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松本(大)
委員 聞いていないことには答えなくていいんですけれ
ども、そうおっしゃるからちょっと打ち返しておきますが、当時十億の措置額が、もし五%以上の濃縮ウランがプルトニウムと同じだったとしても、当時は六十億なんですよ、最初から五%以上の濃縮ウランをプルトニウムと同額に少額措置設定したとしてもですね。つまり、それでもやはり百五十億の損害はカバーできなかったわけで、それは全く言いわけにはならないし、今私が聞いていることとは、十六条を発動したかどうかとは無関係であるというふうに思います。
十六条では、措置額を超えた場合には国の援助を決めているわけですけれ
ども、実際には超えたけれ
ども発動されなかったわけですよね。住友金属鉱山という親会社がたまたまかぶった、引き受けたということで、その場はよかったということでありますけれ
ども、これはあくまで結果論ではないかというふうに思います。親会社には、例えば
法律上その
責任があったかといえば、義務があったかといえば、それはどうかなという気がいたしますし、何よりも当時の科学
技術庁には監督
責任があったはずですよね。しかも、原則三百億に対して十億円の少額措置を設定していた、その措置額が果たして適切だったのかどうかという問題もあります。
さらには、そもそも措置額というのは民間の保険会社の引き受け能力に左右されるわけでありますから、当然そういう制約を受けている。その中で、このジェー・シー・オーの場合には住友金属鉱山が負ったというわけでありますけれ
ども、果たして、今後のことも考えて、何ら手当てがされないままでいいのかということを私はお尋ねしているわけであります。
実際、
原子力損害賠償制度の在り方に関する検討会の一次報告書案ですけれ
ども、それについてのパブコメが寄せられております。もう重々御存じだと思いますけれ
ども、「J
COの事故の際には実際は親会社が支援するということで国の援助はなされなかったということですが、これはあくまでもイレギュラーなので、今後のことを考えるといろいろな措置として、例えば一たん国が
賠償額を立てかえておくというような形のものも含めて検討すべきじゃないかというコメント」というのを、実際これは
議事録でおっしゃっているわけですね。
それから、「やっぱり何かあったときの補償を営利目的の民間企業だけに依存するということでは心もとないんじゃないか。特に
電力会社はライフラインを維持しており、経営難に陥ると
国民に影響が出る重大な問題になるということですから、損害発生時には国も前面に立って向き合う姿勢があることを報告書の中でもっときちんと検討したらいいんじゃないか」、こういう指摘もあります。
「J
COの場合には国の援助が議論されることなく親会社が支援したことを踏まえると、国は事業継続についても
原子力発電を維持するというのが国策であるならば国もそういう事業継続については
責任を持つということから、何かあったときに事業者の経営を脅かすことがないように国が援助を行うというようなことをきちんと
指針の中で書いたらいいんじゃないか」、こういった指摘があるわけですね。
今回はこの事故の教訓を踏まえた改正なわけでありますから、ここについて何ら手当てがされていないという本改正案はどうなのかということであります。
これは実際、今に始まった問題ではなくて、昭和三十六年にこの
法律が制定されたときに、当時の補償専門部会長、我妻栄さん、岸信介さんと同級生だった方で、退陣勧告か何かを朝日新聞に寄せられた方だったと思いますが、この民法学者が、実際自分の思ったのとは違う
子供ができたというような趣旨の発言をされているわけです。つまり、援助というのは
法律上の義務じゃないんだ、それはどうなんだという疑義を呈していらっしゃるわけですね。これは昭和三十六年四月二十六日の
議事録でありますけれ
ども。
あるいは、それから九年後、昭和四十五年十一月三十日、もう今から三十八年以上前ですけれ
ども、
原子力損害賠償制度検討専門部会、このときも部会長としてこの我妻さんが入っていらっしゃるわけですが、この
原子力損害賠償制度検討専門部会の答申の中でも、同じように、「損害
賠償措置額をこえる
原子力損害が発生した場合には、一定の額までに限り、国が被害者のために補償するいわゆる国家補償制度が採用されている。」ということで、条約や欧米諸国の
原子力損害賠償制度を引いています。
「措置額をこえる
原子力損害については、適正な補償料を徴収することを
前提とする
政府の損害
賠償補償契約の拡大により措置することが望ましい方向であると考えられる。」ということも言っています。「国の援助の規定は、万一損害
賠償措置額をこえる
原子力損害が発生した場合の被害者の保護のための措置としては、必ずしも十分ではなく、」とまで言っています。「国家補償を拡大することが、被害者の保護という点においてもより確実な措置といえるのではないか」。
さらに、「当面現行
賠償法どおりとするが、
原子力事業者の
責任制限および国家補償の拡大については、将来の課題として検討すべき問題であると考える。」こういうふうに述べているわけですね。
当面ということですが、このときから三十八年以上たっているわけです。実際に事故も起こった。そしてそのときの措置額も超えてしまった。しかしながら国の援助はされなかった。今回の改正でも、国の援助という規定ぶりについては変更がないわけですね。つまり、
法律上義務がないと制定当時から我妻さんが指摘していた問題はここでも、今回もクリアされていないということではないかというふうに思います。
こういう
状況の中で、
大臣、「その際の経験を教訓とする」、つまり、ジェー・シー・オー臨界事故の経験を教訓とするというのが今回の改正案であります。被害者の保護に万全を期すということで、この理由のところにも書いてあるわけです。これに照らして、どう思われますか。これは実際、今回の改正案は、ジェー・シー・オーの事故の経験を教訓としているんだ、被害者の保護に万全を期すものなんだと言えると思われますか。