいは怠慢であったかということを考えますと、これも、つい二週間前にボストンでジョン・ダワーという歴史家と話をしてきまして、彼は「敗北を抱きしめて」という有名な本を書いて、戦後の占領下の日本のことを書いたんですけれども、彼は非常にアメリカ政治に関してもシニカルで、日本同盟に対する姿勢にも極めてネガティブな感情を持っているんですが、彼の言わんとするところは、やはり占領下において自民党がアメリカの占領に迎合してかなり安易な政治をしたんだというふうに彼はずっと批判するわけです。  しかし、私はそのダワー先生に言ったのは、それは多分歴史であって、その当時は当時の日本のベスト・アンド・ブライテストが恐らく最善の選択をしたんではなかろうかと。ただ、歴史が変わってきたと、安保条約も締結して五十年がたったと、今この時期にやはりいろんなものを見直す時期に来ているんであろうと。だからそれは、どの党が悪い、だれが悪いということではなくて、やっぱり歴史が変わってきているんであろうと。その変化を促す一つの材料として、二大政党制というのは私もポジティブに評価するものだと思います。  以上です。
  14. 植木千可子

    参考人植木千可子君) ありがとうございます。  先ほどは、民主主義、政権交代は大事だという話をさせていただいたのは、むしろ仕組みとして、メッセージとして、こんなにいいことがあるんだと言って中国がそういうようなものをうらやましがって、そしてやはりそっちの方向が是であるということが、国際的な今のシステムについて協調的であることが大事だという意味で申し上げたんですけれども、大石委員のおっしゃったのも私非常に同感です。  よく外国の人に聞かれることとして、一体日本が何を望んでいるのかが分からないと。日米同盟にしても、一体何を日本がしてほしいのかと。例えば、朝鮮半島で問題があったときに、何もしてほしくないのか、それとも取り除くような形の限定的な武力行使までもしてほしいのか、それともそのまま核を持っていいのか。とにかく日本が何をしてほしいのか、何を目指しているのかが分からないと。  私のところに留学生たくさんいますけれども、世界各国から来ている学生たちが皆口をそろえて、日本が何を目指しているのか、何をしたいのかが分からないということを言っている。確かに私たちも、一体どういう世界を目指して何をしたいかということについてきちっとなかなか議論する場面がなくて、国家全体としてもどっちの方向を向いているのかまだ分からないのかなというふうな気はします。  私は、個人的には、先ほど国民の意識という話がありましたけれども、安全保障にしても外交にしても、決して専門家の手にゆだねられるべきものではないと思っています。究極的には、戦争の決定であってもそれは国民の選択であるべきだというふうに思っていますので、そういうことからすると、一部の人間が国民よりも高いところにいて物が分かっているというふうな考え方というのは非常におかしいかなと思います。  ただ、とはいっても、特殊な環境に置かれて、戦後日本があの戦争から立ち直る過程において、非常に軍事的なもの、あるいは自衛隊、あるいは防衛というものに関するものをできるだけ社会の中から隔絶してそして平和を追求してきたという歴史がありますので、ドイツはその逆で、できるだけ社会の中に統合することによって暴走しないというような仕組みをつくりましたけれども、そういうような形で、非常にそういったものが社会の中にないというのは事実です。  先ほど御紹介して、安全保障、防衛力の懇談会は、その報告書自体がどうなるかが分からなかったところも若干あって、基本的に大学生の人たちで安全保障に関心を持っている人たちがたくさん読んでもらいたいと思ったものですから、私、山のように脚注を付けてあります。報告書としては非常に珍しいと言われましたけれども、脚注をたくさん付けてあって、その心としては、やはり安全を、非常に足腰の強い国家になるためには、広く、一般の大学生以上ぐらいの人たちが広くこういうことに関心を持って考えることが、とても長い、遠回りではありますけれども大事かなというふうに思ったからです。  そういうことからすると、やはり日本世界の中においては特殊な安全保障政策を選択してきている国ですので、果たしてこのままでいいのかどうかとか、やはりきちっとした議論をする時期に来ているのかなというふうに思います。こういうことは何が正解かということはないので、国民と広く議論して選んでいかなきゃいけないのかなと思います。  政権交代のいいところは、根幹の部分は、恐らく安全保障というのは、どういう立場に立っていても、ある程度落ち着くところというのはそれほど揺れる幅は恐らくないのだろうとは思うんですけれども、とはいっても、ある政策を提示して、国民がそれをきっかけに議論して、そして真剣に考えて選んでいくという、その結果、どちらかが決めるよりも結果としてより良いものが生まれてくるという、そういうプロセスだと思いますので、そういう意味においてはとても重要だと思います。  平和憲法を守るにしても、その平和憲法を守るんであれば、やはりアメリカ基地負担というものは甘んじないといけない部分、二つセットになっているところがありますので、そうすると、でも沖縄の人たちの負担というものについてどういうふうに考えるのか、あるいはその平和憲法をある程度変えた形で、さっき言ったような、国民、世界中の保護する責任を国連の加盟国の責任として全うしていくには、一体どうやって変えていったらいいのか。それを真っ当にやろうとすると、恐らく集団的自衛権の問題についても新しい解釈をしないと活動に積極的に参加することは難しいと思います。そういうような大きな問題、国としての在り方というのは、恐らく政権交代を通じて議論されて、初めてだんだん収れんしていくのかなと思います。  済みません、ちょっと長くなりました。
  15. 高木誠一郎

    参考人高木誠一郎君) ありがとうございます。  もう、いろいろおっしゃられたんで、また短くなりますけれども、私は大石議員のおっしゃったことの中で特に共感しましたのは、自民党、私、一党支配という言い方が妥当だとは必ずしも思いませんが、自民党政権が余りにも長期にわたって続いたことによって、安全保障の場合特にそうなんですが、野党の議論がともすれば当事者意識を欠いたものになりがちであったんではないかと。自分たちもいずれ政権を取ることになると思えば、自民党政権のやっている妥当なことについて何にでも反対ということはできないはずなんですが、なかなか与党の妥当性を踏まえた上での議論にならない傾向が強くて、それが、マスコミの側それから国民の側にも言わばお上に任せておこうというような傾向もありましたし、特に外交安全保障というのは専門家領域であるという認識が当事者の側にも、政権の側にも、あるいは官僚体制の側にもあったことから、ともすれば国民の間の議論というのは感情的で幼稚なものであり、野党の批判というものが当事者意識を欠いたものになりがちであったということで、非常にこの議論が成熟しない結果をもたらしたのではないかと思うんですね。  そういうことから考えますと、今回、政権交代が行われたということは大変よかったと思いますのは、これは逆説的なことになると思うんですが、自民党政権のやってきたことの中にも妥当なことはあったんだということを民主党政権が実証してくれるということもあるのではないかと。それから、今野党となった自民党を中心とする勢力が与党を非難、攻撃する場合も、いずれまた自分たちが政権を奪還するというふうに考えた上での批判であれば、そう非生産的な批判に陥る危険は大きくないのではないかと。  そういう意味で、今回政権交代があったことは大変よかったと思いますし、その政権交代に伴う多少の混乱は、一種の日本安全保障をめぐる議論が成熟するための知恵熱だろうというふうに私は理解しております。  それから、これとの関連でもう一つ付け加えさせていただきたいのは、先ほど春原参考人のレジュメにも書いてあって余りおっしゃらなかったことなんですが、私はシンクタンクの役割というのは非常に重要だろうと思っております。  日本はなぜこんなにシンクタンクの力が弱いのか、どうしてそこにもうちょっと十分な資金と人材が集積されないのかということを日ごろ考えておりまして、現時点で私いい答えはないんですが、多分寄附税制の問題が一つ大きな要因としてあるのではないかと思いますけれども、アメリカは言うまでもなく、中国あるいは韓国に比べてさえも、日本のシンクタンクというのは極めて弱いですね、そして極めて表面的な仕事しかしていないと思うんです。この状態を何とか変えていかないと、外交安全保障に関する国民の議論がしっかりとした基盤を持つといった状態はつくれないのではないかというふうに考えております。  以上です。
  16. 大石正光

    ○大石正光君 どうもありがとうございました。  ただ、一つちょっとお願いしたいこと、勝手なんですけれども。  日本語というのは前座を言ってから結論を言うんですよね。英語は結論を言ってから後説明するんですよね。だから、これから若い人には是非、生徒を教えるときには結論を言ってから説明して、この書類、四人の方を見ますと、植木さんだけは結論を出してから何かいろいろ説明されて、その方が何となく興味わきますけれども、前座がいつまでもやった後に結論というと、何となくよく分からなく終わっちゃうような気がするんですけれども。是非、教育の場で若い方々にはまず自分たちの結論を言わせるような一つの指導をしていただければ少し政治も変わっていけるんじゃないかなと思っておりました。  どうもありがとうございました。
  17. 石井一

