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轟木利治君 ありがとうございました。今の
大臣の
お話をお聞きしますと、既存の製造業も技術を伸ばしていくんだと、そこがチャンスなんだということだろうと
思います。
確かに、これまで
日本の製造業を中心とした
経済が世界の四%しか排出していないというのはこの事実たるものであろうと思ってございます。
ただ、私は、
日本の製造業の構図は、
米国、EUとは少し違うのではないかと思っております。それは、
日本の製造業の中には現在も重厚長大と言われてきた産業、鉄鋼、造船、非鉄産業が製造業の
一つの核として位置付けられており、世界的にもトップレベルであるということであり、そのライバルは、EU、
米国ではなく、
中国を中心としたアジアであることでございます。アジアと戦うには、人件費には大きな差がある以上、商品
開発力、それから技術、品質、サービスで常に一歩も二歩も先へ行かなければ勝てません。これらを懸命にやってきたのがこの産業であり、そのことによって現在の位置を維持していると思っております。どうぞ、こういったことを御認識いただければと思ってございます。
次に、タスクフォース
会合におけるモデル分析、とりわけマクロフレームの設定と感度分析について
経済発展の
観点から
意見を申し上げ、
大臣の所感をお聞きしたいと
思います。
テーマは、粗鋼生産量についてこれまでのタスクフォースにおける
議論を紹介し、それに対する私の見解を申し上げたいと
思います。
議論の経過として、
日本の粗鋼生産量を推定する上で、
日本国内の状況だけを判断材料として推定しているように
思います。これは、
経済実態をよく
理解していただいていないのではないかと
思います。
具体的な例を申し上げますと、粗鋼生産量を推定するに当たり、最終的には一億二千万トンのプラスマイナス一〇%で感度分析されておりますが、そこに至る
議論経過といたしましては、粗鋼生産を
CO2削減の数字と同じ二五%
削減すればいいというような
意見とか、産業界側が
日本だけ規制を強めれば海外に生産がシフトしていくと言っているが、今年の粗鋼生産量は九千万トンレベルであって、それでも海外へ出ていってないではないかといった発言もありました。この考え方は数字だけ追っておるものであり、実態を
理解されていないと
思います。
一億二千万トンのマイナス二五%で九千万トンでございます。この九千万トンの生産がどのようなものか、それは今年の状況を見れば分かるわけではございまして、九千万トンのレベルでは企業は大赤字であり、法人税も納められない状況でございます。この状況が来年も続くようであれば産業として成り立たなくなって、雇用も守れなくなるでしょう。現に、合理化
提案も出始めております。したがって、粗鋼生産は国内の需要だけで推定できるものではなく、世界の需要によって左右されることを是非御
理解いただきたいと
思います。
そこで、粗鋼生産の推定の難しさについて、歴史を振り返って私の経験から申し上げさせていただきますと、鉄鋼産業は一九八五年のプラザ
合意をきっかけに大合理化を進めてまいりました。当時は、これから
日本では鉄を一億トン造ることはないだろう、九千万トンレベルになるだろうと。よって、九千万トンレベルでも利益を生むような体質にしなければならない、そのために大幅な人員
削減が避けられないという判断でございまして、人員だけで当時と現在を比較すると二分の一に減少したんではないかと
思います。これだけでは鉄鋼産業は衰退していったかもしれません。それに対して、企業としても省力投資、省エネ投資を行い、優秀な人材と設備で技術を進歩させてきたわけであります。
ただ、粗鋼生産の実績は推定と違っており、一九九八年に九千万トン強ありましたが、その他の年度はほとんど一億トン強でありました。そして、十年後の二〇〇七年には一億二千万トンまで伸びたわけでございます。いかに推定することが難しいか、御
理解いただけると
思います。
また、今後の予測でありますが、現在、世界の粗鋼生産は十三億トンであります。そのうち、
中国が約四割の五億トンを生産しております。
中国について申し上げれば、一九九七年までは
日本と同じ一億トンレベルでありましたが、二〇〇三年に二億トンになり、以降、毎年一億トンレベルで増加し、二〇〇七年には約五億トンを超え、今年は六億トンに近づく勢いであります。そして、今後の世界の粗鋼需要見通しについては、世界鉄鋼協会は二〇一五年には十八億トンになると推定しております。つまり、今後の見通しに当たっては、世界の需要は増えていくとの判断ができるのではないでしょうか。
そのような見通しに立った場合、
中国はどうするかが
CO2削減も含めてポイントになると
思います。先日、
民主党と
中国共産党との
会談がありまして、私も参加いたしました。その
会談で、私から
中国側に対し、
中国の鉄鋼生産は今後十年先をどう見ているのかと
質問いたしました。
中国側の回答は、まず
一つは、世界
経済は伸びていく、そのときの
中国のシェアはキープしていく、
二つ目が、
中国の内需は拡大させていく、三つ目が、鉄鋼企業の合理化は進めていくとの回答でございました。このことは、
中国として、世界需要が伸びていく限り増産していく、少なくとも
CO2削減のために減産する考えはないということであると
思います。
したがって、
日本の粗鋼生産を
CO2削減のために減産させる
政策を取ったならば、
日本鉄鋼産業の衰退化により雇用不安、また
CO2削減に関しても、
日本国内は
削減されるかも分かりませんが、世界の鉄鋼需要が伸びれば、
日本の減産分と合わせて、
日本より原単位の悪い
CO2を多く出す海外で生産されることになります。ちなみに、粗鋼トン当たりの
エネルギー原単位でいいますと、
日本をベースとしてEUで約二割増、
米国、
中国で約三割増となっております。よって、世界の鉄鋼需要が伸びていく中では、生産を海外へシフトさせるより効率のいい
日本で生産した方が世界の
CO2削減効果はあると
思います。
大臣、これまで申し上げたとおり、
経済は伸びていく前提で判断していただきたいと
思います。
日本の国内だけの需要ではなく、グローバルに世界全体を見通し、粗鋼生産を推定していただきたいと思ってございます。たしか今日、タスクフォースの
議論経過の
報告を
大臣の方に受けるというふうに聞いておりますが、私も十九日、十六日、タスクフォースを傍聴してまいりました。そういったことも含めて今日申し上げたかった次第でございます。どうか、
大臣の所感又は御感想があればお聞きしたいと
思います。