○亀井(久)議員 あの当時のことを考えてみますと、経済財政
政策で思い切った需要
拡大策をとらなかった、そのツケを金融
政策にゆだねてしまっていたと思うんですね。もちろん、不良債権の処理は必要だったと思います。それは見事にやり遂げた。そのことは評価しておりますけれ
ども、資金需要がないのに幾ら金融機能を強化しても全然
意味がないですね。
あのとき、本来からいえば金融
政策の中心というのは金利
政策ですけれ
ども、金利
政策が全然機能しないような
状況でずっと推移してしまった。どうしようもないから、世界に例のない金融緩和兼量的緩和ということで、日銀の当座預金残高を三十兆から三十五兆に維持するということをずっとやって、二〇〇六年までそれを続けましたね。だけれ
ども、日銀の当座預金残高、そこにじゃぶじゃぶ
お金があったって、それが実際に貸し出しに回っていかなければ何の
意味もないわけですね。だから、資金需要をつくるということをやらなくてはいけない。それは、まさに経済財政
政策でやっていく。民に力がないときは官が引っ張るのは当たり前だと私は思うんですね。
ですから、財政というのは、難しく考えれば難しいんですけれ
ども、要するに家計のやりくりと同じで、入るをはかって出るを制するということだと思いますけれ
ども、出るを制することだけをやって入るをはかることをやらないんだから、どんどん縮小してしまう。
ですから、GDPがこの十年全く大きくなっていないですね。税収は逆に減ってきている。また今度、歳入欠陥だという話になってきているわけですけれ
ども、税収は伸びない。それで、GDPが大きくなっていないけれ
ども、OECD参加国みんな伸びてきましたから、ここ十年で平均して一・五、六倍ぐらいになっていますから、どんどん差がついてしまう。だから、一人当たり
国民所得が、一九九四年には世界で一位まで行ったのに、今、どんどん落ちてしまって、一昨年が十八位、昨年は十九番というところまで落ちて、先進七カ国の中では最下位ですね。ですから、強いもの、大きいものを強め大きくすれば全体がよくなるでしょうと言ったのに、全然全体はよくなっていないですよ。
しかも、
日本は貿易立国でやってきた、物づくりでやってきた。ところが、その貿易立国の拠点になる
一つの空港とか港湾とか、これの整備が十分でないでしょう。ですから、私、船会社にいたから港湾に非常に関心を持っているんですけれ
ども、今、世界のコンテナの荷扱い量の推移を見ていますと、かつて私が船会社におったころには、神戸港、横浜港というのは世界を代表する港湾の
一つだったですよ。ところが今は、シンガポール、上海、香港、シンセン、釜山、ロッテルダム、ドバイ、それに今度は台湾の高雄、それからハンブルク、青島。そうすると、ロッテルダムとドバイとハンブルクを除くと、あとの七つは全部東アジアの国々の港でしょう。そこがどんどん活性化して、
日本はまさにアジアの物流の拠点国じゃなくなっているわけですよ。
そういうところに戦略的、集中的な投資をしなければ、
日本の力というものは発揮されない。だから、そういうことに対する財政出動というものを私は恐れちゃいかぬと思うんですよ。それが、財政のことばかり考えてしまうから思い切ったことができない。やはり、総合的な国力をいかにして強めるかということを考えるべきだと思うんです。
そこで、私、
総理がスピード、スピードということを言われるんですけれ
ども、小渕優子
大臣の御尊父の小渕
内閣、これは一九九八年、今から十一年前ですけれ
ども、あのときの大変な
状況を打開するためにとられた行動というのは、実に私は素早かったと思うんですよ。
あれは、
平成十年の十一月十六日に二十四兆円の緊急経済対策を打ち出した。その中に六兆円の減税というものも含まれていましたけれ
ども。それを打ち出してすぐ臨時国会を召集して、十二月の十一日にはもうとにかく衆参両院で成立させちゃったんですね。そのときに、またもう
一つ大事なことは、財政構造改革を凍結しているんですよ。だから、明らかに路線を転換しますよということをメッセージとして出して、その上で思い切ったことをやっておられるわけです。
だから私は、今、
アメリカを見ておりましても、先般、金融システム安定化法というのが一たん下院でもって否決された、九月二十九日。ところが、素早くブッシュさんも動いて、マケインさんとオバマさんと二人に話をして、二人が議会対策を一緒に力を合わせてやって、十月一日には上院、十月三日には下院を通してしまったというあの素早さ、そこが私は大事なんだと思うんですよ。
ですから、補正を昨年内にお出しになるべきだ、なるべきだと私
ども強く言ったのは、やはりそういうスピード感のあるやり方が、
国民にまた本気でこれはやるんだなという安心感を与えるということにつながってくると思いますので、そのことは大いに見習っていただきたいというように思います。
そしてもう
一つ、これから、あの
アメリカの金融システム安定化法を見ましても、七千億ドルその枠を用意したということで、言ってみれば、公的資金を金融機関にも注入していこうという
日本に学ぶようなやり方もあるわけですけれ
ども、その資金は一体どこにあるのかといったら、
アメリカは国債の増発しかないですよね。だから、七千億ドル、国債の枠を大きくふやしているわけでしょう。その国債をそれでは
アメリカの国内で引き受ける力が今
アメリカの金融機関にありますか。これはないでしょう。だから、いずれ、
日本にどんと
アメリカ国債を引き受けろ、また、基軸通貨としてのドルを維持するために
日本に買い支えてくれという要請が来る、これも私は目に見えているように思うんです。
そういうときに、とにかく
日本はまだ力がある。どこにあるかといえば、千六百兆の
個人金融資産がまだあるわけですよ。だから、
日本というのは海外に金を貸している国なんですね。借りている国じゃないでしょう。国債だってちゃんと国内で消化しているわけですから。国債というのは、要するに
政府にとっては借金だけれ
ども、それを引き受けている民間の方にすれば最良の金融資産なわけですから、官から民へ移動しているというだけ。国内で回っている限りにおいてはそんなに心配する必要はない。
ですから、どっちみちこの
お金が使わされるんだから、
日本の
国民生活のために、国益のためにまずこれを使うんだ、そういう
政策を思い切ってお出しになるべきだと思います。ですから、少なくとも骨太二〇〇六という、社会保障関係費を一兆一千億切るというようなこととか、あるいは公共事業費をどんどん切っていくとか、ああいうようなことにもう歯どめをかけて、それと、構造改革路線と決別をするんだというその宣言をまず出されて、それから思い切っておやりになるべきだと思いますけれ
ども、いかがですか。