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参考人(
大野眞里君) 今御紹介にあずかりました
社団法人土壌環境センター副会長兼
常務理事をやっております
大野と申します。
このような
機会をいただきまして、感謝申し上げます。
まず、私の
意見陳述をする前に、
土壌環
境センターについての、活動についてちょっと御紹介をしたいというふうに思います。
土壌環
境センターは平成八年の四月に設立されておりますけれども、それ以前に、平成四年に
土壌環境フォーラムというものを立ち上げまして、
土壌関係
汚染問題をいろいろと
調査研究している
企業あるいはその有識者というような方々で集まった、一応自主的な研究機関、任意的な団体をつくりまして、その後、平成八年四月に社団法人として
環境省の、当時環境庁の認可を受けまして設立された団体でございます。現在、平成二十一年三月段階で
土壌汚染対策にかかわる百六十五社を会員とした団体でございます。当センターは、会員会社の
技術の向上とか
技術の育成ということを目的として活動するとともに、我々のいろんな知見を踏まえて、
土壌環境
対策に係る政策提言あるいは
環境省に対する施策のサポートというようなことを行っている団体でございます。
主な活動の中に、我々が、会員がどういう
調査を、
汚染対策を実施したのかという、あるいは法の
対象以外にどれぐらいのものの
調査、
対策が行われているのかというような自主的な
調査も実施しておりまして、今回の
法律改正を行うに当たりましてもそのような
情報が
利用していただいたという経緯がございます。それから、適正な
土壌環境
対策をやるために
土壌環境監理士という資格
制度を自主的に設けまして、
技術者の資質の向上というようなことを行っております。平成十四年に本
法律ができたわけでございますけれども、その後、実際にいろんな
対策にかかわる中でいろんな問題が出てきたということで、当センターといたしましても、その経験を踏まえまして、平成十九年十月に、
制度改正が必要であるということで、
環境省に対して政策提言もさせていただいております。そういう団体であるということをまず御紹介しておきたいというふうに思います。
私のペーパーがございますので、ペーパーに基づきまして少し御紹介をしたいと思いますが、平成十四年の土対法
制定時に想定していたことでございますが、この
土壌汚染というものの基本的なところというのは、
土地の改変等によりまして健康被害をどう防止するかということが基本的な考え方であるというふうに思っておりましたので、法の
対象となる
汚染地というのは非常に限定的になるだろうというふうに考えておりました。また、過去の
汚染地にかかわることもありまして、
調査義務などの発動も非常に限定的にならざるを得ないのではないかというふうに考えておりました。
それから、
環境基準というのは、これは望ましい
基準ということを定めておりまして、これは、必ずこれを遵守しなければいけない、あるいはこれを超えたからといってすぐ健康被害をもたらすというものではないものだというふうに考えておりました。
環境基準というのは、この
土地に七十年間住み続け、七十年間例えば二リットルの水を飲み続けた場合の影響を考慮して
基準を設定しておりますので、そういうような状態にある、置かれる方というようなことはまた非常に少ないというふうに考えてもおりました。
一方で、こういう
法律がいったんできますと、やはり
土壌汚染に対する関心というようなことも非常にあるというふうに思っておりましたので、
土地の
売買に伴いまして
調査、
対策も法の外側で進むだろうというふうなことは想定をいたしておりました。
法
制定後のことでどういうことが起きたかというふうなことでございますが、法の
対象となる
調査発動の
ケースというのは想定どおり非常に少なかったというふうなことがあります。逆に、自主的な
調査と
対策の
ケースは予想以上に多かったというふうなことがあります。
我々のセンターの
調査でも約八千件ぐらいの自主的な
調査が行われておりますけれども、これは全体の
調査の件数からいうと八〇%から九〇%ぐらいの比率が自主的な
調査ということになります。また、その自主的な
調査の約半分近くから
汚染が見付かったということで、これもまた、
調査をしたら
汚染というのがかなり見付かるんだなということが分かったということになります。予想どおり自主的な
対策が進んだという面もあったわけですけれども、逆に、予想以上に極端な
対策である
掘削除去が行われるという、また場外に
