○田中康夫君 しかし、名は体を表すで、ダム
事業プロセス検証タスクフォースでございますから、治水
事業の在り方の検証タスクフォースという表現にはなっていないわけでございます。
先ほど来申し上げておりますように、私は、やはり現存の、現在のダムというものをどのように維持修繕をしていくかということもこれは現下の厳しい
財政の中で大きな問題でございます。かつてイタリアの北部で起きましたようなバイオントダムのような、ダムが倒壊することによって二千人を超える方々がお亡くなりになるというようなことは、これは治水の上において
国民との信頼
関係を著しく損ねることでございます。
すなわち、現存のダムというものをどのように修繕をしていくのか。あるいはもっと言えば、もう一度壊して新しく改造して造り直すのか。もっと言えば、そのほかの遊水地であったりあるいは放水路であったり他の代替案というものを考えるのか。もっと言えば、一回造ってしまったものが現下の
財政状況でいかんともし難い、直轄
負担金払いたくないなどという自治体があるのならば、もう放置し続けるのかと、これはあり得ないとは思いますが。大きくこうした四つの類型に分けて物事を考えるということをしないと、残念ながら川辺川ダムあるいは八ツ場ダム、そのほかのダムも数限りなく多くの少なからぬ住民の方々が疑問を抱いているということは、これは
説明責任が結果として、やはり一人一票の民主主義でございますから、届いていないということかと思うんですね。
こうした中で、例えば四国においても、山鳥坂ダム、これは御存じのように二〇〇〇年の八月に、自由民主党と公明党と自由党の政権のときに不要、無用であるという二百三十三の公共
事業の中で休止をしたと。また、その年に当時建設省が百三十六の具体的にやめるという中に入れられた内容であります。しかしながら、いつの間にか復活をしてきていると。そして、その肱川と呼ばれる、大洲市と呼ばれるところの幾度もはんらんをしている場所の堤防はいまだに無堤防であると。
無論、河川工学という中においては、無堤防の場所を直すよりもダムを造ることだという論理体系もあるのかもしれません。しかし、
大臣もお医者さんにかかられるとき、例えば、もう外科手術を四日後にしなきゃいけない、すぐするべきなんだけれ
ども、実は手術室が三日間埋まっていると。であるからしてというときに、じゃあ手術までの間何もしなくていいのかといえば、そんなことはございません。マッサージをする場合もありましょう。単に検査漬け、薬漬けということではなく様々な治癒を医師は施した上で、そして最終的な手術もしていくわけでございます。すなわち、これがトリアージュでありますし、優先順位ではなかろうかと思います。
同様に、四国でも、あるいは小豆島というところで多くのしょうゆ業者がおりますが、内海ダムという既にあるダムを更に大きくすると言っておりますが、しかし、この川は、また
皆さんには御意見があるかもしれませんが、この川の別当川ではなく、
実質的にこの
地域においてはんらんに至っているのは片城川あるいは西城川という、もう
一つ別の川の方の問題であると。
すると、やはり、多くの方々に、
皆さんに御理解いただく方法、私が知事のときに、実は諏訪湖に流れ込む下諏訪ダムというのが計画されていた砥川という川、そして上川と呼ばれる蓼科ダムというダムが計画されていた場所に関して、この二つのダム計画を当面棚上げをして、そして二十年という中で流域の
整備計画を御一緒に作ろうということで、これ有り難くも関東
地方整備局からこうした中での流域
整備の計画を認めていただいて、現在行っているわけでございます。すなわち、先ほどのトリアージュの話でいえば、今行っていくこと、河川改修であったり、あるいは河床整理であったり、あるいは森林
整備かもしれません。
実は、こちらの多少大きなフリップを御用意いたしました。皆様のお手元、三枚目にございます。(資料提示)
これは、私は一
地域の話をするということなのではございません。やはり治水をつかさどる
国土交通省の仕事が多くの住民から理解をされ、期待をされていくということが大事だと私は思っているんでございます。公共
事業の在り方をより良くするということです。
