○
内閣総理大臣(
鳩山由紀夫君)
志位委員長の御
質問にお答えいたします。
まず、
雇用保険制度についての
お尋ねでございます。
平成二十一年の
改正雇用保険法により、特に再就職が困難な方に対して、
給付日数が六十日分延長されております。すなわち、九十プラス六十イコール百五十日ということになっております。これによりまして、本年四月から八月までで約二十四万人の
受給者に対して延長が行われています。
したがいまして、今後とも、こうした
延長給付の活用などによって、
雇用の
セーフティーネットを整備して、
国民の
安心感を高めてまいりたいと思っております。
求職活動中の
生活と住居の
支援についての御
質問でございます。
これまで、
雇用保険を受給できない
失業者の
方々に対する第二の
セーフティーネットとして、
生活支援の融資や
職業訓練期間中の
生活保障、
住宅手当の支給などを実施してまいったわけでありますが、さらに、今般決定いたしました
緊急雇用対策の中で、住居を失った
生活困窮者の方に住宅を確保する
取り組みを行うということになっております。きめ細やかな
対策をそこで展開いたすことにしておりまして、仕事や住居を失った方の再就職をこれによって
支援してまいります。
雇用調整助成金についての御
質問でございます。
雇用調整助成金については、
雇用の維持に取り組む非常に多くの
事業主に活用いただいておるところでございまして、これまで、
中小企業向けの
助成率の
引き上げ、
支給要件の
緩和等の
拡充を行ってまいりましたが、今般決定をいたしました
緊急雇用対策において、さらなる
支給要件の緩和を行ったところでございます。
したがいまして、今後の
経済雇用情勢の推移を踏まえて、
雇用調整助成金による
雇用の維持の
支援に機動的に取り組んでまいります。
それから、非
正規労働者の
正社員化についての
お尋ねであります。
雇用、
生活の安定を図るため、
正規雇用を希望する非
正規の
労働者の
方々に対して、
正規雇用に向けて積極的に
支援をすることは極めて重要だと
認識をしております。
したがいまして、非
正規労働者に対する
ワンストップによる
就労支援あるいは
事業主への
助成制度の活用などによって、非
正規労働者の
正社員としての就職を
支援してまいりますし、また、
企業に対しても、安易な解雇などが行われないよう、
労働関係法令遵守の指導をこれから徹底してまいりたいと思います。
あわせて、新しい公共あるいは支え合い、この精神によりまして、国だけではなく、
企業を含め
社会全体で
雇用確保に向け努力をしていくことを期待しているところでございます。
労働者派遣法の
改正についてであります。
派遣切りに象徴される
派遣労働者をめぐる
雇用環境を含めて、非
正規雇用全体の
労働条件の改善への
取り組みは、内閣の最
重要課題の
一つだと
認識をしております。一人一人が、安全、安心、
生きがいを実感しながら働くことのできる
社会、こういったものをいかにつくり上げていくか、この実現に向けて、
緊急雇用対策に加えて、
労働者派遣法の
改正に向けて
取り組みを既に開始いたしております。
演説の中では、本件に限らず、今後取り組むべき法案については逐一触れてはおりませんが、
重要性に関しては十分に
認識をしております。したがいまして、今月の七日、
労働政策審議会における
調査審議を諮問しているところでございます。年内に結論が出ることを期待しております。
労働法制の
規制緩和についての
お尋ねであります。
雇用にかかわる行き過ぎた
規制緩和を適正化し、
労働者の
生活の安定を図ることは重要であります。
貧困の
原因は、それはいろいろあると思いますが、
労働法制の
規制緩和もあり、
派遣労働者がふえ、今般の
経済危機においていわゆる
派遣切りの対象になったことも、これも事実だと
理解をしております。
したがいまして、このような情勢に対応するため、三
党連立合意を踏まえ、
労働者の保護を強化する方向での
労働法制の整備をしていく所存でございます。
その
労働法制の中での、
労働者派遣法の
改正内容についての
お尋ねであります。
民主党の
マニフェスト及び三党の
連立合意には、
登録型派遣の
原則禁止、
製造業派遣の
原則禁止、さらに、
違法派遣の場合の直接
雇用みなし
制度の創設などが盛り込まれているところでございまして、
労働者派遣法の具体的な
改正内容については、今申し上げたことを踏まえて、
通常国会への
法案提出を目指して、現在、
厚生労働省の
労働政策審議会で検討を既にスタートしているところでございます。
正社員雇用についての御
質問でございます。
すべての
労働者が生涯にわたって
生きがいを持って働き、
暮らしを豊かで安心してできるように
社会づくりをすること、そのことに向けて取り組んでいるところでございます。
我が国の非
正規雇用の比率は、御案内のとおり、近年高まっており、現在、三人に一人が非
正規の
労働者であることは
皆様方御承知のとおりでございます。そこで、
正規雇用を促すための
雇用者への
奨励金制度の創設など、
正規雇用に向けての
支援に積極的に取り組んでおります。
