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参考人(
嶋中雄二君)
嶋中でございます。
私は
木内さんと同じようにエコノミストをやっておりますので、若干
お話に重なる
部分もあるんですが、見方がやや
木内さんよりは相対的に、この
補正予算を早期に国会通過させて、そして関連法案も通過させることによって
経済危機
対策がきちっと早く実行に移されるという前提でありますけれ
ども、やや楽観的な見方をしております。ただし、数字的にそんなに異なるものではありませんけれ
ども。
現在、
世界経済、非常に大きな
落ち込みがあったことは既に
木内さんからも御指摘のあったところであります。また、今年の一—三月期の
日本のGDP、前期比
年率で一五・二%減と、戦後最大の減少になったわけであります。ただし、足下で少し変化が現れているわけであります。
大変恐縮でございます。
資料を私、せっかくですから大変多く持ってまいりましたけれ
ども、皆様方に
資料を見ながら御説明させていただければと思います。
大変恐縮でございますが、私の持ってきました縦の
資料の一ページを御覧いただきたいと思います。
一ページの表の三でありますが、まず
アメリカなんですが、オバマ大統領が就任されてからの
景気対策、総額で七千八百七十二億ドルのグリーンニューディール
政策というのが実施されつつあるわけでありますけれ
ども、これは
公共投資や減税などのいわゆる従来型の
対策に環境問題を解決するという目的を付けてイノベーションを行ったということだと思います。
そこで、表の三の二でございますけれ
ども、この
景気対策の実施
タイミングは、
アメリカの場合は会計年度が前年の十月から九月まで、今年の九月までということでありまして、二〇〇九会計年度に千八百四十九億ドルということなんですが、実際、大統領が就任されてから時間が余りたっていませんので、事実上、四月から九月までの間に千八百四十九億ドルを支出若しくは減税で行う。そして、二〇一〇会計年度というのはこの十月から来年の九月までですが、三千九百九十四億ドルという巨額な
対策が行われるということでありまして、このような一九三〇年代のルーズベルト大統領のニューディール
政策以来の大きな
景気対策を
アメリカがやっているわけであります。
また、二ページの図の二というのを見ていただきますと、
アメリカのFRBが供給している、これは銀行券と準備預金を足したものでありますが、マネタリーベースという
中央銀行が供給しているマネーが、四月は前年比で一一二・四%という猛烈な伸び、そしてそれに伴いましてマネーサプライの伸びも九・六%に達しているということでございまして、図の三にありますように、大恐慌のときはFRBの
政策の過ちによりましてマネーサプライが三分の一も激減してしまったというのがミルトン・フリードマンというノーベル賞を受賞した
経済学者の
考え方なんですけれ
ども、それの失敗に学んで、教訓に学んで現在大きな
対策を行っている。
このような
状況の下で、ちょっと走りますが、三ページの図の三でございますが、
アメリカ経済、大変厳しい
状況になりましたけれ
ども、細かくて恐縮でございますが、ISM
製造業景況指数という、これはサプライマネジメント協会というところが出しているアンケート
調査でありますが、かなり厳しい、昨年十二月には三二・九というところまで落ちておりましたが、四月には四〇・一に
回復し、四一という経験的なラインを突破しますと鉱工業生産などが前月比で
プラスになってきて
景気回復が起こってくるというのが
通常のパターンでございまして、この六月一日にも五月分が発表されるんですが、四一を上回ってくるということで期待が高まってきている
状態でございます。
そして、
アメリカだけではございません。五十七兆円の
景気対策を取っている中国でありますが、四ページの図の三というのを御覧いただきますと、赤い線で出しております、中国のCLSAという
民間団体が集計しております
製造業の景況指数ですが、極めて急速なカーブを描いて
回復感が出てきているということであります。
もちろん、図の四でありますが、
世界景気の低迷に伴って中国からの
輸出は低迷しておりますが、図の二にありますが、緑の線なんですが、固定
資産投資という
公共投資や不動産
投資や
