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前原国務大臣 私がずっと安全保障を考えるときに何を考えてやっているかということを少しお話をしたいと思うのでありますが、
日本の主権が脅かされる
可能性のあるものというのは、私は大きく三つあると思っているんですね。
一つは、テロであります。これはさまざまなテロが考えられるわけですね。まさに
第三国が入り込んで、原発をねらわれるかもしれない、あるいは薬品、薬剤を使われるかもしれない、あるいは生物兵器を使われるかもしれない、あるいはサイバーテロなんというものもあって、
日本の経済が混乱をするというようなこともあるかもしれない、あらゆるテロというものが考えられるということがまず
一つ。
二つ目は、これは主に
北朝鮮でありますけれども、
日本を射程に置いている
ミサイルを持っている国が
北朝鮮を含めて複数ある。この
ミサイルの攻撃にどう
対応していくのかということが二つ。
三つ目は、島嶼侵攻含め、
日本の主権が脅かされる。つまりは、
日本はみずからの固有の領土だと言っていても、
他国はそれは
自分たちのものだと言っているところもあるわけですね。あるいは、
日本が島だと言っているものについては、それは島ではなくて、したがってそこから二百海里の排他的経済水域を認めない、こういうところがあるわけです。しかし、主権国家としては、こういった
日本の主権をどう守っていくのかということをやっていかなきゃいけない。
私は、
日本が今考えておかなくてはいけない安全保障の、
日本の主権が脅かされる
可能性があるのは主にこの三つだと思うんですね。では、この三つをどう守っていくかということで安全保障政策を構築していくということが大事なんだろうと思うんですね。
では、テロにおいて何が重要かというと、一番大切なことは実は
情報なんですね。
情報をいかに把握するのかといったことが大事であります。つまりは、だれがやっているかわからぬわけですよ、テロというのは。あるいはどのような攻撃にさらされているかということは、例えば地下鉄サリンのときでも、あれはだれがやっているのか、あるいは使われた薬剤は何かということがわからなかったわけですね。
しかし、
他国の例を見ると、未然にテロを防止しているというのは極めて件数は多くて、これは
情報力の差と言ってもいいのではないかと私は思いますけれども。では、この
情報というものについて、
日本はどれだけの
情報を持っているかというと、私は極めてここは脆弱だと思っているんですね。例えば衛星について言えば、多
目的収集の衛星がたった四基ですよね。アメリカはペンタゴンだけで百基以上持っておりますし、定点観測しようと思ったら、当然ながら衛星は回りますから複数を組み合わせてやらないといけないし、じゃ、アメリカの衛星の分解能と
日本の衛星の分解能は、これは大分差があるわけですね。ということは、そういったいわゆる衛星
情報も
日本はアメリカやフランスから買っている。
ヒューミントという面についても、
日本はもちろん、それは警察とかあるいは公安
調査庁とか、さまざまな警察機能がありますけれども、イギリスでいうとMI5、アメリカでいうとFBIのようなものはない、またイギリスでいうMI6やアメリカでいうCIAのようなものはないということで、ヒューミントも極めて弱いわけですね。ということは、
日本独自でそういったテロを未然に防止するだけの
情報網とそれを防ぐだけの体制が整えられているかというと、なかなかそうはなっていない。
また、
ミサイル防衛についても、やられた場合、
ミサイル防衛網で何とか撃ち落とさないかぬですけれども、撃ち落とせなかった場合にやり返す能力はないわけですよね。専守防衛できて、今までは水際で防ぐということをやってきましたけれども、今や、遠くから飛んでくるものについて、やられてやり返す能力がない、あるいはその基地を攻撃する能力がない。
だからこそ、
日本が持っていない
情報収集能力、あるいは盾の能力しか持っていなかったら矛の能力、こういうものを日米同盟
関係でアメリカに対して求めていく中で
日本の脆弱性を補完していくということが大事で、だから基地の問題にもつながってくるわけでありまして、基地の問題というのは、そういう
意味では極めて重要な問題だというふうに私は思います。
また、島嶼侵攻やあるいは
日本の主権が脅かされる場合にどういうふうに対処していくのかということになると、これは物量が物を言いますし、また、物量のみならず、装備の性能というのは非常に重要になってくるわけですね。例えば戦闘機でいうと、これから第五世代になってくるわけですね。ステルス性そして超音速で飛べるというところが大事になってきて、そういうものを備えられるかどうか。
ことしで恐らく中国は
日本のGDPを抜くと思いますけれども、八年後から十年後は、恐らく
日本のGDPの倍以上になっているだろうと思うんです。その中で、今まで二十年間毎年一〇%以上の軍事力を増強していって、公表されている数字というのの恐らく倍以上じゃないか、実質公表しているものの倍以上じゃないかとペンタゴンなんかは分析しているわけですね。
そういうのがまさに
日本の置かれている安全保障上の問題だという認識の中で、どういった
対応策をとっていくのか。だから、
日本の置かれている限界と制約要因、そしてそれをどのようにカバーしていくのかということを全体的に考えながらやっていかなくてはならないと私は思っております。
そういう
意味では、
北朝鮮の問題というものも、
拉致の問題も大事、しかし、やはり核や
ミサイルの問題というものも
日本の安全保障に極めて切迫した問題で、例えば一発の核弾頭を積んだ
ミサイルが撃ち込まれたら、
日本の大都市に撃たれたら、それは相当、
日本の経済的活動は数十年立ち上がれないようなものになる
可能性が高いわけであって、そういう
意味では、
日本の限界、そしてそれを補う日米同盟
関係の重要性というものをもう一度確認しながら、しかし、
日本の自立というか自前の能力も時間をかけて高めていくということをやりながら、交渉力を高めていかないといけない。
交渉というのは、結局、長くなって申しわけないですが、
北朝鮮がなぜアメリカと交渉したがって
日本と交渉しないかというと、それは、足元の能力というのをわかった上でやっているわけですよ。つまりは、
日本というのは自前でなかなか安全保障もできていないね、アメリカに頼っているねという
部分があるわけですね。だから、アメリカと交渉したら
日本はついてこざるを得ないかと思って、米朝交渉というのをやろうとしているというものもあるわけですね。
ですから、一朝一夕では変わらないけれども、それこそ十年後、二十年後に中国は
日本のGDPの倍以上になっている
可能性があって、しかし、
日本の主権を守っていかなくてはいけない中で日米安保をどうマネジメントしていくのかということと、
日本独自の交渉力を高めるための国力増強のために何をしていくのかといったことを考えて、すべての政治を行っていくということが私は大事ではないかというふうに思っております。