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山内参考人 遅参いたしまして御迷惑かけました。大変申しわけございません。
私は
一橋大学の
山内でございますが、これから、本
案件につきまして、これをどのように考えるか、ちょっと
意見を述べたいというふうに思っております。
まず、今回のこの
タクシー問題、それから、それをめぐる幾つかの
法案でございますけれ
ども、私
どもは、昨
年度、
交通政策審議会において
タクシーの諸問題を論じる
委員会を設けまして、そこで
議論をしてまいりました。それが今回の
法案あるいは
改定案に結びついたということを承知してございますので、その辺の
議論の経緯から御
紹介を申し上げたいというふうに思います。
東京について見ますと、
平成七年に
運賃改定をいたしまして、その後十二年間、
運賃改定が据え置かれておりました。その間、いろいろな
経済変動等があったわけでございますけれ
ども、特に近年、
タクシー運転者の
方々の
労働条件が非常に悪くなっているというようなことがございまして、そういったことをかんがみて、特に
運転者の
方々の
労働条件の
改善ということを目的といたしまして、
平成十九年の十二月に
運賃改定を行った、こういう次第でございます。
御承知のことと思いますけれ
ども、
東京における
タクシーの
運賃改定というのは、その
改定の前に
物価安定政策会議に諮られて、そこで
議論をお聞きして、それで、その後に物価問題に関する
関係閣僚会議ですか、この議を経るということになっております。
私もこの
議論に参加をさせていただいた一人でございますけれ
ども、その過程でいろいろな御
意見が出されました。
特に、その
運賃改定の理由となりました
労働者の、
運転者の
皆さんの
待遇の
改善について、これはやむを得ないことである、必要なことである、こういう御同意をいただいたと思いますけれ
ども、そのほかに、
業界の
構造的な問題に起因するさまざまな課題、こういうのがあるのではないか。そして、その根本的な
構造問題の
解決を目指さない限り、根本的な
タクシーの
改善にならない、こういうようなことがありました。あるいは、特に
消費者サイドの
方々からは、
タクシー業界についての
経営努力が足りないのではないか、こういった御
指摘もなされたというふうに思っております。ある
意味では、そういった厳しい御
意見を踏まえて、十九年の
運賃改定がなされたということであります。
ただ、その
改定に際しまして今言ったような問題が
指摘されましたので、それを
交通政策審議会の方で
議論する、こういうような
立場になったということでございます。それで、
平成二十年の二月から、
タクシー問題について
交通政策審議会で
ワーキンググループが設けられて、都合十三回になりますか、
会議を開催いたしました。この際、
通常の
交通政策審議会の
委員の
メンバーだけではなくて、先ほど申し上げた、例えば
物価安定政策会議の
メンバーの
方々も入っていただいて、幅広い御
意見を伺った上で、この
タクシー問題について考えようということだったと思います。
もちろん、そういう
意味では幅広い
委員ですので、
労働者の
方々の
改善の問題だけではなくて、もっと
一般的に、例えば
消費者の
利益とかそういったことを考える、あるいは
地域の問題を考える、こんないろいろな
立場から御
意見を賜ったということであります。
この
交通政策審議会の
ワーキンググループでどんな
議論があったかということなんですけれ
ども、基本的には、
タクシーの
供給過剰問題が進行しているのは大きな問題である、こういう
問題意識がございまして、それを
解決しなければならないという
意見が強く出されました。
ただし、
タクシーの場合も、
平成十年、
規制緩和ということが行われたわけですけれ
ども、そういった
自由化のよい面、
消費者にもたらした
利益、こういったものを生かしつつ問題を
解決してはどうか、こういうような
議論だったと思います。特に
供給過剰の問題については、
地域によってかなりばらつきがあるということで、
地域的にあるいは限定的な
意味合いを持って
供給過剰の問題に対処してはどうか、こういう
意見が多数であったというふうに思っております。
この際に、いろいろな御