    会長石井一君) 風間直樹君。
  18. 風間直樹

    ○風間直樹君 私は、春原参考人にお尋ねをさせていただきたいと思います。  かねて参考人の御著書を拝見しておりまして、「同盟変貌」ですとか「在日米軍司令部」ですとか、大変興味深く読ませていただきました。今日は日米同盟課題ということでお話をいただきましたので、御著書の「同盟変貌」を読んだ中で私が持っております問題意識に対して参考人のお考えを伺いたいと思います。それは、〇五年の二月十九日の2プラス2での共通戦略目標についてであります。  御承知のように、日米安保条約では、極東条項で在日米軍の言ってみればその守備範囲、出動範囲というものが定められているわけでございますが、巷間この〇五年二月の共通戦略目標によってそれが実質変更されたのではないかと、こういう評価もございます。例えば、外務省にいらっしゃいました孫崎享さんですとか、そういった識者がこのような点を指摘をされていらっしゃいます。私はそれがどうなのかという観点を最近持っているんですが、その点についての春原参考人のお考えを伺いたいというふうに思っております。  「同盟変貌」、御著書を拝見いたしまして、この本の中に2プラス2に至る経緯が非常に詳しく書かれていることに敬服をいたしました。私なりにちょっと簡単に要約させていただいたんですが、御紹介させていただきますと、まず日米間での防衛政策の見直し協議というものが小泉政権に前後して始まったと。当時、小泉政権下の外務事務次官は竹内元条約局長だったわけですけれども、この方は安保条約の下での極東条項を守るということに非常に、そうした立場に立たれて、米側の求めに対しては極めて慎重だった。一方で、当時アメリカの国防長官が、ラムズフェルドでございますが、RMAを進めていたさなかでございまして、軍事技術面から信頼の置ける同盟国との一体化を加速するという方針の下、この一角に日本を組み込むとラムズフェルド氏は決めていたと、御著書の中でこのように記載をしていらっしゃいます。  それで、橋本政権下で日米安保共同宣言の作成が行われた中で、この竹内当時の外務次官は、なし崩し的に安保の対象範囲を拡大することは民主主義の否定であると、こうした認識に立って、米側との交渉では非常に予防線を張り、奮闘されたようでございます。その流れの中で、小泉政権下で出てきた米陸軍の第一軍団司令部のキャンプ座間への移転に関しても慎重な立場を取っていたと。こうした立場は小泉政権下の福田官房長官、その後を継がれた細田官房長官も同様であられた。  ただ、その後、外務大臣が、この場にもいらっしゃいますが、川口先生から町村外務大臣に替わられ、また防衛大臣が大野先生になられてからこうした路線が転換されて、そこに当時の外務省の西田総政局長の意見も加わって、最終的には二〇〇四年の秋ごろ、いわゆるトータルパッケージ、米側と呼応しながら、日本の、日米のこうした防衛関係の中での役割を拡大していく、こうした姿勢への転換が図られたと、こういうことを書かれていらっしゃいます。  その結果として、町村外務大臣当時の極東条項にとらわれずこうした問題を議論すべきだという主張に基づいて、〇五年二月十九日の2プラス2で先ほどのような共通戦略目標が発表されたと、このような流れと私は理解をしたわけでございます。  問題は、最初に提起しましたように、じゃこれが安保条約下での極東条項を事実上変えるものかどうかという点なんですが、これについて春原参考人のお考えはいかがでしょうか。また、あわせて川上参考人のお考えもお伺いできれば有り難いと思います。
  19. 春原剛

    参考人春原剛君) お答えいたします。  まず、ここにいらっしゃる方々にも分かりやすいように申し上げますと、私がその本の中で書いたのは、物すごく簡単に、マスコミの人間が書いたものですから、非常にある程度簡単に色分けをしているんですが、当時の外務省の竹内外務次官を中心とする方々はスモールパッケージといって、できるだけ極東条項を守るということで、米軍世界戦略日本自衛隊が一体化されないんだということをかなり意識されていたのではないかと思います。対して、当時の防衛庁を率いる守屋当時の防衛次官が考えていたトータルパッケージというものは、むしろ沖縄普天間返還を含む在日米軍基地の負担の軽減をできるだけしたいという観点であって、必ずしも防衛庁の主導したトータルパッケージというものが極東条項を超えて日本安全保障同盟に対するコミットを増やすということではなかったんだろうと思います。  つまり、実はスモールパッケージとトータルパッケージというのは、当時マスコミでも、アメリカ人がこれは付けた、当時のリチャード・ローレスというアメリカのペンタゴンの高官が付けた名前と言われていますが、対比するような存在であったかのように書かれていますが、実際には、実はかみ合っていなかったんだろうと思います。  その上で御質問にお答えすると、結論を言いますと、先ほどの大石委員の御趣旨に沿って申し上げますと、結局、極東条項を超えるものにはなっていないんだろうと思います。もう少し詳しく言うと、僕の印象は、非常にあいまいもことした結論で、持ち越し、逃げちゃったなと、日本側がですね、というイメージがあります。  その昔、高野という外務省の北米局長が橋本政権下で国会答弁で、極東とはどこを指すかといったときに、台湾海峡も指しますみたいなことを言われて、当時の橋本総理のげきりんに触れたというのはやっぱり随分当時のマスコミ報道でありましたが、つまり、それほどその橋本政権から小泉政権に続くまで、やっぱり極東条項というものは非常に日米同盟の中で大きな存在であったと思うわけですね。その極東条項の範囲まで、範囲の外に出るかどうか、日本は出るべきかどうかという議論をする前に、結局、何となくうやむやに2プラス2の共通戦略目標というのを出し、何となくうやむやに普天間の今回の辺野古沖の代替施設を始めとする米軍の再編というのを決めたということだろうと思います。  当時、いろんな方からいろんな話を聞いて、例えば、横須賀を母港とする第七艦隊の旗艦ブルーリッジが、じゃ、一体、本当に日本防衛と極東だけのためにいるのかといいますと、実はそうではないと思うわけですね。第七艦隊は、恐らく日本日本を含む極東以外、以遠のものに対する責任も持っていると。同じような概念で、先ほどおっしゃられたキャンプ座間にやってくるアメリカの陸軍第一軍団の司令部もいいんではなかろうかと。  つまり、そこは本当の議論をしていないわけですね。極東条項なるものをもう超えた方がいいんじゃないかと、それともやっぱりここにしっかりととどまるべきなのだという明確な日本としてのやっぱり意思を反映させないまま、日米同盟をこれ以上悪くしちゃいけない、ブッシュ政権との緊密化を損なっちゃいけない、ブッシュ・小泉の、何でしょう、蜜月関係をマイナスの方向に振れさせてはいけないという政治判断で、そこは何となくオブラートに包んでここに至ってしまったというのが少なくとも私の解釈であります。  ただ、その本の中ではそこまで書き切れなかったので、分かりづらいことがあるかと思いますけれども、私の解釈としてはそういうふうに思っております。  以上です。
  20. 川上高司

    参考人川上高司君) ありがとうございます。  私は、今その本を書きつつあるところでございまして、私なりの解釈を申し上げますと、先ほど大石先生の御所見にありましたが、結論から申し上げますと、極東条項は実質的に変わっているけれども、解釈上は変わっていないというふうなのが回答ではないかと思います。  この際に、中間報告が発表される前に、私もいろんなところで勉強会に携わったんですが、新新安保改定を出すべきだというのがかなりありまして、アメリカ側から、ローレスの方から、若しくはペンタゴンの日本部の方からかなり、それをやっている時間ないんじゃないかと、もう今はこのままDPRI、在日米軍再編協議を進めて、実質的に早いこと再編をやっちゃおうというふうな声があったと。したがいまして、新新安保宣言は先に延ばされて現在に至っているというのが回答ではないかと思います。  その間、外務省の中の条約局とか総政局等々でいろんなけんけんがくがくの論争があり、アメリカに渡った当時の外務省の高官が国防総省のラムズフェルド以下のところに入っていろんな論争をしている間、当時、ウォルフォビッツ国防副長官が席を立ったと、怒って席を立ったと。このままでは我々がやっているグローバル・ポスチャー・レビュー、全世界規模米軍体制の見直しができないんだというふうなところに危機を発して、アメリカ側でアーミテージ若しくはマイケル・グリーンが非常に危惧をして、そこで仕切り直しを提案し、そこから流れが変わったと。  というところで、恐らくその間に極東条項はそういうことで実質的に変わるんだけれども、解釈上は変わっていないというふうなところで現在に来ているのではないか。したがって、その実質的なものと解釈上の問題とそごが出ていますので、現在、それをちゃんと整合性を持たせる論議が国民レベルで必要ではないかと思っております。
  21. 石井一

