○
参考人(
鈴木健君) 初めまして。
移住労働者と連帯する
全国ネットワーク事務局次長の
鈴木と申します。
冒頭に申し上げたいのは、今日、傍聴で、私たちの友人である、主に在日フィリピン人の彼女たちの中には、シングルマザーとして
日本で頑張って生活している人が来ております。そして、今、経済危機の中で非常に御苦労されている日系ブラジル人の方も来ております。在日コリアンの方も来ております。彼ら、この皆様が審議されている
法案で管理される
対象とされる方々です。この
法案の審議の中で、管理される
対象の方々の声というのがどこまで聞かれているのか、そしてどこまで彼らの声が届いているのか、そういったことを是非
委員の皆様の胸に置いていただければと思います。
私は、移住連の事務局
次長であると同時に、地元では主に在日フィリピン人のシングルマザーと子供たちの生活支援をやっております。彼女たちは、過去、
日本人の男性と結婚し、そしてドメスティック・バイオレンスの被害に遭い、そして今地域でシングルマザーとして子供たちと一生懸命生きています。彼女たちはお互い支え合いながら頑張っております。
本日は、そういった彼女たち、そして子供たちに思いをはせながら
意見を述べさせていただきます。
早速ですが、移住連、私たち、この
法律については反対の
立場です。無論、評価できる点も様々あるかと思いますが、全般としては反対しております。
修正案、大変御苦労あったと伺っておりますが、これについても根本的な疑問というのは解決されていないかなと思っております。
その理由なんですが、
在留管理の強化ということなんですけれども、なぜ
在留管理の強化ということなんですね。
先ほど来、今回の
入管法と
住基法というのが車の
両輪となり、この
日本社会の基盤整備がされていくんだということのお話、何人かの方がされておりました。果たしてこの
二つの
法律が車の
両輪なのでしょうか。
入管法による管理の強化、いわゆる
届出とかの義務の強化ですね。
住基法、確かにこれはいい点もございましょうが、
届出というある種の義務の強化という側面もあろうかと思います。その一方で、私の疑問は、この
日本の中で義務の反対の車輪である権利を保障するもの、法
制度、計画というものがどうしてないのか、その点がとても疑問に思っています。
私、昨年びっくりすることがありました。十二月に犯罪対策閣僚
会議というところから犯罪に強い社会の
実現のための行動計画二〇〇八というものが出されました。この中にこういった項目があります。「多文化共生を可能とする社会基盤の整備」、外
国籍の
住民の方と
日本籍の
住民の方、一緒に頑張っていきましょうということかと思いますけれども、なぜこれが犯罪対策の中に含まれているのか。そして、
日本の中でこの文書以外に、外
国籍の人の権利を保障するですとか外
国籍の方との共生を考える行政文書というのはございません。それが私の今回の一番の疑問点です。
続きまして、研修・技能実習生
制度についてですが、これについては、もちろん
制度の改善ですが、基本的に
制度の実態と建前の乖離の解決というのは図られておりません。やはり、これから早期に抜本的な改革というのが必要になってくるかと思います。その点につきまして、立法府の皆様におかれましても、しっかり、例えば行政府に、あなたたち、何年以内に計画を示しなさいとか、少なくともそのスケジュール、工程というものを早期に出させるということが必要かと思っております。
続きまして、
在留資格の
取消し制度についてですが、私たち、この
制度の、
在留資格の
取消しの拡充というものを非常に問題視しております。
法案の審議の中で、この
制度の、
取消し制度の導入に当たってDV等への配慮はいたしますと申し上げられておりますが、私たちが申し上げているのは、この
制度そのものがDVの原因になってしまうということなんですね。つまり、外
国籍女性へのDVで多いのは、おまえの
在留資格を取り上げるぞ、
在留資格を使ったDVが多いわけでございます。
DVの構造としましては、やはり
日本人の男性が上に来て外
国籍の女性が下に来る、そして、
日本人が上になり
外国人が下になり、男性が上になり女性が下になり、そういった支配従属関係の
構築ということかと思いますが、この
在留資格の
取消し制度によってそういった
日本人と
