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工藤参考人 よろしくお願いします。
支援するための
対策ということで、今、民間NPOとして
対策をしているところなので、その部分のお話をさせてもらえればと思います。
先ほど
玄田先生がおっしゃってくださったみたいな、一九八〇年代ぐらいからこういう事業が取り組まれていまして、一九七七年生まれなんですけれども、まさにそういう場所で育ちました。比較的そういう歴史的なものも存じ上げているつもりでございます。
先ほど
玄田先生から、三本柱、個人的、持続的、包括的というのがございましたけれども、
支援するに当たって意識しているのは、それとはまた別の軸で、五つのステップがある。
社会に参加できない
若者が多いですので、まず、発見をする。当然、現段階では、行くということも含めて発見なんですけれども、誘導をする。よかったらこっちの
支援に来ないかと誘導して、
支援をします。そして、雇用という意味では、出口。
社会参加という意味での出口まで
一緒に伴走をして、
最後は定着をする。発見、誘導、
支援、出口、定着の五つのステップを川下
支援としてやっておるんですけれども、最近は川上で、キャリア
教育の方に入ったりもしています。
支援する中で幾つか意識していることがあるんですけれども、私どもの理念は、
若者の
社会参加と経済的な
自立を実現することでございまして、
社会的な
自立とか
精神的な
自立というものをほうっておいているわけではないんですけれども、団体の理念としては、経済的な
自立に特化して
支援をしていこう、そのときに意識していることは、働くための
支援と
働き続けるための
支援は全く別物であると。
たまに相談があります、何でもいいから
子供を働かせてくれと。そういう親御さんには伝えます。三日あればやりましょう、そのかわり、
就職をして一時間でやめても文句は言わないでくださいとお伝えします。
つまり、雇用についてほしいというのはもちろんなんですけれども、当然、ついた後、向こう三十年、四十年幸せに働いてほしいわけです。就業のマッチングだけするということは、働くための
支援でございますけれども、これだけいろいろな方が就業をしても離職率が下がりませんので、恐らく
働き続けるための何らかの
対策がなされていないんだろうと思います。
では、
働き続けるために何なのかというところは、非常に長くなってしまいますのでちょっとお話しするのは難しいんですけれども、少なくとも、今、政策においては、比較的、働くこと、つまり
就職することにウエートが九五%ぐらい置かれていて、その前段階において、働いた後に、会社なら会社でうまくやっていく、仕事について納税者としてやっていく、そういう部分への
支援が非常に政策として少ないような気がします。
教育の方ですけれども、年間に百から百五十校ぐらい全国行っています。呼ばれるところというのは、例えば偏差値が非常に高いようなところからは呼ばれません。やはり、学力だけじゃなくて、
家庭背景も苦しい高校さんとか中
学校から呼ばれます。
そのときに、何でうちを呼んでくださったんですかとなると、非常にセーフティーネット型のキャリア
教育だからと言われました。
つまり、きらきらした未来を追うようなことは余り得意ではないので
教育コンテンツの中にのせていないんですけれども、働くとか、生きるとか、知るべきことを知るとか、特に、お金であるとか職業の違いだとか、将来、
就職先がどういう影響を与えるのかという、本来言いづらい部分をなるべく言うように、本当のことを伝えるようにしています。結果として、そういうニーズ、そういうことを
先生が話すのは非常に難しいので、やってくれと言われるのは厳しい環境にある高校とかが多いんだなというふうに思います。
そういう意味では、未来型のキャリア
教育ももちろん片側で大切なんですけれども、本当にきらきらした未来だけを追うことがいいのか、事実を知っておくことも大事じゃないか、学生と
社会の違いというのは非常に大きな隔たりがありますので、その部分を埋めるような何らかのお手伝いができないかなというふうに思っております。
就業支援ということで、
社会参加と経済的な
自立の
支援をしているんですけれども、やはりこれは、雇用側、労働側から見た
支援団体ですので、
支援の、御相談の内容によっては全く無力だなと思うことがあります。
働くことの相談に来た女の子からいろいろ話を聞いていきますと、実は義理の父親にレイプをされていましたというような話は、去年は三件ありました。よくよく聞いていくと、先ほど
玄田先生から貧困という話がありましたけれども、やはり
家庭が
生活保護であったりとか所得が余り高くなかったりとか、それでもその女の子は、将来働くためにどうしたらいいだろうかと聞きに来るんですけれども、それ以前に、やってあげたいことがたくさんある。それは、福祉であったりとか医療であったりとか。
いろいろなセクターが一体となって、みんなで