汚染土が
搬出されるということが生まれたということは若干想定外であったというふうに考えております。
どういうふうに我々自身が、このような現状が起きたわけですけれども、不合理であるというふうに思ったかということについて三点ほど指摘を挙げますけれども、まず、自主的な
調査で
汚染地が多数見付かったにもかかわらず法の外側に置かれているということがまず
一つでございます。それから、きちんと管理していれば問題ない
ケースであっても
掘削除去というある意味で極端な
対策が法の外側で進められてしまったことが二点目として指摘、挙げられるんではないかというふうに思います。それから、
土壌汚染対策は進みましたけれども、掘削
対策が主流になり、
汚染土を場外に
搬出することにより、逆に不適切な
処理により
汚染の拡散あるいはその
可能性が非常に生じたということが不合理な実態、三番目として挙げられるんではないかというふうに考えてございます。
それ以外に、加えて、実は
自主的調査で発見された
汚染地あるいは
掘削除去対策が取られたところというのは、ほとんど
土地取引の利益が見込めるような
土地で行われたということになります。したがいまして、今まで
土地対策が行われたところはほとんど東京圏、近畿圏、それから愛知圏というようなところで八割ぐらいが行ってしまうという
状況でございまして、その他いろいろと
土壌汚染に絡むような地域というようなところはむしろ
土壌汚染対策は余り進まないでそのままになってしまっているという
状況がございます。それが、
一つ逆に、地方圏で
汚染土壌が見付かったところがそのまま空き地になっているという実態が発生しております。
次には、法の
対象外の自主的な
調査がなぜ進んだかということでございますけれども、まず第一に、
土壌汚染対策法が平成十四年に
制定されたということが挙げられますけれども。
そのほかに、ここにはちょっと書いておりませんけれども、ISO14000という環境システムの規格の
制度ができましたので、それに伴いまして各
企業が持っている
土地を自主的に一応
調査をしていくというふうなことが非常に行われたということが
一つ、二点目に挙げられます。
そのほか第三点としては、先ほど
大塚先生からありました
不動産鑑定評価基準運用上の
留意事項というのが国土交通省から平成十四年七月三日に出されておりますけれども、この
不動産鑑定の
評価の
留意事項というものについては、あくまでも
土壌汚染対策法の枠内での
汚染地あるいは
指定区域というものを
対象としてこの
評価というものを
運用しているわけでございますけれども、これが
指定区域外についても非常に大きな影響を与えたということがあります。
四番目ですが、今のものと若干リンクするところもあるんですが、平成十六年十二月に大阪アメニティパークで、
土壌汚染について、大阪府警が三菱地所の社長や三菱マテリアルの方を宅建業法違反の告知
義務違反ということで書類送検をいたしまして、三菱地所の会長や社長が引責辞任するということが発生しております。これは
土地取引の関係者に決定的な影響を与えたというふうに思っておりまして、
土地取引に際しては
土壌汚染調査というのは完全に必須要件になったということが言えるんではないかというふうに考えております。
なぜ
掘削除去のような不合理な
対策が進んでしまったのかということが、ちょっと触れておきたいと思いますが、
一つは、
指定区域に
指定されても
盛土あるいは
封じ込めなどの適切な
対策を取り適切な管理が行われていれば健康被害を起こさない、そういうリスクを管理することができるわけで、その上での
土地利用というのは何ら問題ないというものなわけですけれども、そういうことがやはり国民に十分理解されなかったんではないかというふうに考えております。
それからもう一点、
不動産鑑定の、先ほどの説明にありました
留意事項の中では、
指定区域が解除されない限り
汚染の存することを前提として鑑定
評価することというふうになっております。つまり、
盛土・
封じ込め対策では
指定区域の解除ができず、
不動産鑑定上では依然としてきずものの
土地として扱われまして、
指定解除までの
費用を考慮しなければならないということになったということがあると思います。こういうようなことがありましたものですから、一気に
掘削除去をしてきれいにしてしまうということが一般化されていったのではないかというふうに考えております。
また一方で、
対策というのは、多分、
汚染土壌対策というものをきちっと
対策するという、完全に
汚染がなくなるような
対策というのは掘削
