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参考人(
高橋洋一君) 東洋大学の
高橋でございます。座らせて話をさせていただきます。
私の話は二つほどあります。
一つは二十一年度
予算の話、あともう一個は
構造改革の話と、分けて話をさせていただきます。
一番目の
予算の話ですけれども、これはまず
景気の
現状から
お話ししなければいけないと思います。
景気の
現状は御承知だと思いますけれども、昨年十—十二で
マイナス一二%、今年一—三も、これはまだ数字が出てこなくて、五月ぐらいに出ますけれども、
マイナス五から一〇ぐらいの間というふうなことが言われています。こうなりますと百年に一度ということになります。
そこから、それを足下としまして、百年に一遍の危機であったらどうなるかと。百年に一遍の危機というのは大恐慌しか研究がないんですけれども、一番早く
景気が回復した国でも三年です。悪いときは五年です。仮に三年としましょう。
景気が悪くなっているのは一年前ですから、要するにあと二年ぐらい悪いという形になります。そういう形にしますと、先ほどの足下の数字から計算しますと、一、二年の間で実は需給ギャップ、これは潜在
GDPと実際の
GDPの差ですけれども、これは八十兆円ぐらいになります。仮に二年ですぐ回復する、これは多分ほとんどない話で、あと一年で回復するという形にしても、四十兆以上あります。
そうなりますと、この
経済状況、需給ギャップが四、五十から八十という数字ですと、実はこれがなぜ重要かといいますと、それに応じて
失業率が増えるというのがあります。これはオーカンの法則といって、これはほとんどの世界の
経済学者が認めるところです。需給ギャップが大きくなってから半年、一年後に
失業率が増えるということです。
それで、そのくらいの大きな需給ギャップでどのくらい
失業率が増えるかと計算しますと、大体六から一〇%の間です。過去最悪は実は五・五%です。という
意味で、
日本はほとんど確実に過去最悪に突入という、それも過去最悪もかなり突破しちゃうと。仮に
失業率が八%としますと、ある地域によっては二〇%近くなっても不思議じゃない。あと若者、これも二〇%ぐらいになっても不思議ではないという形になります。
これを平たく言っちゃうと、底入れの時期というのが大体二〇一〇年の終わりぐらいでしょう。二〇〇九年の
成長率が大体
マイナス五とか六というふうになるということになります。これがもし正しければ、本当はこれは正しくなくて外れてほしいんですけれども、どうもその路線に乗っていて、その路線に行きそうな予感もします。こうなりますと大きな失業問題というのが後で発生するということです。
政府の仕事というのは何かというと、恐らく私は失業を食い止めるということだと思います。失業というのは何にも増して大きな
社会ロスですし、格差を物すごく広めます。そのやり方として一番簡単というか、いいのは、実はパイを大きくすることであります。要するに、パイを大きくするというのはかなりの
程度この問題の解決になるということであります。
それで、この需給ギャップを埋めるために何をすべきかというか、逆に言うと、このギャップを埋めなければただ失業がちょっと後で増えるということだけになりますけれども、オーソドックスなセオリーとしては
財政金融政策のフル稼働です。これはだれが何と言おうとも、これが一番簡単です。ただ、従来の伝統的な
政策でありますと、
日本の
現状を考えた場合、
財政問題とか
金利の問題というのがあります。ですから、ここは百年に一遍の非伝統的なものが多分必要。ということは、
財政問題に
影響が少ないもの、
金利に対する
影響が少ないものというのを選ぶべきではないかなというふうに思っております。
先ほど八十兆というふうに申しまして、ここにならないかもしれませんけれども、実はこのくらい用意しないと結構危ないというふうに私は思っておりまして、その手段として、
金融政策使うものですと、これは
量的緩和するというのはあります。それと、これは私がいろいろなところで言っていて、その主導者とか言われるんですけれども、実はそうではなくて、この需給ギャップを埋めるための
一つの手段として、実は
政府支援というのがある。それとあと、これは従来から申し上げている埋蔵金というのもあります。要するに、この三つの手段で組み合わせて何とか需給ギャップを埋めるというのが私は必要ではないかと思っています。
もちろん、このお金の使い方、これはまさしくいろいろと
政府とか議会で決めていただくべき話でありますと思いますので、私は特に言及しません。国民が望むのであれば何でも結構です。要するに、いずれにしても優先すべきなのは、需給ギャップというのを埋めて失業の発生を食い止めるということだけであります。
これ、
量的緩和の話と
政府支援の話、何か全然違うような話というふうに思うかもしれませんけれども、基本的には同じです。要するに
日銀券が出るのか
政府紙幣が出るのかと、これだけの話です。いずれにしても、お金を刷りますと、これは長い目で見れば通貨発行益というのがありますから、それを還流するという形によっていつでも需要を喚起するというのができます。
あともう一個、似たようなやり方というか、これは全く同じなんですけれども、
国債を出して、
中央銀行がその
国債の
部分だけ市中から買い入れるというのも同じです。
ここで、三番目のやり方は、実は大恐慌で、昭和恐慌のときでして、
