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福島分科員 大臣、大変お疲れさまでございます。
本日、私は、タミフルの問題について改めてお尋ねをいたしたいというふうに思っております。
現在、新型インフルエンザの出現に備えてタミフルの備蓄が国家的に進められているわけでありますが、同時にまた、タミフルについては、ちょうど二年前でありますけれども、異常
行動の出現ということで大変問題になりました。また、昨今は、タミフルに対しての耐性株がふえている、こういう
指摘もあります。
ただ、二年前、私もよく
認識しておらなかったんですが、タミフルによって突然死が起こることがあるんじゃないか、この問題に改めて私は気づかされまして、きょうは、この点について
厚生労働省としてしっかり取り組むべきである、このことを申し上げたいと思って質問に立たせていただいております。
昨年の暮れに、私のところに御相談がありました。ちょっと読ませていただきますと、これは兵庫県のWさんという方ですけれども、「二〇〇七年三月二十四日に主人を亡くしました。主人は、三月二十二日に熱を出し、二十三日に病院に行き、インフルエンザと診断されタミフルを処方されました。インフルエンザの予防接種もしており、担当医にも、来院時には熱もなく全身状態比較的良好と言われました。病院から帰宅後、夕食もふだんどおりとり、熱が出ないうちにタミフルを飲んで寝ると言って二階の寝室で就寝しました。私は一階で寝ました。翌日、主人を起こそうと声をかけても返事がなく、息子は救急車を呼びましたが、既に亡くなっていました。」四十四歳の方です。
私は、この話を聞いて、やはりおかしいな、何で亡くなったんだろうと。監察医の方は、心筋梗塞、要するに、よく原因がわからないので心筋梗塞だと。兵庫医科大学で解剖いたしました。法医学の医師は、死亡の原因は気管支肺炎だと。これも私はいかがかなと思うのですね。そういう症状がなかったわけですから。実質的には肺水腫のような状態で亡くなったということのようですね。
この方は、
医薬品副作用被害救済
制度、これで何とか救済していただけないかということで、二〇〇七年の五月、手続をしました。しかし、
医薬品医療機器総合機構からは、因果
関係がわからないということでそのままにされている。今の
女性、残された奥様は、パートで働きながら御苦労されている。
突然死の問題は、改めて調べてみると、決してまれな話ではない。
大臣のお手元に資料がありますね。異常
行動が発端になりまして、
厚生労働省が
検討を開始する
平成十九年の十二月、
安全対策調査会に提出をされた資料なんですね。これは中外製薬の方ですね。死亡症例は七十一例あります。発売から二〇〇七年まで、その当時まで。
二枚目を見てください。七十一例のうち、死亡症例、原因不明三十九例の集計という数字になっているんですね。症状発症から二十四時間以内の原因不明死。異常
行動ばかり目立ったんですけれども、三十九名も突然にというか突然死をしている、原因不明だ。
もう一枚めくってください。これは、医薬ビジランスセンターという、薬害について専門的に究明活動をしておられる浜六郎
先生というドクターのところですけれども、その
先生の集計ですと数がふえていまして、全体、タミフルに関連しての死亡という八十四名の中で、短期突発型というのは、突然死五十二名、異常
行動・事故死というのが八名。ですから、異常
行動よりもはるかに多く突然死が起こっている。この事態は
認識をしなければいけない、こう思うわけです。
この七十一例、この中でいろいろな症例があるんです。私も、これは資料でも公表されておりますから読ませていただきました。その中で、例えばこういう例がありますね。三十四歳の
男性、インフルエンザと診断され、リン酸オセルタミビル七十五ミリグラムを夕食後服用し、そのまま就寝するが、次の日の朝死亡、推定死亡時刻は深夜零時ごろと、全く同じよう。若い、特に病気もない人が、インフルエンザと診断されてタミフルを服用して、そのまま初回の服用後亡くなってしまった。こういうことがあるわけですよね。これをどう考えるのか。
実は、突然死の問題について、
厚生労働省の
検討会の話でありますけれども、これは十九年の十二月に行われたものでありますけれども、「臨床WGにおける調査
検討の結果(まとめ)」ということで、これにはどう書いてあるか。「これまでに当臨床WGにおいて調査
検討を行った疫学調査、臨床試験の結果等からは、タミフルの服用と異常な
行動及び突然死との因果
関係を示唆するような結果は得られていない。」
ただ、よく見ると、突然死の中身について詳しく
検討して
関係がないと言えるようなデータもないんです。要するに、余り真正面からきちっと
議論していないんじゃないか、こういうふうに私なんかは資料をずっと拝見しておりまして感じております。これについてどう考えるのか。
昨年の十二月、日本臨床薬理学会というのが開かれまして、そこで、異常
行動の問題、また突然死の問題、これが繰り返し取り上げられるわけです。異常
行動の問題については後ほど触れますけれども、
厚生労働省のいわゆる廣田班と言われるところで調査する、その廣田班の
検討の結果というか
検討の仕方が間違っているんじゃないか、こういう
議論が何人もの専門家の方からなされている。
