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齋藤健君
自由民主党の
齋藤健です。
私は、
自由民主党・
無所属の会を
代表して、ただいま
議題となりました
環境委員長樽床伸二君の
解任決議案につきまして、賛成の
立場から
討論を行います。(
拍手)
本日、私は、静かに
皆さんの良心に訴えたいと思います。
皆さんも静かに素直に聞いていただくことを切望いたします。たった十分間であります。
大変重要な
法案でありました。最大の争点は、
温室効果ガスの
中期目標をいかなる水準に設定すべきかという点でありました。
政府提出の
法案には、一九九〇年比で二〇二〇年までに二五%削減という
目標が明記されております。我が国は、現在、京都議定書に基づきまして、一九九〇年から二〇一〇年までに六%削減するという
目標、つまり、二十年間で六%削減するという
目標の達成に四苦八苦している
わけでありますが、今回の
政府提出法案は、〇五年比に置きかえますと、十五年間で三〇%削減するというものとなります。
二十年間で六%削減することに苦しんでいる国が、十五年間で三〇%削減することを
目標に掲げようとしている
わけでありますから、当然のことながら、
国民各層から、本当に大丈夫なのかと心配の声が上がりました。そして、
国会での十分な
審議を求める声が各界から上がりました。
政府提出法案が閣議決定されました三月十二日、経団連は、
拙速の
議論のもとで
法案が閣議決定されたことに対して、極めて残念と表現し、
国会での十分な
審議を求めるアピールを文書で公表しました。
また、同日、
温室効果ガスの削減に日夜努力している九つの
産業団体からも、
国会で十分に時間をかけて
審議するよう強く要請するという
趣旨の、強い表現の声明が各会長の実名で公表されました。
同日、
労働界からも、基幹労連から、今後の通常
国会においては、建設的な
議論を
期待するとともに、さまざまな負担の姿についても逃げることのない、
国民目線に立った
審議を求めるという談話が公表されました。
さらには、二五%削減
目標達成のためのロードマップと評されて公表された
小沢環境大臣試案に対しては、我が国を
代表する研究者八名から、実名で、精査が必要で、
国民に誤解を与える可能性があるという
趣旨のアピールが、これまた文書で発表されました。
このように、
政府提出法案に対しまして、各界から次々と、
国会での十分な
審議、
政府の発表に対する分析の精査を求めるアピールが文書で発表されるという事態は、極めて異例のことであります。
十五年間で三〇%削減という高い
目標を掲げる以上、それが
国民生活や
経済活動、雇用などなどに与える影響を
国民に対してきちんと
説明していただかなくては、その
目標の是非を
国会で判断することはできないのではないでしょうか。そうでしょう、
皆さん。
しかしながら、この点について示されたものは小沢大臣試案というものでありましたけれども、これは、
審議会の
審議もこれから、
経済産業省や厚生労働省といった
関係省庁の専門家とも
議論していない、モデルにかかわった研究者自身が検証が必要と
委員会で明言するような未成熟なモデルを用いて、CO2は削減すればするほど雇用はふえるというような、世界でも聞いたことのないような、のうてんきな結果を検証もなく公表し、さらには、先ほども言及いたしましたように、
日本を
代表する研究者八人が、見るに見かねて、実名で、
国民に誤解を与えかねないというアピールを公表する、そういう代物でありました。
こんなもので、
国会でどう
議論しろというのでしょうか。幾ら何でも無
責任過ぎる。これが、我々
環境委員会の
委員が直面した現実であります。
一言で言えば、
環境大臣の思い込み以外には何も存在しない。私は、義憤に駆られながら、
委員会審議におきまして、
説明責任をしっかり果たすべきだということを再三
小沢環境大臣に求めましたが、これで十分というお答え以外、ついにいただけませんでした。
そういう状況の中で、去る金曜日、たった十八時間の
審議で、
樽床委員長の判断で、この重要
法案は
強行採決をされました。
我々
国会議員は、政党の看板を掲げる以上、
党利党略の嵐の中に巻き込まれることは避けられません。しかしながら、一方で、この国の将来に対して、
国会議員一人一人が
責任ある決断を下さなければならないという
責務からも逃れることはできません。
中身のない空疎なプロパガンダとスローガンをどなり続け、真剣に考えなくてはならない
国会議員としての正念場をやじでごまかし、強引な
国会運営でやっつけた気持ちにはなっていても、あなた
たちの心の中には、本当にこれでいいのかという良心のうずきが必ずあるはずであります。
どんなしがらみの中に住んでいても、人間には越えてはならない一線があります。この一線を越えたとき、人間はどこまでも堕落していきます。
我々
自民党は、昨年八月まで
与党でありましたので、
野党があくまでも理不尽な引き延ばしを企てるのであれば、どこかで
強行に出なければならなくなるのはわかります。しかしながら、それでも越えてはならない一線があります。
樽床委員長は、その一線を越えました。
委員会では、
労働界からも
経済界からも
意見を聞くことはありませんでした。真摯な学者の言葉も、馬の耳に念仏でした。
国会での十分な
審議を求める
労働界の声に耳をふさぎ、
経済界の声に耳をふさぎ、研究者の声に耳をふさぎ、多くの
良識ある人
たちの声に耳をふさぎ、深刻な論点が数多く残されている重要
法案の
審議を、たった十八時間、たった十八時間で
強行採決をするということで本当にいいのでしょうか。そして、そういう
委員会運営をする
委員長を褒めたたえるということで本当にいいのでしょうか。
私は、今の
民主党政権の政策決定のあり方に大変危惧を感じております。
一言で言えば、党内で政策をもむ場がない。党内に政調会もなく、政策
会議も実が伴っていない。そして、じっと見ておりますと、決定に盲従しているかのようにしか見えない多くの議員がいる。ですから、一部の人
たちの思い込みだけの政策が、そのまま
法案となって
国会に
提出され、多数の力だけで成立する危険が極めて高くなっております。
政権与党がこういう状態である今、
国会が踏みとどまって果たさなければならない使命は実に大きくなっております。見識ある
委員長であるならば、その点に十分気づいていなければなりません。小沢大臣試案のようなずさんなものが
国会に
提出されたとき、幾ら何でもひどいのではないかと正気に戻らせることができるのは、今や
委員長の良心しかないんです。
ヒトラーは
民主主義の多数決の中で生まれました。議会は、一部の人
たちの決定に盲従する人
たちが多数になったときファッショに変わるのです。我々議会人は、このことを片時も忘れてはなりません。
樽床委員長は、残念ながら、
委員長が背負っているこの重大な使命を
理解していないか、あるいは、
理解していても特定の政党のプレッシャーをはねのけるだけの胆力がないか、いずれにしても、
委員長失格だと言わざるを得ません。
今や、
国会は死につつあります。その原因は、もちろん、連立
与党の一線を越えた
国会運営にあります。この
国会を死から救い、この国の意思決定を健全なものに生き返らせるために必要なことは、
与党の議員一人一人が胸に手を当てて、本当にこれでいいのか、本当にこれでいいのかと自問自答する以外にはありません。
先ほどの
反対討論を聞いておりまして、あれほど空疎で無内容な話に、なぜあれほど情熱を込めて話をすることができるのか、私の常識ではどうしても
理解できませんでした。いや、私だけではなく、この
国会の建物から一歩外に出たら、
理解できる常識人は一人もいないのではないでしょうか。