高橋是清がやった
政策です。
高橋といっても私の親戚ではありません。
いずれにしても、この三つのやり方というのが大きな需要をつくれるというふうに思います。それと、あと埋蔵金の話も、この際、大きな危機ですから、全部吐き出す覚悟でやっていただいていいのではないかなというふうに思っております。
政府紙幣の話がこれだけ先行しておりますけれども、私から言わせるとこれは
一つの思考訓練でありまして、いろんなことを考えるときの
一つの手段として思っております。
ただ、実際、
現状で、今の制度の中でできなくはないというわけです。これは通貨法というのがありまして、ある閣僚の方がこの
政府紙幣の話をもって一両二両という単位、円ではないんだと言ったのがありますけれども、通貨法によりますと
日本国
政府の発行する通貨の単位は円でございますから、一両二両というと実はこれは偽札ということになって違法行為になります。
通貨法で何が書いてあるかというと、通貨というのは
日本銀行券と実は
政府の発行する貨幣と書いてあります。それで、貨幣は実はコインを想定しておりますから五百円以下なんですけれども、記念事業として千円、五千円、一万円が出せます。さらに、特別法を出せばもうちょっと高額なのが出せます。それで、発行枚数は政令で決める、材質も政令でと書いてあります。ということは、いろんなこういうふうな極端な例を想定している法律ではないというのは私は知っておりますけれども、ただ、それで、少なくとも表面上それほど違法な話ではないと思います。
こういうのを活用してやるという手は、実は私はいつも頭の中では考えておりました。例えば、今でしたら天皇御成婚五十周年なんて、実はこれは財務省で毎年記念通貨を出しておりますから毎年理由を考えるわけです。それで、これで
財政収入の一助にはいつもなっているわけですけれども、それをちょっと大きくやるということです。
これに対する反論というのは通貨の信認が減るとかインフレになるというんですけれども、言ってみると、これからデフレになって大変なときですから、そのくらいでもしないと本当に困ってしまうと。あえて言うと、デフレというのは氷ぶろだと思います。このような、先ほど申し上げたいろんな手段というのは百度の熱湯かもしれません。ただし、百度の熱湯を入れなきゃ、氷ぶろの中につかっていたら死んじゃいますので、ですから何とかした方がいいというのが私の
考え方であります。
いずれにしても、重要なのは需給ギャップを埋めるということですので、そのためにいろんな諸準備をしておいた方がいいということだと思います。特に、
量的緩和でやると、普通の債券を買うというよりかは、例えば中小
企業の手形を買って、そういうことを言いますと
日本銀行は損が出ると言うんですけれども、逆に言うと、これは言い方を変えると中小
企業が損しても
日本銀行はいいのかという
議論になりまして、
政策に損はいつも当たり前でありますので、そんな大胆なことも考えてもいいのかなと思います。実際、中小
企業の信用保証枠がありますので、それの活用というので十分
対応できるのではないかなというふうに思っております。
こういうような観点からいいますと、二十一年度
予算というのは全く力不足であるというふうに言わざるを得ません。
この
政府の公式見解ですけれども、一月十九日の閣議決定の
経済見通しで、何と二〇〇九年度が
実質成長率ゼロ%ですけれども、これはあり得ません。先ほど申し上げたように、いろんなげたがありまして、この一月の当時でげたは
マイナス二%。げたというのは四月以降横ばいであったと仮定するというときにどのくらいになるかという計算ですけれども、これは
マイナス二%ぐらいというふうに、今ですと
マイナス三、四になっているはずですから、それは高度
成長並みの
成長にならない限りゼロ%にならないです。そのちょっと後に
日本銀行が出した見通しでは
マイナス二%ですけれども、これはほとんどげたを形式的に書いているようなものであります。
政府と
日本銀行の間でこれだけ差があるというのも私は不思議でしようがなくて、こういう国難のときにほとんど話合いが行われていなかったのではないかなと思って、非常に危惧しております。
いずれにしても、この二十一年度
予算ということについては、今の段階では来年度の
経済対策について言えば実はすごく不足していて、いずれにしろ、何かのことをしないと多分失業が上がるということになるだけだと思います。
それとあと、
構造改革について
お話を二番目にさせていただきます。
構造改革というのは何かって、よく分からないんです。私は
構造改革を担当していましたけれども、いろいろな話をしたときにも当たり前のことと言っておりまして、あえて言うと、PM、総理のトップダウンでやることですから、私の認識では
構造改革というのは三つしかありませんでした。
不良債権、道路公団民営化、それと郵政民営化だけです。
社会保障は、いろいろと諮問
会議でやりましたけど、実は何もできなかったです。その
意味で、
社会保障についていろいろと
構造改革が足りないという
意見はよく分かりますけど、いろんなことをやったと言われると、何もやっていなかったのに何を言われているのかよく分からないというのが実態のところであります。
郵政の話について申し上げますと、私は
不良債権も道路も郵政もみんなかかわっておりましたけど、郵政のことで申し上げますと、最近ちょっとおかしな話があると思います。
一つはかんぽの宿ですけれど、この話について言うと、これは元々はいろんな公的な施設の問題というので問題意識がありました。二〇〇四年の基本
