○井上義久君
公明党の井上義久です。
私は、
公明党を代表して、ただいま議題となりました
財政演説、すなわち
平成二十年度第二次
補正予算案に関連し、
総理に
質問します。(
拍手)
二〇〇九年、新しい年を迎えました。しかしながら、待ち受けているのは、まさに未曾有の
世界的な金融
危機と
世界同時
不況という厳しい
経済社会の
現実であります。特に、昨年九月以降の急激な経済の変調は、これまで経験したことのない激しさ、厳しさであると言わざるを得ません。
企業サイドでは、
世界的な需要の低迷による輸出の
減少、収支の
悪化、設備投資の抑制、減産に次ぐ減産、さらには倒産に至る
企業もふえるなど、マイナスのスパイラルに陥りつつあります。また、それが
家計サイドにも波及し、
雇用削減、リストラ、給与、所得の低迷、そして
消費の抑制へとつながってきています。特に
雇用は、
派遣社員の雇いどめ、新入社員の内定取り消し等、情勢は極めて深刻です。
政治は、この負の連鎖をどう食いとめていくのかという課題に真っ正面から向き合い、
国民の
生活を守るとの一点で、総力を挙げ、
対策を講じていかなければなりません。それができなければ
日本経済は沈没をする、そして
日本の将来に確かな展望を描くことはできないという強い
危機感と
責任感に立って行動を起こすべきであります。
政局よりはまず
国民の
生活を守り経済を立て直すことに、
政府はもとより、
国会が審議を通じて
国民の代表、国権の最高機関としての断固たる意思、
決意を示すことが重要であると確信をします。
麻生内閣は、既に成立、執行中の
平成二十年度第一次
補正予算、そして現在審議中の第二次
補正予算案、さらには
平成二十一年度
予算案を通じ、七十五兆円の
事業規模の
対策を打ち出し、いわゆる三段ロケットとして、切れ目のない
景気経済対策を講じようとしております。
麻生内閣の、
国民の
生活を守るという強い
姿勢を明確に示したものと受けとめております。
まずは冒頭、
総理に、
日本経済の置かれた現状をどのように認識し、そして
国民の
生活を守るためにどのような
決意で取り組もうとされているのか、お伺いをいたします。
次に、私は、現下の厳しい
経済状況を打開するためには、以下の三つの観点からの
対策が必要であると考えております。
第一は、
政府の国際協調も含めた機動的な金融
対策と日銀による適切な金融
政策、第二は、
財政出動や減税等を通じた内需拡大、第三は、
雇用対策や
中小企業支援、子育て
支援など万全なセーフティーネットの構築であります。
以下、特にセーフティーネットの構築、内需拡大策に絞って具体的に
質問をします。
まず初めに、
中小企業支援策について伺います。
世界経済の
悪化の
影響が真っ先に及ぶのは、
地域経済を支えている
中小企業です。売り上げの
減少、収益の圧迫、
資金繰りの
悪化と、厳しい
環境が次々と大きな津波となって押し寄せてきております。
地域経済はもとより、
日本の経済の屋台骨を支えているのは
中小企業であります。
雇用の安定を図る上でも、
中小企業の経営の安定が何よりも重要です。その命綱とも言えるのが、金融であります。
これまで、
政府・
与党は、
中小企業金融
対策を最重要課題に掲げ、
信用保証協会による緊急保証制度及び
日本政策金融公庫による
セーフティーネット貸し付けを実施し、売り上げ
減少や原材料高騰で苦境に立たされている
中小企業の
資金繰り支援に尽力してまいりました。
年の瀬はまず越えましたが、これからは年度末の金融繁忙期を迎えます。今後の
資金繰りを心配しておられる
中小企業経営者も多いことかと存じます。
そのためにも、第二次
補正予算案を速やかに成立させ、
生活対策に盛り込まれている二十兆円規模の緊急保証や
セーフティーネット貸し付けの金利引き下げ、商工中金による金融
危機対応業務の発動など貸付枠として十兆円規模を確保するなど、
中小企業金融の
円滑化にさらに万全を期すべきであります。
その一方で、第一次
補正予算における六兆円の
緊急信用保証枠は既に三分の二近くが利用されており、第二次
補正予算案が成立するまでの間、残りの保証枠を心配する向きもあります。この間も含め、
政府は万全の
対策を期すべきだと考えます。
総理の御
決意とその具体的な
対応策をお伺いします。
緊急保証に関しては、我が党の主張が実り、対象業種を機動的に追加し、現在は六百九十八業種、全
中小企業の約八割をカバーするに至っております。助かったという声も数多く寄せられておりますが、対象業種外でも、その後に業況が急激に
