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森田克巳君 二十一年度
予算ということについて、私は、きょうは、皆さんに
資料をつくっておくべきであったと思ったのでありますが、あえて求められませんでしたので、平素から考えておることと、私が団体活動をしながらでもそれぞれの農村の中で感ずること、これはこうあるべきじゃないかとよく思っておりましたようなことにつきまして、散発的に申し上げるようなことになって申しわけないと思っておりますが、
お願いを申し上げます。
二十一年度
予算については、もう既に、私
どもも事前に、県を通じながら、あるいは団体を通じて要請してまいりまして、国の
予算の非常に少ない中でありますし、苦労の上にでき上がっておることもよくわかっておりますが、原案もできたようでありますので、そして、その原案に対する
質疑等も、私
ども、一度はそれぞれ所要のところには相談もいただいております。私
どもの組織としては、今日の税収等も上がらない中でありますから、これより以上のことはということで、大筋
理解をしているものであります。
特には、農業の部分につきまして言いますと、懸案のもろもろの水田
対策、これは減反
対策と言っていいでしょうが、これとともに出てきたのでありますが、やはり米粉利用というのが盛んに言われるようになってきました。そのとおりだと思うのでありますが、水田利用で米をつくる、水田の生産力こそ農業の生産力であります。
そのほか、米粉と一緒にえさ米ということについても、まさに適切でありますが、こういうのも今回本格的な顔出しをいただいております。畜産にとっては避けられないのでありますが、自給飼料
対策、そしてまた、今や顕著になってきました耕作放棄地
対策、それから、現在の農地をどう
確保するかという
確保対策、あるいは用水
対策、農山漁村の活性化
対策等も組み入れて多彩にでき上がっております。私
どもは、およそこれでいこう、こんなものだろうなということで思っておりますが、年度が変わりましたら早々からこれが活用できますように、どうぞ切に
お願いを申し上げたく存じます。
きょう、私は、普通の平凡な問題でありますが、特定した幾つかの問題を申し上げて、
意見を申し上げ、御参考にしていただきたい、このように思っております。
今回の不況というのに出会ってみて、私
どもは、県の一次産業はいかに愚かであったか、弱かったかということを深く反省させられております。
大分県は、歴史的、地理的に見ても、風土として、まさに第一次産業の県でしかないのでありますが、その中でバランスを考えて、それは所得性を考えようということから、第二次産業というのもやはりバランス上ずっと組み入れてきたわけであります。今回の不況に出会って、恐らく多くの県民は何かに気づいておるに相違ないと思うのであります。
従来、昭和の前半までは、農工併進策ということを華々しくいいながら、私
どももやはりそうあるべきだということでついてきたのでありますが、一次産業をもっと強固にしておけば、今回のような不況でも、
地方として、私
どもの国東から日出、杵築、日田市、佐伯市と内陸に至るまで、こうばたばたと倒れる音がすることはなかったのかもしれないと思っています。一次産業を預かる者として、ただ重厚長大型の産業、続いて自動車、カメラ等の組み立て産業が来る中で、
雇用の拡大ということに踊らされて見失った面もあるし、求人倍率だというようなこと、あるいは工業出荷額だという中で、ちょっと見失ってきた嫌いがある、私
ども、指導者の認識不足と同時に努力不足であったということを痛感しております。
私
どもは、二次産業から土地を取り上げられ、あるいは人を取り上げられ、そしてまた頼みの水も吸い上げられてしまったのでありますが、今この不況になって、今や私
どもの一次産業においては、人々を吸い込むなんというような力は何もないということで、私
どもとしては反省しきりなところであります。
どうしてもやはり、それぞれ一次産業の所得アップを目指して、これから大いに声を上げるということをしていかなくちゃいけない、二次産業に負けるようなことではいけない、
雇用対策だとか工業出荷額ということだけではいけないということを深く認識したようなことでありまして、今回の
予算等も含めながら、これからはもっと積極的な対応をしていかなくちゃいけないということを心しておるようなことであります。
まず、私
どもの業としては、第一次産業を、どうしても、世界の機構でありますWTOというものと向き合って、それぞれ所得を上げていかなくちゃならないということになると、これは永久の
課題で、とてもじゃない、所得を
向上させる、目的の所得までいくということはあり得ないんじゃないかというように思っております。WTOは私
どもは手が届きませんので、どうか
先生方に特段の対応を
