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芝田参考人 ただいま紹介していただきました、立教大学の
芝田でございます。よろしく
お願いいたします。
本日は、このような
厚生労働委員会に
参考人として招聘されましたこと、非常に光栄に思っております。
さて、私に与えられた仕事は、今回のこの
法律案に対する
意見を述べてくださいということでしたが、今回の
法律案は多岐にわたっております。すべてについて
意見を述べるほどの能力はございません。今回は、国保に限って、その
問題点あるいは将来的にどういうふうに
改革をしていくのかという理念、そういうところに絞ってお話をさせていただきたいと思っております。
今回の
法律の中で、やはり国保の
財政基盤が非常に弱いということが述べられております。その
改革をしなければいけないということですけれ
ども、そもそもなぜ
財政基盤が弱いのか、この点について少し
考えてみたいというふうに思っております。
資料の一ページ目の表一を見ていただきたいんですけれ
ども、国保世帯の
平均所得及び
保険料あるいは
保険税について書いてございますけれ
ども、二〇〇一年から二〇〇七年まで七年間についての世帯の
平均所得は二百万円を下回っております。二百万円というのは、いわゆるワーキングプアと言われている年収かと思います。それよりもかなり低いのが国保世帯の実態であるということが言えると思います。そういう中で、
負担率については非常に重い。これは後でもう少し説明しますけれ
ども、そういう問題がそもそもあるのではないかというふうに思っております。
国民健康保険に加入している世帯の構成ですが、これも近年、かなり変化してきているということが言えると思います。やはり無職者が非常にふえてきている。二〇〇七年で五五・四%が無職である。それとともに大きな問題なのは、
被用者も四分の一弱含まれているということですね。本来は、
被用者は
被用者保険に加入することになっているんですが、近年の非正規雇用の労働者の増加の中で、いわゆる
被用者保険に入れずに国保に流れてきている。無職層及び
被用者を含めますと、約八割が国保の加入の構成
割合になってくる。
この人たちは、当然、無職であれば年金か、あるいはその他の収入があるのかないのか、かなり低い層であるということが言えるのと、あるいはここで出ております二十数%の
被用者に関して言いますと、先ほど述べたとおり、非正規労働者が非常に多いですから、収入というものは限られているということになってくるかと思います。
そういう中で、近年、
保険料が非常に上がってきている。二ページを見ていただくとわかるかと思うんですが、私
どもが昨年六月に埼玉県下七十
市町村に対してアンケートを出し、四十四
市町村から国保税あるいは国保料に関して回答が寄せられております。これは、四十歳の夫婦二名で、資産が全くなく、未成年の子供が二名いるという標準的な四人世帯というのを勘案して
保険料を算定していただいております。二百万円ですから、先ほど申し上げましたように、ワーキングプアと言われているような世帯の収入と同等です。この場合、例えばさいたま市であれば三十二万八千二百円、年収の一六・四%。埼玉県下で最も
保険料が高かったのは越谷市で、三十四万六千五百円、一七・三%でした。約一五%から一五%を超える
市町村は七
市町村ございましたけれ
ども、これは異常なことだということが言えると思います。
年収が二百万円で二十万円を超えるような
保険料、あるいは三十万円を超えるような越谷やさいたま、これはどれぐらいの可処分所得が残るのであろうかというのを
考えますと、例えば越谷を
考えた場合、
保険料が二割近いというような
状況ですが、これに加えて、
国民年金
保険料、所得税、住民税等の固定的費用が必要になってきます。こういうものを引きますと、四人世帯で可処分所得が百万円ということになります。百万円で果たして暮らしていけるのか、こういう大きな問題がある。つまり、
国民健康保険料というのは生活を圧迫させるほど非常に高くなってきている、これが大きな問題ではないのかというふうに思っております。
そういう中で、未納、滞納というのが非常にふえてきておりますので、
赤字の
保険者もふえてきております。表三のところでは
赤字の
保険者が書かれておりますけれ
ども、二〇〇七年度で七一・一%の
保険者が
赤字となっております。これはひとえに、
保険料が高いという問題、それが収納率を下げているということに起因するのではないのか。
また、なぜ
保険料が高いのかというのは、これは当然のことですけれ
ども、
被用者保険については
事業主負担がありますけれ
ども、
国民健康保険に関しては
事業主負担がございません。ですから、実質的に
被用者保険の倍の率の
保険料を支払っていることになります。これは三ページの表四に書いてあるとおりですけれ
ども、二〇〇六年、
国民健康保険が
平均八・六七%、
協会けんぽが八・二%、
健康保険組合が七・三二%ですけれ
ども、この
保険料に関しては、
協会けんぽと
健康保険組合に関しては
事業主負担がありますので、半分というふうに勘案いたしますと、
国民健康保険は
保険料率で言いますと倍だということ。これはとてつもなく高い数値だということが言えると思います。
今回の
法律案においては、
財政的な
支援措置が必要だということが書かれておりますけれ
ども、本来、
国民健康保険というのは国が
法律をもって制定した
制度であるということを
考えますと、国庫
負担をふやしていかなければいけないのではないのか。暫定的な
財政支援だけでは国保の
問題点を解決するのはかなり厳しいというふうに私は