悪化した
中小企業も少なくありません。業種指定については、柔軟に
対応できる態勢をとるべきだと考えます。
また、市区町村窓口や
信用保証協会並びに金融機関など、与信作業につき
中小企業の立場に立ったきめ細かな窓口
対応の実施と既存債務の支払い条件の緩和について、各機関への適宜適切な指導を強く要請します。これらの
対応について
総理にお伺いします。
次に、
雇用対策について伺います。
我が国経済の低迷で、
国民が最も
影響を受けるのは
雇用です。何としても、
政府・
与党を挙げて
雇用情勢の
悪化を食いとめていかなくてはなりません。
雇用情勢は
景気動向におくれて
悪化する傾向があり、
景気の低迷が長引けば、
失業率は過去最悪の水準である五・五%を上回る
可能性もあります。
緊急雇用対策については、十一月二十五日に我が党の北側
幹事長が提案をし、それにこたえて
麻生総理が迅速に
政府・
与党に指示され、十二月五日には新たな
雇用対策が取りまとめられました。そして、十二月九日より必要な
対策が順次実施されております。
この際、留意しなければならないのは、これまでの
不況期と異なり、
雇用労働者の三人に一人が非正規
雇用であり、本年三月末までには約八万五千人が
失業するとの見通しもあります。ここに対する
最大限の配慮が重要です。
具体的には、雇いどめ
労働者に対する
給付面での配慮や
雇用保険の非
正規労働者への適用範囲の拡大など、セーフティーネットの強化が急務です。
また、
失業の増加を食いとめるため、
企業の
雇用維持努力に対する
支援が求められます。
特に、経営
環境の厳しい
中小企業に対し、
中小企業緊急
雇用安定助成金が創設されましたが、
中小企業が使いやすくすることを初め、さらなる拡充が必要です。
大手
企業についても、
雇用の
維持を図る
雇用調整助成金の対象を非
正規労働者にも拡充するなど、手を打つべきです。
また、
地方自治体が率先して職員の臨時採用を行うなど、緊急
雇用創出に努めていただくことも必要です。
そのために、
与党の強い主張で、
地域における
雇用安定の創出を図るふるさと
雇用再生特別
交付金、公共機関での
雇用創出を
支援する緊急
雇用創出事業を創設し、合わせて過去
最大の四千億円の基金を創設することとしております。
また、社員寮等に入居していた
労働者が職を失うと、
仕事とともに住居も失うことになります。これに対し、我が党の緊急要請で、廃止が決定されている
雇用促進住宅も含め活用されることになりましたが、さらに、
公務員宿舎の活用や一時的な緊急
措置として廃校の活用など、居住確保に
政府を挙げて取り組むべきです。
一方、今春の
就職に向けて内定をかち取り、希望に燃えていた学生が内定を取り消される、まことに心痛む
状況が出ております。
企業名の公表はもとより、特に当事者の学生への
支援を国を挙げて行うべきです。
総理の
雇用情勢に対する御認識と具体的
対策についてお伺いをいたします。
定額給付金について伺います。
定額給付金は、一人一万二千円、六十五歳以上と十八歳以下の方には二万円を
給付するというものであります。三月の
給付を目指して総務省の
定額給付金室を中心に準備を進めていますが、現下の
経済状況にかんがみ、
家計の
緊急支援策としての
効果を迅速に発現することが極めて重要です。できるだけ
早期の
給付が可能となるよう、本
補正予算案並びにその
財源の裏打ちとなる
財政投融資特会特例法案の
早期成立を期すべきであります。
また、
定額給付金については、実施方法等をめぐる
政府内の議論の過程で、
国民に誤解、困惑を与えてしまったことは事実であり、その点は率直に反省しつつ、適切に
対応するよう
政府に強く望むものであります。
定額給付金の
経済効果について、一部に、特にこれを政局に利用しようという
野党の中に、
効果がないとの誤った主張があります。しかし、
消費者物価はガソリンを初めとして落ちつきを取り戻しつつあるとはいえ、
生活必需品を中心とする物価高、さらには、その後の
実体経済の急激な低迷などによって、
家計は以前にも増して苦しいやりくりを強いられております。
給付が実行されれば、確実に
消費の下支えになることは間違いありません。
マクロ経済的な視点だけで
効果がないなどという批判は、
国民の
家計の実情を見ない机上の論であり、現場を知らない、
国民生活軽視以外の何物でもないことを
指摘しておきたいと思います。
また、将来の
