○
山口壯君
民主党の
山口壯です。
民主党・
無所属クラブを代表して、
政府提出の
海賊対処法案について
質問します。(
拍手)
ソマリア沖の
海賊事案に対しては、現在、
我が国も含めて
各国が
軍艦等を派遣し、多
国籍の
オペレーションが行われていますが、にもかかわらず、先週六隻の船が
海賊にハイジャックされ、
海賊行為がとまらないことを受けて、
世界の
専門家の間では、幾つかの
問題点が指摘されつつあります。
第一に、現在の多
国籍の
オペレーションは、基本的には寄ってくる
海賊を追っ払うだけの対症療法であり、
海賊天国と化した
ソマリアそのものへの
対策になっていないという
問題点。直接に問題の根源を絶たないと、
海上の作戦だけでは
海賊行為はとまらないと見られるに至っています。
そして第二に、
海賊の出没する
地域が、多
国籍の
オペレーションを避けるように変化しており、
アデン湾よりずっと南、ケニア沖においてもハイジャックが起こっていますが、そこまでは今の
オペレーションではカバーできないという
問題点。さらに、
軍艦は大体において警告射撃による
対応をするだけで、
海賊を捕まえることが少なく、捕まえた場合でも、彼らをいわばキャッチ・アンド・リリースしてしまっているのが現状です。
現在行われている
オペレーションのままでは、今後たとえ補強しても、それは問題の一部にふたをするにすぎないと見られるに至っています。
これらの点を踏まえ、
我が国は
海賊問題にどのように
対処すべきでしょうか。
今回の
政府提出の
法案は、その第五条で、「
海賊行為への
対処は、」「
海上保安庁がこれに必要な
措置を
実施するものとする。」とし、第一義的には
海上保安庁が
対処することになっているように読めます。
ソマリア沖における
海賊行為は、
犯罪案件と呼ばれるものであり、軍事的
脅威のたぐいではないことについて、国際的な見方は一致しています。
犯罪ですから、
海上警察たる
海上保安庁が主たる責任を担うという
考え方で正しいと思います。
麻生総理、今回の
法案において、
海賊対策は一義的には
海上保安庁の担当であるとの理解でよろしいでしょうか、御答弁ください。
ただし、これまでの
政府の
国会答弁等を聞く限り、まず
海上自衛隊派遣の結論ありきなのではないかとの印象を強く受けます。
今すぐの
対処のために、
政府はとりあえず
海上自衛隊を海警行動として出したわけですが、
海上警備行動ではもともと外国船を
保護することはできず、先日、護衛
対象外のシンガポールの船から助けてくれと言われて
不審船を追っ払った
オペレーションについても、人道的にはともかく、その法的根拠についてはすっきりしません。仮にも自衛隊を動かすことですから、
麻生総理、先日のシンガポール船にかかわる
オペレーションの法的根拠は何なのか、確認させてください。
今回の
法案は、この後、十年、二十年、三十年をカバーする恒久法として
考えているわけですから、
海賊問題を根絶しようとすることが大事であり、その観点から
海上保安庁第一義の
趣旨が徹底されるべきです。
にもかかわらず、
ソマリア沖での
海賊事案に対して、
海上保安庁は
巡視船派遣が困難と言い、その
理由として三つ、第一に
日本から遠いということ、第二に
海賊が重火器を持っている点、そして第三に
各国が
軍艦等で
対応していることに言及しますが、本当でしょうか。
まず、
ソマリアのような遠くまで行ける船がないとか、あるいは
海賊がロケットランチャーのような重火器で武装しているからとかの点については、
海上保安庁はプルトニウム運搬船護衛に使われる
世界最大の
巡視船「しきしま」を保有しています。
昨日、私は実際に「しきしま」に乗船、現物を拝見させてもらいました。
「しきしま」の大きさは「はたかぜ」型