方針ではそれを検討するという話にしていましたけれども、元々二〇〇一年のときに行革の話でこれを整理することになっていたんですけれど、あのときに郵政が公社になったというので一応除かれたという経緯があります。ただし、この法案を用意しています二〇〇四年のときですけれど、これは
年金国会です、皆さん御承知だと思いますけど、
年金というのでグリーンピアというのが大きく問題になりまして、それで二〇〇四年の頭のころ、たしかこのグリーンピアについて法人つくって五年で処分するという話が出ていたと思います。
ですから、私はかんぽの宿をやるときに、どうせ次の年に同じ法律が出るのは分かっていましたのでそれと同じにせざるを得なかったということで、五年というので、特別法人をつくるかつくらないかって
議論はありましたけど、そこまでつくることはないということで、持ち株会社で五年の処理というので法案を実は作った経緯があります。これは衆参で余り
議論が行われなかったので、たしか質問は一回ぐらいしかなかったので。ただ、そのときいつも、想定問答で、この五年の
意味とか、どうして持ち株会社というのは、元々グリーンピアも同じというのを書いた記憶があります。
それと、あと中央郵便局の話ですけれど、これも私自身がいろんなプランを作った経緯で申し上げます。それで、その後の話は知りません、正直言えば全く分かりませんけれど、その後私もちょっと興味を持って見ていました。
昨年の六月ぐらいに計画が発表になって、九月たしか二十六日に再開発計画を東京都に出していると思います。九月二十四日に実は鳩山大臣が総務大臣になっております。普通はこの総務大臣になったときに事務引継というのが一週間ぐらいありまして、いろんな案件を
説明します。当然これは入っているはずです。私自身も総務大臣の補佐官をしていましたけど、そのとき、もし問題があれば、この案件、後で聞くというふうに言います。それと、そのときに
意見があるときには、これちょっと待ってくれと必ず言います。ですから、この話についてもし言うのであれば、その去年の九月に、就任直後に言われていれば、その後の再開発計画の中で
議論が行われたと思います。
もちろんあれが文化財であるかどうかって
議論がたくさんありました。私自身も、あの東京都の駅の周り見ましたし、明治記念館はたしか文化財という形で、それとあと工業倶楽部、あそこは下だけちょっと残して、それとあと銀行協会、これも下だけ残してと。正直申し上げまして、文化財の
議論があるかどうかって知っていますけれど、高層にほとんどしているという認識がありました。でもこれは、いずれにしてもその後
議論が行われるのではないかと思っておりました。
部分保存という形で、高い高層ビルが建てられればすごく収益が上がるというのは分かっていまして、いずれにせよこれは郵政にゆだねる問題であるというふうに思っていましたけど、どうも今の
議論を見ていますと、非常にちょっと遅いというか、あれを余り遅く言うと実はビジネスができなくなるというのを私は危惧しております。
それとあと、かんぽの宿の話でも、二千四百億円が百億円になってどうのこうのという
議論がありましたけれど、あれについて私、中でデュープロセスといって一回資産査定をやっております。それとあと、内部でやっているのもあれだというので外部に委託してやれとも言われましたので、これは外部に委託をしています。その辺りをお調べになっていただいたらいいと思いますけれど、大体収益還元法というのでやりますので似たような数字が出てきたという記憶があります。
問題は、どうしてこんなのがこんなに高いお金掛かっているのかというのが不思議でしようがなかったです。言ってみると公共事業的な発想で、最初からお金を使うというのが
目的で建てたようなところもなきにしもあらずというふうに思っております。言ってみると、二千四百億円が百億円になったというよりかは、百億円のものに二千四百億円を使った形跡もあります。
いずれにしても、どっちでも適切な入札が公正に行われれば、この価格についてとやかく言うということは実はできません。高い低いって、もしか低いと思ったら入札してくれとしか言いようがないんです。
問題は、この公正なものに、手続が行われていたか行われていなかったかですが、私は総務省の感覚からいきますと、実はこの
資料というのはあるはずですよね、それで報告を求めるんですから。それでしたら、告発か何かをすべきような話じゃないかなと思います。それでもし何もないのでしたら単なる言いがかりにもなりますし、告発するのでしたらこれは立派な話だと思います。要するに、公務員の方というのはこれは告発義務がありますので、この辺をすっきりしてやっていただくというのが是非必要じゃないかなと思います。
いずれにしても、
構造改革といろいろ言われますけれども、私、少なくとも思うに三つぐらいしかやったことがなくて、本当に不十分で、何も
社会保障はやらなかったのかと言われると、全くそのとおりですと申し上げざるを得ません。トライをしたのはあります。例えば、
社会保障個人番号、それと混合診療、それとあとマクロ管理とやりましたけれども、ほとんど全部何もできていないです。特に
社会保障個人番号は、二〇〇一年から提案しておりましたけれども、もう六連敗だったとたしか思います。毎年毎年言って全部没だったです。そのぐらいほとんど諮問
会議というのはもう力がなかったというふうに私は非常に思っております。
以上でございます。