設備投資を入れたものが、特に
公共投資の増加によって四月、三四%増と急速に増えているということで、
景気対策の
効果で中国は盛り上がってきているということでございます。
そして、五ページを御覧いただきますが、五ページの図の四というのをちょっと御覧ください。
これは、やはり
製造業の景況指数がどうなっているかということでありますが、ユーロ圏、今
金融危機で一番厳しいと言われているユーロ圏でありますが、ここも、ドイツのZEW指数という
金融機関の担当者に対するアンケート
調査が、足下まで急速に改善をしているということもありまして、これが先行指標になってまいりますので、ヨーロッパにおいても
製造業の景況指数が改善に向かっているという
状況でございます。これはあくまでも
製造業だけの話でございますし、端的に申し上げたわけでありますが、
世界景気が底入れから
回復に向かおうとしているという
状況が今起こっているわけであります。
そこで、
日本でございますが、七ページを御覧いただきたいと思います。
日本につきましては、今申し上げましたように大変厳しい、
世界の先進国の中でも最大の
落ち込みを見せるGDPとなったわけですね。しかも、二期連続で二けたの減少になったわけでありますけれ
ども、足下で
政策効果と見られる現象がかなり出てきております。
まず、図の一でありますが、これは
公共投資を契約ベースで見た公共工事請負金額なんですけれ
ども、一—三月期には前期比で九・五%増となっておりまして、四—六月期以降も上がっていくだろうと思われるんですが、これは〇八年度の第一次補正、これは十月十六日成立ということになりますが、この真水一・八兆円、それから第二次補正が一月末成立でありますが、真水というか国費六兆円の
対策が出てきていると。それから、これから四—六月期以降、国費四兆円の当初予算の
対策が徐々に出てくるということになります。これまで
公共投資は二〇〇二年以降急速に落ちておりまして、これによりまして、
地方の建設業者だけではありませんけれ
ども、
地方の景況が目に見えて厳しくなったわけでございますが、足下で少し
回復に向かっているという
状況であります。
それから、図の二でありますが、
住宅の着工戸数につきましては三月に前月比で二・六%という小幅な上昇になっておりますが、黒い実線ですね。ここから期待されるのは、三月二十七日成立の〇九年度、
平成二十一年度予算での
住宅ローン減税への期待が出てきているということでありまして、これが一月にさかのぼって適用されるということで、少し
住宅を購入する意思が強くなってきている
状況であります。本格的にはこの四月以降に影響が出てくるんではないかと思います。
そして次に、図の四でありますが、ここには
消費者態度指数、内閣府が出している
消費者態度指数というのがありまして、昨年の十二月を底に、まだ
水準は非常に低いんですけれ
ども、四月まで出まして、四か月連続の上昇になっております。
景気ウオッチャー
調査という同じアンケート
調査が内閣府から出ているんですが、こちらも急上昇をしておりまして、その理由が、基本的には
政策効果ということが言えるのではないかと思います。
何が話題になっているかというと、例えば
景気ウオッチャー
調査の方でいいますと、高速道路料金の引下げ、それから
定額給付金の給付やプレミアム商品券の発行、それから環境対応車の購入に係る減税補助、グリーン家電の購入に伴うエコ
ポイントの付与と、これは
政府が打ち出した
経済対策に今連動して上向いてきているということが、
景気ウオッチャー
調査、それから
消費者態度指数の各種、
雇用環境や耐久
消費財の買いどき判断、暮らし向き、それから収入の増え方等のアンケート
調査の
ポイントから見てうかがわれるわけでございます。
そして、図の五でありますが、新車販売でございます。グラフ三本ありますが、一番下の乗用車の販売台数を見ていただきますと、ようやく、非常に大きく落ち込んだんですが、四月に前月比で七・七%増えまして、前年比で三〇%から四〇%ぐらい減少していた
状況から二七・二%減にようやく縮まってきたんですが、五月では、関係筋が明らかにしたということで新聞に載っておりますけれ
ども、新車登録日が二日少ないんですけれ
ども、五月トータルで前年同月比
プラスを確保できそうだと。十五日現在では一五%程度の