護衛艦とほぼ同じであり、イージス艦「こんごう」型
護衛艦に迫るサイズです。航続距離も二万海里以上と非常に長く、ヨーロッパから
日本まで、オーストラリアを南回りで来ても寄港なしで航海することができます。さらに、
軍艦構造で、多数の水密区画に分けられているので、小さいミサイルやロケット砲に十分耐えられます。
そして、兵装は、三十五ミリ機関砲二基、二十ミリ機関砲二基に加え、
海上自衛隊の「はつゆき」型
護衛艦などでも
使用されている二次元対空レーダーも備えており、レーダー誘導、センサー誘導による精密な対空、対水上の射撃が可能で、テロリストや
海賊が
使用するであろう小型高速船、ヘリコプター、小型飛行機による攻撃を打ち砕くに十分な戦闘能力を備えています。加えて、大型のスーパーピューマヘリコプター、防弾仕様を二機搭載しており、周辺
海域の哨戒を行うこともできます。また、小銃などで武装している特別警護隊を乗船させて不測の事態に備えています。
「しきしま」一隻では
対応できないと言われますけれども、それならば、とりあえず
海上自衛隊の船を
海上保安庁に所管がえして補うという案はどうでしょうか。最新鋭艦である必要はありません。
海賊対処ができればいいのです。国有
財産法十二条は、関係大臣、この場合は、
防衛大臣、国土交通大臣及び
財務大臣が合意すればそれが可能であると定めています。
早く所管がえして一刻も早く船になれればいいと思いますが、操船についてもしも不安が残るのであれば、
海上保安官に加えて幾ばくかの
海上自衛官が
海上保安官の身分を併有、同乗すればいいわけです。
武器の
使用についても同様です。自衛隊法六十条二項と自衛隊法施行規則六十条一項五号により、それは可能です。このような案について、
麻生総理、いかがでしょうか。
しかし、そもそも、
法案が第一義的に
海賊行為への
対処は
海上保安庁が行うという
趣旨であるとすれば、それが可能になるよう、少なくとも中長期的には
海上保安庁に「しきしま」のような
軍艦構造の船を追加的に持たせることが本来必要なはずです。
麻生総理のお
考えをお聞かせください。
また、
各国が
軍艦で
対応しているから
日本の
海上保安庁が行けないというのは、説得力もないし、情けない。
海上保安庁の現場の海の男たちが、他の国が
軍艦を派遣しているから行きませんとは言わないと信じたい。
現に、
海上保安庁は、諸外国の海軍
軍艦との連携行動として、
海上阻止訓練という形で、
平成十五年にはオーストラリア主催のものに、
平成十六年には相模湾において、
平成十七年にはシンガポール主催のものに、
平成十九年には伊豆大島東方
海域において、そして
平成二十年にはニュージーランド主催のものに、それぞれ参加している実績があります。
さらに、
海上保安庁の船には軍関係の通信を聞ける設備がないということを挙げますが、ないのであれば、つければいい。また、将来、
海賊対処も念頭に置いて
巡視船を建造する際には、当然、そのような通信機器は初めから装備すべきです。
以上、三つの
理由は、どれもこじつけで無理があり、説得力を欠きます。
この
法案が、
海賊行為への
対処は第一義的には
海上保安庁が行うというのであれば、その
趣旨を実現すべく、もっと本気になるべきです。あるいは、それは見せかけだけで、まずは
海上自衛隊派遣の結論ありきだったのでしょうか。少なくとも、「しきしま」は
対処可能ですから、現地に赴くべきです。そして、一隻で足りないのであれば、とりあえず
海上自衛隊の船を所管がえしても補うなりして、本気で
海上保安庁で
対処しようとすべきです。
さて、
法案では、
我が国の
海賊対策は一義的には
海上保安庁の任務とされながら、
防衛大臣が特別の必要がある場合を判断して自衛隊を出すことが可能となっており、判断の主体が
