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江田(康)
議員 ただいま議題となりました公明党
提出の
気候変動対策推進基本法案につきまして、その
提案理由及び
内容の概要を御説明申し上げます。
地球
温暖化による気候変動は人類の生存の基盤を揺るがす脅威であり、気候変動の緩和及び適応を図ることは人類共通の
課題となっております。
この地球
温暖化による気候変動対策に関して、
鳩山内閣は
地球温暖化対策基本法案を
提出いたしました。しかし、この
法案は、
我が国の地球
温暖化対策の
方向を定める
基本法としては全くの骨抜き
法案であり、何の政治決断もない未決定、未
調整の先送り
法案と言わざるを得ません。むしろ、二五%
削減凍結
法案、否、二五%
削減放棄
法案と言っても過言ではないものになっております。いわゆる
前提条件つきの二五%
削減目標でございます。
すなわち、
内閣が掲げた二五%
削減の
目標は、すべての
主要国が公平かつ
実効性のある国際的
枠組みを構築するとともに意欲的な
目標について
合意をしたと認められる場合に設定され、
政府が国際
合意が実現したと判断したら施行する、こんな法律はあり得ません。民主党マニフェストのどこに、
世界に意欲がないなら
日本もやらないなどと書いてあったのですか。
日本が
世界をリードする気概で二五%と掲げていたのではありませんか。
今、
政府に求められているのは、気候変動に関する
取り組みに関して明確なメッセージを発信することであります。明確なメッセージを発信することによって、
国民も企業も行動を開始することができるのであります。にもかかわらず、二五%
削減目標を行方のわからない国際交渉に依存し、実際に施行するかどうかを
政府に全面的にゆだねるような法律では、何のメッセージにもなりません。
米国も
中国も国際交渉での姿勢とは別に着々と
環境分野での
経済戦略を進めております。すぐれた
環境技術で
世界をリードしてきた
日本が、今や出おくれつつあると言ってもいいのであります。その上、いつ妥結するかわからない国際交渉にとらわれていては、さらに
日本が出おくれることを恐れるものであります。
このような
鳩山内閣の骨抜き
法案、先送り
法案の問題点を浮き彫りにするためにも、公明党は対案として
気候変動対策推進基本法案を
提出いたしました。本法律案は、
国民の生存権、人類の生存権を守るという根本的価値観に立ち、そのために必要となってくる施策について科学の知見に基づいて基本原則を明確に定めつつ、科学の要請にこたえる野心的な
目標を内外に宣言し、その具体策を明示したものであります。
次に、本法律案の概要について御説明申し上げます。
第一に、本法律案は、地球
温暖化ではなく気候変動という言葉を
法案の題名に使用しました。我々は、地球
温暖化によってもたらされる気候の変化こそが人類の直面している
課題であることを明確にするため、あえて気候変動という概念を用いたのであります。また、
国際社会で提唱されている気候安全保障という概念を導入いたしました。これは気候変動を人類の生存の基盤を揺るがす脅威として安全保障上の問題ととらえるもので、国家
国民、企業等の活動、生態系を気候変動の脅威から守るという考え方であります。
第二に、ラクイラ・サミット首脳宣言、また昨年十二月の
コペンハーゲン合意で確認された、人類を危機から守るためには産業革命前の水準から、
世界全体の平均気温の上昇が摂氏二度を超えないようにするべきとの
世界共通の認識を前文に明記いたしました。これこそが現時点の真の気候変動対策の
目標であり、これがあってこそ具体的な対策が出てくるのであります。そして、この二度C
目標の実現のために、科学の知見に基づき、早期の
削減行動を重視することを基本原則に掲げました。
内閣提出法案におきましては、この二度C
目標は書かれておりません。
第三に、中長期的な
目標についてであります。中期
目標については、何ら
前提条件を付すことなく、二〇二〇年において九〇年比二五%
削減を目指すべきこととしております。
前提条件をつけないことで、国際的協調のもと、他の
主要国に先駆けて温室効果ガスの
削減を行う姿勢を強く示すとともに、気候変動対策における国際的な
取り組みにおいて、
我が国が主導的な
役割を担っていくという毅然たる
決意を示すものであります。
その上で、国際的動向、最新の科学的知見等を勘案し、必要があると認めるときは有識者
委員会の
意見を聞いて中長期
目標を見直すことができるとする条項を設けております。
内閣提出法案でも二五%
削減を掲げておりますが、その
目標の設定には
主要国の
参加による国際的
枠組みの構築と意欲的な
目標の
合意との
前提条件がついており、附則においても中期
目標の規定は
前提条件が満たされたと認められる日以後の政令で定める日から施行するとしております。これらはまさに二五%
削減凍結条項、放棄条項であり、極めて遺憾な条項であると言わざるを得ません。
長期
目標については、公明党案では二〇五〇年において九〇年比八〇%以上
削減を
目標としております。
第四に、施策のメニューについてであります。
我が国の
排出量の七割を占める大口排出事業所を対象として、排出総量に上限枠を設けて行う
国内排出量取引制度を二〇一二年までに創設することを明記いたしました。
内閣提出法案では、生産量などの一単位当たりの
排出量に限度を定める原単位方式の採用に道を開いておりますが、この原単位方式は、排出総量の
削減につながらず、
我が国の
国内排出量取引制度に重大な欠陥をもたらすおそれがあります。
再生可能
エネルギーについては、一次
エネルギーの供給量ベースで二〇二〇年までに一五%に達するという意欲的な
目標を設定しております。その
目標を実現するために、二〇一一年までに、再生可能
エネルギーの全量を電気事業者に買い取らせる新たな固定価格買い取り制度を創設することを規定いたしました。
内閣提出法案の一〇%という
目標は、固定価格買い取り制度導入前の八・二%という
政府見通しと比べても、決して意欲的な
目標とは言えないと考えます。
その他、税制のグリーン化及び気候変動対策税の創設、燃料転換、火力発電所の排出抑制、トッ
プランナー方式による工場、建築物、自動車等の排出の効率性の向上等の施策も講ずることとしております。
第五に、本法律案は、化石燃料に依存し、資源を大量に消費する現在の
経済社会の構造を大きく転換し、持続可能な社会を創出することを目指すものであります。それと同時に、気候変動対策は、新たな産業及び雇用の機会の創出、産業の国際競争力の強化、
エネルギーの分野における安全保障、
地域の活性化など、
我が国の
経済社会の持続的な発展に結びつくものとして
推進されるべきものであることを
法案に規定いたしました。
また、気候変動対策の実施に当たっては、
国民生活や
経済活動に影響を与え得ることは否定できません。そこで、公明党案では、各制度の創設等に当たっては、国際競争にさらされている産業や低所得者などに配慮し、
国民生活や
経済活動への影響を緩和する制度設計の指針を示しております。これらの配慮措置については、
内閣提出法案には規定されておりません。
このように、本法律案は、
我が国の気候変動
政策に明確な原則と
目標を与える
実効性ある
内容となっております。
以上が、本法律案の
提案理由及びその概要でございます。
何とぞ、十分に御審議の上、本法律案に御賛同賜り、
我が国の気候変動
政策の基本としていただくことを強く
お願い申し上げ、趣旨の説明といたします。