    会長石井一君) 植木参考人、御意見がありますか。
  22. 植木千可子

    参考人植木千可子君) 済みません。ちょっと簡単に付け加えたくて、手を挙げさせていただきましたが。  一つ覚えておかなきゃいけないかなと私が常日ごろ思っていることは、世界的な米軍再編の見直しというのは、そもそも今とは大分違った軍事的な考え方に根差してできていたもので、特に極東に限ってではなくて世界的なところで、具体的に言うと、テロが起こって、しかも新しい、遠くからきれいに戦える、よく軍事的なピンポイントで爆撃できるような、そういったような兵器を中心にした戦い方ですけれども、それをどういうふうに効率よくするか。そして、特定の地域ではなくて、どこにでも速やかに行けるようにどうしたらいいかというのが一番の主眼になってできてきています。  先ほど、川上参考人の方から、海兵隊朝鮮半島有事のときにまず最初にというお話がありましたけど、そういうこともあるのかもしれませんけれども、一方では、政治的に安定したところに拠点を置きたいということで、随分韓国から日本にも移っている。韓国の陸上兵力というのは相当規模数イラクの方に回されていますので、必ずしも、その説明をするアメリカ人は多いですけれども、ちょっとまゆつばなところがあるので、日本としては、じゃ、どの程度まで日本は請け負っていくのか。確かに、もう今やここだけの安全ということではないので、日本の安全を考えると世界的な安全も視野に入れなくてはいけないので、それを是とするのか、そうではなくてやはり非とするのかというのは日本の選択だと思います。
  23. 風間直樹

    ○風間直樹君 済みません。一点だけ追加でお尋ねしますが、先ほども御紹介した孫崎享さんの御承知の、「日米同盟の正体」という新書の本、この本のテーマ、御案内かと思いますが、九〇年の冷戦崩壊以降、米国がその世界戦略の中で日本自衛隊米軍世界展開の際の言わば下請的な位置付けとして活用する意思を固めて、そしてPKO始め、言わばトレーニングの場として日本自衛隊をそういうところに出すと、こういう戦略を持って日本に様々な自衛隊海外派遣を要請していると、このような認識を示されているわけですが、この点について、今御発言いただきましたお三方は同意をされますでしょうか、あるいは異論をお持ちでしょうか。
  24. 川上高司

    参考人川上高司君) 私は、そのときの様子を考えていまして、むしろアメリカ側から要請があっただけではなくて、日本側も要請を出したということで、日本側が抑止力を高めるために米軍と一体となって統合化統合化とまでは行かないまでもかなり近くなって、アメリカをつまり日本のそばに引き寄せるというふうなことが一つ。それによって、日本近郊の、本土防衛を高めるというのが一つ。  それから、それをやるためにはやはり遠くに出て、アメリカが欲している地域に出て、それなりに貢献しなくちゃいけないと。そういうふうなやっぱり貸借対照表みたいなものがございまして、それをやはり相互に理解をして相互にやるというふうなところで小泉政権下では合意がなされたんじゃないかと私は思っておりますので、孫崎先生がおっしゃることは若干異がございます。  以上です。
  25. 春原剛

    参考人春原剛君) 今御案内のあった孫崎さんは私も旧知の間柄で、彼があの本を書かれる前にも何度も議論をしていますし、私の「同盟変貌」をクオートもしていただいていますし、孫崎先生独自の解釈でクオートをされているわけなんですが。  結論から申し上げると、私も少し賛成はしかねるなと。といいますのは、今、川上参考人がおっしゃったように、やはりその当時の状況を考えると、日本側も湾岸戦争のトラウマがあって、今度イラク戦争があって、やはり日本のこれからの安全保障を考えたときに同盟を堅持しなければいけない、そのためにはやっぱり日本の存在、ひいては自衛隊という存在が日米同盟体制の中でアメリカから見て切っても切れない、切り切れない存在にならざるを得ないんじゃないかという、日本のある程度の戦略というか意思があったんだろうと思います。  既に、日本の海上自衛隊アメリカの第七艦隊から見て対潜哨戒能力、それから機雷除去とか、そうしたものに相当な力を発している。逆に、シニカルに言えば、それを逆の形からいえば、アメリカの第七艦隊の機雷を掃除するだけだというふうにも言えるわけですね。しかし、日本の海上自衛隊による機雷の除去能力がなければアメリカが海上で十分な作戦行動を取れないということを考えれば、やはり日本との同盟はもう切っても切れないんだということになるわけで、要はフラスコを上から見て円だと言うか、横から見て三角と言うかということであって、孫崎さんの言われることも必ずしも全く的外れだとは思いませんが、フラスコを真上から見て、これは円だ円だとちょっと言い張っているような、そういう印象を私は持っています。
  26. 植木千可子

    参考人植木千可子君) ありがとうございます。  結論から言うと、アメリカは当然、同じ、日本と一緒にこの現在の国際システムを支えていくメンバーになってほしいというふうに思っているというのは事実です。ただ一方で、それをPKOのトレーニングとかを通じて下請に出して、そのために言っているというのは私は当たっていないと思います。  なぜ当たっていないかといいますと、アメリカが一番欲している能力というのは、ある一定の地域を任せてそこの治安をきちっと保ってくれるような、要するにポリーシングとか言われるような、そういったような能力ですね、今それができるのはフランスとかイギリスです。ある一定の地域を任せて、非常にもう混乱しているところを、そこを任せる、陸上兵力を投入することを非常にアメリカは嫌がりますので、下請としてはそういうことをしてほしい。  先ほどの掃海艇とかそういうのももちろん大事で、アメリカ軍は掃海艇持っていませんので、日本の大事な能力ではありますけれども、本当に今下請に出したいのは、そういう市街戦とか非常にいつ終わるかも知れないようなところを、一定のところを任せたい。それには、日本能力も経験もないですし、また国民が望んでいる方向としても、そういったような活動に従事するというのは、憲法の解釈とかというような話ではなく考えなくてはいけないので、違うだろうと。  ただ、国連の中で、先ほども言いましたように、今、社会の趨勢、国際社会の趨勢というのは国連のメンバーとしてやっていく責任があるんだというふうにもう変わってきているので、幾ら日本が違う体制あるいは戦争の遺産を引きずっているからといって、それはもうメンバーとして積極的にやってくれよというところはあるんだというふうに思います。
  27. 風間直樹

    ○風間直樹君 ありがとうございました。
  28. 石井一

    会長石井一君) 川口順子先生。
  29. 川口順子

    ○川口順子君 大石先生の御指導に倣って、結論であるところの質問を先に申し上げますと、中国は長期的に日本に一体何を望んでいるんだろうかというのが質問です。それで、その背景、何でそういうことを質問申し上げるかといいますと、日本が中長期的に中国に望んでいることというのはこれはかなり明快で、価値観を同じにして、民主主義でやった方の統治が効いて、そういう国になってくれるのが一番いいというふうに思っていると思います。  それで、短期的に中国は、あるいは短中期的には中国は、日本からの技術とかあるいは投資とかそういうことを期待をしていると思いますけれども、経済関係というのは、米日間を見ても分かりますように、どっかの時点で中国はどんどん経済的には強くなっていくし、相互に補完的なあるいは競争的ないろんな関係を持ちながら、相対的にどこにその比較優位を持つかという話は別にして、ほぼ同じようなレベルに達して、貿易はずっと水平貿易がかなり起こるというような状況になるというふうに思うんですが、日米間を考えると、経済的なそういう関係とともに、政治的にあるいは安全保障面お互いに依存を、今いろんな議論がありましたけれども、依存をしているという関係がこれはきちんとあるわけでして、そういう意味で、中期的にも長期的にも日米間でそんなに大きく言えばずれるということはない、同じことを望み、なっているという状況だと思います。  そこを日中間で長期的に考えたときに、そこに何らかのずれが生ずることになるんじゃないだろうかというのが私の疑問でして、そういう観点で、長期的に考えたときに中国日本に一体何を望んでいるのか、望むんだろうかということについての御意見をお伺いしたいということです。  それから、ちょっと一点別なんですが、高木参考人がさっきシンクタンクが弱いということをおっしゃられて、私も全く同じ意見を持っております。  それ、なぜ弱いかというのは、一つには、私は政権交代が行われてこなかったということに起因をしていると思っておりまして、役所という、官僚というもう一番大きなシンクタンクがきちんとあって、そこを使うことができるということで、それが意味を持ってきた。これが政権が交代をするということになると、おのずとそれぞれの党の意見を反映するような研究をするシンクタンクが日本でも出てくるんじゃないだろうか。おっしゃったような税金の話ももちろんあります。ただ、これは鳩山政権の下でかなり寄附が自由になりそうなので、これには私も期待をしているということでございますが。  最後のはコメントで、質問は一つです。よろしくお願いします。
  30. 高木誠一郎