プラスになっているということであります。この理由が、四月から始まった環境対応車普及促進税制、エコカー減税ですね、それと、現在国会で審議中の新車買換えに対する補助金制度が成立した場合に四月十日にさかのぼって補助金が受けられることが期待、まあ認知されているということであります。
それから、図の六でありますが、百貨店、スーパーはまだ大変厳しい
状態でありますが、これにつきましても、
定額給付金、申請されてから実際に給付されるまで一か月ぐらいございますので、これ四月までの
状況でありまして、五月以降に期待が掛かっているという
状況で、かなり
政策が効いているという
状況になっております。
それから、次の八ページの図の八でありますが、
輸出の数量指数ですね、これが足下で、非常に大きく落ちたんですけれ
ども、底入れの動きを見せ始めておりまして、これは、先ほど言いました
アメリカそれから中国など
世界経済が少しずつ、特に中国ですが、良くなっていることの影響であります。
このために、九ページを御覧いただきますと、皆様方は余りデータをふだん御覧になる機会がないかと思いますので、私、あえてデータを基に
お話しさせていただいていますが、鉱工業生産指数が、表の一の二段目、三月に前月比久しぶりに一・六%の増加。そして、主要メーカーの生産計画によりますと、四月、五月と四・三%、六・一%の増加が予定されているということでありまして、自動車、それから電子部品・デバイス工業などの、何といいますか、立ち直りというのが大きく効いてきているということであります。このようにして、どうやら
景気は今年の二月辺りに底を打ったということが言えそうです。
これはちょっと専門的になりますが、十四ページというのを御覧いただきますと、まず、皆様方、これは
景気の一致指数に含まれる構成要素を全部列挙したものでありますが、非常に大きな
落ち込みだということにまず注目されると思いますが、それとともに鉱工業生産が、Cの一ですが、二月に底を打っていると。あるいは生産財出荷、
稼働率指数、さらに
投資財出荷指数、商業販売額、小売業、こういったものが底を打ってきて、十一個の系列のうち過半数の六つ目が底入れしたところが一応簡便的に底ということになりますので、Cの九の営業利益が、法人
企業統計が発表されますとどうやら一—三月期が底ということになりそうですので、二月がその中央の月を取るということで、底になるということで、我々エコノミストは二月が底だと言っているわけであります。
しかしながら、これ
木内さんもおっしゃっていましたが、十六ページの図の二を見ていただきますと、余りにも大きな
落ち込みがあったものですから、供給能力と
需要のギャップが猛烈に拡大して、
木内さん九%ぐらいとおっしゃっていましたが、私もそのぐらいですね、八・八%のギャップが発生していると、
デフレギャップです、四十六・六兆円に達すると。
これに対して、
財政だけで
穴埋めすることはできないけれ
ども、真水十五・四兆円ですか、こういった
経済危機
対策で取りあえず呼び水を行って、そこから先、
民間の力、そして
世界経済もかなり
政府の
対策や金融緩和
政策によって上がりそうになってまいりますので、その相乗
効果で
景気回復を遂げていかなければいけないということであります。
そんな中で、十五ページの図の四というのをちょっと見ていただきますと、日銀短観ですね、これは大
企業ではもう先行きが、六月には上がるというふうになっているんですが、実は
製造業、非
製造業合わせて全規模の産業で見ると中小
企業や中堅
企業かなり弱いということでありまして、この十五ページの表の一に全規模合計というのがありますが、三月に
マイナスの四六になっている、良いから悪いを引いた業況判断DIが先行き
マイナス六二と、六月まで。さらに中小
企業などの厳しさの予想によってもう
落ち込みを続けていると、これはやはり中小
企業対策欠かせないなという
感じがするわけでございます。
というようなことで、
景気対策をきちっと成立をさせて、それによって
景気回復を、
木内さんのおっしゃるような二番底にならないように何といいますかさせていく、これが国の使命ではないかというふうに思いますし、来年度にかけては、オバマ大統領の
政策もありますし、私は
景気回復の軌道は続くと思っていますので、今ここが正念場だというふうに考えております。
以上でございます。