外国人の間に
在留資格をめぐって新たなる力関係が
構築されてしまう、そういったことを私たちは申し上げております。
もう
一つ申し上げたいのは、私、
先ほど外
国籍のシングルマザーと子供たちの生活支援をしておりますと申し上げました。私たち、これまでずっと、
在留管理ということが年々年々厳格化していく中で、痛切に感じていることがあります。厳格な
在留管理を強化するということが、彼女たちそして子供たちの生活環境の悪化につながっているということなんですね。
というのは、私どもの中では、例えばDV等で
在留資格を喪失してしまった、オーバーステイ状態になってしまったという女性もおりました。彼女たち、幸いなことにその後在留特別
許可を得て
在留資格を回復しておりますが、また、そういった
在留資格を喪失する、オーバーステイ状態で生きるというのは非常に過酷なものであります。女性にとっても、子供にとっても、もう生きるか死ぬか、まさしくサバイバルな生活を余儀なくされるわけなんですね。ただ、その後、在留特別
許可を得て
在留資格を回復することができた。
つまりは、私は思います、当初から入
国管理局によって適切な
情報提供、適切な支援、そういったものがあれば彼女たちは
在留資格を喪失せずに済んだわけです。今まで入管さんともずっとお話合いを続けております。とにかく外
国籍の女性とかに
情報提供をしてください、とにかく
在留管理だけでなく適切な支援策というのを考えてください、とにかく彼女たちのそして子供たちの生活環境が安定するような
在留資格制度、そういったものというのが考えられないんでしょうか、そういったことをずっと
お願いしてきたわけですけれども、入
国管理局さんの方では、まあ個別に相談に来たら対応します、そういった姿勢でございました。
私は
先ほども申し上げました、適切な
情報提供、適切な支援、そして生活環境の安定に資する福祉や人権に配慮した
在留資格制度の
構築などの法的整備がなされれば、彼女たちがこうして過酷な、生きるか死ぬかというようなサバイバルな人生に陥らずに済んだということなんです。今回の
在留資格の
取消し制度の導入に当たりましては、こうした彼女たちの生活実態というのも重々配慮いただければと考えております。
それに当たりまして、まず最低限必要なのはこういうことかと思います。例えば、
日本人の方と国際結婚をされた。それがDV等でしたら配慮されるということでしょうけれども、中にはいろんな、不仲等により別居に至るということもございます。離婚に至るということもございます。そういった場合の
在留資格の取扱いがどうなるのかということです。入管さんによりますと、いろんな事情を総合的に勘案して判断いたしますということですが、それでは彼女たちは安心して入管に行くことはできません。入管に行くと
在留資格を取り上げられてしまうんではないか、そういった不安の中では決して相談に行くことはできないかと思います。
そういった意味では、例えば、
日本人の子供がいない女性の場合の
在留資格はどうなるのか、また、
日本人の子供がいるけれども子供の親権が父親側に行ってしまった場合はどうなるのか、そして離婚訴訟中の資格というのはどうなるのか、そういった基準をこの際明確にしまして、彼女たちに適切に
情報を
提供されることを望んでおります。
続いて申し上げますのは、非
正規滞在者についてです。
この今
法案の審議に当たりましては、
修正案の中で在留特別
許可制度の運用の
向上、透明性の
向上ということが盛り込まれました。あっ、失礼しました、在留特別
許可制度というのはありません。入管さんに在留特別
許可の申告に行きますと、
制度ではございませんというチラシを配られます。つまり、これは権利ではなく、あくまでも
法務大臣の恩恵として
退去強制手続の一環として行うものであるということでございますので、
制度ではないということを文書で配られます。
いずれにしましても、私は思います。今回のこの
法案の審議の中で、在留特別
許可制度の運用の透明性の
向上というところにとどまらないで、この際、いわゆるアムネスティー、合法化措置というものも真剣に検討いただければと思います。
というのは、私、一番気になっているのは、まず学齢期のいる子供の家族のことなんですね。
日本人の子供を養育していれば、在留特別
