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大門実紀史君 ありがとうございます。
つまり、
リスクのある
金融商品をこういうノルマで与えてばんばん売るとそれだけ被害が広がると、だからこういうことはやらせないということに、まあそういうことだと
思います。私自身もこの
委員会で、明治安田の保険不払とか三井住友のスワップ
商品とか、あるいは地銀の
投資信託販売の問題を取り上げてきましたけれども、すべてこの根底にノルマ主義があったわけで、いまだそれが是正されておりません。
そういう監督指針、しっかりと書かれているわけですから、これにきちっと従ってやってもらわなきゃいけないんですけれども、ところが、二枚目に資料を付けましたけど、あおぞら銀行ではこの監督指針を公然と無視するようなことが行われております。
これはぱっと見て何のことかというのでちょっと
説明をいたしますけれども、これはあおぞら銀行のある支店の契約社員で働いておられる、まあAさんとしておきますが、男性の方でございまして、家族はまだ小学校のお子さんと奥さんがいて、働き盛りでございますけれども、このAさんという方は渉外、外務員など幾つもの資格を持っておられるベテランでございます。
投資信託とか保険
商品など
リスク商品の販売スタッフとしてあおぞら銀行では、その前にも経験ありますが、あおぞら銀行では三年間働いてきた方です。
このAさんの給与体系はどうなっているかといいますと、毎月わずか二十万円が
基本賃金です。手取りにするといろいろ引かれて二十万円を切ることもあるそうですけれども、
あとは、
金融商品の販売に伴う
手数料収入に応じて半年に一度賞与といいますかそういう、半年に一度歩合で手当が入るという仕組みでございます。
ちなみに、あおぞら銀行の社員の平均給与というと九百七十万ぐらいですけど、このAさんの年収はその半分ぐらいでございまして、正社員以上の知識をお持ちですけれども、販売もこなしてきましたけれども、そういう
状況で、待遇で働かされてきたわけですが、そのあおぞら銀行がこの六月末でAさんを解雇する、契約を打ち切ると通告してきました。それに対してAさんが、その理由を明らかにしてほしいというふうに要請をされました。それに対して答えたのがこの文書でございます。なぜAさんの首を切るのか、二つの理由が書かれております。
一つ目は、要するに
経営状態が厳しいからと、リストラしたいということで、ここまでならよくある話といえばよくある話でございますけれども、驚いたのは(2)のところでございまして、これもちょっと前の話をしなきゃ分かりにくいですけれども、そもそもこのAさんとあおぞら銀行の雇用契約というのはどうなっているかというと、それぞれの契約社員、有期契約の方々の
手数料収入の目標をまず決めるわけですね。それで契約を交わすわけですが、それが達成できないときは解雇するという形になっております。
例えばAさんの場合ですと、一年目の目標が一千八十万円、二年目が一千百万円だったんですけれども、三年目がここに数字が出ておりますとおり一千四百万と急に引き上げられたわけですが、この三年目というのは去年の四月一日から今年の三月三十一日、ちょうど
金融危機が襲来したときでございますけれども、ですから
金融商品なんか売れるわけがない時期なんですが、それでも目標が達成できなかったと、だから首だというふうなことになっておるわけでございます。
私は労働組合出身で、国会へ来てからも非正規雇用問題、雇い止め問題をやってきましたけれども、こういう契約書というのは初めて見ました。しかもこれはあおぞらだけではありませんで、ちなみにほかでも広がっているという
意味で、二枚目には住友信託銀行のケースを資料で付けておきましたけれども、この住友信託銀行のケースは先ほどのあおぞらみたいに露骨な書き方はしていませんが、中身は全く同じでございます。
この住友信託の場合は、
手数料収入を上げるとそれでポイントが付く、販売員の方にポイントが付くと。ポイントがたまるとその所属しているグループのクラスが上がったり下がったりするわけでございます。そのクラスが上がらないと辞めてもらうという契約書になっているわけで、
基本的には先ほどのあおぞらと同じな仕組みになっているわけですね。
あおぞらは生の数字をこう出しているので、あからさまといいますか非常にアングロサクソン的でございますけれども、住友信託は非常に
日本人らしいというか巧妙な契約書になってなかなか一見分かりにくいんですが、あおぞらの方が分かりやすいので、あおぞら中心に申し上げますけれども、こういう契約形式というのは、この労働問題、ちょっと分からないという方もいらっしゃるので言っておきますが、例えば業者間の契約、委託販売とか業者同士の契約なら何個売らないと次は契約しないよというのはこれはあることかも分かりません。ただ、このAさんにしろ信託銀行のBさんにしろ、これはもう労働者でございます。社会保険に入っている労働者でございますので、労働者に対してこういう、ノルマが達成できなかったら首を切りますよという契約というのは今まで余りなかったケースでございます。今、国会でも非正規雇用とか雇い止めがこれだけ問題になっているときに、派遣法の見直しも国会で