    参考人高木誠一郎君) ありがとうございます。  結論から申しますと、中国日本に何を望んでいるかということをお答えするのは大変難しいんですが、何を望んでいないかということをお答えする方が簡単かなと今考えております。  何を望んでいないかということはもちろん長いリストができるわけですが、今日のテーマとの関係でいいますと、やはり日米同盟が余りにも強化されて、日米一緒になって中国に圧力を掛けてくる、そういうような状態になってほしくないというのは明らかです。ただし、じゃ日米同盟が解体すれば中国にとって万々歳かというと、それもそうではないですね。やはり日米同盟のこの地域安定化作用、それから日米同盟が、まあ最近はこういう議論も弱まっておりますけど、いわゆる瓶のふた論で、日本軍事力強化の抑制要因になっているという判断は依然としてありますので、日米同盟が解体することは望んでないです。  私、実は長年、海上自衛隊の幹部学校で中国から見た日米同盟というテーマで毎年講義をしておりまして、この問題に関する中国人の言説をかなり読んでおるんですが、その中であるとき思わず笑いたくなる表現に出会いました。それはどういうことかといいますと、要するに、日米というのは仲の悪い夫婦のようなものであると、しょっちゅうけんかしているけど離婚は絶対できないというのがございまして、この辺が中国にとって最適解であろうというのが私の判断であります。  日米同盟以外の関連で申しますと、もちろん日本はますます市場を開放して中国の産品を輸入し、中国に投資をし、そして国際的な問題において中国の立場を共有するような行動を取ってくれるということが中国の望むところだろうとは思いますけれども、これについては必ずしも日本中国の期待には沿えないところがあるというのも事実だろうと思います。
  31. 植木千可子

    参考人植木千可子君) ありがとうございます。  結論から言うと、中国は迷っていると思います。高木参考人がおっしゃったように、アメリカ日本がくっついた状態がいいのか、それとも日本が独立して離れてくれた方がいいのか。今回も、やはり独立し過ぎる日本は怖いという、やはりそういうまだ見方があります。日本も捨てたものじゃないなと思うわけですけれども、そういう見方がある。  要するに、何かというと、中国が望んでいるのは、この体制の中で、この国際社会の中で少しずつ力を付けていって、自分たちのやり方に対して余り文句を言われないような形でずっと安定的にしたい。政治的にも、やはりこのままではいけないだろうと、もたないだろうと思っている人はたくさんいますので、非常に緩やかな形で、そして目指しているのは、日本が自民党が長く政権を取っていたときのようなああいうような形で、共産党のずっと五十年、何十年の、それで野党はいても、選挙が導入されてもというふうな緩やかな形の移行、民主化というのをやりたいと思っている。決して、ソ連のように逆になって、経済が後回しになって、政治が先になって崩壊していくというふうな、そういうことは望んでいない。  そこで彼らが分からないのは、アメリカが果たしてそういう徐々に大きくなっていく中国を常に受け入れるかどうか。ある時点で頭を押さえ込まれるのではないか、今あるアクセス、自由航行とかですね、そういうのもいつか首根っこをつかまれるのではないか。そういうような不安をとても持っているので、そうなったときというのは、当然アメリカを排除したアジアというのをつくりたくて、そのときは日本中国側に来てほしいとは思っているでしょう。  ただ、そういう段階にはまだないと思っているんだろうと思います。徐々に今の体制の中で力を付けてきて、できれば頭を押さえられないようにしたいということなのかなと。短中期的には、台湾で何か起こったときに日本に非常に迷ってほしいと、迷っている間はずっと何もしないでほしいということなんだろうと思います。要するに、介入することに対してできれば控えるという選択をしてほしいと思って、それを望んでいると思います。
  32. 春原剛

    参考人春原剛君) 随分昔の話になりますが、キッシンジャーが中国に電撃的に訪中して、ニクソンがその後行って周恩来と国交正常化の道を開くんですが、そのとき、キッシンジャーが二度目に中国に行ったときに一緒に同行した国務次官補、今でいうとキャンベルさんのポジションにいた人にマーシャル・グリーンというキャリアディプロマットがいました。彼が亡くなる本当に直前に僕はたまたまお話を自宅でする機会があって、いまだに僕はすごく覚えているんですが、彼が最後に言ったのはこういうことでした。自分は自分のレベルのカウンターパートとずっと話をしていたと、キッシンジャーはキッシンジャーのレベルの相手とずっと話をしていたと。キッシンジャーがどの程度だったかは知らないが、少なくとも自分が中国の相方と話した会話の九割は日本のことだったと。それで、彼ら、その中国人のカウンターパートが言ったことは、いかに日本をもう一回軍国主義に走らせないようにするか、そのためにいかに米中が協力するか、それをずっと彼は話していたと。で、おまえは、そのころは若いジャーナリストとして、そういうことをおまえに託すから覚えておいてほしいと、日本人として必ずそれを忘れないでほしいと強く言われました。それはいまだにどこにも書いたことがない、今日初めてここでお話しするんですが。  そこから僕が思うのは、今の御質問に答えると、何を望んでいるかというと、お二人が言われたことと同じですけれども、余り独立しない日米同盟の傘下で、さっきの僕が申し上げた長兄、末弟でいうと、出来の悪い末弟でいる、い続ける日本が恐らく彼らの望みであろうというふうに思います。  現在、鳩山政権下で非常に日米関係がぎくしゃくしていると言われていますが、実はこれは一番喜んでいるのは私は胡錦濤さんだろうと思います。といいますのは、アメリカ中国から亡命してきたいろんな研究者と話をしていて彼らが私に言ってきたのは、胡錦濤は江沢民と明らかに違う戦略を取っていると。江沢民は、アメリカ政策というのがどんと真ん中にあって、日本はその周辺にくっついているだけだと、日本なんか無視していいと。ところが胡錦濤は、明らかに権力を握った瞬間に対日政策と対米政策は分けて考えると。よく英語でドライブ・ア・ウエッジと言いますが、つまりくさびを打って、日本日本としての政策を考えてできるだけ日米の離反を促すんだと。だからおまえ、気を付けなきゃいけないよということを随分その亡命中国人から言われました。これも亡命した人たちですから、必ずしもそのままうのみにするわけにはいきませんが、ある程度真実だろうと思うわけです。  で、今のこの現状、先ほどの高木先生のお話を踏まえれば、冷め切った夫婦、熟年離婚間近の会話もない夫婦のような日米同盟関係というのが彼らにとっては最も望ましいわけですね。ですから、逆に言うと、そうではない、年を重ねてフルムーン旅行をするような、今もラブラブとは言いませんが、やはりいろんな会話があって人生を前向きに考えられるような熟年夫婦のような同盟アメリカとなることというのが日本の安全にとって最もいいことですし、恐らくそれが中国が、先ほどから、今日キーワードとして出ている、責任あるレスポンシブルステークホルダーとして国際社会に順応していくための、恐らくそれが中国にとっても最終的にはいいことになるんじゃないかというふうに私は思っております。  以上です。
  33. 川上高司

