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鳩山由紀夫君
民主党幹事長の
鳩山由紀夫です。
平成二十一年度の
補正予算について、
麻生総理に質問をいたします。(拍手)
冒頭、
豚インフルエンザ対策でありますが、本日、
WHOが初めて
警戒レベルを4に引き上げました。
民主党も全力を挙げて
対策に
取り組みます。
政府も、
国民の安全を第一に、迅速的確な
情報提供は言うまでもありませんが、
渡航者対策、
ワクチン対策も含め、
スピード感を持って万全を期すことを強く要請をいたします。
さて、
麻生総理に申し上げます。
総理の言葉をおかりすれば、今度の
補正は四段目の
ロケットとなります。しかし、昨年九月の第一次
補正の
一段目は飛ばずに失敗、二段目の、ことし一月の第二次
補正はタイミングがおくれて墜落、三月末に成立したばかりの今年度当初
予算は
燃料切れで目標に届かず、そして今回の
補正予算は
方向性が狂って暴発、これが、
総理の景気・
経済対策に対する私の率直な感想であります。
なぜ
政府の
景気対策がこんなにきかないのでしょうか。それは、そもそも
自公連立内閣の対応の失敗によって
経済危機を加速させたという認識や反省がないからであり、処方せんを完全に間違えているからであります。
では、この
補正予算がいかに
でたらめなものか、一説には、ゴールキーパーなしの
サッカーゲームだなどとやゆされていますが、具体的にお示しをいたします。
一口に言えば、百年に一度の危機といいながら、
対策は百年続いている
官僚機構に任せっ切り、数十年続いている、
族議員と官僚の
既得権である税金の
無駄遣いを繰り返し、膨大な借金で
歳出規模を膨らませて、あとは
消費税の増税で
国民に負担を押しつけるという無責任なものであります。
その
でたらめぶりの第一の特徴は、安心も安定も得られないことであります。
例えば、三歳から五歳の
お子さんのいる家庭に限り、一回限り三万六千円を支給するという
子育て応援特別手当であります。たった一回お金を配ることで、
子育て支援、
少子化対策になると本気で思っておられるのでしょうか。対象から外れる年齢の
お子さんのいる家庭は
支援する必要はないとでも言うのでしょうか。何の哲学もないこのばらまきも、結局は
公明党対策の
党利党略と言うのでしょうか。はっきり
お答えを願いたい。
介護労働者の
待遇改善も、
民主党の指摘によって、慌てて月一万五千円の
賃金アップを目指すと言いますが、これも三年間だけのものであります。それでは、三年後には賃金を引き下げるのですか。はっきり
お答えを願います。
医師の
確保も、五年間だけの
期間限定の事業であります。五年たてば、今の
医師不足が解消し、
救急医療、
小児科、産婦人科、
地域医療は
対策を講じる必要がなくなり、万全というのが
政府の
公式見解でありますか。この
予算で医療をどうしたいのか、明確にお示しください。
雇用対策も同じであります。
手当つきの
職業訓練制度も、基金の期限をもって終わりであります。
雇用の
セーフティーネットの体系をどう築くのか、明快に説明をしてください。
民主党の政策はすべて恒久的なものでありますが、
政府・与党が後から一部を猿まねした政策は、どれも臨時的、その
場しのぎの場当たりであり、
民主党案とは全く似て非なるものであります。
今、
派遣契約を中途解約される
派遣切り、学生が
採用内定を取り消される
内定切り、
育児休業を理由に解雇などの
不利益扱いを受ける
育休切り、要
介護認定基準の変更により受けられる
介護サービスが減らされる
介護切り、この四つの
切り捨てが行われようとしています。
弱い立場の人を次々と
切り捨て、官僚の
天下りや
族議員の利権を守り、
借金漬けでこの国をつぶすのが
麻生内閣、
自公政権なんでしょうか。
国民に明快に説明をしてください。
また、五千万件の消えた年金のうち、千三十万人はほぼ持ち主が特定されました。既に、
国民の十人に一人の
年金記録が間違っていたことになります。とんでもないことでありますが、ただ、だれ一人処分もされていないのはなぜですか。なぜ、
民主党の主張するように、
国家プロジェクトで一気に解決を図らないのでしょうか。
また、
社保庁は、ついに百十八万人の無
年金者の存在をようやく認めましたが、既に、千人を超える方々が、
社保庁のミスなどで、本当は年金を受給できたのに無年金とされていることが判明をいたしました。しかし、実態はまだやみの中であります。早く
実態調査をすべきでありますが、いかがでしょうか。年金問題を放置しておいて、安心も安定もあるはずがないじゃありませんか。
一回こっきりの
定額給付金と追加の
子育て手当、恒久的な
