○田名部匡代君 民主党の田名部匡代でございます。
私は、民主党・
無所属クラブを代表いたしまして、質問をさせていただきます。
本日、この
消費者関連法案、
消費者にとって非常に重要な法案の
審議が始まるというときに、福田前総理がいらっしゃらないのは大変残念なことでありまして、どこまで本気だったのかなと疑問を持たざるを得ません。また、私からは、批判はするけれども質問はしないというようなことはいたしません。ぜひ、多くの
国民の皆様にどちらの法案がより
消費者のためになるのか御理解をいただけるように、しっかりと質問してまいりたいと思います。(
拍手)
ただいま
議題となりました
消費者庁関連三法案及び民主党
提出の
消費者権利院法案及び
消費者団体訴訟法案について質問いたします。
これまで
我が国の
消費者行政は、それぞれの
省庁が所管する業法にのっとって業者の育成と保護をし、その一方で、
規制権限を適切に行使すれば
消費者に
被害が発生しないという、いわば業者
規制の反射的に
消費者の
利益が守られてきました。
しかし、BSE問題を初め、汚染米に至るまで、食品の安全や、エレベーター
事故から建築偽装までの製品安全問題、そして振り込め詐欺や保険金不払いなどの
金融商品トラブルなど、近年の
事件を見ても明らかなように、もはや従来の業者
規制では賄い切れない問題に対し、
消費者の
利益を守る新しい
仕組みが求められています。
そもそも、
消費者行政問題の本質は、
商品やサービスの専門性の
高度化や複雑性による
事業者と
消費者間の
情報の
非対称性にあると考えます。つまり、
消費者が正確な
情報や知識を得られないままに
事業者と
消費契約を結んだ結果、不幸にして
消費トラブルや
被害が起こり、問題が発生した際、身近に
相談できる
解決の窓口がなく、
行政がその問題に迅速、公正に
対応し切れないまま
被害が拡大し、
行政が関与するしかないというところにあります。
近代の民主主義国家においては、そのような課題について
司法の場で
解決するというのが本来の姿です。しかし、
裁判所は、迅速性、専門性、廉価性において、
消費者の期待にこたえ切れていません。こういった問題を
解決するのに肝要なことは、以下の三つであると考えます。
第一に、
消費者を支援する身近な
相談、
解決の窓口を
整備して
被害を
防止し、早期に
被害救済をし得ること。第二に、
事業者に対する各
省庁の
権限が適切に行使されているかをチェックすること。そして、第三に、
被害が生じた際にその真相を調査し、正確な
原因と
情報を提供すること。その上で
事業者の行為についてルールを是正することです。
そこで、麻生総理に、これからの
消費者行政に何が必要なのか、伺いたいと思います。
例えば、中国製冷凍ギョーザ
事件、シンドラー社のエレベーター
事故、生保、損保各社の保険金の不払い問題、視力矯正手術でのレーシック感染
事件や円天
事件、これらはどのような
原因で起こり、
行政はどう対処したのか、そして、新しい
消費者行政ではどう
対応していくべきだとお考えなのか、総理と民主党
提案者に答弁を求めます。
次に、
消費者庁について
政府に伺います。
消費者政策の充実強化については、民主党が結党以来訴えてきたテーマであり、
政府がようやく重い腰を上げていただいたことは率直に評価します。
ただ、
政府提案の
消費者庁で何がよくなるのか全くわかりません。
消費者行政の司令塔をつくると言われますが、
中央に新しい役所を一つふやしたからといって、
地方の現場で
消費被害に迅速に
対応できる体制がつくれるとは考えられません。
一元化というかけ声で
国民、
消費者に幻想を与え、ただ単に
行政内部に新たな箱物をつくったのでは、
行政の肥大化、多事化を招くというそしりを免れないのではないでしょうか。あいまいな
権限移管と
行政執行
権限での二重
行政による見えない化で、
消費者被害が広がる懸念と、市場に対する過剰
規制を生み出すことを危惧しなければなりません。この点、総理より明確な答弁を求めます。
一方、民主党案ですが、
内閣の外に
消費者権利院という新