    参考人川上高司君) ありがとうございます。  今、川口先生の方から長期的な展望とおっしゃいまして、非常に難しい御質問だと思います。中長期的に係るところでしたら、今三人の参考人がおっしゃられました、弱い日米同盟というんですか、これがやはり一番の中国の望んでいることだと思いますし、かつ経済的にもある程度力がある日本ということになると思います。  それから、中長期的のところに行きますと、何よりもまず台湾だと思います。台湾はやはり中国から見ますと非常に死活的に重要なところでありますので、ややミクロに申し上げるんでしたら、例えばこの間、沖縄中国から領事館を設置してくれということを要請したかに聞いております。それは当然ながら日本の方から断った、やるなと言われたということです。  そういうふうな状況の中、つまり、今、東シナ海から台湾を経て南シナ海にかける第一列島線、そこには中国の艦船は入っているわけですが、ここを突破しまして伊豆諸島からグアムを経てパプアニューギニアまで至る第二列島線、ここに中国の艦船が入る、潜水艦が入る。そうしますと、当然ながらアメリカの艦船、特に空母は入らなくなるわけでありますから、台湾有事の際には非常にそのディナイアルストラテジーというのが確立されて、中国台湾を何もせずに自分の影響下に置き、平和的な統合ができると。多分それが中長期的なことだと思いますが。  私が一番申し上げたかったのは長期的な展望でありますが、これも、私も中国にもいろんな友人がいるんですが、友人のある高官の一人に私は同じようなことを尋ねましたら、その私の友人が答えましたのは、遣唐使の時代に戻ればいいということが回答でありました。つまり、中華帝国でございます。これが本音であったら本当に私は怖いなということで現在に至っている次第でございます。  以上です。
  34. 石井一

    会長石井一君) それでは、藤田幸久君。
  35. 藤田幸久

    ○藤田幸久君 四名の方々、ありがとうございました。  まず、高木先生にお伺いしたいんですが、今日のテーマにはなかったんですが、タイのことについてお伺いしたいんですが、タイ・バンコク。  つまり、タクシン派と言われております動きにやっぱり中国影響というものがかなりあるように見受けられるんですけれども、今までの動きと違ったちょっとかなり危ないところまで来ているかなと。そうすると、このタイと中国との関係、これがやがて拡大する、あるいは今後対応していくためには、中国役割、それから、それやはり米中関係にもかかわるのではないかなという気がするのですけれども、それについてどうお考えかということをお聞きしたいと思います。  それから、春原参考人で、今日は触れられませんでしたが、この日米の密約問題、それから外務省の調査、その後専門家調査、そして外交文書の問題が出ておりますが、どうお考えかという、質問はそうですけれども、その背景として、廃棄があったとか、あるいは公文書を管理していなかったということは国家の基本の、ステートクラフトの基本の問題だろうと思いまして、春原参考人がずっとテーマにされておられることはまさにそのことではないかという気がしておりますので、私もアメリカの方と随分二月に行ったときに話していまして、その密約があったということよりも、廃棄をした、あるいは外交管理としてそういったことを対応していないことの方がはるかに重大なことだというふうに皆さん思っていらっしゃる意味からの質問です。  それから三点目も、済みません、春原さんですけれども、今日の課題日米同盟課題ということなんですが、よく読んでお聞きしていると、これは日米同盟課題というよりも、日本外交の課題じゃないかと。外交という場合に、いわゆるディプロマシーというよりもステートクラフトといいますか、国家が国を管理する、マネージする、要するに基礎の部分のことをかなりお話になっている、日本自身の問題として。その典型的なことがねじれとおっしゃいましたけれども、一つはいわゆる外務省チームとペンタゴンとありましたけれども、日本の外交というのは、いろんな状況の結果、外交官のみでかなり担われてきたけれども、それに国民と政治家とがかかわらなければいけないそのねじれというかギャップが一番大きいのではないか。  そうして見ますと、例えば今の普天間の問題でも、本当の専門的な例えば作戦所要とか、基地建設の基準だとか、フィージビリティーだとか、詰めた話がないまま来ていることの方がはるかに大きいんではないか、その部分が一つ。それから、いわゆる戦略性といいますか、ネットワークというか、その辺も結局ステートクラフトとして欠けていることがこういうことになっているんではないかと、その辺についてお答えいただければ有り難いと思います。  以上です。
  36. 高木誠一郎

    参考人高木誠一郎君) ありがとうございます。  大変申し訳ないんですが、私は大学の教師としての仕事がメーンでありまして、日々起こっていることについては専ら新聞、ラジオでフォローするのが精いっぱいで、必ずしもそれ以上の深い情報をコンスタントに得ているわけではございません。  したがって、タイの状況、しかもその背景にある中国との関係については、東南アジアの中でもタイは中国寄りであるということは承知しておりますけれども、タクシン政権時代、それからタクシン政権が倒れた後、中国がこれにどう対応してきたかということについては十分勉強しておりませんので、大変申し訳ございませんがお答えできません。
  37. 春原剛

    参考人春原剛君) まず第一に、今の高木先生のお言葉をフォローするつもりはありませんが、タイというかアメリカ側からの私は情報でしかありませんが、タイに限らず中国アジア諸国に相当な影響力を行使して、親米ではなく親中にしようとしているというのは、ここ数年ずっとアメリカ戦略家たちが非常に心配していることであります。実際、タイだけではなくて、御案内のようにミャンマー、あるいはインドネシア等々に非常に影響力を行使して、日本が今までODAで圧倒的な存在を誇っていた分野に関しても中国が随分力を持っている。これはいろんなテレビ、新聞等の報道でも御存じかと思います。  それに対するアメリカの危機感というのは相当なものです。実際、オバマさんが今回ちょっと延期してしまいましたが、インドネシアとかグアムに来るとか、アジア外交を積極的にやろうとしているという背景には、やはりブッシュ政権のときにイラクとアフガニスタン、特にイラクに余りにもかかわり過ぎてアジアが不在だったという反省があるというふうに、私はそれはキャンベル自身から何度も聞かされています。ですから、そういうことをキャンベルがクリントン国務長官に進言し、オバマ大統領にも言っているのは間違いなかろうと思います。そういう中で流れで見て今の現在のタイの情勢を考えると、やっぱりアメリカは相当深刻に心配しているであろうというふうに思います。  実際私にいただいた質問ですが、まず密約に関しては、もちろんおっしゃるように、公文書を廃棄する、あるいは一部外交エリートがやみからやみに約束して葬っていくというのは、健全な民主主義国家としてはやっぱりあってはいけないことだろうと思うわけです。  アメリカでいろんな取材をしていてやはりうらやましいなと思いますのは、言論の自由を守るという一応建前の側にいる者として言わせていただくと、やはりある程度の年月がたったものがきちんと公開される、もちろんCIA等々で黒塗りで出されることもありますので例外もありますが、あるいは当時の要職にあった方がオンレコできちんと証言をされるというカルチャーがやっぱりアメリカにはあるわけで、結局、そうしたことを踏まえて新しい政策が練られたり、反省なり新たな自己修正とかそうしたものがアメリカはなされるわけであって、結果としてアメリカの民度がどんどんどんどん高まっているということだろうと思います。  それに比して、やはり自民党の一党支配がずっと続いていた日本ではなかなかそういうことがなかった。先ほども申し上げましたが、自民党の政治家の方々、これまでの少なくとも政治家の方々も優秀なシンクタンクたる官僚機構にやはりかなり依存する部分が大きくて、そうしたものを考えるよりも官僚の作ったいろんなマニュアルに従っていた部分があるであろうと。そうした雰囲気、ストラクチャーが公文書をやみからやみに葬るということにつながっていったんではなかろうかと思います。ですから、これは今後、先ほど御指摘が大石先生からありましたが、二大政党制が根付くことによってこうした慣習が是正されることは強く期待したいというふうに思っています。  もう一つの、日本外交の課題というか、これは今の関連はもうしていますが、国民と政治がかかわっていない一部外交官のみが非常に密教のごとくというふうに、実は田中均という元外務審議官が月刊文芸春秋で私が対談したときに密教という言葉をお使いになっていましたが、まあうまく使うものだと思って感心しましたけれども、密教のごとく、ごくごく一部の限られた外交官だけが知っていることがやっぱり余りに多過ぎたと。やはり、政治主導政治家に最終的な責任を取っていただくのであれば、優秀で自覚を持った政治家の方にきちんとその密教を開示する必要があるということは強く思うわけです。  一方で、その密教であるがゆえに言われた、米軍基地の使用の条件とか共同作戦計画の内容とか、あるいは今の沖縄に駐留している海兵隊がかつてと比べて半年ぐらいしか日本にはいないと、オーストラリア、アフガニスタン、果てはモンゴルまで実は演習に出かけていて不在であると、こういったことが今の鳩山総理の県外移設の固執にとつながっているというふうに仄聞しておりますけれども、そうした実態も含めて何も説明がアメリカ側からないというのは、やはりこれは健全な日米同盟ではないんではないかという問題意識は私も共有しております。  以上です。ちょっと、あと川上参考人にアシストをお願いします。
  38. 石井一

