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近藤(三)
委員 大臣、これから五十年先のことを
議論しているのではなくて、あと十年で十倍というふうに書かれているわけですから、この野心的な目標を
小沢試案でどのように
考えておられるのか聞きたかったわけです。風光明媚で、そして水産資源が豊富で遠浅の海が少ない
日本の海域、これを絵にかいたもちのような目標で一体どのように進めていくのか、甚だ疑問です。
私の四月二十一日の
経済産業委員会での
質問に対し、
経済産業副
大臣はこのようにおっしゃいました。これはあくまで
小沢試案であり
政府案ではない、
経済産業省としては
小沢試案に沿って物事を進めるわけではない、このように言い切りました。まさに前代未聞の閣内不一致です。そのような案を示しておきながら、二五%
削減のよしあしを国会で
議論しろというのはしょせん無理、国会で検証などできません。
これまでの
環境大臣の答弁によって、改めて、
政府提出の
基本法案には三つの
前提条件が記されてはいるけれども、その
意味、内容、定義、判断
基準が決まっていないということ、あるいは、
国際交渉事だから明らかにできないとの見解が示されてきました。さらに、二五%
削減を
中期目標とすることによって新たに生じる
国民負担額がどれだけになるのか、
政府としての数値はない。また、二五%
削減のうちの国内
削減量も決めていない。このような答弁にきょうもまた終始されたわけです。
そして、
小沢試案という
ロードマップもどきについても、風力
発電に代表されるように、十年後を目指す
ロードマップでありながら、全くリアリティーがないわけです。
そもそも、
我が国の
中期目標、
世界に突出した二五%
削減が
我が国に与える
影響やその根拠も明確でなく、民主党のマニフェストに二五%と書き込まれているからそのまま突き進んでいる。これは、子ども手当がなぜ月々二万六千円なのか、その根拠が不明確であるのと全く同じです。
さて、もう
一つの問題点、
基本法案そのものの法律の形式について伺います。
この点につきましても、私は、二度の
質問主意書の中で
政府の姿勢をただしてきました。そして、
基本法案の法律の形式が、これまでにない極めて特異な法律であるということが判明しました。
基本法案の施行期日、すなわち法律の効力が発揮し始める日は、一般的に、
基本法が公布された日となっています。しかし、二五%
削減は、
国際交渉の推移を見きわめて、三つの
前提条件がクリアされたことを確認する必要がある。
このため、こちらのパネルを見ていただきます。このパネルにありますように、
温室効果ガスの
削減目標、二五%
削減を
中期目標とする規定、つまり、これは第十条の第一項の規定のことですが、この規定については、三つの
前提条件が満たされたことが認められた日、この赤のアンダーラインですね。それから、成就した日以後の政令で定める日から施行する、このようになっています。
この附則第一条のただし書きが大変特異なんです。すなわち、二五%
削減の
中期目標の施行期日につきましては、具体的な期限を定めないで、三つの
前提条件をクリアできたことを
政府が確認し、政令で施行期日を定めるといった法律の形式になっているわけです。
政府が確認して、政令で施行期日を定めると。条件つきで政令に委任するというこの法律の規定の仕方は、これまでの
我が国の
法令にはないことが、私が出しました
質問主意書に対する
政府の答弁書の中で明らかになったのです。
本日の最初の
質問でも
指摘しましたように、まず初めに、二五%
削減の成就のための三条件が満たされているかどうかの判断は、国会の関与が全くなく、
政府が行う。さらに、法律の効力が発揮する期日である施行期日についてもまた政令で定め、国会の関与がないということ。二五%
削減というこの
基本法案の根幹となる決定ですよ、これにダブルで
政府にフリーハンドが与えられてしまっているということなんです。
施行期日の問題は実はこれだけじゃないんです。二五%
削減に関する第十条第一項の規定は、今まで申し上げましたとおり、
国際交渉の推移を踏まえるという
政府答弁によりますと、
法案が成立し、
基本法が公布された日より後の施行期日となります。
しかし、こちらのパネルを見ていただきます。
基本的施策に関する規定である第十条第四項、そして、