機関をつくるのは、これまでの発想では考えが及ばない組織のように見えます。この
内閣の外にある
消費者権利院とはどのような組織であり、またどのようにして
消費者の
利益に資するのか、具体的に答弁を求めます。
次に、
政府案における
内閣総理大臣と
消費者政策担当
大臣、
消費者庁長官というこの三者の
権限、
役割分担について伺います。
法案では、
内閣府の外局である
消費者庁のトップは
事務方の
消費者庁長官、そして、最終権者は
内閣府の長たる
内閣総理大臣となっています。では、この場合、
消費者政策担当
大臣はどのような
権限を持つのでしょうか。
政府案では、
消費者政策担当
大臣の位置づけや職務
内容があいまいで全くわかりません。総理、長官、そして担当
大臣のそれぞれの
役割分担について明確に
説明していただきたいと思います。
今回の
政府案で私が最も理解できないのは、二百近くあると言われる
消費者関連法のうち、
消費者庁が所管する
法律はわずか二十九本です。
政府案のベースである基本計画をまとめた
消費者行政推進
会議では、その二十九本以外に、四十三本の
法律について
消費者庁への移管を検討すべきとしていました。
例えば、薬害肝炎に関する薬事法、保険金の不払いに関する保険業法、悪質リフォームに絡む建築基準法、パロマガス湯沸かし器
事故に関するガス
事業法、ミートホープ食肉偽装
事件や船場吉兆
事件に関する不正競争
防止法、それに
金融商品取引法、流通食品毒物混入
防止法、振り込め詐欺
救済法、牛トレーサビリティー法、電気用品安全法など、近年の
国民的関心事となった大きな
消費者被害に対する
規制を
規定した
法律ばかりです。
消費者行政推進
会議で挙げられた、これらを含む四十三本の
法律がなぜ
消費者庁の所管にならなかったのか、なぜ今回の二十九本なのか、その一つずつについて理由を明確に答弁ください。
また、
消費者庁所管の二十九
法律にしても、その多くが原
省庁との共管になっています。
例えば、多重債務者問題を発端に、今回、
消費者行政問題に
政府が本腰を上げるきっかけとなった貸金業法については、金融庁との共管であり、
消費者庁は立入検査
権限がある一方、その処分に関しては金融庁から協議を受けてそれに意見を述べるというものにとどまっています。
これで本当に多重債務
被害を
防止できるのでしょうか。結局、司令塔機能など果たせないと考えます。与謝野金融担当
大臣の御見解をお伺いいたします。
そのほかにも、同じように、共管、再委託と記された
法律が、役所の内部
調整という、
国民、
消費者に見えないところで
調整がされ、結局、悪質業者への
対応が後手に回り
被害が拡大するという
事態を招くのではないかと懸念します。
野田大臣の答弁を求めます。
そして、問題なのは、
消費トラブルの中で半数以上を占めると予測される生保、損保、銀行、証券取引、
FXなどの
金融商品取引について、貸金業法を除くほか、
政府案には記述がないことです。また、肝炎や民間
機関の医療サービスについても、薬事法や医療関連法の諸問題に
消費者庁は関与できないのではないかということです。なぜ、金融庁そして
厚生労働省からこれら問題に関する
法律を
消費者庁に移管しなかったのか、与謝野
大臣及び野田
消費者担当大臣、それぞれから明確な答弁を求めます。
これら現行法の谷間に抜け落ちたいわゆる
すき間事案に関し、
政府案では、
消費者安全法案の中で、「
重大事故等」については総理
大臣が
法律に根拠がなくても
事業者等に対し緊急
措置をとれる
仕組みを抜け道的に
提案しています。しかし、この「
重大事故等」とは
一体どのような定義なのでしょうか。むしろ、私は、この緊急
措置を、一時の雰囲気に乗って
行政が
責任回避的に問題の真相究明もしないまま恣意的な運用をしてしまうのではないか、あるいは懈怠してしまうのではないかと大変懸念いたしますが、総理の答弁を求めます。
一方、昨年の通常
国会で改正され、本年四月から始まる
国民生活センターのADR機能についての記述が、民主党案にはありません。この点についてどう