    会長石井一君) どうぞ、川上参考人
  39. 川上高司

    参考人川上高司君) ありがとうございます。  まず、密約問題に関しまして、私、神奈川県の参与を務めておりまして、地元の住民から見ますと、地元から見ますと、過去の問題が現在の問題につながるのが甚だ危険だと。つまり、今の普天間問題よりもやっぱり第七艦隊を抱えるところに現在の問題としてかかわってくる、そうしますと非常に問題が拡散してくると、ここに一つの大きな問題があるというのは一つ付け加えたいと思います。  それからもう一つ中国なんですが、タイだけではなくて、私、昨年、かなりOECDとかNATOとかIAEAとか国連とか、あとは米軍基地を回っておりますが、その周り周りを中国はかなりの規模で買い占めております。土地、建物。つまり、日本がかつてバブル期にやったバイイング・イントゥー・アメリカということでアメリカのロックフェラーセンター等々買い占めましたが、中国世界規模でこれを行っているわけですね。それから、十二億、十三億の人口が湯水のごとく世界中にちりばめ、私がいた前の大学、金沢の大学ですが、そこの約三分の二ほどは中国人の学生になっております。したがいまして、フィジカルにかなり世界的に拡散していると。この状況をどうするかというような問題が一つ。  それから、シンクタンクの問題、先ほどからお話に出ておりますが、私も防衛研究所でお二方の参考人と御一緒させていただいた経験とか、あと世界平和研究所の方で長年研究をしておりまして、そこで提言書をかなり書いておりまして、その提言の一部は、実はこの資料の後ろ側に世界平和研究所からの提言を付けてあるんですけれども、こういう自由な提言を政府の見解と違うものとしてやはりどんどん出すと。アメリカではもう本当に星の数ほど、アメリカの研究所にも私二つほど在籍しておりましたけれども、そういうのをとにかく何百という研究者がそこから出すと。それによって自由な論議がなされ、かつ現実の政策にも反映されるということがございますので、民主党政権になりましてシンクタンクも是非力を入れて活用していただきたいと思うわけであります。  それから最後に、作戦共有の話が先生の方から出ましたけれども、在日米軍再編協議のときにもすら作戦共有まではなかなか聞かせていただけなかったということを聞いております。これは、やはり日本の国内にスパイ防止法だとかインテリジェンスに関連するものとか、そういう整備が全くないと。したがって、米軍の命にかかわることはどうしても共有できない。この辺のネックがありますので、国家としてこの点はかなり腰を入れて扱っていかなくちゃいけない問題ではないかと思います。  以上です。
  40. 石井一

    会長石井一君) 有村治子理事
  41. 有村治子

    ○有村治子君 自由民主党の有村でございます。  今日は、四人の先生方、貴重なお話をありがとうございます。  まず最初に、川上先生にお伺いをしたいと思います。  海兵隊沖縄におけるプレゼンスによって朝鮮半島台湾海峡、それから先島というお話がありましたけれども、必ずしもこういう認識日本国内でみんなに共有されているわけではないということを考えると、台湾は時々そういう認識台湾の当局からも表明されるわけですけれども、ここに来て、日米同盟がしっかりしてもらわなきゃ困るというのはシンガポールからもかなり言われているところで、そういう意味ではこの沖縄のプレゼンスというのが本当にアジアの安定のために貢献しているんだということをもっと強く日本としては明確に、実質的な機能ということを売り出して、これをやっぱり交渉力に使うべきじゃないかという思いがあります。逆に言うと、そこの認識が余り足りないから日米だけの問題というふうにクローズアップされる国内外の認識から一歩出ることができないのかなというふうに思うのですが、この辺はいかがでしょうか。もう少し交渉力として使うべきだという仮定に関してはどうコメントされるでしょうか。  それから、日経の春原先生にお伺いしたいと思います。  大変興味深く、逐次拝聴させていただきました。その中で、国家機密を扱うというところで、そのアクセスがある人間に関しては経歴チェックをしっかりやって信頼できるカウンターパートにならなきゃというところは私も全くもって賛同でございます。やはり国家機密を漏えいして、そしてそれによって国民の安全保障ということをおとしめるような行為があった場合は国会議員もバッジを外すべきだと私も思っておりますけれども、事インテリジェンスとなったら、安全保障観点ではなくてイデオロギーの観点から非常に反対が今でも続くという現状があります。  例えば、政権を取られた民主党さんが国家戦略ということを掲げた時点で、その名前すら気に食わないというそういう世論も出てくるというのは、まだまだこの段階から戦わなきゃいけないんだ、日本は、という感じなんですけれども。どのような経歴チェックが、警察にというお話でしたけれども、経歴チェックをどこの機関に持たせて、そこはどんなことをチェックすれば、より国民が安心して納得の上でそれは大事だと認識をしてもらえるのか。  また、日本のインテリジェンス、産業スパイも含めてかなりこれだけターゲットにされて、それがそのまま野ざらしというのは少なくないんではないかという認識を持っていますが、日本のインテリジェンスを高めていくためには、どんな分野、どんな方面をどのように強化すればいいとお考えになっていらっしゃるのか。より多くの国民の皆さんが賛同していただけるような形のあるべき姿をお述べいただけると大変有り難いと思います。  最後に、四人の先生方の中で御意見がおありになる方にお伺いしたいんですけれども、実は先週も同じ質問をさせていただきました。  日本安全保障ということに対する国民の意識とか関心というのは極めて低い中で、食料安全保障というとお茶の間でも支持されるんですが、エネルギー安全保障なんていうと何か全然当たらないという感じなんですね。日本としてのナショナルセキュリティーということに対する関心を高めていくためには、どういう教育なり啓発なり、あるいは政府からの社会的な働きかけがあり得るとお考えでしょうか。御意見がありましたら、お聞かせいただきたいと思います。  以上です。
  42. 石井一

    会長石井一君) 興味深い議論が続いておりますが、十分少々しか残っておりません。あと二人の質疑通告者がございますので、恐縮ですが、簡潔に、川上参考人からお願いします。
  43. 川上高司

    参考人川上高司君) ありがとうございます。  まず、朝鮮半島台湾、それから尖閣列島等々への脅威、そのほかにも、海兵隊には当該地域国際公共財としていろんなところに、地震だとか災害とかそういうところへ出ていく役割もあって、どんどんかつての安全保障以外の分野にも国際公共財としてのまず役目が増えていると、そういうふうな国際公共財という役目を言う。  例えば、グレグソン国防次官補と話したときに、例えばなんですが、下地島にそういう国際救援部隊みたいなのを建てる、国連の旗を持ってきてですね、そういうこともいいんじゃないか、彼は非常に賛成しておりました。そういうふうな一点目は国際公共財としての役割。  それから二番目には、やはりどうしてもこの背景には中国をどうとらえていいか分かんないというふうな国民の考え方があると思います。私自身も先ほど述べさせていただきましたように、味方であり敵であると、そういうことで、当面はただ中国の軍事的な脅威に対してはヘッジをしていかなくちゃいけないんだということをまず国民の皆様が理解していかなくちゃいけないということを分かっていただいた上で、朝鮮半島台湾の危機、これはQDRの各作業においてシナリオベーシングで検討され、この間のスタルダー海兵隊司令官がいらっしゃったときにも触れられたことでありますけれども、ただ尖閣列島に至りましては、これはアメリカ側の方から明確な明示がないと。これはやはり我が国の領土としてアメリカ側から明確にその宣言政策をしていただくと、これで随分国民の認識一つ変わってくると思います。  それから、やはり海兵隊の技術的な進歩というのがありますので、それがどのくらいどこまで届くかというふうなかなり細かいことなんですが、こういうところも政府の方から、民主党の方から国民に対して説明をするということが必要になると思われます。簡単ですが。
  44. 春原剛