支援していくネットワークをつくりましょうというのはよく言われるんですけれども、それが本当に機能しているか。機能している場所もありますし、なかなか難しい部分も民間団体としてはございます。
支援団体という意味でいいますと、うちは比較的大きい方だと思います。職員も常勤と非常勤含めて五十人ぐらいいるんですけれども、
生活は比較的苦しい。
ネットワーク
会議に参加しなさいと、市区町村レベル、都道府県レベル、国のレベルのネットワーク
会議だけで、年間に何十日もとられるわけです。しかも、立川という遠いところに住んでいるものですから、電車なんかも含めると半日かかる中に十回も二十回もネットワーク
会議があって、それぞれ出どころが全部違って、でも、話している内容といる
人間がみんな
一緒で、しかもお金も出ない。
ネットワーク
会議に出るからお金をくれと言っているわけではないんです。ただ、そこにかける時間があるんだったら目の前の子を
支援したいと思う職員がいて、でもネットワークがあった方がいいよと伝える
自分がいて、でも払えない給料があって。
そういう意味で、政策として、
対策として、ネットワークをつくりなさい、
会議をやりなさいというのは非常に助かるんですけれども、助かる一方で、やればやるほど苦しくなっていくというところでいつも思うのは、思いとか志があればおなかが勝手に膨れると非常にいいなと思うんですけれども、なかなかそういうわけにもいきません。
人口集積地にこういう団体は意外と少ないんです。家賃が高くて払えません。やはり、山手線圏内にこういう団体をつくるというのは非常に固定費がかかりますので、実質上は大分外側に行ってしまう。当然そこには、アクセスが悪くなって、人が来づらくなって、相談するにもお金がかかって、ではお金がない人はどうするんですかという話になってしまう。
もう少しちゃんと
社会的な事業体として収益も上げられればいいんですけれども、非常にそういう部分で
生活は豊かじゃないですから
支援者はやめていきます。それは
生活がありますので、結婚する、
子供を産む、だから、やりたいけれどもこの仕事はやはり難しいなということで、やめていく若い世代が後を絶たない。
また、公務員の方でこの
若者支援の担当になられた方というのは、いつも、すごいおもしろい、今までの中でこの仕事が一番おもしろい、やりがいがあると言ってくださるんですけれども、その方が頑張れば頑張るほど悲しい思いも募る。
なぜかというと、二年から五年で必ず異動しますので、その人がいなくなってしまって、すべてやり直し、またはマイナスからというのも多々あります。行政の方にやっていただく部分というのはすごくたくさんあって、すごく思いの強い方がいっぱいいらっしゃるんですけれども、きっとこの人も二年か三年でいなくなるんだなと思ったときに、一生懸命やりたい部分と、結局いなくなるからどうしようという部分で、葛藤があるのも事実です。
その意味では、いろいろな
制度とかはあるんでしょうけれども、ゼロ歳から三十何歳までを見るわけですから、やはり専門的な、異動のないような方が本当は行政の方にもいらっしゃってくださるととってもありがたいなというふうに思います。すごくみんなすてきな方なんですけれども、必ずいなくなってしまうので、そこが悲しいなと。
うちの職員同士が昨年結婚したんですけれども、残念ながら、新聞記事に載りました。NPO同士が結婚するのが新聞記事に載るような業界ですから、今、その一人の子が妊娠をして七月に出産しますけれども、多分、プレスリリースすれば記事になると思います。NPO同士の職員が結婚して
子供を産むことが
社会的な記事として出てくるところですから。そこに対して何らかの、政策上の中にも、
対策上の中にも、できれば
支援をいただきたい。
いろいろありますけれども、極端なことを、誤解を恐れずに言えば、国の事業は、受けることは非常に有意義、
一緒にやらせてもらうことは非常に有意義です。お金のない方に
自分たちの
支援を届けることができますので、ぜひやりたい。
ただ、構造上、委託事業を受けると必ずマイナスになります。一千万円、二千万円の事業を受けますと、一年間、まず自己資金でそれを出さなければなりません。まず
自分でそのお金を使って、後で精算で返していただく。それはそれで構わないんですけれども、なぜか一般販売管理費がなかったりとか、もともとそんなに原資がないので、証書貸し付けという形で銀行からお金を借ります。大体、利子は三パーかかります。つまり、二千万円の事業で一生懸命やった結果として、まず第一に六十万円をどぶに捨てるところからスタートしなければならない。やればやるほどマイナスです。
国との共同事業はとてもありがたいんですけれども、その構造の中で、受ける側の
生活のことまでちゃんと考慮された
状況で仕組みがつくられているかというと、どうしてもそういうわけではない。では、お金がある人しか
支援しないのかといえば、そんなことは当然ないわけです。
お金のない方、たまたまそういうところに生まれてしまった青年たちに
支援を届けるために国の事業を