対応するのでしょうか。
裁判所以外での身近な調停の場がなくなってしまうのではないか危惧されますが、この点について民主党
提案者に答弁を求めます。
次に、
消費者問題で最もかなめであると考える、
地方の
消費生活相談窓口についてお伺いいたします。
消費者の
相談、
解決の窓口である
消費生活センターを置く
地方行政の現場は、現在大変な惨状を示しています。
地方の現場ではそもそも
消費者トラブルへの
対応が十分であったとは言えず、それが今回の新組織をつくろうという原動力になっています。しかし、
地方行政の予算も年々削減され、一九九五年度に約二百億円だったものが二〇〇七年度では百八億円と約四六%も減少しています。
消費者行政のかなめである身近な
相談窓口がますます
消費者のニーズにこたえられない
状況に陥っているのです。
政府案では、
財政難から縮小されつつある
地方消費者行政について、根本的な
解決策が示されていません。今後三年間の
財政措置という中途半端なものではなく、恒久的な予算
措置で
地方消費者行政を立て直していこうという気があるのかないのか、総理に明快に答弁を求めます。
そして、
地方の現場で実際に業務を行っている
消費生活相談員の皆さんのほとんどが、法的
権限がないばかりか、嘱託、パートという身分で、年収約百五十万円程度という、いわば公的ワーキングプアという
状況で、多くの
相談に乗れる現状にないことを
政府は把握しているのでしょうか。総理は、専門的な
相談員を
確保、養成して、あまねく
消費者の
相談を受け、
解決を図っていくことの重要性を理解しているのでしょうか。現在のような
地方に丸投げの状態ではますますその機能は疲弊していくと考えますが、総理の御見解をお伺いいたします。
民主党は、
地域のことは
地域で決める分権国家の
実現を政策の柱とし、可能な限りすべての
事務事業の
権限と財源を基礎的自治体に移譲すべきだと主張しています。現在も、
地方の
消費者行政は自治
事務であり、民主党の考え方によれば、各自治体が独自性を発揮して
消費者行政に取り組むべきではないかと思います。
にもかかわらず、民主党案は、
中央の
消費者権利院のもと、各
都道府県に
地方権利局を置き、さらには、現在各自治体の非常勤職員として働いている
消費生活相談員を非常勤の国家公務員として位置づけるというものです。これでは
地方分権に逆行し、これも
行政の肥大化を招くのではないでしょうか。
地方分権の民主党がなぜこのような法案を
提出されたのか、答弁を求めます。
最後に、円天
事件のように、問題が報道され始めてから強制捜査までに一年以上かかり、その間に
悪徳業者の違法収益がほとんど散逸し、
消費者の
被害が回復されない
事件が後を絶ちません。
私も重要な課題であると認識していますが、この違法収益剥奪について、自民党の
消費者問題調査会、また
政府の
消費者行政推進
会議で当初から大々的に検討したと大言壮語していたにもかかわらず、今回の
政府案では全く触れられていません。これでは、
政府案は当初の計画から大幅に後退したものであると言わざるを得ませんし、そういった悪質な
被害に遭われた方を
救済することなどできません。どのようにそのことについてお考えなのか、円天
事件への
対応も含めて明確な答弁を求めます。
やみくもに
行政権限を拡大することは単なる焼け太りであり、私は、それがこれからの
消費者行政だとは全く考えていません。最初にも申し上げましたが、
消費者に身近なところで
被害救済、
防止を行うとともに、中立公正な立場から真相究明をし、公正な取引
社会をつくることであります。
政府の
消費者庁関連法案では、単なる
中央行政の肥大化を招くだけで、現在のさんざんたる
消費者行政の現場を変えることは不可能であります。また、私自身も、一人の
消費者の立場として考えてみても、
政府案では真の
消費者救済にはほど遠いということを申し上げ、この点について民主党がどのように考えているのか、答弁を求めまして、私の質問を終わります。
ありがとうございました。(
拍手)
〔
内閣総理大臣麻生太郎君
登壇〕