    参考人春原剛君) インテリジェンスですが、イデオロギーで反対論というのは確かに強いと思います。特高警察とかやっぱり戦前戦中の記憶があって、どうしても情報管理というと、どうも思想管理とか言論の自由の制限とかということになるというその精神的バリアがあるので、そこはやっぱり幅広く議論をしていかなきゃいけないんだろうと思います。  一方で、インテリジェンスといっても、何も、先ほども申し上げましたが、ジェームズ・ボンドのような活動をしろとか、あるいは日本のスパイをどこか他国に送り込んで、いろいろかぎ回って情報を持ってこいということではなく、九割、八割はほとんどオープンソースの情報、あるいは電子、電波の情報、恐らくこれからは、先ほどスパイ衛星の話をしましたけれども、画像の情報等々宇宙空間を利用したいろんな形での情報収集というのが極めて重要になってくる。これは何も、先ほどから何遍も申し上げていますが、攻撃をするとか軍事行動を仕掛けるとかということではなく、相手がゆめ計算間違いをしないように、あなた方のおかしな動きはチェックしてますよということのために、テクニカルミーンズと彼らアメリカ人は言いますが、そうしたことを強化していくというのは十分できるんではなかろうかと。  自民党の政治家の方々とこういう議論をしたときに、君、それにはインテリジェンスを強化するためには領収書のない金が必要だということを言う人がよくいますけれども、これもちょっと短絡的で、きちんと領収書のあるお金でそういったテクニカルミーンズを強化することによって十分日本のインテリジェンス機能というのは高められますし、恐らく同盟国としてアメリカからも高く評価されて、先ほど申し上げたように欠くべからざる存在というふうにみなされるんではなかろうかというふうに思います。  以上です。
  45. 石井一

    会長石井一君) 安全保障論に関してどなたか。それでは植木参考人
  46. 植木千可子

    参考人植木千可子君) ありがとうございます。  やはり、基本的にもうどんどん開示していくしかないというふうに思います。やっぱり、一般の人の生活にどれだけ安全保障というものがかかわっているかというのは、やはり何が行われているかが開示されないと非常に分かりにくいので、先ほどの話と一緒ですけど、どんどん開示していくということが一つ。  それと、あとは、私は早稲田で安全保障という名前で教授になった、もう初めてと言われ、戦中は恐らくあったと思いますが、やはり多くの大学でもっとそういったような講座が開かれるような形にする。その一つの方策としては、アメリカだと奨学金制度があって、ナショナルセキュリティーのフェローシップというのがあります。非常にいい、PhDまで取れる奨学金ですけれども。その義務として、安全保障関係の政府のところで働かなくてはいけないという義務が付いているんですが、実は学生たちは働けるということで非常にそれを通じてやっている、そういうようなことも一つかなと思います。  あともう一つは、やはり秘密にするところはきちっと秘密にする、開示するところは開示にするというのが大事なので、先ほどのインテリジェンスの話、クリアランスの話、学生でもクリアランス持っているような学生がアメリカでは非常に多いので、非常に幅広い、レベルは違ってもですね、そういったようなことも一つかなと思います。  あと一つは、ちょっと関係ないかもしれませんけど、とても大事だと私が日ごろ思っているのは、国会における秘密会の設置です。やはり、国民の代表として選ばれている議員の方たちが、もうそこの中で話すことは完全に秘密だという秘密会を開いて、国民にはそれは知らせることはない会になると思いますけれども、国民の代表である政治家の先生方がそこの中で与野党通じて議論をきちっとする会というのは私は設けられるべきだなというふうに思っています。
  47. 石井一

    会長石井一君) それじゃ、簡潔にどうぞお願いします。
  48. 高木誠一郎

    参考人高木誠一郎君) よろしいですか。ごく簡単に申します。  先ほどの有村委員の国民の安全保障意識を高めるにはということなんですが、今まで出てきたことの補完として申し上げますと、私は、やはり日本は今ナショナリズムで燃えるような状況にない、いわゆるポストモダンの状況に入ってきているので、余りそこのところを強調しても国民の共感は得られない。この問題は、やはり国家安全保障の意識だけが欠けているんではなくて、日本国民全体の意識が内向きになっているということの一端だと思いますので、日本の存在がいかに世界状況に大きく依存しているかということについてもっときちんと教育すると。その一環として、世界をより安全なものにする中で日本の安全を追求していくという点を中心安全保障の問題を広く国民に教える。そして、もちろん軍事的安全保障の問題も重要なんですが、その中に位置付けてその重要性を強調するという形での教育を推進していく。そして、それを植木参考人が言われたように大学を中心に展開していくというのが有効ではないかと思います。  以上です。
  49. 石井一

    会長石井一君) 丸山君。
  50. 丸山和也

    ○丸山和也君 いろんな質問、また参考人方々からいわゆる日米安保、安全保障を軸にして、また中国のこれからの存在、あるいは脅威と言われて、いろんな角度から議論されてきたと思うんですけれども、私がお聞きしたいのは、やや、かなりスケールの大きな話といいますか、未来的といいますか、奇想天外と思われるかもしれないけど、私はずっと前から思っているんですけど、先に結論の方からとおっしゃるものですから、いわゆる日中安保条約というか、日中安全保障条約のようなものが成立する必要性、また作る可能性、どういう状況になったらできるのかと。これは必ずしも日米安保条約を破棄してということではなくて、私の問題意識は、日米安保条約と併存する形で日中安全保障条約ということが考えられるんじゃないかと。  それで、私は、これずっと、日本の位置、それから歴史関係中国の台頭の中でずっと思っていたんですよ。でも、なかなかこういう議論自身がマスコミにも取り上げられない、余りにも大きなテーマというか、あって、それで私、ちょうど一昨年になるんですけど、中曽根元総理とこの問題を一回話をしたいということで行ったんですよ。それで、私はもうはっきりこの問題について聞いたら、それは丸山君、あり得るんだと、日中安全保障条約というのはあり得るということをはっきりおっしゃるんですよね。別して突拍子もない考えじゃないと。ただ、今すぐというわけにいかないけれども、やっぱり中国の国内状況の、政治体制のいろんな変化とか、そういうことがあって、日米安保と併存する形で日中安全保障条約の締結の必要性といいますか可能性は十分あり得ると、こういうことをおっしゃったもので、まああながち方向性が全く突拍子もないものではないなと思ったんですけど。  こういう観点を私は持っているんですけれども、この点について、細かな議論じゃないものですからあれですけれども、未来志向的な観点から、皆さんに少し、一言ずついただけたらと思って質問させていただきました。
  51. 石井一

    会長石井一君) どなたかお一人を指名していただけませんか。
  52. 丸山和也

    ○丸山和也君 それでは、まず川上先生と、それから植木先生に是非お聞きしたいと思っています。
  53. 石井一

    会長石井一君) 実はちょっと後の時間がありまして、今日はちょっと時間を厳守したいと思っておりますので、よろしくお願いします。川上参考人
  54. 川上高司

    参考人川上高司君) 私、中曽根大勲位の下で八年間研究所で働いた者ですから、全く同じ意見でございます。  ただし、中国脅威でなくなった場合というクオーテーションが付くと思いますし、それが一番目の私の思っていること。二番目は、機能的に例えばこの地域にミニ国連、これは高坂先生がおっしゃったことなんですが、そういうのができれば、それも併存してできる可能性があるかなと思っております。
  55. 石井一

    会長石井一君) 山内君、あなた、まず質問を出してください。それで、あと一言ずつ、お一人ずつコメントで結んでいただきたいと思います。
  56. 山内徳信

    ○山内徳信君 答弁も四名にと思いましたが、時間ありませんから、四名代表して高木先生にお願いいたします。  日米安保条約結ばれて半世紀超しております。そして、今日は日米同盟の存在価値あるいは安全保障の問題が語られましたが、日米同盟安全保障問題で、何といいますか、アメリカ基地を提供する義務が負わされたわけですね。そのことによって沖縄という地域に過大な負担がずっと半世紀以上続いてきた。そういうことは、日本国民は外国の人権問題には敏感に気付くわけですが、足下のことにはなかなか声を上げて一緒に解決しようという努力は薄かったような感じがするわけです。  私は、この日米同盟深化させ発展させていくために、やはりこの種の人権問題、あるいは差別と言ってもいいぐらいの、七五%を押し付けられている、島の面積は全国の〇・六%しかない、これは人権問題じゃないのかと、参考人の先生方、どう思いますかというふうにお一人お一人の意見を聞きたかったんですが、時間ありませんから、ひとつ高木先生よろしくお願いいたします。
  57. 石井一

    会長石井一君) それでは、丸山先生の日中安保論とそれから沖縄の人権論に関して、簡潔に、高木先生から順次一言ずつお答えいただいて今日を閉じたいと思いますので、ひとつよろしくお願いします。高木さん。
  58. 高木誠一郎