これは長野市というところが作りましたハザードマップでございます。御覧いただきますと分かりますように、千曲川というものが下の方に流れております。残念ながら、千曲川の河川改修というものは余り進捗をしておりませんで、と申しますのは、信濃川の河川改修費用が年間五十億円でございますから、これを聞いたときに私は、ほとんどこれはなきに等しいという話なわけでございます。一級河川というか、超特級河川でございます。
ここにずっと青いところと紫色のものがございます。つまり、大きく雨が降るとここが洪水になってしまうというハザードマップなんでございます。そして、この上の方の、黄色いところの上の方の線、こちらが浅川という川でございます。
実は、この問題に関しまして、先ほどの水循環基本法研究会で私二月の二十日の日に
お話をさせていただきまして、今本博健さんという、
皆さん、
国土交通省の河川畑の方は御存じの京都大学の名誉教授の方と一緒にこの
お話をいたしました。つまり、この黄色い線の一番上のところに浅川ダムというのを造るというふうに申しております。
実は、余談になるかもしれませんが、一昨日の産経
新聞の一面には、右肩に首長ら複数政治家にと。ダム受注目的、長野、大分でもというような嘆かわしい記事が載っておりまして、西松
関係者などによると、献金の目的とされるダム工事は長野県の浅川ダムが含まれていたと見られると。現在の知事である村井仁氏の議員秘書であった方が特捜部の事情聴取を受けた後自殺をしたと。検察
関係者によると、村井氏が当選した十八年の知事選前、西松から村井氏側にやみ献金が渡った疑いがあることから聴取が行われたということ、大変残念なことでございますが、国家公安
委員長を経験された方でございます、第一次小泉純一郎内閣において。捜査
関係者によると、やみ献金は前任の、こんなところで私の名前が出てくるんですが、田中康夫知事の脱ダム宣言で中止になった浅川ダムの工事計画の復活を見込んだものだったという。
何でこの話をするかというと、実は、これは私が就任したときに
国土交通省からいらっしゃっていた土木部長は、浅川のダムを造っても、地滑り地帯にある、ダムを造っても下流域の水害は防げないというふうに議会
答弁をなさったんです。私は大変に驚きまして、なぜですかと言ったら、この千曲川との合流点は、浅川よりも千曲川の方が七メートル高い場所にございます。そして、水門がございます。大雨が降ってくると水門を閉めるんでございますが、つまり、千曲川の側から内水はんらんで逆流をしてくるので水門を閉めざるを得ないと。ところが、水門を閉めると下流域にあるリンゴ畑が結局水浸しになってしまうと。
すなわち、浅川のダムを造っても、これも不思議な計画でございまして、私が就任したときに、全体の三百八十億円の
予算のうち、ダムの本体工事など一個も始まっていないのに、逆に既に二百億円が使われていたと。これは、摩訶不思議なことに、長野オリンピックが開かれるときに、ボブスレーの会場に行く橋を造らなければならないということで、眠っていたダム計画が、先ほどの愛媛県の山鳥坂ダム同様に復活をいたしまして、橋だけが先に二百億円でできてしまったという計画でございます。
実は、この黄色い真ん中の辺りのところにいわゆる流量
調査点の富竹という地点がございます。これは、前任の方からのころでございましたけれ
ども、引き続き河川改修を九割にわたって行い、三キロの天井川部分も、全面的に天井川を改修をいたしました。しかし、それを行っても、千曲川の側のポンプを止めてしまって水門を閉めてしまう限りは内水はんらんになると。そこで考えたのが、
国土交通省も行っていらっしゃる遊水地という形で、ふだんはリンゴ農家の方々が使っているリンゴ農家の土地に地代をお支払いをして、いったん緩急あるときはそこだけ水をつかさせていただくと。その二十一ヘクタールという形を遊水地で行おうということも計画をいたしました。ただ、私の力が及ばなかったのか、現在ダムを造るという話になっているんですが。
今日
お話をしたいのは、実は、河川工学というものがどれだけ現実味を帯びているのかということでございます。実は、この浅川の場合には、百年確率と呼ばれる場所で、日雨量が百三十ミリの場合に、高水流量が二百六十立方メートル毎秒だという予定でございました。ところが、気象台ができてから百十七年目で