海上保安庁にはなっていません。しかし、
海上保安庁による
対応が困難かどうかの判断は、
海上保安庁が行うべきです。そして、
海上保安庁の要請があって初めて自衛隊の派遣につながるという仕組みにしないと
法案の
趣旨にそぐわないと思いますが、いかがでしょうか。
麻生総理の答弁をお聞かせください。
なお、今回の
海賊対処法案において、万が一
海上自衛隊を派遣する場合の
国会の事前
承認の項目が欠落していますが、シビリアンコントロールの観点から、それは必要です。また、派遣
実施計画をつくり、派遣期限、派遣
地域を明確にした上、
国会に
報告すべきと
考えます。これらの点について、
麻生総理の答弁を求めます。
ソマリア沖の
海賊問題を完全に片づけるには、機能する
ソマリア政府、効果的な沿岸警備隊及び警察力が必要であり、これらが存在しないことこそが問題なのです。
ソマリアを含む
海賊発生
周辺諸国の国情安定
支援や沿岸警備
能力向上支援なしには、
海賊対策は上滑りに終わります。もし本気で
海賊対策を
考えるのであれば、
我が国としてそれら
支援を行っていく旨、今回の
海賊対処法においても明らかにすべきと
考えますが、
麻生総理の
所見をお聞かせください。
さらに、
我が国がリーダーシップをとって
海上警察の国際連携の枠組みの創設に奔走すべきです。それが海洋国家たる
我が国の重要な役割だと思います。ちなみに
民主党は、さきのテロ根絶
法案において、
政府に先駆けてこの旨を盛り込んでいました。そして、
日本は既にその先例を持っています。すなわち、東南アジアのマラッカ・シンガポール海峡の
海賊問題について、
海上保安庁は、
巡視船派遣のみならず、沿岸国の
海上保安機関との合同訓練等々により、
海賊発生件数を激減させています。また、
日本の主導により、アジア
海賊対策地域協力、ReCAAPが設立されました。
麻生総理、
ソマリア沖の
海賊問題についても、
海上警察の国際連携の国際的枠組みを
日本主導で創設すべきです。例えば、国連が、アフリカ諸国とともに、
ソマリア沿岸を監視するための沿岸警備隊を組織するとの構想が言われます。
日本は、現在、安保理の非常任理事国ですから、このような構想を
日本がイニシアチブをとって実現することが
海賊問題の解決にとって極めて重要と
考えます。
麻生総理の
所見を伺います。
また、
中曽根外務大臣、特に
ソマリアについて、その貧困問題等を含め、
政府はどのような
対策を
考えておられるのか、具体的にお知らせください。
他の西側諸国は、現下の厳しい経済
状況下、
海賊対策のための方策にお金をかけるつもりがないと言われ、それで
軍艦で
対処しているとの面もあります。他の国が
軍艦を出しているから
日本も出さなきゃとの感覚でこの
法案が出されていることに、中途半端さを感じます。今回の
法案が恒久法として提出されている割には、そこに、
海賊問題についての
根本的解決を目指す気迫が感じられません。
政府は、今とりあえずは緊急に
海上自衛隊の海警行動で
対応していますが、
海賊対処新法をつくる以上は、
海賊対策が
軍艦で
海賊を追っ払うだけの対症療法にとどまってはなりません。でなければ、
海賊事案が後を絶たない。どうしても、
海上警察による
海賊取り締まりの構図に持っていくべきです。
私は、
民主党を代表して、
海賊問題の
根本的解決を念頭に議論、提案させていただきました。役人はいろいろな
理由を挙げてできないと言うとしても、政治家は、道なきところに道を開き、不可能を可能に変えていくのが仕事です。
ソマリア沖に
海上保安庁は堂々と行くべきです。そのために必要な環境を整えるのが私たちの仕事です。
頑張りましょう。(
拍手)
〔
内閣総理大臣麻生太郎君
登壇〕