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参考人(
目加田説子君)
中央大学の
目加田と申します。
本日は、
NGOと
政府との
連携に話を特化して
お話しさせていただきたいと思います。
昨今、
NGO、とりわけ
政府との
関係、これは
国際的な
分野に限らず、例えば国内であれば
自治体とそれから
NPOの
協働というような文脈で
パートナーシップというものが強調されるようになってまいりました。それにつけ、
自治体側、あるいは
NGOとの
関係ということでいいますと、
外務省であったり
政府側がどのような形で
連携を進めていけるのかということに非常に
関心が高まってまいりました。
その
一つの背景には、今、
片山さんの方からも
お話がございましたけれ
ども、
日本の
NGOというのは必ずしも、
欧米諸国のみならず、その他の
日本よりも経済的な
規模が小さいような国であったり、あるいは
民主主義制度が十分拡充していないような国においても
NGOというのは一定の
社会的な
役割を果たしているのに比べますと、
日本はどうも
社会的なプレゼンスが小さいのではないかと。
とりわけ
国際的な
活動をする
NGOに対しては、
政府としては、例えば
国際機関などを通じて
欧米の
NGOに
資金が流れている、なかなかそれを獲得するような力を持った
日本の
NGOが存在しないということに背景がありまして、
日本の国民の税金なのだから
日本の
NGOにも是非そういう力を持ってほしいという期待が込められているということがあるのではないかというふうに考えております。
したがいまして、昨今では、
政府と
NGOがどういった場面で
協力できるのか、あるいは、
協力する際の障害はどのようなところにあるのかというようなことをよく聞かれるわけですけれ
ども、その
お話をするに当たって、まず若干大きなフレームワークといいますか、現状認識から始めさせていただきたいと思います。
グローバル化というものが進行している中で
国際的な問題を解決しようというふうに考えたときに、そのかかわってくる主体というのは多様化しております。今の
お話にもございましたけれ
ども、例えば民間
企業が重要な
役割を果たしてきているという側面もございますし、あるいは場合によっては地方
自治体が重要な
役割というものを担うようになってきているというようなこともございます。それと同時に、今日の主
課題であるところの
NGOが様々な場面で一定の、時には非常に重要な
役割を果たすようになってきているということがございます。
その背景にはいろいろたくさん複雑に理由がございますけれ
ども、あえて乱暴に二つだけ挙げさせていただきますと、
一つには、
NGOがやはり問題の所在地などで
経験を積み、そこで知識などを吸収することによって、それらがその問題の根本的な問題解決にとって不可欠になってきているということがあろうかと思います。これは何十年にもわたって、長きにわたって
現場を抱えながらそこで取り組んでいるということで、
地域の問題、あるいはその問題がどのように扱われてきたのかということに長きにわたってかかわっているということが非常に強みとなって、
NGOのそういった知識あるいは情報、
経験というものを問題解決に生かしていこうということが大事になってきているんだろうと思います。
二つ目には、
NGOには時と場合によっては
政府が果たし得ないような
役割、例えば、
一つの国の中で武装集団とそれから
政府が対立していたような場合に、その仲介役などを果たすというときに、必ずしも
政府や
国際機関がふさわしい主体ではないというところで
NGOの需要というものも増してきているということがあるのだろうというふうに考えております。
そして、先ほど
片山さんの
お話にもありましたけれ
ども、
NGOの
活動というのは、大きく分けますと、サービス提供型とそれから
アドボカシー型というふうに二つに分けることができるかと思います。もちろん、密着しておりまして不可分の部分もあるわけですけれ
ども、あえて本日はその
アドボカシー的な後者の機能について主眼を置きながら
お話をさせていただきたいと思います。
それはまさしく
政府と
NGOの
連携という文脈に通じてくるわけですけれ
ども、
連携といったときに、そもそも何のために
政府は
NGOと
連携をしようとするのか。先ほど根本的な問題解決のためには
NGOが不可欠になっているという
お話をさせていただきましたけれ
ども、そもそも、どの方向に向かってどういうふうな形で
連携をするのかということ、その目標、目的みたいなものを明確にしないと、
連携する姿というのは非常に抽象的であいまいなものになってしまうのではないかというふうに私自身は考えております。