増税がセットではないかとの批判もありますが、これも全くの見当外れです。そもそも
定額給付金は、臨時特例的な
措置として実施するものであり、将来の
税制抜本改革とは連動するものではありません。その
財源についても、
赤字国債に頼ることなく、
財政投融資特会の金利変動準備金を活用することにより捻出することとしているのであります。
以上の
指摘とあわせ、
定額給付金の
意義と
必要性、さらにその
経済効果について、
総理はどのようにお考えか、改めてお伺いします。
次に、
国民生活向上に資する税制と内需拡大策について伺います。
自民、公明の
与党は、
世界経済の混乱やそれに伴う国内経済の不振から
国民の
生活を守り、
景気回復を実現するとの断固たる
決意のもと、昨年末に税制改正大綱を取りまとめました。
国内の
景気下降局面の長期化、
深刻化のおそれが
指摘される中、今こそ、大胆な
景気刺激
効果や
国民生活の下支えとなる
対策が重要です。その点、今般の大綱は、国、
地方合わせて平年度ベースで一兆円を超える大型減税となり、こうした要請に十分こたえ得るものであると自負しております。
例えば、
中小企業等の軽減税率を
現行の二二%から一八%に二年間引き下げるとともに、欠損金の繰り戻し還付の復活で、赤字に陥った
中小企業の
資金繰りを支えることとしております。
住宅ローン減税については、
最大控除額を過去最高水準まで引き上げるとともに、中低所得者層に手厚く配慮する観点から、所得税から控除し切れない額は個人住民税からも控除できる制度を導入します。あわせて、従来の耐震改修に加え、省エネ・バリアフリー改修、さらには長期優良住宅についても、新たな投資減税を創設することとしております。
自動車
関係諸税につきましては、納税者の理解、
景気・
環境対策の観点から、自動車重量税、取得税について、
環境性能にすぐれた自動車の取得、保有に係る
負担を三年間免除、軽減する
措置を導入することとしております。
あわせて、我が党の強い主張により、税制の抜本改革時に複雑な自動車
関係諸税の簡素化を図り、
暫定税率についてもユーザーの
負担軽減を図ることを明記しました。
そのほか、これまでの減税
措置の延長、拡充を含めて考えれば、
景気、経済への大きな下支えになることは間違いありません。
このような
国民生活の向上と経済
活性化に直結する税制に加え、新たな産業や技術を生み出すための規制改革、
地域に必要な
公共事業の前倒し実施、そして子育て
支援策やセーフティーネット等へ重点化した
財政出動など、内需拡大策を強力に実施していくべきだと考えます。
総理の御見解をお伺いいたします。
最後に、
地域活性化の
取り組みについて伺います。
地域経済については、これまで輸出に牽引されてきた
地域でも、景況感が急速に
悪化し、厳しい
状況が一層広がり、
地域全体が落ち込んできています。
本来、
地域が持っている
底力を発揮し、
地方の
再生を図るには、農業や観光を初め、
地域の資源や特色を生かした大胆な
取り組みが不可欠です。中でも、
地域活性化のかぎを握るのは、農業、林業、水産業の
活性化です。とりわけ農業については、
地域活性化の観点から、私は、次の三点の
取り組みが重要と考えます。
第一は、農家の所得向上と
雇用拡大による
地域経済の
活性化です。
昨年十二月の農地改革プランの着実な実施と
現行の経営所得
安定化対策などの
支援策をさらに充実させ、新たな担い手育成、就農
支援の強化を図ることが急務であります。農家の所得が向上すれば、魅力ある職業として、農山漁村へのUターン、Iターン、Jターンも促進され、
雇用創出にもつながります。
第二は、耕作放棄地の有効活用です。
世界の食料需給が逼迫傾向を強める中で、国内の農業資源を有効活用することが必要です。そのために、休閑地、生産調整地等も含め、使われていない農地を有効利用して、小麦や大豆、飼料米などを生産する農業者へ思い切った
支援策を実施すべきであります。
第三は、農商工連携や地産地消による
地域産業の
活性化です。
消費者のニーズに的確にこたえる農業を振興させるために、農商工連携をさらに加速させ、新たな商品の開発や
地域ブランドの創出、生産・流通体制の改善や販路拡大を促進させることです。
強い農林水産業をいかに創出するのか、
総理のお考えをお伺いします。
以上、急激な経済変化から
国民の
生活を守り、あわせて、
日本の希望ある未来を切り開く
総理のリーダーシップを強く望み、私の
質問を終わります。(
拍手)
〔
内閣総理大臣麻生太郎君
登壇〕