○吉村剛太郎君 私は、自由
民主党を代表して、
平成二十一年度
補正予算案について
総理に
質問をいたします。
質問に入る前に、現下、
新型インフルエンザが世界各地で急速に広がり、その感染
対策が急がれております。ゴールデンウイークの邦人の海外渡航など、
懸念される問題が想定されますが、
政府においては万全の
対策を講じられることを要望いたします。
さて、
北朝鮮の
ミサイル発射に触れます。
我が国会はいち早く非難決議をいたしましたが、衆参で若干
対応に違いがあったのが残念でなりません。
国連
安全保障理事会は、
発射を非難するものの法的拘束力のない
議長声明を全会一致で採択しました。この結果、核を廃棄せず、ミサイル実験を強行し、
我が国だけでなくアジアの安全を脅かす傍若無人の行為を続ける
北朝鮮の存在をなお容認することになるのではないかとの
懸念が持たれます。
政府は、
日本独自の制裁
措置を一年延長し、新たに送金規制の
強化などを決定しましたが、毅然とした態度で拉致問題と核問題の解決に取り組まれるように要請をいたします。
先週、衆議院から
海賊対処法案が送付されました。既に現地では
日本の船舶だけでなく警護
対象外の外国船の救援要請にこたえるなど、海上自衛隊の活動が伝えられております。海上警備行動による出動となったが、海上自衛隊の諸君の活躍に敬意を表するものであります。国際平和に取り組む
我が国の姿勢を鮮明にするためにも、
参議院においても野党の諸君の協力を得て速やかな
法案成立を切望いたします。
北朝鮮ミサイル、海賊対処法に関連して、
我が国安全保障上重要な
課題として集団的自衛権の問題は避けて通れません。安倍元
総理はこの問題に積極的に取り組まれ、福田
内閣のときに報告書が提出されておりますが、
麻生総理におかれては、先送りせず、憲法解釈も含めお
考えを
国民に示されるように要望をいたします。
さて、本論に入ります。
今回の
補正予算案は、
財政支出で約十五兆円という過去
最大規模の
経済対策となりました。
さきのロンドン・サミットでは、成長を回復するために必要な
規模の継続した
財政努力を行うことに合意、
米国は、各国に国内総生産比で二%の
財政出動を求めていました。
麻生総理は、当初GDP比二%超の支出を指示されたようですが、結局三%に迫る
規模であります。この
対策は、積極
財政にかじ取りをした
米国や中国に合わせ、国際協調の中で十分に配慮されていると理解します。
先日の
経済財政諮問
会議に民間議員が示した試算では、十五兆円の
財政支出による需要創出
効果は二十一兆円に上っており、この
補正によって
景気の上昇が期待されます。
さきに発表された昨年度の
我が国の貿易収支は、第二次石油
危機直後の一九八〇年度以来、二十八年ぶりの赤字になりました。
米国向けの輸出で支えられてきた黒字が、
米国経済のバブル崩壊によって転じたものであります。
この結果を受けて今なすべきことは、輸出で稼いできた
日本経済のモデルを
内需主導に
転換することでありましょう。二度の石油
危機を
我が国の企業は省エネ技術の革新や製品の高付加価値化で乗り切ったように、官民挙げての
取組が必要であります。
我が国経済の大きな転機に際し、今回の
補正予算は大胆で
実効性ある追加
経済対策であり、さらに中長期の
成長力強化につながる需要刺激策を網羅されております。まさに
政策総動員を掲げた趣があります。これにより本
年度予算は百兆円を超える
規模となり、昨年度の一次、二次の
補正予算から切れ目ない
対策を打ち立て、
景気回復に取り組まれる
総理に敬意を表する次第であります。
ただいまは少し落ち着いたとはいえ、予断は許さない中、
景気悪化が加速度的に進む上でまず重要なのは、
雇用と資金繰りの
対策を万全にすることであります。就労を目指す失業者の
支援策や
雇用維持につながる
雇用調整助成金の拡充は今回の
雇用対策に挙げられましたが、
国民の不安を解消するためにも
総理の分かりやすい
説明をお願いする次第であります。
総理は、
未来への成長、
経済成長につなげる、
経済回復の先の
社会を見据えた成長
政策と述べておられました。私は、中長期的に
日本の
成長力を高めるには、
財政による一時的な需要追加だけでなく、
医療、
介護、農業
分野などでの
雇用創出につながる大胆な規制改革を進める必要があると
考えます。
特に、生産性の低い部門の構造を
転換し
経済の足腰を
強化するため、底力発揮・二十一世紀型インフラ整備として、農林漁業、先端技術開発、
地域連携と競争力
強化などに重点的に
手当てがなされましたが、これをどう将来につなげていくか、
総理のお
考えをお示し願いたいと思います。
また、低
炭素革命と称して、太陽光発電や低燃費車、省エネ製品への
予算措置が挙げられておりますが、これも地球温暖化
対策と相まって、一時しのぎの
補正予算ではなく、恒久的に取り組むべきと思います。
先日、我が党本部に小さなお子さんを交えた親子百名を招き、
総理も一緒に電気自動車やハイブリッド車などのエコカーの試乗会を