無料化ではなく、ETCをつけた自家用車だけの二年限りの
高速道路料金の引き下げ、三年間だけの
求職者支援、これで本当に
国民が安心できるとお考えなのですか。その先を考えれば、今よりももっと不安になるのは当然ではありませんか。
第二の
でたらめは、財政と増税の問題です。
官僚に
頼り切りの
麻生総理は、現在の
予算に潜む税金の
無駄遣いには手をつける意思もありません。
補正の規模は十兆円と伺っていましたが、翌日には十五兆。役人からは、上司から何でもつけてやるから持ってこいと言われ、持っていったら
予算づけされたとの声が聞こえてまいりました。こんなばかげた話を許していいんですか、
皆さん。
例えば、アニメの殿堂。
総理のアニメ好きは存じておりますが、なぜ、百十七億円も投じて
巨大国営漫画喫茶をつくり、
独立行政法人を焼け太りさせる必要があるんでしょうか。
また、一台約七十万円もする
電子黒板を全
小中学校に購入させる必要があるのでしょうか。ほとんどの
小中学校にもう既に
コンピューター室があるにもかかわらず、なぜ二百万台のパソコンを新たに購入させるのでしょうか。
さらには、各都道府県に
産学官連携と称して十五億円もの箱物をつくる
予算に六百九十五億円。既に同様の箱物は各地に存在をしていることは御案内のとおりです。これも
天下り機構への
補助金ではありませんか。
こんな古い
供給者の論理に立った箱物やハードはやめて、年金や医療や
母子世帯など、人を大切にする
予算に変えていこうではありませんか。
民主党の調査によって、
公益法人など約四千七百の法人に約二万六千人もの
国家公務員が
天下り、これらの団体に約十二兆六千億円もの莫大な税金が流されていることがわかりました。
随意契約は何と五兆七千億円にもなります。
来年から、
政府は、
官民人材交流センター、すなわち
天下りバンクで一元的に官僚の
天下りを進めるといいます。
こんな税金の
無駄遣いをそのまま放置して、なぜ国債を発行するのか、なぜ
消費税率を上げるのか。
自民党、
公明党そして官僚の
皆さん以外には、
国民だれ一人として理解できるはずはありません。借金を重ねようとしている
麻生総理は、この場で
国民に説明をする責任があります。
私
たち民主党は、
ひもつき補助金、
天下り、
特別会計、
官製談合、
随意契約といった仕組み化された
無駄遣いを一掃してまいります。
今回の
補正予算の結果、今年度の
一般会計の規模は百兆円を超えると言われています。来年も、四十兆円をはるかに超える借金を続けるのでしょうか。税収に応じた水準まで戻すとすれば、国の支出を十兆円以上削減し、極めて深刻な
デフレ予算となります。
さらに最悪のシナリオが
消費税増税であります。
国債償還にも財源が要るとなれば、
社会保障財源の
確保とあわせて二〇一一年に引き上げると
総理が言う
消費税の税率は何%になるんでしょうか。税金の
無駄遣いによる
財政垂れ流しを
消費税増税で賄うのでしょうか。
そして、地方はどうなるのでしょうか。臨時の
交付金をもらい、追加の
事業費の
裏負担分をことしは九割まで国が面倒を見るとしても、来年はどうなるんですか。国の財政が破綻すれば、地方は連鎖倒産するしかありません。
地方財政の展望を示してください。
加えて、平成二十一年度当初
予算は四十六兆円の税収が前提ですが、昨日、
政府自身が、今年度の
成長率が
政府の当初見込みと異なりマイナス三・三%へと落ち込むことを発表し、それによって税収も大幅に減ることが予想されております。
総理は、国債の増発がさらに必要なことを隠して選挙をやろうとしているんじゃありませんか。
税収入の
落ち込みは、
地方税収と
交付税収入の
落ち込みも意味するわけであります。
麻生内閣、
自公政権は、二重三重の粉飾を行おうとしています。この事実を
国民に何と説明するんでしょうか。
今年度、来年度、
再来年度の財政の展望と、
消費税増税の規模と使い道をはっきり
国民に示してください。
今実施すべき
経済対策は、家計が自由に使えるお金をふやした上で、
セーフティーネットを抜本的に強化して、
国民が安心してお金を使える環境を整え、内需を拡大し、新しい産業、安定した
雇用の創出に結びつけることであります。
民主党は、
政府に先んじて、四月八日に
経済対策を発表いたしました。
具体的には、年三十一万二千円の
子ども手当の支給、二兆五千億円の減税となる
道路特定財源の
暫定税率廃止などで家計の可
処分所得をふやし、そして、
介護労働者の
待遇改善や
医師不足に対する
抜本対策、
就職支援策などを恒久的な政策として実施し、新しい産業、
雇用を創出いたします。高校の
無償化、
奨学金の拡充など、あすの日本を支える
子供たちの
教育環境の充実を具体的に進めてまいります。
民主党は、これらの