意見が出されました。その中には、例えば、今あるのが
供給過剰であれば、それを強制的に
減車をするとか、あるいは車を買い上げるとか、こういうような
意見もあったわけですけれ
ども、そういったことが法的にどこまで許されるのか、
財産権の
問題等ございますので。そういったことから総合的に見た結果、自主的、協調的に、
業界の
構造を改革するような形での
減車あるいは
供給の
削減、こういったものが望ましいのではないかという
結論に至ったわけであります。
ただ、
タクシーの場合には、現実の問題を見ますと、
需要が減っているにもかかわらず
増車が行われる、こういう問題が常に存在しているわけで、あるいは根本的な問題だというふうに思いますけれ
ども、それにどう対処するのかということについては、根本的な問題としてとらえて
議論しなければならない、こういう
指摘もございました。
基本的には、先ほど言いましたように、
消費者の
方々がいて
供給者の
方々がいるわけですから、両者の
利益、特に、ここのところ、やはり
消費者の
方々の
利益というものを重視すべきだ、こういう御
意見もございますので、基本的には
消費者の
方々の
利益を重視しつつ、その中で、今も言ったような
事業者の適切な行動を促すための
あり方、例えば
歩合制賃金の
問題等について
議論をするということになったわけです。
それから、
運賃問題について特に
指摘されておりましたので、
ワーキンググループの中に
タスクフォースというのを設けて
運賃問題を
議論いたしました。
現行では、
上限で幅というような認可になっているわけでありますけれ
ども、これがどうなのかということであります。
結論的に言いますと、この
タスクフォースの
結論は、
現行の
運賃の
あり方というものはそれほど大きく間違っていないんじゃないか、こういうことであります。
議論の中には、
同一地域同一運賃というような御
意見も出されましたけれ
ども、これについても、要するに、
上限以下の
事業者さんに上げろというようなことをどこまで強制できるのか、こういう問題もあって、なかなか
同一地域同一運賃を強制するというのは難しいのではないかというようなことであります。
結果的に、
タスクフォースでは、
運賃については、
下限割れと言われるものについて、その
下限というのは恐らく、
タクシーの
運転者の
皆さんの
待遇、その
方々の
待遇を
確保するために必ず必要であるという
認識のもとに、それについて一定のガイドラインを設けて明確化する。その
下限を割れるようなことは、なかなかグレーなところがありましたので、それを明確化する、こういうような
結論に達したというわけであります。
一般に、今の
運賃の問題も含めまして、基本的に、
交通政策審議会の
ワーキンググループでは、
消費者の
方々の
利益と、それから
生産者、特に
運転者の
方々の
利益、こういったものをバランスするような形で
タクシーの行政を進めたらどうか、こういう
結論になったというふうに思っております。
そういった視点から見ると、今回の
法案についてでございますが、基本的には
タクシー問題についての
ワーキンググループの考え方が反映されているということだと思います。
規制緩和のよい点というものは必ずあるわけでありまして、それを生かしていくという面はある。ただし、
構造的な問題があるということで、それについての
解決策を、まずは
需給の問題からここに提案したという形になっていると思います。
その他、残された問題がございまして、先ほどの、
タクシーの
運賃は本当にこのままでいいのかとか、
タクシーの
運転者の
皆さんの
待遇の
改善をするにはもっと根本的な問題があるのではないかとか、あるいは、
タクシーのマーケットというものをうまく機能させるためにはほかに何か手だてが必要なのではないか、こういうような
構造的な問題が残されているというふうに
認識しております。
そこで、
タクシー運賃の
制度についてもう少し深
掘りをするとか、あるいは
賃金システムについてもう少し深
掘りをする、こういった形の
研究会、
懇談会も新たに設けられておりますので、何か問題があるということであれば、その中でもう一度
議論をしていくということだと思っております。
以上、ちょっと時間をオーバーして大変恐縮でございますが、私の
陳述とさせていただきます。どうもありがとうございました。(
拍手)