さらには、再三申し上げておりますけれ
ども、
日本は必ずしも
世界の中で
NGOが非常に活発な
役割を演じているというわけではないという現実を踏まえますと、その
NGOと
政府が
連携するという場面がどういう諸外国に比べると
比較優位性を持ち得るのか、あるいは、その他の諸国との差別化をいかに図っていけるのかということをじっくりと考えてみる必要があるのではないかというふうに考えております。
と申しますのは、例えば開発型の
NGOが、
欧米諸国のように、それこそ何千ドルというような
資金を動かして途上国で開発
事業を
日本の
NGOが行う、そういう
NGOを育成するという場合の
連携の在り方と、それから、より
政策オリエンテッドな場面で
連携するというのは、かなりその
連携する内容というものも変わってくるわけです。
前者につきましては、これは全く私のいろいろなこれまでの研究、
現場での
活動などを通じて感じていることですけれ
ども、途上国における民主化の促進あるいは経済的な発展というものに伴って
市民社会というものが多くの諸国の中で活発になってきております。また、この何十
年間かの開発の反省な
ども踏まえて、
欧米の
NGOが大金を持って大量に途上国に乗り込んでいくというような従来型の開発
支援というものから、より地元の援助を受ける側の
NGO、
NPOが
自立をしていく、そういった
支援に昨今では変わってきております。
したがって、先進国側が例えば途上国の問題に対処するときに求められるのは、主に
専門性、専門的な知識であったりあるいは豊富な
経験であったりということであります。それは何を
意味しているかというと、今後の
日本の
NGOの在り方として、大量の
資金を動かして途上国に対して大きなプロジェクトを
運営していくというよりは、より専門的な
分野に特化した非常に
専門性の高い
活動というものをしていくということが求められているのではないかというふうに考えております。
したがいまして、
政府との
連携といったときに、こういった専門的な知識あるいは
経験、ノウハウといったものを、
政府側からした場合には、活用していくというような思考法で
NGOとの
連携というものを考えていく今後は必要が生じてくるのではないかというふうに思います。
さらに、何のために、どうやって
連携をしていくのかということをもう少し考えてみますと、やはり
政府側の
国際情勢をどのようにとらえてその中で
NGOをどう位置付けるのかというようなマインドというものが求められてくるんだろうと思います。
例えば、具体的に申し上げますと、外交
政策とどのように
連携をするのか。たまたま先週ですか、アメリカからクリントン国務長官が来日しておりましたので、クリントンさんが、アメリカの外交
政策の柱は三Dだというふうにおっしゃっておりました。三Dというのは、そこに書きましたとおり、ディプロマシー、ディフェンス、ディベロップメントということで、これまでのアメリカは、よりどちらかといいますと防衛というものが主軸にあったと、そして開発、ディベロップメントの方はペリフェリー、周辺に追いやられているという印象があったけれ
ども、今後はそうではないんだということを強調しておられるわけです。
その背景には、テロなどの根本的な要因の
一つとして貧困問題があるというようなことが叫ばれているからだというふうに解釈できるわけですけれ
ども、例えば、これは全く個人的にそこにデモクラシーとそしてディスアーマメントという二つのDを追加させていただいておりますけれ
ども、
日本の外交にとって軍縮の問題であったりあるいは民主化の促進であったりというのはこれまでの外交上の
政策と整合性があるものだというふうに思いますので、こういった例えば
幾つかの柱を立ててそこに集中的に
支援を行っていく、あるいは
連携を模索していくということが
一つの選択肢として考えられるのではないか。
重点配分、選択と集中というふうに書きましたけれ
ども、今であれば、例えば環境であったりあるいは人間の安全保障というのが
日本の外交の柱の
一つですから、その文脈の中で
NGOとの選択とそれから戦略的な
関係を構築していくというようなマインドを持つということが
一つ重要になってくるのではないかと思います。
そして、大型のプロジェクトを大量の
資金を用いて途上国などで
活動するという
NGO以上により大事になってくるのは、先ほど申し上げた
NGOの
専門性ということだろうというふうに私は考えております。
先ほど
片山さんの方から御案内があったとおり、
日本の中でなかなか大きな
資金を運用しながら大
規模な
NGOを育成していくということは、今の現状にかんがみますと、非常に非現実的なのではないかなと私自身は考えておりまして、それよりは、非常に
教育水準の高いこの国において、私、
教育現場におりますと、若い学生は