最大の大雨が降った、百二十四・五ミリですから、ニアリーイコール百年確率の雨が降ったときに、河川改修等を
国土交通省の力も借りて行った中で、実測流量は四十三・八という、六分の一だったわけでございます。そして、皆様が逆に百年確率であるというふうにおっしゃっていた新潟の刈谷田ダムであったりあるいは大谷ダムというものは、二〇〇四年の七月の新潟・福島豪雨のときには、逆に百年確率がダムによって確立していたにもかかわらず、多くの人命等が損傷をいたしました。
すると、この最初の方の、皆様にお渡しした資料のところに少し書きましたが、今まで私たちは、金融工学というのはどうもうそじゃないかと思っていました。金融工学は、確率論という中で、必ずこういう具合で金融はもうかると言っていたわけでございます。しかし、
経済は歴史現象でございますから、二度と同じことは起きようがございません。逆に言うと、河川工学も、科学も自然現象でございますから、全く同じ条件ということが二度と起きるということはないわけでございます。すなわち、確率というのは、同じさいころを同じ
状況で同じように振り続けるという、本来極めてユートピアのような話の中ででき上がっているということです。
そういたしますと、先ほど私が申し上げたような、もう一度ダムの手続のタスクフォースをするということ以前において、科学を信じて技術を疑わないのではなく、科学を用いて技術を超えるということの中で、四類型に分けてどのように行うのか、また、最終的に仮にダムということがあるにしても、住民の方々に安心をしていただく上で、トリアージュの精神で、今すぐ行っていくことは何なのか、一年やることは、五年やることは、十年やることは、そしてその先に二十年後の段階でもう一度考えるというような方法を私はお示しになるということがとても大事なことなんじゃないかと思っております。
時間がちょっと近づいてしまいましたが、私たちは、今までは演繹法、すなわち知識や経験というものがあれば普遍的なものが出せると言っておりました。しかし、知識や経験は往々にして、前例がないからできない、法律の規定がこうだからという袋小路の石頭になります。それに対して、
環境が大事だ、緑のダムだと言っていた人は、ある
意味では目指す社会はあったかもしれませんが、結果として、そこにもたらすまでの非現実でございましたので、夢頭のような話でございます。
ここに暗黙知という御存じのマイケル・ポランニーの言葉を書きました。すなわち、
皆さんも御存じのように、例えばコロンブスがアメリカ大陸に行ったときに地球が丸いなんて知らなかったわけでございます。メンデルが遺伝子法則の知識を獲得するためにエンドウマメを掛け合わせたわけでもございませんし、アインシュタインが特殊相対性理論の後に重力理論としての一般相対性理論の可能性がやってくるなんて分かってもいなかったわけですが、智頭として今のパラダイムをチェンジする。今までの成功体験が逆に失敗体験になっていってしまうときにどう変えるのか。
そして、住民の方々に、最後まで本来残るべき
国土交通行政のかなめである
国土交通省が何をしていくのか。私は、この治水ということは極めて大事であればこそ、まさに近代合理主義の必ず現象は統計学的に
説明し切れると言っているのに、実は先ほど言ったように河川改修等をして百年確率の雨が降っても六分の一である、しかしそのときに残念ながら言われた言葉は、二十四時間単位の一時間ごとの雨の降り方が想定とは違ったのでそうなったのかもしれないという
お話です。しかし、それは多くの方々には、日雨量という数字で示してきた基本高水という中において結果として一時間ごとに違ったというのでは、これは私はなかなか理解がされないのではないかと思います。
ですから、
是非大臣も、単にダム
事業のプロセスを検証するタスクフォースではないとおっしゃいました。このチームというものをより発展的に、解消なのではなく発展的に充実していただける御決意があるのか、また私が申し上げたような今ある川の治水をどういう順番でやるのか、また四類型に分けてきちんと考えていくのか、その点に関してちょっと御意見をお聞かせ、最後にいただきたいと思います。