○中谷元君 民間ができることは民間に、地方ができることは地方に、これは、我が国が構造改革の基本方針として掲げてきた明確な旗であります。
郵政民営化は、郵政事業の将来を見据え、
政府が全株保有した郵政事業会社と郵便局会社によって、全国あまねく地域にユニバーサルサービスとして郵政事業を提供すると同時に、三百五十兆円にも上る郵貯、簡保の保有資金を日本経済や産業転換に有効に活用すべく、経営の自主性、創造性、効率性を高め、国民の利便性の向上を図るためにつくられた法案でございます。
郵政民営化から三年たちました。今、郵政会社の
職員の意識、仕事の仕方はどんどん変わっています。より国民目線、国民感覚に近くなっております。一方で、地方の郵便局におけるさまざまな課題、懸案が残されていることも事実であります。
民営化していかに三事業を一体的に運用していくのか、この郵政事業の抜本見直しにつきましては、自由民主党は、郵政民営化
推進に関する
検討・検証プロジェクトチームを立ち上げ、検証、見直しを進めてまいりました。
この作業では、郵政グループはもとより、地域の郵便局長、関係省庁、民間金融会社、多くの利用者などから
意見を伺い、論点整理をし、日本郵政グループとしての対応、
検討が必要なもの、
政府によって
検討が必要なもの、法改正の
検討が必要なもの、この三項目に分類して、郵政事業のあるべき姿を目指し、現在、次期通常国会に向けまして、新たな郵政改革のための法案の提出に向けて準備を進めております。
一方、
政府、鳩山政権は、郵政事業の経営ビジョン、三事業会社の経営形態、株式保有等について、将来、どのような考え方を持っているのでしょうか。就任後の閣僚の発言を伺いました。今、担当大臣からも答弁を伺いました。各担当閣僚間の考えもばらばらで、聞いている我々国民にはさっぱり理解できないものであります。
今、国会に郵政株式凍結法案が提出されましたが、目的が明確でない上に、今後どのようなことを志向するのかも不明確であります。現時点において、具体的な経営ビジョンも示されないまま、株式売却の凍結のみを行い、またそれを長引かせれば、一体どうなるでしょうか。
日本郵政株式会社の経営、金融市場、経済界に混乱をもたらすものではないでしょうか。
鳩山政権では、一体どのような検証を行った結果、株式売却凍結法案の提出を決定されたのか、まず、原口大臣、亀井大臣にその根拠、過程、そして各郵政会社の経営形態、将来像をお示し願いたいと存じます。
次に、なぜ、今、郵政株式処分凍結法案が必要なのかということを伺います。
現在の郵政事業は、日本郵政を持ち株会社として、郵便局会社、郵便事業会社、ゆうちょ銀行、かんぽ生命の四社で構成され、その持ち株会社である日本郵政の株式は財務大臣が一〇〇%保有をしております。いわば、株式売却の判断は鳩山政権にゆだねられていると言えるものであり、総理や原口大臣、亀井大臣が売るなと言えば売りませんし、齋藤社長が売らないと言えばだれも株を買うことができません。株式市況の動向などで移行期間中に売却できないというのであれば、そのときに延長すればいい問題であります。
次期通常国会においては、鳩山政権が目指す郵政事業の全体像を明らかにするとしておりますが、その間、株式が売却されるおそれがどこにあるのでしょうか。常識的には、全体図が決まってから株の売却の判断をすべきであり、今の時点で
法律による株の売却凍結は時期尚早であります。
現実問題として、
法律案があろうがなかろうが、現体制で、現政権でこれから株式が売却されるという可能性があるのかどうか、原口大臣に答弁を願います。
次に、十月二十日に閣議決定された郵政改革の基本方針についてお聞きいたします。
民主党、社民党、国民新党三党の連立合意では、郵政民営化の見直し目的として、国民生活の確保と地域社会の活性化とうたっておられますが、株式売却をとめることで、逆に郵便局の全国網を維持することが難しくなるおそれがあります。
というのは、日本郵政の〇八年度末の純資産は八兆一千四百七十一億円。三分の二の株式売却でも、
政府は数兆円規模を得られるはずであります。
そもそも、金融二社の売却益のうち一兆円超は、過疎地を含めた郵便局ネットワークを維持するために使う社会・地域貢献基金の原資に充当すべきと民営化の際に考えられた
制度であります。この売却益がなくなるわけですから、全国津々浦々、公平にサービスを提供するコストをだれが負担するというのでありましょうか。税金でしょうか。事業仕分け人
会議では、恐らく株を売却すべきだというふうに判定をするのではないでしょうか。
また、閣議決定には、郵便局ネットワークを地域のワンストップ行政の拠点にするとありますが、その経費は、地方自治体が負担をすることになるのでしょうか。今後の社会・地域貢献基金の原資についてどうするのか、両大臣にお答えをいただきたいと存じます。
また、日本郵政の経営形態について、株式会社の形態を残すとありますが、一方、株式を