国際問題あるいは
NGOでの
活動というようなことに非常に
関心を持っているわけですが、そういった人材を今後戦略的に活用していけるような方法、方向性というものを
一つ検討してみる必要があるのではないかと考えております。
例えば、
専門家を包括的に育成するような体制を整備していく。これは、現状でありますと、
NGOの
専門性といっても、途上国で何年住んで
一つの、例えば井戸を掘るプロジェクトを五年やってきたと、もちろんその
専門性はあるわけですけれ
ども、それでは十分ではない。
NGOで途上国において何
年間か
活動したと、それをもってして、それだけで
専門性と言うわけには到底いかない。例えば、水の問題であったりとか衛生の問題だったりということを体系的に学んで、その知識を生かしていくということが必要になってくるかというふうに思います。したがって、そういう人材を育成するような体制を整えていくということが
一つ大事なのではないかなというふうに思います。
さらに、研修やインターンシップ
制度などをやはり充実させていくということも今後求められてくるのではないか。そこにはJPOの
NGO版というふうに書きましたけれ
ども、私自身は、
NGOが今後
専門性というものを
向上していく中でやはりシンクタンク化していく、その中にかなりの情報、知識、
調査能力、
分析能力といったようなものを蓄積していくという必要を強く感じているわけですけれ
ども、そのために、例えば、
欧米のより
政策志向型の
NGOなどに人を派遣して、具体的にどのような形でその
専門性というものを身に付け、
報告、分析というものを行っているのかというようなことを研修できるような
制度の
支援を行っていくというようなことも考えられるのではないかなというふうに思っております。
さらに、他主体との
連携ということで、これは残念ながらなかなか
日本の中で広まっていかない
分野ですけれ
ども、大学や
研究機関、それから弁護士の、これも
日本の大きな
課題ではありますけれ
ども、プロボノ
制度などをより拡充していくことによって専門的な知識というものが
NGOあるいは
政府との
連携の中に生かされていくような、そういう体制というものを整える必要もあるのではないかなというふうに考えております。
そして、昨今の、これは
日本だけに限ったことではございませんけれ
ども、
世界的な
NGO業界と申しますか、
NGOの
世界の潮流としまして二極分化というものが進んでおります。本日おいでの
ワールド・
ビジョンさんなどは、先ほど御案内があったとおりで、
日本の中では最大手でありますが、一千万以下、本当に数百万円で
活動している
NGOというのも何百というふうに
日本の中にはございます。これは
欧米でもそうで、やはり大手の
NGOは、人材などをインハウスで抱えているということもありまして、大きな財源にアクセスできるということで、大きな
NGOが更に大きくなっていって
資金をそこに集約していく。そして、小さな
NGOにとっては、どんどんアクセスできるような財源というものがなくなっていって、小さいところは更に小さくなっていくというような二層化といいますか、二極分化が進んでいるわけですけれ
ども、そういった中小の
NGOなどを
支援して、彼らがエンパワーといいますか、より
社会の中で力を持つような仕事ができるような体制を整えていく。
ここでは、インターミディアリーと言われている
中間支援組織というものを
一つ取り上げてみましたけれ
ども、
資金調達、例えばドイツやフランス、カナダなどの事例を見ますと、具体的にこういうインターミディアリーと言われている
中間支援組織が、例えば申請書の書き方な
ども丁寧に教えたりという形で中小の
NGOをバックアップするという体制を取っているわけです。
日本にも東京、名古屋、関西などにこの
中間支援組織がございますけれ
ども、なかなかプロジェクトを
運営していないということで、公的な
資金を始め民間からも
資金調達するのは困難であるというのが実情であります。したがって、こういった
中間支援組織を今後拡充していくということも
日本の
NGOのすそ野を最終的には広げていくという
意味において重要になってくるのではないかなというふうに思います。
とりわけ、再三申し上げているこの
アドボカシー型、つまり、具体的なサービスを提供するのではなくて
政策を
提言するというような
NGOが
資金を集めるということが非常に困難だというふうに予想されるわけですので、そういった
NGOが今後
社会の中で
発言権を増していくことができるような
支援体制というものを整えていく必要があるのではないかなというふうに考えております。
簡単ですけれ
ども、時間が参りましたので、以上で私の
お話を終わらせていただきます。ありがとうございました。