お願い申し上げ、とりわけ農林水産業、WTOに向き合えば何にもならないような存在であると思っておりますので、特段のお力を賜りたいと思います。
それから、農業基本法の改正が出てきました。
平成十一年に農業の多面的機能というのが非常に認められて、ヨーロッパ風に所得
対策ももっとしなきゃいけないというようなことが出てきましたが、
平成十七年から、農林省も、
農家経営所得安定
対策と農地、水、環境
対策と、農政の二大柱として始まったようでありますが、私
どもは、やはり、米、麦、大豆等をセットにしたような所定の、ゲタ、ナラシとか言っておるような所得
対策の中で、私は、必ずしも
大分県では効果を上げたとは思っておりません。
それよりも、むしろ、私は思っておりませんでしたけれ
ども、農地、水、環境
対策等については、言うならば、集落が一緒に
取り組み、
農家と一緒になって水路を
整備したり草刈りをしたり農道の
整備をしたり、集落の環境
向上のためにしておる。そして、
農家の皆さんが大変喜んでおる。本来、
農家の皆さんがしなくてはならないことでありますが、国と県、市町村から一反で四千四百円という金をもらっておりますが、十アールで四千四百円なんというようなものは、土地改良区等が水田等を維持管理していく、一反から出す年間の費用でありますが、それだって四千円もない、三千何百円でしかないのでありますが、四千四百円というような高い金をいただきながら、
農家の
負担はなくて、大変喜ばれながら、本来、
農家が全部出してやるべきことではないかと思うのでありますが、それを考えてみると、これこそまさに
農家の所得
対策じゃないかというように思われてなりません。
今、農業の条件不利
地域で中山間地の所得補償というのがありますが、国費が二百二、三十億組んでおります。所得補償
対策としてはこういうものしかないが、私は、やはり農業というのは、世界のどの国もそうでありましょうが、もっともっと所得補償型の
事業というのを起こしていただきたいということを切に
お願いしとう存じます。
そして、喜ばれております農地、水、環境
対策等は、百年後の農業のために農地を残したい、そのために、全国の農振農用地の半分、
大分県でも半分でありますが、半分の農振農用地をこの農地、水、環境
対策に入れてほしい、こう願っておるんですが、国は諸般のことで全国の半分だと言っていますが、半分なんて言わずに、農地の勢いはそんな勢いじゃなく減っておりますので、日本の農振全面積を、百年後の農業のために、ぜひひとつ対応していただきたいと切に思っております。
生きた農地の
対策がこれだと思いますし、今また耕作放棄地がたくさん出てきましたので、耕作放棄地
対策、これもまた非常に大切じゃないかと思うのでありますが、そういう
対策も出てきております。これも結構な金を、国費だけで三百五十億円近くの金を持っております。
そういうようなことで、さっきも言いました農地、水は二百五十億ぐらいでありましょう。耕作放棄地
対策でも三百五十億から四百億円近くのことをしようとしておりますが、これはまた、
一つひっくり返して言えば、耕作放棄地というのは死にかかった農地
対策でありますが、さっき申しました農地、水は、生きた農地に対して、百年後に絶対残すぞという試みで進めておる
事業でありますので、私は、これを見逃しなく
充実して、一〇〇%の農地を百年後の農業のために
確保しておいてくださいという思いであります。
現在の
課題は、私が思うに、果たして農業というのは残るのか、今のような農地の整理方のスピードでは到底そんなことはできないと。一方で耕作放棄地は拡大しておる。
大分県の中でも、公的に言われるところの農振耕地は六万六千あるんですけれ
ども、そのうち八千六百町歩近くが耕作放棄地、実に一三%ですね。全国でも、四百五十万ヘクタールの中から見ると、耕作放棄地は三十八万ですから九%ですけれ
ども、
大分県がいかに、私
どもがちょっと注意が散漫であったかということを思わせるのであります。一三%といえば、四、五%も高いというような
大分県のこの実態です。これを、私
どもはやはり深く反省し、対応していかなくちゃならないと思っております。
これから先五十年もすれば、わずかに農地が残り、それを六十五歳以上の人がトラクターを動かすけれ
ども、これはあと五年も十年もいけるものじゃありません。そして、終わればもうこれで終わりなのであります。後は続いていませんので終わりであります。
このようなことを考えますと、やはり農業は農地ですから、農地をいかに守るかということについて御考慮願いたい。それには、農地法や農業
委員会法というのもあるのでありますが、農地は所有より利用ということを今ごろ言い出し始めましたが、取得するにしても転用するにしても、農地法三条、五条では強そうで弱い、もっと規制できぬのかということです。
私
どもは今度初めて感じましたが、農振
地域内の農地はもう一切転用させぬと。それでも、原則病院だとか小学校は転用できたのでありますが、もうそれもさせぬということを聞いて、これができるのならば、何でもっと早くたがをはめて、農振