政府が一〇〇%保有し続ける特殊会社の構想も漏れ聞くところでございます。国が絶対的な株式保有比率を握る株式会社は、民間企業ではありません。もし、株を売らず、事実上国営化を志向するのであれば、民営化時の目的を全面否定するものであり、金融二社については、再び民業圧迫と巨大な資金がほとんど
政府内に滞ることに対する批判は避けられません。
近かろうが、遠い将来だろうが、構いません。将来、
政府は日本郵政の株式を売却するのかしないのか、原口大臣、亀井担当大臣に、それだけを明確にお答えください。
次に、社長人事であります。
民主党はこれまで、日銀総裁人事等で官僚OBの登用は拒否すると言ってきました。これが一転して、かつてミスター大蔵省と呼ばれた齋藤次郎元大蔵事務次官を日本郵政社長に起用されました。これは、民主党マニフェストでうたう脱官僚、天下り禁止と大きく矛盾するものではありませんか。
鳩山政権が郵政民営化を中止して再国有化を目指しているのであれば、
日本郵政株式会社は民間企業でなくなり、齋藤社長は天下りでなくなります。そうすれば、国が公務員を再雇用したということになり、鳩山総理の答弁は理にかなって納得がいくものでありますが、本当に
政府は郵政事業を再国有化するつもりなんでしょうか。
さらに、総理は、齋藤社長就任について、皆さんと同じような驚きを感じたところがある、いわゆる元官僚ではないかと、人間だって皆さんそうでしょう、十四年たてば中身はいろいろ変化するのは当然でないかと語りました。やめてから十四年たったからいいということでございますか。
齋藤氏の経歴は、旧大蔵省退任後に研究情報基金理事長に就任しました。同基金は、大蔵省肝いりの金融機関などの出資により設立された法人です。初代理事長は大蔵省銀行局長であり、代々の事務次官が、次官経験者にふさわしい天下りポストが空席になるまで、雨宿りや腰かけをするための法人と国会で取り上げられたこともあります。その後、情報基金顧問、東京金融先物取引所理事長、同社長を務め、退官後はミスター渡り鳥といえる十四年であります。
このような方が、
日本郵政株式会社という民営化された企業のトップとして本当にふさわしいのか、だれが見ても天下りではないかと思うのが自然でございますが、平野官房長官にこの点をお伺いいたします。
さらに続けますと、この東京金融取引所の後任の社長は、またまた旧大蔵省出身の太田省三氏であります。初代から四代続けて旧大蔵省出身がトップについておりますが、官房長官、これをどう受けとめておられますか。これは、OBが部下を呼び寄せる裏わたりではありませんか。
ことし二月の予算
委員会において、民主党の細野豪志議員はこう発言しておりました、あっせんがなくても、自動的に再就職する仕組みは残ると。先に天下った官僚OBが個人的に後輩を呼び寄せる。官僚OBたちが集まって、官僚OB同士による再就職、民主党が以前裏ルートと批判した人事が大手を振って行われているのを、政権政党民主党は見過ごすおつもりでございますか。
このような再就職はわたりには当たらないと考えておられますか。また、所管の大臣のあっせんなら、天下り、わたりということはないのでしょうか。原口大臣と平野官房長官に、それぞれの認識と見解を御
説明いただきたいと思います。
最後に、郵政法案には、かんぽの宿、メルパルクの譲渡、廃止の停止とありますが、四年前の郵政
選挙の後、民主党は郵政改革法案を国会に提出しており、この案の中では、メルパルク、かんぽの宿など施設を廃止し、郵政公社の経営の効率化を図るとあります。提出者は
原口総務大臣でありますが、原口大臣、あなたは、二〇〇五年十月六日の本
会議において、郵政公社及び郵便貯金会社は一層の経営の合理化に努めることとして、両施設の廃止を訴えています。
原口大臣、両施設がだめだとお考えではなかったのではないですか。現在も日本郵政収益を圧迫するかんぽの宿をいつまで日本郵政グループに経営させるおつもりなのか。無駄撲滅を最優先に取り組む鳩山政権でございますが、事業仕分け人の対象となれば、即刻廃止すべき事業となるのは間違いありません。原口大臣、日本郵政グループが赤字を覚悟でかんぽの宿を経営し続けなければならない必然性を御
説明ください。
以上、鳩山政権の初の国会であるこの臨時国会において、株式売却の法案の
質疑に立たせていただきましたが、売却後の姿も明示できない状態で、いわば郵政事業の将来がたなざらしにされるとも言えるこのことには、疑念を抱かざるを得ません。
目的が明確でない上に、将来像も提示しないままの、やみくもな見直し、凍結といった手法は、我が国の郵政事業の将来の姿を大きく左右し、単なるスクラップだけで、その先を明示されないことは、国益と国民生活を軽視しているとしか言わざるを得ません。
我々自由民主党は、現在、次期通常国会に向け、新たな郵政改革のための法案の提出に向けて準備を進めております。今なぜ郵政凍結法案の議論が必要なのか、与野党を超えた良識ある御判断、御議論をお願いいたしまして、質問といたします。
どうもありがとうございました。(
拍手)
〔国務大臣平野博文君
登壇〕