再生可能エネルギーの目標を定めた第十一条。下の方の赤ラインですね。上の方の赤ラインが第十条第四項の方ですね。そして下の方の第十一条の規定も、ともに二五%の
温室効果ガス削減に関する
中期目標の
達成を引用しています。すなわち、法律の効果が発揮される施行期日がおくれる、第十条の第一項の規定をともに引用しているということです。
このパネルにありますように、この二つの施行期日は、二五%
削減の施行期日より前の法律の公布日になっているということ。規定の本文の赤線のように、上の二つの赤線のように、
中期目標が引用されていて、その
達成のための条文となっている。すなわち、公布の日には施行されていない
中期目標の
達成のための条文となっている。つまり、この二つの条文の目的である
中期目標が施行されていないにもかかわらず、この二つの条文は先に施行されてしまうという、まさに施行期日の逆転現象が起こるわけなんです。
私は、
質問主意書で、この規定はミスではないかというふうにただしました。これに対する
政府の答弁はこうでした。御
指摘のように丁寧に施行区分を書き分ける立法例もあるが、他方、特に施行区分を書き分けない立法例もあり、今回の
法案は書き分けない後者の立法例に倣ったと答弁するのです。つまり、略式の立法例に倣ったのだから不合理ではないという趣旨の答弁でした。
何度も申し上げますが、施行期日は法律の効力が発揮するという大変大切な日です。しかも、今回の法律は
基本法です。
国民生活や産業活動に義務を課したり権利が発生する期日で、
法案の大変大変重要な事項です。
今回、
国民だれしもが注目しているはずの
基本法案です。規定を読む側に誤解が生じないようにきめ細やかな配慮が必要です。それなのに、略式の立法例に倣ったのだから不合理ではない、このように居直る
政府の姿勢は大変問題であります。さらに、この施行期日の問題は、国会が唯一の立法機関であるとする憲法四十一条に抵触する疑いがあります。憲法違反の疑いもあるということです。
これまで述べてきましたように、
基本法案の施行期日についてのただし書きでは、
政府は
前提条件をクリアしているかどうか判断し、政令で施行期日を制定することになっています。つまり、国会の関与が全くなく、何の歯どめもありません。すなわち、政令に白紙委任した、国会軽視、いや、国会無視の
法案であり、憲法四十一条の唯一の立法機関である国会の権限を侵すという、憲法違反の
可能性もあるというのが私の主張です。
この主張に対し、梶田法制局長官は四月二日の
環境委員会で、「政令に委任する
前提条件といたしまして、法律上附則の第一条ただし書きにおきまして明確にその条件を規定いたしまして、その上で施行期日を政令に委任している」と答弁したのです。(発言する者あり)大事なことですからパネルを使わせていただいているんです。
政令に施行期日をゆだねることを限定的にする、すなわち、許される場合を明確にした、
政府、
内閣法制局長官の解釈がこちらにあります。パネルにありますように、抽象的、包括的な委任であってはならないこと、そして個別的、具体的な委任であることという要件がはっきりとこちらに述べられています。
基本法案はこの条件を満たしているかとの
質問に対し、
政府の答弁書は、
法案において施行期日を定めるに当たっての条件を明らかにすることが望ましいとの
考えのもと、
法案附則第一条ただし書きにおいて三つの
前提条件を規定し、施行期日を定めるに当たっての
考え方を明確にしたものであるとの、まことに回りくどい、すりかえの答弁です。要するに、
政府の政令に施行期日をゆだねるためには、何らかの条件が
基本法案に明記されているのでよいという解釈を今回示したということです。
きょうの
議論でもおわかりのように、三つの
前提条件について、国会にも
国民にもブラックボックスの
状態であるということです。抽象的な条件であり、決める内容は国家の
中期目標、二五%
削減という包括的な内容です。法律に条件さえつけていればこの
政府解釈を満たすのだという、余りにも国会軽視、いや、国会を無視した
政府の対応ではないでしょうか。
以上、
政府提案の
法案そのものの規定の仕方が国会軽視、憲法軽視であることを、これまでの質疑、そして
質問主意書の答弁を通じ明らかにしてまいりました。
最後に、このような不備のある
法案を、
小沢環境大臣は、このまま
法案の修正をせずに国会を通そうとしているのか、または見直しを
考えているのか、お答えください。