議論になっているときに、それにまさに逆行するようなことが雇い止めの形として
金融のところで進んでいるということで、極めて悪質な例だというふうに
思います。
これは想像してもらいたいんですけれども、こういう契約で働く人はどうなってしまうかですよね。仕事がありませんから、もうこういう契約でもとにかく仕事に就かなきゃと、家族食べさせなきゃということで契約をのまされるわけですね。働き出したらどうなるかというと、とにかくノルマ達成しないと首を切られますから、家族は路頭に迷いますから、もう達成のために一生懸命やるわけですね。健康を害してまでやってしまう、そういうふうになるわけです。目標に達しなかったら、もう契約にそう書いてありますからばっさりと首を切ると。大変、何といいますか、人を人とは思わないような契約の形式でございます。
もう
一つ言いますと、こういうノルマを、こういうものを入れないで、雇われてから、それは
会社は企業ですから業績目標を立ててそれぞれ頑張ってくれよと目標を立てると、これは十分あり得ることですし、今も行われております。それは普通、歩合に反映したり昇進に反映したり昇給に反映したりするということでみんなに頑張ってもらう仕組みなんですけれども、こういう達成しなければ首を切るというのは、こんなのは人間のやることではございません。こんなことが行われておりまして、労働の在り方としても大問題だというふうに
思います。
ここは
財政金融委員会ですので、
金融の先ほどの監督指針に戻って、いかにこれがひどいかと、監督指針に違反しているかということでもう少し指摘したいと思うんですけれども。
要するに、営業部員、役職員の給与・賞与体系が、短期的な収益獲得に過度に連動して成果主義に偏重していないかと、これが監督指針に問われるわけですけれども、まさにこの有期契約の人たちは営業部員でございます。もう今各行ともこういうセールススタッフがほとんど主力で契約を取る形になっております。この有期雇用労働者でございますね。
この監督指針ではまだ給与・賞与体系が連動しちゃいけないというふうなことを書いていますが、これはもう給与、賞与どころか首が懸かっているという、首を懸けさせるというようなこと、しかも短期的な収益獲得ですから、まさに指針にあるような過度の連動ですね、成果主義の極みになるというふうに
思います。現場ではこういうことが行われていますから、管理職の人も、
リスクの
説明は程々にして一通りやればいいよと、早く売れということが今やられております。
二つ目には、この監督指針の後半の方に書いていますけれども、
手数料収入でノルマを与えているという点でございます。まさに指針が指摘している、
手数料収入をノルマにしてそこにまさに傾注しているということがもう明らかでございます。
手数料収入が高い
商品というのは
リスクが高い
商品なんですよね。変額の年金保険とか
投資信託でも債券型じゃなくて株式型とか、
リスクが高いほど
手数料収入も高くなるんです。したがって、
手数料収入をノルマにして稼ごうとすると、
リスクの高いものを売る、売ろうというインセンティブになるわけでございます。それでもせざるを得ないと。そうしないと職を失う、家族を路頭に迷わすということで、そうやって追い込んでやらせようということでございます。
もう
一つは、今、これは現場でお聞きしたんですけれども、どんなことが進んでいるかというと、この監督指針のさらに最後の方に書いていますけれども、乗換取引、回転売買、これが横行しております。なぜならば、今もうこの
金融危機で
投資信託そのものを新たに買おうという人が警戒して少なくなっているわけですね。そうすると、今まで
投資信託を持っている人に損切りをしてもらって別の
投資信託を買ってもらうと、これで
手数料を稼ぐと、これが今、それを中心にやっているわけです。したがって、監督指針がやっちゃいけないと、過去に厳しく問題になって指摘されてきたこの乗換取引、回転売買による
手数料を稼ぐというのが実は現場で横行しているわけでございます。
今申し上げたとおり、どこからどう見ても、これはこの監督指針に大きく逸脱するやり方をこの雇用契約という形を通じて、あおぞらとか住友信託、ほかの銀行もそうですけれども、やっていると。
これについて、ちょっと
説明長くなりましたけれども、ずばりお聞きしたいんですけれども、これは監督指針逸脱違反じゃないかというふうに
思いますが、いかが
金融庁はお
考えですか。