実施いたしました。参加された皆さんがクリーンディーゼル車の
環境への優しさを実感し、
子供たちが成長したころの
社会ではすべての乗用車がエコカーになることを願っておられました。
地球温暖化は、今に生きる私
たちが乗り越えなければなりません。技術革新と
社会システムの変革が必要であります。
先ほど申し述べましたが、石油ショックを契機にして、
我が国は世界に冠たる省エネ技術を持つ
国家となりました。今やエネルギー効率はアメリカの二倍、ヨーロッパの一・七倍です。この
経済危機の最中でも、
我が国のあらゆる優秀な頭脳を結集すれば、必ずや明るい
未来が開けてくることを確信いたします。今後の推進策にどう取り組まれるのか、
総理のビジョンを御披瀝願いたいと思います。
公共
事業等の
地方負担に配慮するための臨時交付金が盛り込まれました。
財政悪化に苦しむ自治体から公共
事業を断るという事態が最近散見されますが、余裕がないという
地方の声にも配慮されたことを評価いたします。
ただ、これを毎年恒常化すると
予算の規律が損なわれる
可能性もあり、
地方分権を推進していく上で支障となりますので、あくまで今回限りの
措置であるということを明確にしておく必要があろうかと思いますが、
総理のお
考えをお示し願います。
政府機関が市場から株式などを買い取る緊急時の株価
対策も入りました。株安と実体
経済の負の連鎖が起きて、
景気が
底割れするのを防ぐ手だてが備えられることになりましたが、世界にほとんど例のない
安全保障策であります。公的資金による株の買取りという劇薬でありますから、株価の人為的買い支えは慎重にされますように望みたいと思います。
与謝野大臣は、抜かない刀と表現されたようですが、一方、抜くための発動基準が必要かとも思います。
総理からの丁重な
説明をお願いいたします。
次に、税制改正について伺います。
今回、異例の年度途中の税制改正を行うことになりました。多額の金融資産を持つ高齢者層から若い世代への生前贈与を促し、住宅関連の投資や
消費を刺激するものであります。ただ、減税
規模はもっと大幅でよかったのではないかという気もいたしますが、富裕層の
お金が
消費に回れば
経済全体にプラスになると思います。この改正についての
総理のお
考えを伺いたいと思います。
加えて、昨年末、閣議で、
消費税を含む税制抜本改革を二〇一一年度より
実施できるよう、必要な法制の
措置をあらかじめ講じる
中期プログラムを決定されております。これについて変更はないか、特に、
国民が注視する
消費税についてどのような取扱いをされるのか、
総理に伺いたいと思います。
今次
補正に
当たり、支出のための
財源の大半を
国債の追加発行で賄うことに
懸念する声がありますが、
考え方を少し変えて、
国債は国の
借金というよりも、これを購入する
国民の金融資産が増えることであるという側面もあると思います。この際、
政府は思い切って
国債を増発しても、
政府支出を増やし、需要を生み出すことによって民間の投資を促すべきなのでありましょう。
今回の
総理の決断による
国債増発に私は賛意を表しますが、これについての
総理のお
考えを伺いたいと思います。
次に、国、
地方の基礎的
財政収支を二〇一一年度に黒字化する
政府目標について伺います。
今までは当面の努力目標とされてきましたが、最近、黒字化については困難になりつつあるとの
認識で、
景気回復を最優先にしつつ、
財政健全化に取り組むとの
発言が聞かれるようになりました。
さきの新聞報道では、
与謝野大臣は、
政府がこれまで
財政再建目標として掲げていた国、
地方の基礎的
財政収支を一一年度までに黒字化するに代わる新たな目標を打ち出す
考えを示しておられます。さらに、基礎的
財政収支ではないきちんとした目標を立てて、GDP比で
国債残高が増え続けるのを抑制しなければならないと語られました。
先ほど私は
国債増発に賛意を表しましたが、これは今緊急事態であるからこその緊急
措置であり、
財政健全化に向けた努力は常に続けなければならないことは当然のことであります。黒字化目標についての
総理の所見を伺いたいと思います。
最後に、一言申し上げます。
昨今、親が子を、あるいは子が親を虐待する、更にそれが殺人に至るという事件が多発しております。親子のきずなが薄れ、心のよりどころとしての
家庭の価値が以前に比べて低下した現在のすさんだ
社会の様相に危惧の念を抱くのは私一人ではないでしょう。それが我々
政治の世界の
責任とするか、ここ数年の勝ち組、負け組の言葉に表される格差
社会をつくるきっかけとなった
経済活動が要因であるか、様々な意見があろうかと思いますが、顧みて反省すべきだと思います。
我々は、マーケットにおける競争を至上のものとする新自由主義の思想にのっとった今までの路線を真摯に総括し、和をもって貴しとなすとの
我が国大和民族の本質に基づく
社会づくりに向け、
総理が強いリーダーシップを発揮されることを心より期待して、
質問を終わります。(
拍手)
〔
内閣総理大臣麻生太郎君
登壇、
拍手〕