一方で、突然死の話についてはどういうことが
指摘されたかというと、専門的な話になって恐縮ですが、
大臣は頭脳明晰な方でございますから見ていただければわかると思います。お手元の資料の四を見てください。これは、タミフルの新薬の承認申請のときのメーカーが出したデータ。
これはラットの実験なんですけれども、七日齢のラットと成熟ラット、十四日齢のラット。七日はまだ子供ですね。子供ですと、いわゆる脳神経、中枢神経に対して、血中の
医薬品、薬物が
移行するバリア、これは脳血液関門といいますけれども、それが未成熟で
移行しやすいのだろうと言われているわけです。十四日たつと完成してそういうことは余り起こらなくなる。
これを見てわかることは、タミフルの用量がふえていくと死ぬラットがふえるということなんです。しかも、その死に方というのがどういう死に方かというと、呼吸
抑制が来て、体温低下、自発運動低下、呼吸緩徐・不規則、中枢
抑制が起こって、そしてチアノーゼ、低酸素になって肺水腫になって死んでいる。これは、一番最初に申し上げた兵庫県の方の亡くなり方と実は一緒なんです。おかしいんじゃないか、こういうふうに思っている人がいるわけです。
大事なところは、これに対して実は
厚生労働省の
検討会の方でもいろいろと
議論されたんです。基礎ワーキンググループでも追加調査もしています。ただ、それについては、非常に量が多いから、普通の使用ではこういうことは起こらないんじゃないかという、私は予断だと思いますけれども、実は追加調査もしているんですよ。追加調査は基礎ワーキンググループでやっていて、しかし、その具体的なデータは実は公表されていないんです。ただ、そのデータは全くこれと一緒です。量がふえると死ぬラットがふえる。しかも、呼吸
抑制になって、肺水腫になって、低体温になって死ぬ。
これは、十四日齢だと起こらぬわけです。七日齢のラットというのは、先ほども言いましたように、脳血液関門が完全ではない。インフルエンザにかかったときも、そのときにはインターフェロンとかいろいろと出ますから、高サイトカイン血症といいますけれども、そういう脳血液関門というのがやはり不十分な状態になっているんじゃないか、こう言われているわけです。七日齢のラットに起こっているようなことが起こってもおかしくはない、こういう話なんですね。
私は、これをもって直ちに断ずるというわけじゃないんですけれども、少なくとも、用量依存的に、量をふやせばこういうことが起こるというのは、そもそもタミフルに何らかの作用があると考えるのが自然だろうというふうに思うんですね。どういうメカニズムかまだわかりません。ただ、そういう作用がどういうふうにして起こっているのか、ここのところをきちっと究明しておかないと、
人間で起こっている、人で起こっているこの突然死の問題について、
関係がありませんということは言えないんだろうというふうに思うんです。
この低体温の話というのは、実はタミフルを飲むと、私は飲んだことないんです、飲んだ人に聞くと、どんと効くと言うわけですよ。体温が下がるんですね、発熱が。これは、インフルエンザウイルスの増殖を
抑制するのがタミフルの作用です。ただ、飲んですぐインフルエンザウイルスが減るのかと言われると、多分そんなことはないんだろうと僕は思うんですね。だけれども熱は下がるようです。それが、何か効いた、こういう話に感じられるみたいなんですけれども、タミフルで低体温が起こるということは実は以前から言われている。副作用でも書かれています。
資料の五を見ていただければわかると思いますけれども、タミフルを飲んでどこまで低体温が起こるのか。これを見ると、すごい数字ですね。三十八度あった熱が三十四・六度、それから遷延的に三十二・四度とか、そんなふうなデータになっている。そしてまた、二例目もそうですね。これは十歳未満の子供ですけれども、三十八・五度の熱が三十四・七度に下がっている。この作用を何なんだと考えるかということですよ。
大臣、もう一枚めくってください。これは、青梅慶友病院の小児科の
先生、菅谷
先生という方なんですけれども、右の方に線を引きましたが、タミフルの代表的な効果は解熱効果がすぐれている、こういう話なんですけれども、その下に、手足がチアノーゼっぽくなったり顔色が少し悪くなったりする程度の例もあると。その下に、そのメカニズムの解明は大事ですし医学的な興味もありますと。
結局、要するになぜ下がるかということはよくわかっていないわけですよ。なぜ下がるかということ。ここのところと、先ほどの、ラットがたくさん死ぬことがある、用量依存的に亡くなる、ここのところの関連をどう考えるかが問題だというのが、昨年十二月の臨床薬理学会で
指摘されたことなんですね。
ただ、実際に突然死された方というのは、服用しておられる方の数というのは膨大な数ですから、どの程度の比率かと言われると、頻度からいうと少ないかもしれない。しかし、こういうことが起こるのか起こらないのか、こういうことについては徹底した調査をすべきなんじゃないかというふうに私は思うわけです。
実際に研究班のデータの中でも、もう一枚めくっていただくと、これはタミフルについての、
厚生労働省でやっていただいた
安全対策調査会に出された資料。その中で、表十五を見てください。異常な
行動の直前の体温というのがあるんです。異常な