考えております。
この間、一九七〇年代以降、
国民健康保険に対する
国庫補助は減らされてきております。一九七九年においては六四・二%という最高率を記録しておりますが、一九八四年に国保法が改正されて、国庫
負担率は四五%から三八・五%まで引き下げられております。二〇〇七年度においては、
市町村国保の総収入に占める国庫支出金の
割合は二五%にまで落ちております。
よく、国保は、
医療費の半分は公費なんだというふうに言われますけれ
ども、これは
国民も非常に
混乱が起こっているところなんですけれ
ども、
医療費の給付費の五〇%が現在
国庫補助です。これは、以前は
医療費の四五%でした。
医療費というのは、患者の自己
負担を含む治療にかかった費用の全体を指しますけれ
ども、現在使われている
医療給付費という概念は、治療にかかった費用のうち、
保険から給付される
部分のみです。ですから、
医療費の五割というふうには言っておりますけれ
ども、実際はかなり低いんだということが言えると思います。
今回の
法律案の中で、国保の
広域化が必要だということが言われておりますけれ
ども、それは
医療費の適正化という名目で行われる。
医療費をいかに削るかという中で行われるということは、いわゆる公的
責任の縮小につながるのではないのかという危惧を私は持っております。
医療費を削減するということではなく、医療というのは、特に
国民健康保険は、
地域住民の健康保持が本旨であるというふうに
考えます。そういう目的で
改革を進めていただければいいというふうに思います。
国の
責任で医療
保険の一元化は必要だというふうに私も
考えております。ただ、
広域化というのは非常に大きな問題があるのではないのかというふうに思います。
広域化することによって、
保険料が高くなる可能性があります。これは、県内で統一ということであれば、その中で一番高い
保険料に合わす可能性が非常に高いのではないのかというふうに
考えられます。また、
広域連合にすることによって、
市町村の
一般会計からの繰り入れがなくなりますので、当然、
保険料は高くなっていく。これは介護
保険が前例であるということが言えると思います。
もう
一つ、国保の
広域連合の
運営は、
責任主体が不明確になるというふうに
考えられます。国なのか、
都道府県なのか、
市町村なのか。結局、だれもがその
責任を負えない
制度になってしまう。将来的には民営化されるおそれもあるのではないのかというふうに私は危惧をしております。
今回の
法律案の中でとりたてて注目したいのは、無
保険状態の子供の救済であるというふうに
考えられます。
十八歳
未満の子供に関して短期
保険証を無条件に配付、交付する、これは非常に重要なことです。この
部分に関して、速やかに
成立させ実施すべきだというふうに思います。他の改正とは分離し、速やかに行うように
考えるべきではないのかというふうに思っております。
ただ、資格証明書世帯における子供さんたちに短期証が交付されるということだけですべてが解決されるというふうには私は思っておりません。
学生とともに東武東上線の沿線上の各駅において、三割の自己
負担が重くないのかというアンケートをいたしましたけれ
ども、六三%もの人たちが三割の自己
負担が重いというふうに回答しております。これは五ページに書いてございます。そもそも自己
負担が非常に重く、これによって病院にかかれない人も出ているのではないのかというふうに私は思います。
国立
社会保障・人口問題研究所の調査においても、健康でなかったが病院に行くことができなかった、こういう人がいるということが報告されておりますし、また、全日本民主医療機関連合会の二〇〇九年の
国民健康保険などの死亡事例の報告の中でも、正規の
保険証を持っていた十人の方が、病院に行ったが手おくれで亡くなっている、そういう報告もございます。
こういうことを
考えますと、一部
負担が重いことが病院にかかれない
一つの
要因だというふうに
考えられます。速やかに、三割の自己
負担を一九八四年の健保法の改正時の原則二割
負担まで戻していく、そういうことの英断をしていただくべきかというふうに思います。
また、
全国の自治体において子供
医療制度ができ上がっております。千八百自治体において昨年度実施されておりますが、これを国の
制度とすべきだと思います。子供の健康を守るのは、親であったり一自治体の
責任ではなく、国家の
責任だというふうに
考えております。子供は、未来の日本、
世界を築いていく宝であるということ、健全に子供を育成していくのはまさに国家の
財政的な
責任だというふうに私は
考えております。こういうものもぜひ急いで
検討していただけたらありがたいというふうに思います。
それと、もう一点つけ加えますが、
最後のページに書いてありますが、埼玉県下の四十四
市町村から国保のしおりが送られてきました。そのすべてを
検討させていただきましたが、そのパンフレットの中に、国保は相互扶助あるいは助け合いだというふうに書かれております。これは、一九三八年に制定された
法律では相互扶助と書かれておりますが、一九五八年に制定された
現行国保法においては
社会保障というふうに書いてあります。お金を払わないと国保の給付にはあずかれないというのは非常におかしなことだと思います。お金を払った払わないにかかわらず、生存権を守るのは国家の
責任だというふうに
考えております。
そういう意味では、無
保険状態にある人、
保険料を払えない人たちを速やかに救済していく施策を講じていただきたいというふうに思っております。
以上です。(
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