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白川参考人 日本銀行は、
金融政策、それから
金融政策を通じて
物価の安定、それからさまざまな
金融システムの対策を通じて
金融システムの安定を図るということが主たる任務でございます。今
議員の御質問は少し広い範囲でございまして、私自身の所掌を超えるものもありますけれ
ども、その点は御了承ください。
現在、
我が国は、少子高齢化や生産性の伸びの
低下などを
背景にしまして、趨勢的な
成長率の
低下といいますか、潜在
成長率の
低下という大きな問題に直面しているというふうに
認識しています。現在のいわゆる
デフレの
状況も、
日本経済が抱えるこうした根源的な問題がいわば集約的にあらわれた現象だというふうに
認識しております。その
意味で、私としては、この潜在
成長率をどのようにして引き上げるのかということが極めて大きな
課題だというふうに
認識しています。
この
課題でございますけれ
ども、まず、少子高齢化あるいは人口減少の件でございますけれ
ども、これ自体は、
短期的には大きくは変えがたい話でございます。しかし、そうした人口のトレンドの中にあっても、この人口を最大限有効に活用する、つまり、女性あるいは高齢者の労働
市場参加率を高めていく、働きやすい環境をつくっていくということが非常に大事だというふうに思っております。
二つ目の、
経済全体の生産性をいかに高めていくかという
課題でございますけれ
ども、生産性を向上させるためには、これは多少抽象的な言い方になりますけれ
ども、情報化やグローバル化、あるいは少子高齢化といった
経済環境の大きな変化を踏まえまして、潜在的な需要を掘り起こして、需要に合致した財やサービスの供給体制を整備するということが必要だと思います。
多少青臭い話でありますけれ
ども、需要というのは、変化の起こるところに必ず生じるものだというふうに思います。現在、
日本経済は極めて大きな変化、つまり、高齢化、これは例えば介護というサービスに対する需要を高めていますし、それから、
新興国の
成長ということ、これも大きな需要の源泉であります。これは、単に現在、自動車とかあるいは家電の需要が高まるということだけではなくて、現在の勢いで例えば自動車が
新興国で普及していきますと、これは単純計算でわかりますとおり、環境に対しては物すごい負荷がかかってくるわけであります。この環境問題にどう対応するかということで、さまざまなニーズが発生しているわけでございます。そうしたニーズ、需要に合致した供給体制を整備するということでございます。
そのためには、これは
企業の中でもそうですし、それから
企業間、産業間、それから地域間、国際間といったさまざまなレベルで資源の最適配分が実現されていくということが大事だというふうに思っています。こうした取り組みの原動力は、これは過去もそうでしたけれ
ども、
企業のイノベーションだというふうに思います。
現在、
我が国の
企業は、先ほど申し上げましたような日本のマクロ的な
経済状況も見て、
我が国の将来の
成長や、あるいはそのもとでの
企業戦略に対して自信が持てないという
状態が続いているように思われます。その結果、悲観論が広がっているということでございますけれ
ども、私としては
二つのことを感じております。
一つはまず、現在起きている事態について正確に
認識し、この問題の性格を
理解し、問題に正面からぶつかっていく、取り組んでいくということであります。
二つ目は、今、やや
過度に悲観的になっている面もあるように私は思います。冷静に見てみますと、日本の
経済にはさまざまな強みがあることも事実でございます。
今回、日本の
金融システムは、
米欧に比べまして頑健でありました。それから、もともと日本の
企業は技術
水準が高いという強みを持っております。それから何よりも、世界で最も
成長センターである中国あるいは東アジア諸国を隣に有している、地理的に近いということでございます。そういう
意味で、私としては、日本の
企業がいわば
過度の悲観主義から脱却し、その上で、現在我々が直面している本質的な問題を冷静に
認識し、これは
企業だけじゃなくて、政策当局も含めてですけれ
ども、さまざまな対策をとっていくということであります。
では、何が必要かということでございますけれ
ども、民間
経済主体の前向きな対応を可能にするような土台の整備が必要だと思います。
具体的には、第一に、既存の
制度がグローバルな競争上
我が国企業の努力を阻害していないか不断に
点検し、もしそうしたものがあれば、これは速やかに見直していくということだと思います。
第二に、規制の
点検や
金融市場の整備等を通じて、生産資源がニーズの高い分野に流れるよう、
経済構造の柔軟性を高めていくことが必要だと思います。
そして最後に、個人や
企業が安心して新たな事業にチャレンジできるよう、セーフティーネットを整備することも重要だというふうに思います。
多少抽象論で、かつ長くなって恐縮でございますけれ
ども、以上のように
考えております。