○衛藤晟一君
総理お話しのように、
総理就任前のころの昨年の秋までというのは、御承知のとおり、日本経済、世界経済、もうインフレ過熱気味で、資源や飼料や油や、そういうものが上がるといって、それから一気にリーマン・ブラザーズの問題から逆転した、言わばデフレ経済という形で。これだけのいろんな
措置を打ってくる中で、私は正直言って、まあ百年に一度か五十年に一度か分かりませんけど、本当によく頑張ってきたと正直言って思っています。その成果がやっと出始めたということで、底入れ宣言というものがされまして、頑張ってきたというように評価をいたしておるところでございます。
さて、そういう中で、さらに今、
年金についてのこの財源についてのお話もございましたが、何とか安心できる社会をつくるため、本当に頑張っていただきたいというように期待を申し上げる次第でございます。
年金制度改革につきまして、いろんなお話もございました。昨日の
質疑でも、
民主党のある議員さんの方からは、自分
たちの案が唯一の
年金制度の改革案だと、あるいは
与党からは
年金制度改革案が出されていないという趣旨のこともありました。しかし、今私
どもが
民主党の
マニフェスト等で見た案というものがございますが、果たしてこれが具体的な改革案と呼べるものなのかということを、
年金というのは非常にやはり難しいというか、ある意味では負担と給付という関係ですから非常に分かりやすいのかもしれません。しかしながら、その数値計算が大変という中で、何か分かりづらいものがたくさんあるわけでありまして、これを一回ちょっと見てみたいというふうに思っているんですね。
だから、全額税財源による最低保障
年金の創設だとか、あるいは
国民年金も含めたすべての
年金制度の一元化などを提唱しておられます。しかし、我々
与党も今までの中で度々指摘しておりますように、肝心の具体的な
部分が非常に不明なんですね。だから、
国民に具体的に幾ら負担してもらうのか、そして幾ら給付を受け取るのか、あるいは所得階層ごとの所得代替率は一体幾らなのか、必要な財源は幾らなのか、それをどのように調達するのか、そういうようなことが明らかにならなければこの
年金制度というのは議論にならないわけですよ。これが
年金制度なんですね。
年金というのは、やっぱり他の政策の分野とは異なりまして、具体的な
数字なくしては議論は成り立たないというのが実情でございます。だから、この今いろいろ出ておる案が一体、本当に
年金改革案と呼べるものかどうかというのは大変な疑問に思っています。
そこで、分からないところはたくさんあるんでありますけれ
ども、でも、その中でも少し検証をさせていただきたいと思っております。
まず、全額税財源による最低保障
年金という点でいえば、現在の基礎
年金の給付額は約二十・五兆です。仮に、六十五歳以上の
方々全員に満額の基礎
年金を支給しようとしますと、給付額は約二十三兆円の規模になります。一方、現在の消費税は約十三兆円。
民主党は消費税を上げないと言っているわけですから、消費税全額十三兆円を
年金給付金に充てたとしても、約四割の給付費をカットしなければならないということになります。
この点について
民主党は、
一定の所得以上の方については最低保障
年金の給付額を少しカットするんだと言っています。この
一定の所得以上の
方々というのも一体幾らぐらいなのかって分かりませんけれ
ども、幾らと言っているのか、ありませんからよく分かりませんけれ
ども、少なくとも四割以上はカットしなければいけないというためには、少なくとも今度は半数以上の
方々の給付が何らかのカットを受けるということになるわけですね。
半数以上のカットということになりますと、まさに、ここにありますように中堅サラリーマン世帯の給付のところは、ここはちょっと波形になっていますけれ
ども、落ちる具合になるんです、すっと上がらないんですね。だから、この辺がいわゆる実質的な中堅サラリーマン世帯なんですね。ここのところ、どうしても落とさざるを得ないというような結果になるんだろうというように推察されます、今までのあれからいきますと。そのために、この辺の最も働き盛りのよもや中堅サラリーマン世帯をねらい撃ちにしようとしているのではないと思いますけれ
ども、やっぱり解釈のしようがないという具合に思います。
だからこそ、
年金制度というのははっきりもうちょっとしなければいけないと思います。ですから、そのことをカットしているんでなければ、これを避けるためには、税なのか保険なのか
保険料なのか分かりませんけれ
ども、何らかの形で今度は負担を上げなければいけないという
状況になるのがこれが
年金なんですね、結局。
先ほ
ども申し上げましたように、
民主党案では所得階層ごとに所得代替率がどうなるか明らかにされていません。今回の財政検証に対して、世帯類型によって所得代替率が五〇%を切るではないかというようないろいろ批判がありますけれ
ども、
民主党案はこの所得代替率の文字さえ出てこないんですよ。
さらに、
民主党案の不明な点を言えば、現在、基礎
年金には事業主負担が約三・八兆円入っておるんです、基礎
年金部分には。それを今度はなくすというわけですから、よもや事業主負担を全部なくしてしまおうという考えではないと思うんですけれ
ども、これに代わるものをどうするのかということをちゃんと示さないと全く意味のない案になってしまうわけです。
それから次に、
国民年金も含めてすべての
年金制度を一元化するという点についても、結局一元化するといっても、いわゆるトーゴーサンとかクロヨンとか言われておりますように、正確な所得捕捉がまだまだままならない中で、そして公平な
保険料徴収をどのようにするというのか。また、
国民年金の対象であった自営業者には事業主負担分を含めて二倍の負担を要求しなきゃいけないわけですね。事業主は自分の分だけということになりますと、自営業者は、事業主負担はサラリーマンは払ってくれてますけど、その分と同じものを要求するということになれば倍負担をしなければならないということになるわけですけれ
ども、本当にその自営業者に対して二倍の負担を求めようとしているのか。
あるいは、所得捕捉という点についても、いわゆる歳入庁構想を提案されていますけれ
ども、歳入庁にすれば解決するような言い方をしていますけど、
国民年金一号被
保険者二千二百万人のうち所得税の申告納税者数は約三百五十万人という具合に、試算でそういう具合にされております。そうしますと、約二割弱の方しか所得税の申告納税をしていないという計算になるわけですね。すると、サラリーマンの所得税は天引きですけど、自営業者等のほかの
方々は申告納税なんです。現在その申告納税している
方々は二割しかいないんですね。だから、その残りの方をどう捕捉するかとかお願いするかというのは、これは歳入庁をつくったからといって解決するような問題ではないんですね。
このように、ここまで申し上げてきまして、
民主党の案というのは、
民主党案というのは具体的な
部分はまさにブラックボックス、到底、案と呼べるような代物ではないんじゃないかと私は思っています。にもかかわらず、現行制度に対する御批判だけはいわゆる大変活発になさっておりまして、やっぱり
民主党は具体的な案を示さずに現行制度を批判するだけで、
国民の不安をいたずらにあおることになると思います。私は、政治家として、このような姿勢はやっぱり
年金に関する限りは本当に無責任極まりないんではないかというように思っています。
国民の不安解消どころか、全く逆の効果なんです。
だから、本当に
年金というのはみんなでその負担と給付という関係を本当にどう考えていくのか、一緒につくり上げない限り、そして
国民で合意していかない限り成り立たないという制度であるということを改めて
認識をして、そしてそういう中で
厚生労働大臣のこの
民主党案に対する、制度改革案についても見解を伺いたいというように思っています。