地域内は一切転用させないというぐらいの決意でできなかったのかという気がしてなりません。圃場
整備して八年経過したら転用していいと。農振
地域内に県道や国道が通れば、その両側百五十メートル、合わせて三百メートルの農地は転用、農振
地域なら農振
地域を転用さえすれば、理屈があれば開放して結構だ、なくなって結構だということであります。こういうことでは、農地がこのようにスピードが速くなくなっていくのは当然のことだと思うんです。
ましてや市町村においても、
農家から出ていけばすぐに農振から外してくださいと。そうすると、すぐに農業
委員会に出ていきますが、農業
委員にしたって、それぞれの人たちでありますが、市町村において出てきたものを、そう安易にだめだというようなことはなかなか言えない。そういう中で、どんどん通過してくる。
すると、県に上がってきます。そうすると、県から農業
会議にかかる。私はその農業
会議の
委員でありますから、いつも出ておるのでありますけれ
ども、ここで私が感ずるのは、やはり農地が減るはずだと。これは否決していいんじゃないか、市町村はいいと言ったかもしらぬけれ
ども、我々のところではこれは否決すべきじゃないかというのが、やはりなかなかできそうでできないということですね。
この現実の中から、かくして農地はどんどんと減少していくことだと思っております。ぜひひとつこの辺についてもお考えをお聞き願いたい。
所有より利用というけれ
ども、今の動きを見ておりますと、利用より転用だと。今、一生懸命所有より利用ということを言っていますが、まさにそうしてほしいと思うのであります。市町村の農業
委員会にしても、それぞれ有志から、いや、これは何とかして転用させてくれぬかというような
意見があれば、市町村長さん以下、なかなかそう簡単に反対はできないということですね。こういうことも、やはりもっとたががあっていいのではないかということを思います。それは、余りにも農地の減り方が多いということから、そう思うのであります。ぜひひとつ御検討していただきたいものだなとかねて思っておりました。
それから、荒廃地、荒廃耕地の再生利用
対策、これは
公共事業等で今度は三百五十億円近くかけておるようでありますが、大変いいことであります。やらなくちゃならぬことでありますが、複雑に絡みついた農地法の手続、農地法が絡んだ土地でありますので、それをひもといて
事業に結びつけていく、それを団地化していくなんということは、できそうでできない問題で、大変苦労するに相違ないと思うのであります。しかし、しなくちゃならないことではないかと思っております。
それとあと、今、膨大な農地と水利施設等ありますが、これはやはり国民的にも、緑あり、いやされた農村空間というようなことからも私は残さなければならないと。それを残すことについて、今度、ストックマネジメントとかいいまして、膨大な施設について、これを順次改修して更新していくという
制度ができて、
予算がついてやっておりますけれ
ども、こういう
制度は非常に好ましいことだと思って、ぜひ続けて対応していただきたい、このように思うわけであります。
それから、
最後に減反をちょっと申しますと、減反は急にやめてしまえといったって、これから作付が全部始まるなんというようなことは私は考えられない。四十年間の私
どもの知恵は何だったのかということを言わなくてはなりませんが、しかし、結果としては、やはりすべて農業、農村を失ってしまうのではないか。今日、耕作放棄地を見れば大方想像ができることであります。農地に米を植えていいということになっていれば、植えつけ過多になり、過剰米ができ、米価は下落し、
農家所得は減っていく、もうこれはわかり切ったことであります。
そうすると、このようなことをやれば、中小規模
農家というのは脱落していきますし、集落機能というのは低下する。荒廃地をふやし、鳥獣害が拡大する。用水路等は環境劣化してしまう。こういう中で、大変失うんじゃないかと思います。しかし、やはりすばらしい農地が荒廃しているわけでありますから、しかるべき農地は何とか復元させるような努力をして、幾らかでも返すということは、やはり農業は農地ですから、そしてまた、日本の農業は米です。返そうとしている農地は大抵水の設備がついたようなところでありますので、ぜひ生産力の高い農地に対しては特段何か御配慮をしていただきたいと思っております。
農家も、定住したいため、減反の中で生きておる。そして、減反を廃止して、米価は下がっても上がることはないと思うのでありますが、農地、農村社会がつぶれるとの思いであります。WTOが存在する限り、農業、農村を守るためには、減反策は日本農業の宿命じゃないかなと私は思っております。
ちょっとまだ幾つか問題を残しましたけれ
ども、私の時間をオーバーしてしまって恐縮に存じます。
ありがとうございました。