許可、認められます。また、一般的には、在留十年、子供が中学生以上ということで認められます。しかし、それに該当しないオーバーステイ状態の家族というものはなかなか、非常に認められるものが困難でございます。
私、そういった子供たち、生まれたときから接し、そして大きい子供はだんだんだんだん日に日に大きくなっています。僕は、その子供たちを見て思うんですね。子供たち、おなかの中にいるときから、お母さんのおなかの中にいるときからこの
日本の空気を吸って、彼女たち、彼たちの命ははぐくまれていったんです。そして、生まれて初めて見た社会の姿というのもこの
日本の社会の姿なんです。そして、生まれて初めて足を付けた地面、それも
日本の土地なんですね。
私は痛切に願っております。彼女たち、彼たち、この
日本で生まれ、はぐくまれた命、ここの
日本でこれからも私たちが大切に共にはぐくんでいくことはできないのか。そういったことを、彼女たち、彼らを見て痛烈に感じております。
もう
一つは単身者の問題なんですが、単身者、中には、
日本での在留が非常に長期化しておりまして、もう既に母国に帰っても再統合が困難な者もおります。私、彼らに高校生のときに出会いました。高校生のときに出会って、私の思春期の悩みというのは実はオーバーステイの単身の
労働者の方々に聞いていただき、そして彼らに支えられたわけなんです。そうした彼ら、
日本の建設現場とかで
日本の発展に尽くし、そして気付いたら
日本での生活が十年、十五年、二十年、中には二十年を超す者もおります。二十年を超して家族の元に戻る。なかなか二十年間離れた、少なくとも十年間でもそうでしょう、こうやって長い
期間離れた家族がまた元に戻るというのは非常に困難かと思います。こうした彼らの思い、彼らの姿というのを、この
日本社会においても正当な評価というものが与えられてもいい時期に来ているのかと思います。
続きまして、申し上げたいことがございます。
先ほど、今日も日系ブラジル人の方が来ていると申し上げました。日系ブラジル人の方、今経済危機の中で非常に生活、苦労しております。中には、いわゆる派遣切りということで
住居を失う者もおります。
今回の
入管法の中では、この
住居地の
届出というものがございます。昨今の経済危機の中で
住居を失い、知人宅、友人宅を転々とせざるを得ない、こうした彼らの
在留資格はどうなってしまうんでしょうか。
在留資格を取り上げて国に帰ってくださいというんでしょうか。帰国支援金をあげますから帰ってくださいというんでしょうか。私たちは、こうした
在留資格を取り上げて国に帰らせる、追放させるということでなく、今起きている問題について私たち自身が真剣に直視して、どうすればいいのか考えるべきであると思います。
時間がなくなってまいりました。最後に幾つか申し上げます。
私、今回の、
在留管理の強化ということで
法案が提出されているわけでございますが、そもそも現行の
入管法が、
在留管理については強化されているけれども、適正
手続の
観点から
制度が十分であるのかということを痛烈に感じております。資料でもお配りしています。
日本の
入管法、例えば不服申立て
制度というものがないんですね。
在留資格の、例えば私は更新したとか資格を
変更した、それが不
許可にされてしまった、そうなるとどうなるかというと、不服を申し立てることができないんですね。オーバーステイになって裁判をするしかないんですね。こういった
仕組みというのはやはり適正
手続の
観点からも非常に問題かなと思っています。その他、適正
手続の
観点からもまだまだ整備していかなければいけない項目がございます。
最後に申し上げますのは、冒頭に申し上げました、今回こうやって義務の強化がされていくわけですけれども、権利の保障であるとか
日本社会のまさしく多民族、多文化が共生する基盤整備というものが抜け落ちてしまっているということです。今、
日本社会は既に多民族化しています。そして、地域では、
日本人の人、外
国籍の人が一生懸命一緒になって生活をしております。こうした生活実態をかんがみて、私は思います。やはり、今こそ
外国人の人権基本法や多民族多文化社会基本法など、そういった
日本社会のこれからの姿を示していくような法整備というものが進んでいかなければいけないと思います。
以上で私の
意見陳述を終えたいと思います。
御清聴ありがとうございました。