雇用確保については、これも前から申し上げておりますように、国だけではなく、
地方公共団体、さらに
企業、さらに
労働組合、NPOなど、
社会全体で支え合いの精神によって努力をして解決に向けていくことが重要だと思っておりまして、
正社員化に向けて私
ども一丸として頑張っていきたい、そのように考えております。
後期高齢者医療制度についての御
質問であります。
まさに、年齢で人間を差別する、こういった
後期高齢者医療制度が大変けしからぬ
制度であることは私どももよく
理解をしており、その
廃止を求めて私どもは今般選挙で戦ってきたことも御案内のとおりでございます。
したがいまして、
後期高齢者医療制度を
廃止することは事実でありますが、
廃止した後の
制度のあり方について、
高齢者はもとより、
市町村を初め、さまざまな
関係者の
方々の
理解を得ることが必要であることは、これも論をまちません。
老人保健制度に一たん戻すことについては、たびたび
見直しを行うということになり、
高齢者の
方々に不安やあるいは混乱を生じてはいけない、こんな思いもございまして、また、システムの改修や被
保険者の情報の移管などに約二年の時間がかかるということであり、また、多額の経費もどうしても必要になるということもあり、したがって、新たな
制度に直接移行することの方が合理的であると判断をいたしたところでございます。
これはまた、事務を担うことになる
市町村も強く反対をしているところでございまして、
政権の発足直後から賜りましたこうした各方面からのさまざまな御意見を踏まえて、
老人保健制度に戻すことよりも、幅広い
国民の御納得と信頼が得られる新たな
制度を創設したい、そのように考えております。言うまでもありませんが、その際には、国保の
負担増に
十分配慮をしながら検討をします。
これは、決して
先送りではありません。
高齢者の視点に立った真の改革を断行しようとするものでございます。御
理解を願えればと思います。
農産物の
平均関税率の御
質問でございます。
これは、OECDの調査によって、二〇〇〇年ではありますが、
我が国の
農産物の
平均関税率が、御指摘のとおり、一二%であるということは
理解をいたしております。ただ、一方では、
我が国の
農業にとって重要な品目については、輸入により国内の
農業に
大変悪影響を及ぼすという懸念がありますので、高い
関税を維持しておるところでもございます。
したがいまして、このような
国際化の流れの中で、
貿易の
自由化あるいは国内の
農業への影響との両方をにらむ必要があるということで、当然のことながら、適切な
関税というものを設定していくことが求められております。
日米の
FTAを含む
農業分野の
国際交渉についての御
質問に対しては、
米国との
FTAの
交渉促進を含めた
国際交渉については、
貿易・投資を
自由化する、これは、その観点からは当然推進をしなければならないことだと
理解をしております。
しかし、一方で、このときに、食の安全、安心あるいは
安定供給、
食料自給率の向上、さらには、
国内農業あるいは
農村地域の振興などというものを十分に考えていかなければなりません。決して損なうことがあってはならない、そのように
認識をしております。
この
認識のもとで、このことを
民主党も
マニフェストの中にも明記をしているところでございまして、
農業を営んでおられる方あるいは
農業の
関係の
方々にも御
理解をいただきたいと
理解をしているところでございます。
戸別所得補償制度についての御
質問でございます。
戸別所得補償制度は、意欲のある農家が
農業を継続できる環境を整えること、そして、
農業・
農村地域を立て直して、食と地域を再生しつつ、将来の
食料自給率の向上を図ることを目的として
戸別所得補償制度を創設したいと考えております。
したがいまして、
関税撤廃と
セットではないかという御指摘でありますが、そもそも、三党の
連立合意や
民主党マニフェストにおいては、
戸別所得補償制度は決して
関税の撤廃が前提だということではないことを御承知おきいただければと思います。
日本農業の再生についての御
質問であります。
農業者が安心して営農できる環境を整備するために、新たな内閣のもとで
国民の
皆様方にお約束をした
戸別所得補償制度をまず導入をしていくということでございます。
さらに、
FTAやWTOなどの
国際交渉においては、先ほども申し上げましたが、
貿易・投資を
自由化するという観点から、これらはやはり推進をしていかなければなりません。その際に、先ほど申し上げましたような観点、すなわち、食の安全・
安定供給あるいは
食料自給率の向上、
農業・
農村地域を損なわない、こういったことに配慮していくことは当然のことでございます。
こういった基本的な考え方のもとで、
日本農業の再生を果たしてまいる所存でございます。
高速道路の無料化に関しても
お尋ねがございました。
私どもは、
高速道路を有効活用していただく、地域と経済を活性化する、こういった目的のために段階的に
高速道路を原則無料化するという方向を
マニフェストでうたわせていただいたところでございます。