土壌以外にはないわけですね。現地でそういう
対策を行った場合に、一〇〇%それを浄化する
対策というのはやはりあり得ないわけです。そういたしますと、それを一〇〇%ではないということになりますと、やっぱり
掘削除去ということが一番完全な方策というふうに思われてしまったということがあるんではないかというふうに思います。そういうことで掘削が主流になったということになろうかと思います。
この掘削の
汚染土を場外
搬出というようなことによりまして、新たな
汚染をもたらす
可能性というのが非常に出てきたということになります。
指定区域の場合は、これは
環境省告示でもって、平成十五年三月六日の公布で
汚染土管理票というマニフェストを使用することを
義務付けております。しかし、自主的な開発
調査をやっているところはその
義務はないわけでございまして、それにつきましては、我々の
土壌環
境センターでこの
汚染土管理票というものを販売いたしまして、その販売が毎年二十万枚、大体販売をしているわけですけれども、そういう自主的なものに対しましてもそういう
汚染土管理票を
利用するというようなことをやっておりましたけれども、なかなか全部のところでそういう
管理票が
利用されているとは限らないというところで、いろいろな問題もあったというふうに思います。
今回、そういう不合理な問題に対してどういうふうなことが行われたのかということを我々なりに見ていったときに、まず、自発的な
調査であっても
汚染地であることが発見された場合には法の枠組みの中に入ってもらうことが必要であるというふうに考えておりましたけれども、今回の
法改正の第四条又は第十四条のところでその辺のものは対処されているんではないかというふうに考えます。
それから、
汚染が発見され、かつ、健康被害のおそれがあり
対策措置が必要な場合であっても、過剰な
対策にならないように、あるいは摂取経路を遮断する
対策、適切な
対策が取られていれば十分であるというようなことを公的にお墨付きするようなことが必要であるというふうに考えておりましたけれども、その点については
改正法の第七条で一応対処されているんではないかというふうに思っています。
それから、
汚染が発見され、かつ、健康被害のおそれがないような
区域については
情報管理レベルでよいことも認めて、
土地の
形質変更を行う場合に
対策を管理できるようにすることが必要であるというふうに思っておりましたけれども、法の第十一条一項と第十二条で対処されているというふうに考えます。
それから、摂取経路を遮断する
対策が取られていても、
汚染土が
対象地に残っており、それから要
措置区域が解除されてもその
情報を管理し、
形質変更の場合には
届出が必要になるような形式が必要ではないかというふうに考えておりましたけれども、今回、法の第十一条一項、あるいは第十二条、第十五条でそういった面についても対処されているというふうに考えております。
最後にちょっとなりますが、今後、自主的な
調査が増えるというふうに考えております。その
一つは、平成二十二年の四月から資産除去債務に関する会計
基準化が行われます。あるいは、それに伴いまして、引当金が計上を求められるということになりますが、そういうものに対しまして、当然、今後関連して自主的な
調査が増えてくるというふうなことになりますが、その際、資産除去債務や引当金計上の
費用の
評価については過剰にならないことが必要であるというふうに考えておりますけれども、今回、その辺の
対策に対する
基準というようなことがきちっと整理されれば、その辺の過剰な
対応というものも抑制することができるんではないかというふうに考えております。
また、自主的な
調査が増えたというふうなことがありましても、先ほどの第十四条の
指定の
申請というようなところで恐らく十分対処できるんではないかというふうに考えています。
それから、
汚染土を場外
搬出した場合のいろいろと問題というようなことが指摘されておりましたけれども、それについては今回、掘削的な
対策というものはできるだけ抑制するというようなことが
対応できますし、それから場外
搬出した場合についても
管理票というようなことで管理する
仕組みが一応用意されたと。
それから、万一場外
搬出した
汚染土についても、一応それを
処理する
事業者に対して資格要件を与えると、満たす
処理業者であることを条件としたということで、そういう意味で、そういうような
対策を、外に持っていく場合についても必要な
対策というものは用意されたんではないかというふうに考えて、そういう意味で大変
評価をしております。
以上でございます。