行動の直前の体温と書いてありまして、タミフル、リレンザ、シンメトレル、これは抗ウイルス剤ですよ、その中で、熱は下がっているんですけれども、三十四とか三十五度台とか、こういう体温になっているのはタミフルのところしかないですよ。ほかはないんです。
ここの問題については、確かに低体温という副作用がちゃんと書いてある、だから、そういうことだねということで別に注目されていないわけですけれども、このことと先ほどの突然死の問題をどう考えるかという、非常に重要な問題があるというふうに私は思っています。
また、もう
一つの点、先ほども言いました異常
行動の問題については、昨年の臨床薬理学会では、もう一枚めくってください、資料の八ですね、ここに書いてありますけれども、第一次予備解析結果、これが二〇〇七年の十二月に公表されて、タミフルと異常
行動については直接的な因果
関係は確認されない、こういう報道のもとになっているところなんですけれども、これの解析、やはりこれは問題があるんじゃないかと。実際に調査会の方でもいろいろな
議論があります、議事録を読んでいますと。本当にこれがすっと正しいというふうに余り言っておられない。非常に慎重な物の言い方をしているんですね。
その後、中間
報告というのもなされるわけですけれども、おもしろいことは、私も専門家でないのでよくわからないんですけれども、もう一枚めくっていただくと、どういうことがこの間起こっていたかということがわかります。私は、これについて是非を申し上げるつもりはないんですけれども、タミフルを使用した者、使用しなかった者、異常
行動があった者、どういう比率ですかと。ORというのは、オッズレシオ、要するに、事象が起こったか起こらないかということの確率の比率ですね。
当初、タミフルを使用した者、異常
行動あり千二百十五人、一五・六%。非使用者は二千二百四の症例に対して二百六十二人、一一・九%。これを単純に比較するとORが一・三六という話。ここで次に何をしたかというと、タミフルの使用者については、タミフルを飲んだ前に起こったか、飲んだ後に起こったかということで区分しまして、飲んだ前に異常
行動を起こした人は、タミフル非使用者の方にそこだけごそっと持ってくるわけです。そうすると、当然、白か黒かという話をすると、黒のところだけ持ってくるから黒が濃くなるのは当たり前でありまして、結局、下のORは〇・五一に
減少する。ですから、タミフルを使用している人の方が異常
行動が少ないというデータになる。これはどう考えても、どうなっているのかねと首をかしげるわけです。
これは、やはりそのままではなかなかあれなものですから、その後、もう一枚めくっていただくと、もう少しまた工夫をして、どこにこのグループを持ってくるかによってORが、最初一・三六から〇・五一になり、一・五六になり、そして〇・九一になりと変遷していくわけですよ。
私は、是非は申し上げません。ただ、これだけころころ変わっていて、そしてまた臨床薬理学会で、ただ一人の研究者ではありません、複数の研究者から、この解析の方法は間違っているんじゃないですか、こういうことを言われている事態が問題なんです。ですから、この問題についてもきちっとしなきゃいかぬと思います。
そもそも、この横田班、横田
先生の班から廣田班に移る、このときには、結局、メーカーからの資金提供がどうだこうだということで、模様がえしてスタートするということになるわけですけれども、そういう経緯もありますし、ここのところはきちっと冷静な
議論がなされるべきではないかというふうに私は思っております。
そして、またもとに戻りまして、昨年五月に申請をして、いまだに救済されない。突然死であっても救済されていない。
大臣、この資料の三のところにまたもう一度戻ってください。これは
厚生労働省の資料ですが、「
医薬品副作用被害救済
制度へ請求を行っている使用した
医薬品にリン酸オセルタミビルを含む死亡事例について」。使用した
医薬品としてタミフルを含んでいる死亡事例十六件。ですから、これはすべての人が別に申請していないということですね。ただ、その十六件でも、調査中にとどまっているのが七件、不支給決定がされたものが四件、実際に原因
医薬品として支給決定したものは二件にとどまっています。ですから、この問題は放置しておけない。調査中ですよと言い続けることが私はできないと思うんです。
関係があるのかないのか、私は、先ほどからのいろいろなデータを見ていると、いろいろな
関係をやはり想定して徹底して調査した方がいい、こういうふうに思わざるを得ません。
そしてまた、近年、いろいろなデータが実は出てきています。例えば、先般、二月の冒頭にワーキンググループが開かれましたけれども、それだけではありません。そこに
報告されているデータだけではなく、例えば、二〇〇七年の九月には、ワシントン大学の和泉
先生が、アルコールとの相乗作用、そしてまた低体温が増強することがあるとか、そしてまたエフェドリンとかカフェインとの相乗作用でラットの異常
行動がふえるとか、いろいろなことが起こるということが、実は去年、またおととし、実際に研究データとして出てきている。こういうことをきちっと踏まえて、
厚生労働省としても適切な
対応をしていただきたい、私はこういうふうに思うわけであります。
私が一方的にずっと話し続けまして、申しわけございません。
大臣の御
所見をお聞きしたいと思います。