具体的には、炭酸ガスなどの環境への影響というものも考えなければなりませんし、渋滞が発生するか否か、さらには、地域への経済効果あるいは他の交通機関への影響、こういったところを
社会実験を行いながら総合的に確認をして、
国民の
皆様方の
理解のもとで進めてまいりたいと考えております。
この
高速道路の無料化と福祉にかかわりある関連の御
質問でございました。
私どもは、もとより、人間のための経済、これを目指すということ、
国民の
暮らしを最優先する、こういった経済に力点を置いております。したがいまして、
高速道路の無料化も、むしろ、流通の活性化を促すという意味では地域において大変大きな経済効果をもたらすものだ、そのような
理解もいたしておりますし、さらには、家計を直接応援する施策でもあり、その意味で、
子ども手当や高校の実質無償化などとあわせて
国民の
暮らしを守る政策として大変意味のあるものだと
理解をしているところでございます。
子ども手当の
財源についての御
質問でございます。
次代を担う子供たちのために、その一人一人の育ちを
社会でしっかり応援していこうじゃないか、これが
子ども手当を創設する意味でございます。
その際、
所得税の控除の
見直しにつきましては、政府税調を立ち上げたところでございまして、そこで本格的に検討を行って、年末に向けて結論を出します。今後、予算編成の過程を通じて、
財源の確保方策を含めて、政府全体で
制度の具体的な内容を決めてまいります。
また、少子化
対策における
人的控除の
廃止についても
お尋ねがありました。
先般、政府税調を立ち上げて、そこで、支え合う
社会の実現に必要な
財源を確保し、
我が国の構造変化に適応した税制を構築していく観点から、
所得税の控除のあり方を根本から見直すなど、個人
所得課税のあり方について検討する旨を諮問いたしたところでございまして、この
所得税の控除の
見直しについて、今、政府税調で真剣に検討が始まったところでございます。年末に向けて結論を得ることにいたしたいと考えております。
総合的な
子育て支援策についての御
質問でございます。
子育ては、未来への投資でございます。今申し上げましたように、
社会全体がまさに支え合い、助け合って負担をするという発想が非常に大事だと思っております。
子供を産み育てることを経済的な理由であきらめるような御家庭がないようにしたい、また、
子育てのために仕事をあきらめる、そんな御家庭がないようにしたい、こんな思いのもとで、
財源をきちんと確保しながら施策を推進してまいりますが、
子ども手当の創設に加えて、保育所の増設など、
待機児童の解消に向けて努力をいたしますし、また、多様な保育サービスの量の確保もしてまいらなければなりません。仕事と
子育ての両立のための
支援もいたすなど、総合的な
子育て支援策の充実に努めてまいることをお約束いたします。
在日米軍駐留経費の負担の削減についての御
質問でございました。
在日米軍の駐留経費については、
我が国の負担をより効率的で効果的なものにするために、包括的な
見直しが必要だと
認識をしております。先般の日米の防衛大臣の会談においても、
アメリカの側から可能な限り効率化を目指したいという発言があったわけでございまして、したがいまして、それに従いまして、今後とも、在日米軍駐留経費の負担については、透明性を確保しながら包括的な
見直しに取り組んで、そのことにより
国民の
理解を得てまいりたいと思います。
証券税制の優遇措置についての御
質問であります。
現行の金融
所得課税は、分離課税のもとで基本的に二〇%の比例税率が適用されているわけでありますが、このうち証券税制について、御案内のとおり、現在、税率を一〇%に軽減しています。これは、言うまでもありません、現在、景気がかなり厳しい、経済金融環境が非常に厳しい状況だということの中で優遇措置を講じているわけでありまして、あくまでも時限的な措置でございます。
証券税制を含め、個人
所得課税のあり方については、今後、これも政府税調でしっかりと議論をしてまいることもお約束をいたします。
最後に、
沖縄の
基地問題についての
お尋ねがございました。
アジア太平洋地域におきましてはいまだに不安定な要因があるということは、私どもも
理解をしております。したがいまして、こういう中で、
沖縄におります米軍を含む在日米軍の抑止力というものも、まだ
我が国の安全保障において必要なものだと
理解をするべきだと考えております。
したがいまして、在日米軍の再編については、こういった安全保障上の観点も踏まえて、過去の日米合意というものもある、この経緯を慎重に検証を行いながら、
沖縄の
方々の思いをしっかりと受けとめていきたい、そして日米間で真剣にこの問題に取り組んでいきたいと思っております。
この件に関しては、御案内のとおり、現在、
岡田外務大臣とさらに
北澤防衛大臣のもとで真剣な検証を行っていただいているところでございます。最終的には私自身が決めることでございまして、対
米従属政治だとは全く思っておらないことをつけ加えさせていただきます。
以上であります。(拍手)
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