対策をマニフェストで示した
工程表を前倒しするとともに、追加の
対策を加えて行います。したがって、短期的には
景気対策にも効果を発揮し、中期的にも膨大な
財政負担とはなりません。その財源は、安易に借金に依存することなく、税金の
無駄遣いを徹底的に根絶し、
特別会計、
独立行政法人や
公益法人に眠る
埋蔵金などを活用いたします。だから、
民主党は、
政権一期目に
消費税の増税などは全く必要ないと申し上げているのであります。
麻生自公政権の
経済対策は、
責任感がある者ならば到底賛成できる内容ではなく、この四段
ロケットで経済と生活がよくなるなどというのは真っ赤なうそであります。
ここで一つだけ、北方領土に関する
総理の
基本姿勢を伺わなければなりません。
谷内政府代表が、私は三・五島でもいいではないかと考えている、面積を折半すると実質は四島返還になると発言したと報道されました。国益にかかわる事柄での誤解を招く発言は取り返しがつかず、
外交官としてまことに失格であります。
しかし、実は
総理も、
外相時代の二〇〇六年、択捉島の二五%を残りの三島にくっつけるとちょうどフィフティー・フィフティーくらいの比率になると国会で答弁をし、また、ことし二月の日
ロ首脳会談の後に、ロシアは二島、日本は四島では進展をしないとして、新たな独創的で型にはまらないアプローチを確認したと言われました。
すなわち、
谷内政府代表の発言の背景には、
総理の意向があることは明々白々であります。来月には
プーチン首相が来日いたしますが、先に譲歩の姿を見せたら、交渉は不利になるのは当たり前じゃありませんか。
谷内氏の処分を含めて、三・五島で
平和条約を結ぶことはあり得るのかあり得ないのか、
総理の明確な答弁を求めてまいります。
さて、
政権交代目前に
小沢代表の秘書が逮捕され、
政権交代を求める多くの
国民の
皆さんに心配をおかけしております。
しかし、この問題については、
検察OBですら、
政治資金規正法に違反していないのではないか、これを違反とするなら
自民党の場合はどうなのかなど、今回の捜査には大きな疑問符が提起されているのであります。
メディアはさまざまな情報を、
弁護団の意向も聞かずに、検察の意向に沿った形で垂れ流し続けました。その中には重大な誤報も含まれておりました。
総務省、法務省は、法の解釈と運用の基準について何も語らず逃げ回り、検察も口をつぐんだままであります。
不思議なことに、与党である
自民党の
違反例については、検察は立ちすくんでいます。あたかも、
漆間官房副長官が
自民党には捜査が及ばないと明言したとおりになっているようにも思います。
検察の判断と対応は、法令に違反しているか否かではなく、そこに起訴事実以外の政治的な
価値判断が存在するとの指摘があります。しかし、
法治国家、
罪刑法定主義に照らして、検察に政治的な
価値判断に基づく
裁量権を認めてよいのか、立法府としても考えなければならない重大な問題であります。
政治家として、次の
政権を担う野党のリーダーとして、
小沢代表、
民主党は当然、全国を回りながら、
国民の
皆さんと対話をする中でその
説明責任を果たしてまいります。
しかし、法令の解釈と運用、検察の
あり方などは、すべての
政治家、
政治団体に共通の問題が投げかけられているのであります。
民主党は、
民主政治を守るためにも、今後ともこの問題を提起してまいります。
そして、
民主党は、現在、企業・団体による
政治献金と
パーティー券購入の
全面禁止のための
法改正を今国会で実現するべく準備を進めているところであります。
また、
国民に開かれた政治を推進するためにも、与野党で知恵を出し合い、親族間で
資金管理団体や選挙区を世襲し、引き継ぐようなことはやめるべきだと思いますが、
自民党総裁としての
麻生総理の見解を伺います。
総理は、
民主党がこの
補正予算の成立に抵抗するなら解散も辞さずとの見解と伺いました。
民主党は、この
補正予算の成立に断固として反対を貫き、対案となる政策を提示してしっかりと
徹底審議を追求してまいります。
総理は、どうやら
公明党と密約をして、解散を七月の
都議選の後に回し、七月のサミットに行くことを目標とされているようでありますが、選挙から逃げ回る姿を見続けるのは
国民の一人として情けない限りであります。総選挙をやろうじゃありませんか。昨年九月の腰砕けを延々と
任期満了まで繰り返すのですか。この場ではっきり
国民に示してください。
麻生総理も、長らく
政権を担った
自民党の総裁として、
政党政治を担う矜持をお持ちになっておられるのなら、速やかに
国民の審判を受け、
自民党の政治を終わらせるよう強く勧告申し上げ、私の質問を終わります。
皆さん、御清聴ありがとうございました。(拍手)
〔
内閣総理大臣麻生太郎君登壇〕