一緒にやらせていただいて、その結果として、
自分たちの
生活が犠牲になって、
支援者が育たない。こういう
状況が、
対策の後の、政策を受ける側に今起こっている
状況で、残念ながら、三十前後で今頑張ってやっている
人間の中には、国の事業と県の事業、市の事業、非常にやりたいけれども、やると団体がつぶれるので、選択的に、やれない、やらないということもかなり出てきています。
そして、二十五歳ぐらいからいろいろなレベルで国の
委員とかをやらせてもらったんですけれども、よくわかっていない若造をそういうところへ入れてくださって、心ある行政の方とか、本当にありがたかったんですけれども、この六年間いろいろなところで参加させていただいて、
若者支援に関して現場から
発言してくださいとかと言っていただいたんですけれども、この六年間、そういう
支援系の
委員会で同じ世代に会ったことがありません。
若者の問題を考える
委員会の中で、
若者がどういう
状況か当然いろいろな方が調べているんですけれども、その当事者がいません。六年間何十個も
委員会に出て、一回も会ったことがなくて、一番年齢が近い方が
玄田先生です。何となく
自分の
意見が
若者代表みたいなとられ方をされてしまう部分に
自分の責任の重さを
感じるんです。それ以前に、男性と女性の問題と。
僕は七七年ですけれども、八〇年代生まれとか平成生まれの子まで
委員会の対象者に入ってくるわけですけれども、大多数の方がこういうのがいいんじゃないかと言われたとき、個人的に、それは
若者としてはないんじゃないかと思う部分で、多数派が形成できないといいますか、やはり一人であらがうことは難しいこともあります。
欧米なんかでは、当事者が二割から三割入るべきだ、当事者世代が政策に入るべきだという暗黙の了解みたいなものがあるということをお聞きしました。イギリスに行ったときも、中学生のための政策をつくっている場所に地元の中学生十人ぐらいが入って、このデザインはいけてないとか、だれもこんなの使わないとか、中学生の観点から
意見をおっしゃっていました。
若者支援は、確かに
家族も一体ですので
保護者の方への
支援もあるんですけれども、では、そういう
保護者の方、お母様、お父様の方が
委員会にいるかといったら、いません。当事者の
若者に来いと言うのは苦しいかもしれませんけれども、では、そういう
若者とふだん触れ合っている若い
人間が
委員会にいるかといったら、いません。当然、学歴なり経歴で実績がないので呼びづらいという事実はわかります。
理事長となるとなかなか、若い人が
理事長をやっている団体というのは非常に少ないんですけれども、やはり若年の政策をつくっていく上で、その政策立案の中に、どんな方であれ、
若者が一人とかゼロとかというのは、結果、その政策が
若者に反映されるとはちょっと思えない部分があります。
ちょっとばらけてしまったんですけれども、今、
学校に、小
学校、中
学校に行けない人が年間十二万人ぐらいいて、高校をやめる人が八万人いて、
大学などをやめる人が十四万人いて、
ニート状態にある人が六十万人いて、ひきこもり状態にある人が、ひきこもりは年齢制限ありませんので、百万人とかいて、働く人の三分の一が非正規で、五人に一人が年収二百万以下で、そして四人に一人は貯金がない。
こういう
状況を
若者の
支援という観点から考えていく場合においては、民間の団体だけでは限界があります。政策として、
政治としてやっていただかなきゃいけないこと、その
方々しかできないこともたくさんあります。
何よりも、今、
若者のひきこもりの
支援とか
若者の
支援というのは、全体の風潮として、国の経費というイメージを受けます。支出であるというイメージを受けます。
自分の友人からも言われます。何でそんなところに
自分の大切な税金を使わなきゃいけないんだと、だったらおれも苦しいと言われます。
何となく、そういう
若者支援というのは経費という感覚が非常に強くなっておりますけれども、これは
社会的な投資事業であって、一人の青年が
自立することによって、本人も幸せですけれども、当然、納税の観点から見ても、放置したままと比べれば非常に大きなインパクトが、一人でもあります、四十年ですから。それが百万人とか何十万人とか、何もされないまま放置されているというのはやはり国家的な損失でもあると思いますし、そこに対して、彼らの
支援というのは自己責任であり経費であるというこの風潮を、何とか
発言力のある方に変えていただきたい。
それは、投資であって、彼らが生き生きと働くということは、国を活性化させることであり、もしかしたら消費を喚起させることであり、やはり、できるだけ若い段階で必要な
支援が受けられて、みんなが、
日本のために、
自分のために、
家族のために働けるような
時代を、
政治の方とも、もちろん行政の方とも、
自分たちとも、一体となってやっていくことがいい。そのための
対策であるとか政策、そこを意識した
対策、政策というのができていけば
社会はもっとよくなるんじゃないかなと思います。
以上です。(拍手)