    参考人高木誠一郎君) 丸山議員の御質問について二点申し上げます。  一つは、一九七二年、日中国交正常化以降、冷戦が終わるまでの事態というのは、先ほど米中が疑似同盟状態だと申しましたけど、あれは一種の日中安保疑似条約状態だったと言っていいと思います。すなわち、ソ連という共通の脅威があればできます。    〔会長退席、理事藤田幸久君着席〕  それからもう一つ、つながらないんですが申し上げるのは、中国は現在、同盟関係ほとんど持っていません。北朝鮮とありますけれども、あれはいわゆる名存実亡で、ないようなもので、同盟関係に入ることを中国自体が非常に嫌がっているということだけ申し上げておきます。  それから、山内先生の問題については、これは大変デリケートな難しい問題なんで、簡単に申し上げると誤解されてしまうおそれがあるんですが、あえて申しますと、沖縄基地が集中しているというのは、沖縄の人たちの立場から見れば人権問題というとらえ方も当然できると思いますが、要するにあそこに沖縄があるから、つまり地理的な条件によって規定されたもので、別に沖縄を特に差別するとか沖縄を軽視するということではないんだろうと思います。  これは本当に認めるのはつらいことなんですが、沖縄戦がなぜあったかというと、あれはあそこに沖縄があったから。そこがまた最大の米軍基地の集積地になったというのも、あそこに沖縄がある、位置の悲劇という側面があることは現実問題として認めざるを得ないんじゃないかと思います。  そして、沖縄の負担を軽くするという議論があって、私もそれは大賛成なんですが、その場合、沖縄というのを一つの固まりとしてとらえるのではなくて、沖縄の中でも人口集中地域と過疎地域といろいろあるわけですから、人口集中地域にあるような基地を過疎地域に持っていくということも負担軽減の一つの方策というふうに考えていいのではないかと。そして、もちろんそれに伴う様々な補償措置を手厚く配慮するということも必要だと思いますが、そういう対応で何とか納得していただけることはできないかと、私個人としては考えております。
  59. 植木千可子

    参考人植木千可子君) ありがとうございます。  日中安保条約については、脅威でなくなったらということも一つ考えられますけれども、潜在的な脅威をあえて取り込んでいくということも同盟の機能の一つには昔からあることですので、そういうことから考えると、完全にもう友好条約で、全く心配にならなくなって初めて可能かというと、そういうことはないと思います。条件があればそれは可能だろうと思います。  一番ネックに恐らくなるのは、中国はどこかほかの国の安全を自分たちが負担して守ろうという気はありません。自分たちが非常に手いっぱいだと思っていますし、国内のことが山のようにあると思っています。さっきも言ったように、いつか国際社会から頭を押さえられるんじゃないかという非常にどちらかというと被害者的な世界観があるので、かつてアメリカが大英帝国の後を追って覇権国になりたがらなかったときのような感じに恐らくなって、国際的なことに余りかかわりたくないというふうになるのが一番ネックかなと思います。  基地の問題については、私は沖縄基地問題というのは国内問題だと思っています。戦略的な観点からすると、今既にあそこにいろんな施設がありますからあそこに位置付けるというのが効率的なのかもしれませんけれども、確かに七五%集中している状態というのは絶対おかしいので、それは国内の問題として政治が解決していくべき問題だと思います。  冷戦中というのは、なぜ沖縄があそこにあるかというと、よく説明されたのは、ソ連からいい具合に遠いからだというふうな説明がされていたんですね。余り近くて、北海道にあったらばすぐにそこはたたかれてしまって安全でないと、離れているからこそ有効なのだといって、なぜあそこの位置がいいかという話であったので。確かに、あそこにある位置というのは、今もロケーションということで説明されていますけれども、ただ、それは状況に応じて結構変わった説明になるので、そうしてくると必ずしもそうではないのかなと。  有効性に少しマイナスが起きても、それは別の意味で補てんするということはきっとしていくべきことだと思いますので、私はもしこの今の政権が、ここでやるんだと、それはなぜかというと日本にとって分散させることが絶対的に大事なのだと言ってもう一枚岩になってアメリカに当たれば、アメリカは納得せざるを得ないと思います。果たしてその意識が醸成されているかどうかというと、まだまだ国民の間で、かわいそうだけれどもうちのところは嫌よというのが多いのかなと思って、残念に思っています。
  60. 春原剛

    参考人春原剛君) まず日中ですが、私も中曽根総理と似たような議論をしたことがあります。  アメリカでやっぱりそういう議論をすると、アメリカ人のアレルギー反応は物すごいです。やっぱり彼らにとってそれが悪夢であるということをまず前提に考えると、よく英語でフォーシーアブルフューチャーといいますが、予見し得る未来において、日米同盟と併存しつつ日中同盟を模索するというのは極めて危険なゲームであるということが一つ言えると思います。  ただ一方で、日本人だれしもあると思いますが、我々は戦争で負けた、西欧キリスト教文明にやっぱり牛耳られた、日本は頑張ったけど負けたと、今度中国アジア、いわゆる儒教文明の旗手として立ち上がっていると、そういうやっぱり、何となくそういう気持ちというのも多分日本人全体にあることはあると思うわけです。ただ、そういったメンタリティーだけに乗っかってやるとこれは必ず同じ失敗をするということをやっぱり覚えていかなきゃいけないと。  よくアメリカの人たちが、文明の衝突という論がはやりましたけれども、キリスト教と儒教とイスラム教、三つの三大宗教が、まあ仏教と言ってもいいんですが、やっぱりキリスト教文明圏から見て、儒教・仏教圏とイスラム教圏が握手するというのは彼らにとって悪夢以外の何物でもないわけであって、そこは非常に慎重にやらなきゃいけないと。しかしながら、アメリカ中国の角突き合わせるような状態をつくらないようにするための日本のバランサーとしての役割というのはこれからますます重要になりますから、日中同盟論と言わないまでも、やっぱりアメリカ中国のうまい具合におもしの調整役になるんだという立ち回りを日本がすべきだということにおいては私は賛成します。  沖縄の問題に関しては、これも皆さんと同じですが、負担の軽減にはもちろん賛成です。何年も、もう二十年ぐらい前からアーミテージたちとは、ずっと彼らの方から、沖縄の負担を、春原、軽減しない限り、日米同盟は永続的なものにならないよと、むしろアメリカの人がずうっと言っているわけです。ところが、必ず米軍が悪者になると。こういう構造はやっぱり日本政治の、ある程度その責任があるんじゃないかというふうに思います。  二つ申し上げたいのは、やはり一方で沖縄に申し上げたいのは、基地経済からの自立、脱却というのをどう考えるかと、これからどうやって沖縄が自立していくんだということを考えなきゃいけない。その中には、先ほど高木先生もおっしゃられた、南北問題とよく言われますけれども、南側が栄えて北が栄えないとか、あるいは今、今般普天間の問題でも言われていますが、利権の構図があるとか、やっぱりそうした暗部にもある程度自ら光を照らして改善をしていかなきゃいけないんじゃないか、でなければ長期的な解決の方法は見えないんじゃないかと。  一方で、もう一つの柱としては、先ほど地の利からの脱却をしなきゃいけないと申し上げましたが、結局、現在は中国朝鮮半島に近いということで沖縄に地の利があるという判断で彼らは沖縄に固執するわけです。しかしながら、今後、国際環境が変わって日米同盟なるものをよりいろんな形で深化、進展させていくことができれば、必ずしも地の利だけに依存する必要はない、むしろその方が望ましいと思うわけです。そのときに、地の利から脱却するということは、すなわち沖縄から撤収が始まるということだと思います。  ですから、可能性はゼロではありませんが、そこはやっぱり長期的なビジョンとそのときの情勢に応じて冷静に議論をしていくことが大事だろうというふうに私は思います。
  61. 川上高司

    参考人川上高司君) 簡単にお答えいたします。  山内先生に対するお答えでございます。  私は、基地の統廃合は当然でございますから、沖縄の方から基地は漸次統廃合されるべきだと思いますが、その際に、沖縄ビジョンをもう一度ということで、沖縄をもう一回戦略的に、時間軸を考えて、海兵隊戦略的重要性若しくはオスプレーであるとかそういう技術的なものが入ったときにどういう具合になるかというふうなことをやられれば、これも可能ではないかと思っております。  以上です。
  62. 藤田幸久

    理事(藤田幸久君) それでは、予定の時刻が参りましたので、参考人に対する質疑はこの程度といたします。  一言ごあいさつを申し上げます。  川上参考人春原参考人植木参考人及び高木参考人におかれましては、長時間にわたりまして貴重な御意見をお述べいただき、おかげさまで大変有意義な調査を行うことができました。調査会を代表し、各参考人のますますの御活躍を祈念いたしまして、本日の御礼とさせていただきます。  ありがとうございました。(拍手)  本日はこれにて散会いたします。    午後四時九分散会